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「ダンガンロンパ」の“サイコポップ”はこうして生まれた。小高和剛氏×高田雅史氏が語る,物語と音楽の16年[The Tenth Mosaic]
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印刷2026/10/08 10:00

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「ダンガンロンパ」の“サイコポップ”はこうして生まれた。小高和剛氏×高田雅史氏が語る,物語と音楽の16年[The Tenth Mosaic]

 2026年9月22日,23日に東京日仏学院で開催された,ゲームカルチャーの祭典「The Tenth Mosaic」。9月23日の最後を飾るトークセッションには,「ダンガンロンパ」シリーズや「HUNDRED LINE -最終防衛学園-」などを手がけてきた小高和剛氏と高田雅史氏が登壇した。

 現在はトゥーキョーゲームスで共にゲームを作る2人だが,その関係は「ダンガンロンパ」までさかのぼる。会場では実際に楽曲を流しながら,作品のアイデアと音楽がどのように影響し合い,ゲームの世界を形作ってきたのかが語られた。

Photo: Alexander Degiorgio
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「ダンガンロンパ」の音楽を任せたのは,知っている作曲家が2人しかいなかったから?


 高田氏は専門学校で音楽を学んだ後,ヒューマンへ入社。「御神楽少女探偵団」などを担当し,その後グラスホッパー・マニファクチュアで「killer7」「花と太陽と雨と」などの音楽を手がけた。
 小高氏が「killer7」を遊んだのは,ゲームショップでアルバイトをしていた20代の頃。当時の小高氏にとって,高田氏は「自分がユーザーとして遊んでいたゲームの音楽を作っていた人」だったという。

 そんな2人が初めて組んだのが「ダンガンロンパ」だ。
 小高氏によれば,当時名前を知っていたゲームサウンドクリエイターは,高田氏と目黒将司氏くらい。プロデューサーが高田氏と知り合いだったことから縁がつながったそうだ。

 高田氏が最初に作ったのは「議論 -MIX-」。「ノリノリの感じで」というオーダーから生まれた,Raveやプロレスの入場曲を思わせる勢いのある楽曲で,小高氏もすぐに気に入ったという。
 一方で,「ダンガンロンパ」には“お仕置き”のような残酷な場面を,ブラックジョークとして笑えるものにする独特の感覚も必要だった。まだ誰も“サイコポップ”の正体をつかめていなかった時期から,音楽も作品の空気を形作っていったわけだ。

Photo: Kristof Sagna
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モノクマは5分,テーマ曲は20分。一瞬のひらめきが作品を決める


Photo: Kristof Sagna
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 そもそも「ダンガンロンパ」の企画書に書かれていた“サイコポップ”という言葉自体,当初はスタッフにも明確な定義がなかったという。ジェノサイド翔が登場するシナリオなどが形になるにつれ,「これがサイコポップなのか」と徐々に共通認識が生まれていった。

 作品の象徴となったモノクマも,その過程で生まれた。
 小高氏が「白と黒」「半分は可愛く,半分は悪い顔」というイメージを伝えると,約5分後には現在につながるデザインが上がってきた。そこからほとんど修正されなかったという。

 テーマ曲「DANGANRONPA」が生まれた経緯も負けていない。
 締め切り当日になってもメロディができていなかった高田氏は,「無名のIPなのだから,まず名前を覚えてもらおう」と“ダンガンロンパ”という声を入れることを思いつく。そこをフックに,録音時には即興でメロディを加え,約20分で曲を完成させたそうだ。

 さらに企画自体も,小高氏が半年間考えていた別の案を捨て,喫煙所で浮かんだアイデアから始まったものだった。当時は大ヒットを狙うというより,「10年後も残るカルトゲーム」を作るつもりだったという。

 モノクマも,テーマ曲も,ゲームの企画そのものも,始まりは一瞬の発想だった。それを考えすぎて丸めるのではなく,面白さがあるうちに作品へ定着させる感覚が,2人の仕事には共通しているようだ。

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「レインコード」で初めて作った,ひとつの架空世界


 「ダンガンロンパ」はその後,シリーズ作品や外伝,アニメ,舞台へと広がり,海外にも長く支持されるタイトルとなった。小高氏は30代の多くを同シリーズに費やし,その後,高田氏らとトゥーキョーゲームスを立ち上げる。

 そこで生まれた「超探偵事件簿 レインコード」では,「ダンガンロンパ」とは違うものを作ろうとした。

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 閉ざされた場所を舞台にした「ダンガンロンパ」に対し,今度は街そのものを作る。
 「雨が降り続ける街」というビジュアルから,そこで暮らす人々はそもそも太陽を求めるのか,どんな価値観や趣味嗜好を持つのかまで考え,架空の文化を組み立てていったという。

 高田氏も,単に場面に合ったBGMを付けるのではなく,その街で音楽がどう聞こえるかを考えた。キャラクターが歩く速度にテンポを合わせ,絶えず聞こえる雨音とぶつからないよう周波数帯も調整している。
 物語,ビジュアル,音楽を個別に作るのではなく,すべてを使ってひとつの架空世界を成立させる。「レインコード」では,2人の共同制作もそこまで広がっていった。

Photo: Kristof Sagna
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100種類のエンディングを持つ「HUNDRED LINE」を支えた400曲


 トゥーキョーゲームスは,シナリオやグラフィックス,音楽といった作品の核を作り,開発を外部スタジオと進めることで複数のタイトルを並行している。
 そのなかでも,会社として大きな勝負になったのが「HUNDRED LINE -最終防衛学園-」だ。

 初めて自社でIPを所有するタイトルとして,当初は約5億円の予算で始まったが,規模は膨らみ,最終的にはその倍ほどになったという。
 そこまで投資しながら,「300本ぐらいしか売れなかったらどうしよう」という不安もあった。それでもIPがあふれる時代に埋もれないため,小高氏らは「自分たちの一番の武器で勝負する」と決め,100種類のエンディングを実装した。

 そして,その膨大な物語を音楽でも支えた。
 作られた楽曲は約400曲。メインで使用されるものだけでも約100曲に及ぶという。

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 音楽の方向性も,作品に合わせて大きく振られている。
 戦争に巻き込まれる若者たちを描く日常曲には,切なさや影を持たせ,小高氏のイメージには白虎隊もあったという。
 対して戦闘曲では,初期のThe Chemical Brothersをイメージしたデジタルロックをオーダー。シミュレーションRPGらしい曲ではなく,アクションゲームのような勢いを求めたそうだ。

 さらに本作では,シナリオを書いたライター自身がスクリプトを組んでいるため,「この場面にこういう曲がほしい」という発注が直接高田氏へ届く。夜に頼まれた曲を朝までに完成させることもあったという。
 かなり慌ただしい作り方だが,高田氏はそうしたライブ感も嫌いではないと笑った。

 自身が最もワーカーホリックだという小高氏は,属人性が強い作品制作はアウトプットがすべてになるため,勤務時間という概念が薄れがちだという。
 そうした働き方がほかの社員へのプレッシャーにならないよう気を配っているが,その一方で,社員も「何かを残したい」「いずれ自分も代表作を作りたい」という強い意欲をもって自発的に制作に打ち込んでいる。そうした姿を見て,オリジナルIPはやはり情熱によって支えられているのだとあらためて感じるようだ。

Photo: Kristof Sagna
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「ゲームじゃないと絶対できない」ものを求めて


 セッションでは「終天教団」についても紹介された。
 小高氏は本作について,「ダンガンロンパ」以来となる,“ゲームじゃないと絶対できないトリック”を入れられた作品だと話した。もともとはインディーゲームとして出すことも考えていたが,企画を見たDMM GAMESから発売することになったという。

 5種類の異なるアドベンチャーゲームを内包する作品だけに,音楽もそれぞれのジャンルに合わせて作られている。テーマ曲には,高田氏としては珍しい“昭和の推理モノ”を思わせる雰囲気を取り入れた。ゲームスタート画面の楽曲では,物語の根底にある「宗教」を感じさせながら,既存のどの宗教にも寄らない音を目指して制作された。

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 「ダンガンロンパ」から十数年。5分で生まれたキャラクターもあれば,20分で形になったテーマ曲もあり,400曲もの音楽を必要とするゲームも作ってきた。
 規模も制作環境も大きく変わったが,2人が大切にしてきたのは,そのときに浮かんだ「面白い」を逃さず,ゲームだからこそできる形まで持っていくことなのだろう。

 音楽とともに作品を振り返った今回のセッションからは,小高氏と高田氏が長年一緒にゲームを作ってきた理由も,少し見えたように感じられた。

Photo: Kristof Sagna
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対談終了後に行われたサイン会の様子(Photo: Alexander Degiorgio)
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    スーパーダンガンロンパ2×2

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