![]() |
ひとりは,「ElecHead」「Öoo」といったパズルアクションを手がける生高橋氏。もうひとりは,room6での勤務や講談社ゲームクリエイターズラボでの経験を経て,「ダレカレ」を生み出したyona氏だ。聞き手は,第1部に続いて吉田修平氏が務めた。
パイオニア的な世代の歩みを振り返った第1部に対し,本セッションでは脚光を浴びる若き作り手が,どのような体験を経てゲーム制作の道を選び,壁を乗り越えてきたのかが語られた。
![]() |
![]() |
就職せずに選んだ個人制作の道と,就職しながら育てた自分のゲーム
生高橋氏は,ゲーム専門学校(日本工学院)を卒業後,ゲーム会社へ就職せず,そのまま個人で制作を続けてきた。
入学当初は大手ゲーム会社への就職を考えていたが,授業でゲーム制作の一連の工程を体験し,「全部自分で作りたい」という思いが芽生えたという。個人でゲームを制作し生活しているもっぴん氏らの存在を知ったことも大きかった。
のちに生高橋氏は,2021年にリリースした「ElecHead」や2025年リリースの「Öoo」の,言語に頼らないパズルデザインで極めて高い評価を獲得する。現在は講談社ゲームラボのラボメンバーとして新作を開発中だ。
![]() |
一方のyona氏は,大学卒業後に京都のインディーゲームデベロッパ/パブリッシャであるroom6にプログラマーとして入社した。
就職を選んだのは,いきなり1人で独立する自信がなかったためで,まずはroom6の代表・木村征史氏の誘いで経験を積むことにしたという。
こうして会社員として働きながら,毎朝4時半に起きて自身のゲームを制作し,9時からroom6の仕事を始める生活を続ける。そののち講談社ゲームラボにGCLの2期生として選ばれ,1作目「In His Time」を開発。2025年にリリースした2作目「ダレカレ」が世界的な評価を得た。
![]() |
2年程度で短編を出す。それ自体をクリエイターのブランドにする
生高橋氏は,専門学校時代からゲームコンテストの傾向を分析していた。
日本ゲーム大賞アマチュア部門の受賞作品を調べ,多くがパズルアクションだったことから,そのジャンルのノウハウを蓄積していったという。
「ElecHead」の「頭を投げて電気を流す」というアイデアも,その原型は学生時代の課題作品にある。
当初考えていたのは,キャラクターの頭を吹き飛ばし,血が流れるゲームだった。しかしコンテストのレギュレーションに抵触すると指摘され,頭部を飛ばすロボットへ変更。血の代わりに電気を流す仕組みが生まれた。
制約によってやりたいことをそのまま実現できなかったからこそ,現在につながる独自のゲームデザインへたどり着いたわけだ。
![]() |
卒業制作として4人チームで作った対戦ゲーム「BATTLLOON ‐バトルーン」がパブリッシャーの目に留まり商業リリースに。しかしそれだけでは食べていけないので,母校で週3日ほど講師のアルバイトをしながらゲーム開発を継続する。
この講師時代に上司から受けた「授業では直接答えを教えず,生徒自身に気づかせるといい」というアドバイスが,のちの「ElecHead」「Öoo」のゲームデザインを生むものとなった。
![]() |
生高橋氏は,個人開発を続けていくため,作品の規模についても意識的に考えている。
1本へ4年,5年を費やし,その作品がヒットするかどうかにすべてを賭けるのはリスクが大きい。そこで,「2年ほどで短編作品を作り,短い時間で上質な体験を提供するクリエイターとして認識してもらう」という方向を選んだ。
作品そのものだけでなく,「この人のゲームなら,このくらいの時間で濃密に楽しめる」という期待もブランドにしていくわけだ。
また,「ElecHead」リリース時にもっぴん氏から受けた貴重なアドバイスについても話した。「ElecHead」は当初はスマホ向けの無料ゲームとしてリリースしようと考えていたが,氏から「安易に無料で出さないほうがいい」と助言があったという。
![]() |
あなた自身の物語を出してほしい。「ダレカレ」へつながった言葉
yona氏は,講談社ゲームクリエイターズラボの第1期募集では不採択だったが,企画を練り直して第2期で採択された。room6を退職する際は,同社代表の木村氏からは「ついにこの時が来たね」と温かく送り出されたそうだ。
しかし,最初にリリースした「In His Time」の販売は思うようには伸びなかった。そこで次は市場を意識し,流行の要素を取り入れた企画書を3本提出したという。
![]() |
![]() |
だが,担当編集者の片山裕貴氏から返ってきたのは,「そうじゃない。あなた自身の物語を出してほしい」という言葉だった。そこでyona氏は,ゲームシステムより先に,まず物語のプロットを提出する。それが後に「ダレカレ」として形になった。
吉田氏も,パブリッシャは常に「まだ世の中にないもの」を探していると話す。作家と担当者がキャッチボールをしながら,クリエイター自身の強みを引き出していく関係の重要性を指摘した。
![]() |
またここでは,最新作をラボメンバーとして制作している生高橋氏が講談社ゲームラボへの参加について話した。
コンシューマ移植や海外ローカライズ,アワード対応といった開発以外の業務負担が限界に達し,このままだとゲーム開発ができなくなると痛感したのがその理由とのこと。なお次作は肩の力を抜いた企画とのことだが,担当編集者は“めちゃくちゃ食いついてくれた”そうだ。
![]() |
弱い自分を認めることが,誰にも真似できない作家性になる
セッション終盤,吉田氏は2人に,これから独立を目指す学生や若いクリエイターへのアドバイスを求めた。
yona氏は「自分を含め,ゲームを世に出せると思うこと自体,ある意味で傲慢なのかもしれない」と切り出し,自分よりはるかに大人数で作られたゲームや,天才的なクリエイターの作品と,個人で競わなければならない現実を挙げる。
![]() |
そこで重要なのは,「自分がいかに小さい存在か」を一度認めることだという。
できることが限られているなら,その小さな枠のなかで何ができるのかを考える。その制限でもがいた結果が,他人には真似できない作家性になる。弱さを受け入れることで道が開ける可能性を語った。
生高橋氏は,最初は好きなクリエイターを真似してみてもいいと語った。
しかし,どれだけ真似しようとしても真似しきれない部分が出てくるし,同じものにはならない。そこで初めて自分の弱さや,逆に得意なことが浮き彫りとなり,自分には何ができず,何が得意なのかが見えてくる。
生高橋氏自身も,もっぴん氏と同じゲームは作れないと気づいたことが,現在の作風へつながったという。
![]() |
質疑応答からも,両氏の作品作りのアプローチの共通点や違いが浮き彫りとなった。
作品作りについて生高橋氏は,プレイ時間やUIなどの「確定できる部分」から外枠を埋めていく「ジグソーパズル型」の思考法を提示した。
ストーリー主導で「ダレカレ」を作ったyona氏も,表現の「枠」をいったん決めてみる重要性を語る。その枠の中であがくからこそ,飛び出すためのバネや,新しい面白さが生まれると語った。
プレイテストに対する考え方には,2人の違いが表れていた。
yona氏は,10分程度遊べるものができた段階から多くの人に触ってもらい,フィードバックを柔軟に取り入れながら徐々に作品の軸を固めていく。対して生高橋氏は,広くテストを行うのはリリースの1か月ほど前。それまでは身近な人を中心に確認する。また,プレイヤーが口にした感想より,実際に遊んでいる様子や表情を重視するという。
![]() |
ゲームクリエイターの道や制作するゲームは異なる2人だが,共通していたのは,自分にできないことや制約を避けるのではなく,そこから自分にしか作れないものを探してきたことだ。
若い世代のクリエイターが語ったその言葉は,これからゲームを作ろうとする人にとっても,大きなヒントになるだろう。
![]() |




















![画像ギャラリー No.002のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/002.jpg)
![画像ギャラリー No.018のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/018.jpg)
![画像ギャラリー No.017のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/017.jpg)
![画像ギャラリー No.008のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/008.jpg)
![画像ギャラリー No.005のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/005.jpg)
![画像ギャラリー No.012のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/012.jpg)
![画像ギャラリー No.013のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/013.jpg)
![画像ギャラリー No.006のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/006.jpg)
![画像ギャラリー No.014のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/014.jpg)
![画像ギャラリー No.015のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/015.jpg)
![画像ギャラリー No.004のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/004.jpg)
![画像ギャラリー No.009のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/009.jpg)
![画像ギャラリー No.010のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/010.jpg)
![画像ギャラリー No.007のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/007.jpg)
![画像ギャラリー No.011のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/011.jpg)
![画像ギャラリー No.003のサムネイル画像 / 「制約」と「自分の弱さ」から作家性は生まれる。「Öoo」の生高橋氏,「ダレカレ」のyona氏が語るインディーゲーム開発[The Tenth Mosaic]](/games/872/G087218/20261005015/TN/003.jpg)