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吉田修平氏が中国最大級のインディーゲームイベントに初参加。中国インディーシーンの特徴や変化などを「WePlay2025」の会場で聞いた
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印刷2025/12/05 14:52

イベント

吉田修平氏が中国最大級のインディーゲームイベントに初参加。中国インディーシーンの特徴や変化などを「WePlay2025」の会場で聞いた

 中国最大級のインディーゲームイベント「WePlay Expo 2025」の会場を歩いていると,見慣れた後ろ姿が目に入った。元SIEワールドワイド・スタジオのトップである吉田修平氏だ。
 筆者は今年,日中韓のインディーゲームイベントを現地取材しているのだが,各地で当たり前のように吉田氏がふらっと現れ,開発者と交流している場面を目撃している。自然体な立ち振る舞いは,その経歴を知っていても,インディーゲーム好きのおじさんという感じだ。

 そんな吉田氏だが,WePlayへの参加は今回が初めてだという。そこで,WePlayの雰囲気や気になった作品,中国インディーシーンの特徴,インディー開発者向けの創作論まで,幅広いお話を聞いた。

――収録日:2025年11月23日

吉田修平氏
画像ギャラリー No.002のサムネイル画像 / 吉田修平氏が中国最大級のインディーゲームイベントに初参加。中国インディーシーンの特徴や変化などを「WePlay2025」の会場で聞いた

■吉田修平氏の「WePlay2025」ピックアップタイトルの一部

タイトル ストア 日本語対応
ティングス・グース Steam 〇(発売中)
文字遊戯世界 Steam 未定
CleanFall Steam 〇(発売中)
ボルトと浮遊城 Steam △ストアページのみ
MultiWindows Steam 未定
愛とロボット修理技術 Steam 〇(デモ版あり)
Avatar Zero Steam 未定


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[2025/05/09 07:00]

4Gamer:
 ステージイベントの直後にすみません。本日はお時間をいただきありがとうございます。

吉田氏:
 「もうみんな知っているよ」という感じでした?

吉田氏は本インタビューの直前にステージに登壇。「新時代のゲームイノベーション」をテーマに,同氏の経歴の紹介や,AAAタイトルとインディーゲームの特徴を深掘りし,インディー開発者へのアドバイスやエールも送った
画像ギャラリー No.003のサムネイル画像 / 吉田修平氏が中国最大級のインディーゲームイベントに初参加。中国インディーシーンの特徴や変化などを「WePlay2025」の会場で聞いた

4Gamer:
 そんなことありません。WePlayは,来場者もかなり多様ですし,自分含めみなさん興味深く聞き入っている様子でした。
 吉田さんは,WePlayに来たのは初めてでしょうか。

吉田氏:
 はい。インディーゲームに限った話をすれば,中国のゲームイベントで,WePlayは一番いいと前から聞いていて,ずっと気になっていました。
 ただ,ビザが必要ということもあって,その手続きの間,海外に行きづらくなってしまう可能性があったので,見送っていたのです。

 今年はちょうどビザなしで行けるタイミングだったので,「じゃあ行こう」と今回来るきっかけになりました。

4Gamer:
 私も今回初めて参加したのですが,出展内容は国際色豊かで,来場者数もかなり多い印象ですね。

通路はかなりぎゅうぎゅうな印象。開発者との交流イベント,物販などの行列もある。ステージイベントについては,立ち見が当たり前の状態だった。とくに「Rusty Lake」のブースに人が集まっていた
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吉田氏:
 そうですね。昨日のチケットは早々に売り切れていましたし,中国国内だけでなく,いろんな国と地域から人が来ている印象がありますね。
 中国の市場は非常に大きいですし,もちろんインディー市場も大きい。だからこそ,日本企業の出展も多くあるのかなと思います。

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[2025/11/23 10:58]
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[2025/12/02 15:08]
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[2025/11/23 14:03]
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[2025/11/23 11:27]

4Gamer:
 そうですね。バラエティ豊かで,ゲームだけのイベントというより,サブカルの即売会のような雰囲気もあったように感じます。

吉田氏:
 集英社さんや松竹さんのような他業種からのインディーゲームのパブリッシング参入も目立ってきていますね。彼らはゲーム以外にもエンターテインメント,リテール,イベントなどをやっていますから,従来のパブリッシャとは違う形のサポートができる。

 集英社さんなら,メディアミックスも得意だと思いますし,インディーにとっていいチャンスだと思います。パブリッシャの多様化も進んでいって,インディーデベロッパが資金調達や支援を受けられる機会が確実に増えていますね。

4Gamer:
 今回会場を見て回ってみて,面白いと思った作品はありますか。

吉田氏:
 気になったタイトルは,デベロッパさんたちと一緒に写真を撮ったりして,SNSに投稿しているので,それをたどってもらえればわかると思います。

 まず,本当に「狂っている」と思うくらいぶっ飛んだゲームがありましたね。ちょっと頭おかしい感じのコンセプトで,とても面白かったです。

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「ティングス・グース」(PC
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 中国の大型インディーゲームイベント「WePlay Expo 2025」に,かなり目を引く奇妙なビジュアルの放置ゲームが出展されていた。「indiePlay 2025」の最優秀海外作品賞にノミネートされた,オーストラリアのゲーム「ティングス・グース」を紹介したい。

[2025/11/25 18:20]

 それから「文字遊戯」の新作もありました。プレイヤーがゲームを作ってシェアできるエディタ的なもので,これもすごく画期的だなと。

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「文字遊戯世界」(PC
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4Gamer:
 文字遊戯は,吉田さん一押しゲームですからね(関連記事)。ティングス・グースは私もプレイして,そのぶっ飛んだ世界にびっくりしました。
 そのほかはいかがでしょうか。

吉田氏:
 まだまだあります。1つは,どんどん下に落ちながら掘っていって,リソースを集めていくようなゲームです。プレイ体験が軽快で,見た目以上に手触りが良さそうだと感じました。

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「CleanFall」(PC
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 次は,アクションゲームなんですが,途中でゲーム内のルールを書き換えることで,通常は行けない場所にも行けるようになるといった作品です。
 この「ルールを書き換える」という発想自体が面白くて,オリジナリティがあるなと思いました。

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「ボルトと浮遊城」(PC
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 また,学生さんの作品なんですけど,「MultiWindows」という作品もけっこう面白かったですね。
 通常なら行けない場所があるのですが,同じゲームを複数立ち上げて,複数のウインドウを組み合わせることでキャラクターを出口に導くという仕組みです。
 これまでにないゲーム性で,新しいなと感じました。

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「MultiWindows」(PC
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 あとは,ロボットのお医者さんが出てくるアドベンチャーゲームも印象に残りましたね。壊れたロボットを修理してあげるという内容で,テーマもビジュアルもユニークでした。

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「愛とロボット修理技術 All Our Broken Parts」(PC
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[2025/12/01 12:24]

 ちょっと開発者さんがいなくて詳しくは聞けなかったのですが,「Avatar Zero」というドット絵のアドベンチャーゲームも気になりました。会話パートで2つの選択肢が出現し,そのどちらかを選ぶというものです。
 工場の経営者と話すシーンでは,生産性を高めるのか,弱者が働きやすい環境にするのか,という道徳的な選択を迫られます。会場では,その選択肢用に,大きなボタンが2つだけ置いてあって,どちらかを押すことでストーリーが分岐する仕組みになっていました。

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「Avatar Zero」(PC
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 紹介しきれなかったタイトルもあるので,吉田さんのXもチェックしてほしい。



4Gamer:
 かなり変わったアイデアをコアにした作品が多くある印象でしたね。どの作品もかなりプレイヤーが集まっていました。

吉田氏:
 あと,会場でちょっと謎だったのが,これですね。

吉田氏が見せてくれたのは,「寻找小高」(小高を探せ)というスタンドパネルの写真。「終天教団」関連のイベントとして小高和剛氏のスタンドパネルを見つけて,SNSに投稿するとプレゼントキャンペーンに参加できるというイベントが行われいた
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4Gamer:
 ありましたね。小高氏の中国での人気度の高さを実感しました。

吉田氏:
 私は,もう全部見つけました(笑)。ほかに面白いなと思ったのが,「デイヴ・ザ・ダイバー」のブースですね。私は挑戦しなかったのですが,人間クレーンゲームをやっていました(Xポスト)。

 全体として,ここでしか見られない作品も,ここでしかできない体験も多くある印象でした。

4Gamer:
 作品をプレイして面白いと思ったときは,いつも開発者に声をかけるようにしているのですか。

吉田氏:
 そうですね。こういうイベントでは,たいてい開発者の方がブースに立っていますから,気になったらいろいろとお話を聞きます。

 それで写真を撮って,Xでポストすると,とても喜んでくれるんですよね。それ自体が広報活動の一部みたいなもので,少しでも力になれれば,という気持ちもあります。

4Gamer:
 開発者さんとお話するときは,どういったことを話題にしますか。

吉田氏:
 とくに変わったことはなく,ゲームの内容についていろいろ聞きます。
 あと,私はパブリッシャのメンターもしているので,良いゲームがあれば,パブリッシャに紹介もしたりします。
 あくまで,「パブリッシャは付いていますか」「資金調達は必要ですか」といったことを質問して,必要そうであれば,紹介しましょうか,と伝えます。

 また,趣味の延長ではありますが,インディーデベロッパへのアドバイスも実施しています。
 プロの会社には有償でコンサルティングをしているのですが,個人やインディーチームに対しては,ゲームのピッチやプロトタイプを送ってもらえれば,時間のあるときに見て,フィードバックを返すということもしています。

 イベントでは,名刺を渡して,そういうオファーをするときも多いですね。

4Gamer:
 実際にWePlayに来てみて,中国のインディーゲームらしさ,というものを感じましたか。

吉田氏:
 昔,ChinaJoyで来たときは,似たようなゲームが多い印象でした。中国の古典的な名作のストーリーをもとにしたものや,独特の絵柄,刀を使うアクションといった作品ですね。
 でも,今はぜんぜん違いますね。

 indiePlayのコーナーには,海外のゲームも多くて,それらが中国語ローカライズで展示されているので,ぱっと見で中国のゲームか海外のゲームか区別がつかないこともけっこうあります。
 中国のインディーデベロッパも,海外のデベロッパも,もうあまり差がないというか,同じ土俵でオリジナル作品を作っているように感じますね。

 さっきの「MultiWindows」のような学生作品もそうですし,東京ゲームショウでも似たアイデアの作品を見かけますね。
 そういう意味でも,「同じなんだな」という印象を持ちました。

4Gamer:
 中国のデベロッパとお話されるとき,ほかの地域のデベロッパと違うなと感じることはありますか。

吉田氏:
 ありますね。アメリカにも近いところがありますが,中国のデベロッパはビジネスマインドが高いです。
 とくにChina Hero Projectに参加しているようなプロフェッショナルな人たちと話していて感じるのは,「アントレプレナーシップ」(起業家精神)ですね。ゲームを作りたいというだけでなく,ビジネスとしてもちゃんと考えているという意識が強いように思います。

4Gamer:
 先ほどindiePlayのコーナーを見ていても,インディーで雰囲気のいい作品を見ていたら,China Hero Projectに参加しているスタジオで,AA,AAAのような作品を作っているところもあって,びっくりしましたね。

■China Hero Project「楼蘭:呪いの砂」を開発中のChillyRoom内のスタジオCritTeamの作品

画像ギャラリー No.044のサムネイル画像 / 吉田修平氏が中国最大級のインディーゲームイベントに初参加。中国インディーシーンの特徴や変化などを「WePlay2025」の会場で聞いた
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[2025/11/25 19:32]


吉田氏:
 そうですね,中国は,開発スピードもすごいですよね。人の異動も早いし,ゲーム開発自体の動きも早い。

 前にmiHoYoさんとお話したとき,miHoYoのようなゲームの作り方は日本では難しいだろうな,という話がありました。法律などの問題もありますし。
 そういった日本のゲーム開発者にはマネできない部分があるのかなと。人員をたくさん投入して,しかも長い時間働けるという環境が,中国ゲームの強さの一因となっているのかなと思います。
 もちろん,将来はどうなるかわかりませんが,現状ではそういうところが大きいですね。

4Gamer:
 2日前(2025年11月21日)にmiHoYoさんの新作が発表され,これまでとかなり雰囲気が違って驚きました。吉田さんはどう感じましたか。

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[2025/11/21 16:18]

吉田氏:
 「原神」や「崩壊」,「ゼンゼロ」まで出して,今はプレイヤー層がかなり重なっている部分があるんじゃないかな,と想像しています。
 だからこそ,違う方向にも舵を切らなければいけないという意識があるのでしょうね。アニメ系のタイトルも続けつつ,よりリアル寄りのグラフィックスにも進出するというのは,未来を見据えた動きに見えました。

 新作は,Unreal Engineですよね。これまでmiHoYoはUnityを使っていたので,そこも含めて,ハイエンド志向のチャレンジをしているのかなと感じます。ビジネス的にも,かなり先を見据えている印象ですね。

 中国のほかのデベロッパや,韓国からも「miHoYoのようなゲーム」がたくさん出ていますが,その一歩先を行こうとしているように見えます。

4Gamer:
 エンジンの話ですと,最近では,UnityとEpic Gamesの協業も発表されるなど,ツールやプラットフォーム側の動きも盛んですね。

吉田氏:
 いろいろなプラットフォームやツール,サービス同士がつながっていく世界になっていくと思いますし,もうすでにそうしたものが連携している時代になっていますね。
 インディーであってもAAAであっても,できるだけ多くのプラットフォームで発売したいというのは共通です。ツール類の互換性が高まっていく動きは,インディーにもいい影響を与えるんじゃないかな,と思います。

4Gamer:
 (会場の都合でインタビュー場所を移動しながら)ちなみに,indiePlayでは,審査も担当しているのでしょうか。

吉田氏:
 indiePlayでは,審査員はしていませんが,アワードの授賞式でプレゼンターを務めます。どのタイトルがどの賞を受賞するかまでは知らされていないので,それも含めて楽しみですね。

■indiePlayの授賞式の様子と,受賞タイトルはこちら
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[2025/11/25 14:34]

4Gamer:
 審査員としても参加されるアワードもあると思いますが,受賞作品の選ばれ方は,イベントによって変わりますか。

吉田氏:
 かなり違いますね。アワードごとに見るポイントが違うというか,カラーがあります。
 たとえば,ベルリンの「A MAZE.」は,東京ゲームショウの「SENSE OF WONDER NIGHT」に近くて,驚きや突飛さを重視します。そのため,ゲームというよりは,「インスタレーション」(現代美術の1種)のような作品が選ばれることもあります。

 東京ゲームショウの「SELECTED INDIE80」だと,80タイトルを無料で展示させてあげる企画で応募数もかなり多いのですが,そちらは「普通に良くできたゲーム」も選びます。
 しかし,同じイベント内の企画ですが,SENSE OF WONDER NIGHTはまったく別で,普通じゃない特殊なものを選ぶコンセプトなので,むしろ普通に良くできたという作品は落とす形になります。

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[2025/09/27 15:57]

 審査するときは,主催者の意向に合わせて選出するので,アワードごとの特色がでますね。

4Gamer:
 驚きを感じるのは,どんなときでしょうか。まず目につくのは,ビジュアルかと思いますが,ゲームシステムもでしょうか。

吉田氏:
 両方ですね。ビジュアルがすごく目立つものは,それだけで得ですし,強いです。もちろん,見た目は面白そうでも,実際プレイしてみると,あまり面白くないこともあります。

 逆に,ぱっと見で「ローグライク」「メトロイドヴァニア」「デッキビルダー」「ヴァンパイアサバイバー系」だとすぐに分かってしまうものは,ちょっといいかな,となりがちです。

 これはいったい何なんだ,と理解しがたいもの,説明を聞いてもよく分からないものに個人的に惹かれますね。そういう意味で,さっき話に出した「ティングス・グース」のように,奇抜な作品はとても印象に残ります。

4Gamer:
 ゲーム制作ではフィードバックが重要だと思っています。インディーにおいてアイデアが重要なら,アイデアも早い段階で外に見せてリアクションをもらったほうが良いのでしょうか。

吉田氏:
 アイデアが動画などゲームの形になっていれば見せられると思いますが,まったく作っていないものを見せても仕方がないですね。

 最近は,開発初期の段階でAIを使って仮のビジュアルを作ることもあるので,人に見せられない場合もありますよね。なので,製作中のものがアーリープロトタイプくらいになった段階で見せるのがちょうどいいと思います。
 目指しているところがある程度わかる状態で見せて,そこでフィードバックをもらうのが理想ですね。

4Gamer:
 突飛なアイデアほど,ある程度の形になってないと分かりにくそうですもんね。

吉田氏:
 また,突飛なアイデアに限らず,自分たちのゲームを人に見てもらうのは重要ですね。
 誰がどこで見ているか分からないですし,一緒にゲームを作る仲間が見つかるかもしれません。パブリッシャから声がかかることも稀にですが,あります。

 自分たちのゲームのどこが良いと思われているのかを知るうえでも,人に見せてフィードバックをもらうことは重要です。イベントなどで,どんどん外に出していくべきだと思います。 

4Gamer:
 アイデアの新規性などは,人によって受け取り方が違うと思います。いろいろなゲームを知っている人ほど,どこかで見たことがあるという風に。開発者はどこまでアイデアの新規性を気にすべきでしょう。

吉田氏:
 基本は,自分たちが作りたいものを作るでいいと思います。ただ,プロとしてそれで食べていきたい,ヒットさせたいという段階になると,マーケティング的な視点も必要です。
 「このゲームの何が面白いのか」「既存のゲームとは何が違うのか」「一般の人に,どこがプレイしたいと思わせるのか」という目で,自分のゲームを見る必要があります。
 そういう意味でも,ほかの人からのフィードバックは重要ですね。

4Gamer:
 開発者目線で,フィードバックを受け取るときのコツはありますか。

吉田氏:
 そこは,開発者次第なところもありますね。メンター的な立場でいうと,途中段階のゲームにアドバイスをすることに慣れている人なら,開発者が使いやすい情報を返せると思います。

 一方で,一般プレイヤーに聞くと,好きか嫌いだけの感想になりがちです。さまざまな人にプレイしてもらい,いろいろな視点のフィードバックを集めていくのが大事かなと思います。

4Gamer:
 吉田さんがメンターとして心がけていることは何でしょうか。

吉田氏:
 基本的に,「問題点」は指摘しますが,「解決策」はあまり自分からは出しません。解決方法を考えるのは,開発者自身の役割だからです。

 「こういうやりかたもあるよ」と,例としてヒントを出すことはありますが,実際にどう直すかは開発者やそのチームの事情次第です。コードや開発体制,目指している方向性によって,作りやすい,作りにくいが違いますから。

 開発者自身が気づいていない問題点は意外と多いので,そこははっきりと指摘してあげることを大事にしています。「ここが分かりにくい」「ここは難しすぎる」といったことですね。
 開発者は毎日自分のゲームを見ているので,一般の人がプレイしたときに「何が分からないか」を見落としがちなので,このあたりは重要ですね。

 同日,インディーゲーム支援をメインに行っているPocketpair Publishingの責任者にインタビューもしたのだが,フィードバックに対する考え方は吉田氏と通じるところがあった。



4Gamer:
 開発者に改善のとっかかりをお渡しするイメージですね。そのとっかかりを伝えて,予想外の回答を出してきたな,という経験はありますか。

吉田氏:
 ありますが,正直,自分がそのとき何を言ったかは忘れていることもあるんですよ(笑)。イベントの場で,口頭で伝えることもあれば,メールで送られてきたものに,メールで返信することもあって,時間が経つと細かい内容までは覚えていなくて。

 何年か経って,別のイベントで再会したときに,「あのとき言ってくれたアドバイスをきっかけにこうしました」と言ってもらえることもあり,そこで自分が言った内容を思い出すこともあります。
 そういう風に開発者に声をかけてもらえたときは,とても嬉しいですね。

4Gamer:
 吉田さんおすすめのフィードバックのもらい方はありますか。

吉田氏:
 インディーイベントは最高の場だと思います。プレイヤーと直接話ができますし,その場でプレイしている様子を見て反応を感じることもできる。
 だからこういうイベントには,どんどん出たほうがいいです。

4Gamer:
 WePlayで驚いたのは,ブースにQQ(TencentのSNS)のグループQRコードを載せているところが多いことです。お話を聞くと,開発者がテスト版のビルドをそこで配布して,フィードバックをもらうこともあるらしく,開発者とプレイヤーのコミュニティが形成されている印象でした。

 エスケープ フロム ダッコフの開発では,QQで開発中のビルドを配布し,フィードバックをもらってバランス調整などを繰り返したそうだ。

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[2025/11/23 13:16]

吉田氏:
 日本でも,Discordサーバーを立てているところはまさにそれですね。「Discordに入ってください」「Steamのウィッシュリストに登録してください」というのは,インディーデベロッパにとって,命綱のようなものです。

 Discordに入って開発者と話ができると,ファンもすごく応援したいというスーパーファンのようなものになるので,とてもありがたいと思いますね。そうした人たちは,友達にも広めてくれるプロモーターになりますし,大きな支えになります。

4Gamer:
 なるほど。本日は,急なお願いにも関わらず,お時間をいただきありがとうございました。

吉田氏:
 こちらこそありがとうございました。今度は,Taipei Game Showあたりに参加予定です。また,別のイベントでもお会いしましょう。

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