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しかしそれは,対応するPCやゲーム機があり,ゲームそのものも問題なく起動できる環境があっての話。ハードウェアやOSの進化によって古いゲームが動作しなくなったり,権利関係などの問題から販売が終了したりすることもある。過去のゲームを,いつでも遊べる状態で残し続けるというのは,実は簡単なことではない。
そんな問題に長年取り組んできたのが,ポーランドのワルシャワを拠点とするゲーム配信プラットフォーム「GOG.com」(以下,GOG)だ。
2026年10月,4Gamerは日本と韓国のゲーム業界関係者を対象としたポーランドのゲーム産業視察プログラムに参加し,ワルシャワにあるGOGのオフィスを訪れた。
本稿では,現地で行われたプレゼンテーションをもとに,同社の歩みと,クラシックゲームの保存や復活に向けたさまざまな取り組みを紹介しよう。
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「Good Old Games」から始まった,ゲームを残すためのプラットフォーム
GOGが掲げる使命は「Fight To Make Games Live Forever」。ゲームを永遠に生き続けさせるために戦う,というものだ。
古いゲームを再び販売するだけでなく,権利関係や技術的な問題に向き合い,現代の環境でも遊べる状態を維持していく。さまざまな困難を乗り越えながら,ゲームを次の世代へと残していこうという強い意思が,この言葉には込められている。
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そもそもGOGはどのように始まったのか。その歴史は2008年にさかのぼる。ポーランドのゲーム企業CD PROJEKTの共同創業者であるMichał Kiciński氏とMarcin Iwiński氏が構想したサービスで,当初は「Good Old Games」という名称だった。
その名前が示すように,事業の出発点は,過去に発売された優れたゲームを再び購入できるようにすることだった。
当時のCD PROJEKT REDは「ウィッチャー」の開発を進めており,まだ現在のような世界的な大手スタジオではなかった。その後,「ウィッチャー3 ワイルドハント」などの成功とともにCD PROJEKTグループが成長し,GOGも事業を拡大していった。
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現在のGOGは,クラシックゲームだけでなく,AAAタイトルからインディーゲームまで幅広く取り扱うPCゲーム配信プラットフォームとなっている。
2025年12月31日にはKiciński氏がGOGの全株式を取得し,同グループから独立した。独立後もCD PROJEKTとの協力関係は続いており,ゲームを長く遊べるようにするという基本理念も引き継がれている。
そんなGOGの特徴のひとつが,DRMフリーという販売方針だ。
DRMとは,デジタルコンテンツの利用を管理・制限するための技術を指す。GOGではDRMを必要としない形でゲームを販売しており,購入した作品のインストーラを手元に保存できる。専用クライアントである「GOG GALAXY」も用意されているが,その使用は必須ではない。
購入したゲームを自分の環境に保管し,プラットフォームへの常時接続などに縛られずに楽しめる。これはGOGが大切にしてきた考え方だ。
ただし,DRMがないだけでゲームを未来永劫遊べるわけではない。PCの環境が変われば,古いプログラムが正常に動作しなくなることは十分に考えられる。
そこでGOGが力を入れているのが,ゲームの動作環境そのものを維持する取り組みである。
Steamと比較すれば,GOGのプラットフォームとしての規模は小さい。現地の説明でもその点に率直に触れていたが,一方で,クラシックゲームにこれほど力を注いでいるプラットフォームはほかにないという自負も語られた。
数多くの新作が日々発売されるなか,過去の作品を探しにきたプレイヤーに対して,きちんと遊べるものを届ける。それがGOGの強みとなっている。
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国産とは一味も二味も違う,いい意味で「過酷」なシングルRPG「The Witcher 日本語マニュアル付英語版」のレビュー
4月11日にイーフロンティアから発売された「The Witcher 日本語マニュアル付英語版」のレビュー記事を掲載した。本作は虐殺あり,女性との情事も多数ありという,ただの勧善懲悪に留まらないダークでアダルトな世界と物語が楽しめるシングルRPG。細部のディテールも作りこまれた,まさに玄人好みの一本だ。
古いゲームを現代のPCで遊べるようにする「GOG Preservation Program」
GOGの保存活動の中心となるのが,2024年11月にスタートした「GOG Preservation Program」だ。
これは,昔のゲームを現代のPC環境でも快適に楽しめるように整備し,今後も継続的にサポートしていくためのプログラムである。
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過去のPCゲームには,最新のWindowsでは正常に動作しないものや,現在のディスプレイ環境に対応していないものも少なくない。また,ゲームパッドへの対応や,長年残されてきた不具合の修正が必要になる場合もある。GOGでは,こうした技術的な課題を自社で解決しているという。
具体的には,解像度や表示機能の改善,ゲームパッドへの対応,不具合の修正などを行う。ゲーム本来の内容をできるだけ損なわず,現在のPCでも遊びやすい形へと調整していくのだ。
もっとも,単純に動くようにすればよいという話ではない。何十年も前のゲームを修正するには,当時の技術やプログラムの仕組みを理解する必要があり,作業が複雑になることもある。
プレゼンテーションでは,そうした難しい部分をGOG自身が引き受けることに,このプログラムの意義があると説明された。
そして重要なのは,一度修正して終わりではないことだ。
プログラムの対象作品には専用のバッジが付けられ,GOGが存続するかぎり,今後も継続してサポートする方針が示されている。OSやPC環境の変化によって問題が発生した場合も,対応を続けていくという。
なお2026年10月の取材時点で,対象作品は300タイトル以上に達していた。
昔のゲームをきちんと整備して販売することは,プレイヤーが安心して購入できる環境づくりにもつながる。メーカーにとっても,過去の作品を再び市場に送り出す機会になるわけだ。
クラシックゲームの保存活動を,継続可能な事業として成り立たせようとしている点も,GOGの特徴といえるだろう。
Another series of classics from Square Enix has arrived on GOG ? DRM-free!
— GOG.COM (@GOGcom) April 23, 2026
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もう買えないゲームを取り戻す。ファンの声を集める「GOG Dreamlist」
とはいえ,ゲームを現代の環境で動くようにするだけでは,保存活動は成立しない。
そもそも販売できなくなってしまったゲームを,再び市場に戻すための働きかけも必要になる。
その取り組みのひとつが「GOG Dreamlist」だ。
これは,プレイヤーがGOGで販売してほしい作品に投票できる仕組みで,すでに販売が終了しているクラシックゲームから比較的新しい作品まで,さまざまなタイトルが対象となっている。
GOGがとくに重視しているのは,現在では正規の手段で購入することが難しくなったゲームだ。
プレゼンテーションでは,Lionhead Studiosの「Black & White」が例として挙げられた。同作のように,多くのファンから復活を望まれているものの,権利関係が複雑で,販売の実現には難しい課題がある作品も存在する。
Dreamlistは,単なる人気投票ではない。どれだけの人がそのゲームを求めているのかを可視化し,権利者やパブリッシャに対して,復活させる価値があることを伝える役割を持っている。
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その成果は,日本のゲームでも表れている。
2025年4月には,カプコンのRPG「ブレス オブ ファイアIV」のPC版がGOGで発売された。GOGの発表によれば,この復活はDreamlistで投票した約2万2000人のファンの声が後押しとなったという。
同作は現代のPC環境向けに調整され,Windows 10や11への対応,表示機能の改善などが施されている。
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カプコンとの協業では,「バイオハザード」「バイオハザード2」「バイオハザード3 LAST ESCAPE」のオリジナルPC版や,「ディノクライシス」シリーズなどの復活も実現してきた。
人気シリーズの過去作を遊び直したいプレイヤーはもちろん,オリジナル版がどのようなゲームだったのかを知りたい新しい世代のプレイヤーにとっても,こうした取り組みは大きな意味を持つ。
現地での説明からも,日本のゲームメーカーとの関係を大切にしていることがうかがえた。カプコンとの協業で数々の作品が復活してきたように,今後も日本のクラシックゲームがGOGを通じて再び遊べるようになることが期待できそうだ。
メーカーだけでなく,ファンの声をきっかけにゲームが復活する。GOGは,その橋渡し役も担っているのである。
「ディノクライシス」「ディノクライシス2」のPC版が配信開始。日本語を含むローカライズに対応しているほか,さまざまな最適化を実施
CD Projektのデジタル配信サービス「GOG.com」にて,カプコンのサバイバルホラーゲーム「ディノクライシス」と「ディノクライシス2」が,本日(2025年1月29日)リリースされた。日本語と英語のローカライズに対応しているほか,さまざまな最適化が行われているという。
ゲームを残すのは企業だけではない。MODやコミュニティの力
GOGは,ゲームの保存においてコミュニティが果たす役割にも注目している。
たとえば,2025年にスタートした「GOG One-click Mods」は,ユーザーが制作したMODを手軽に導入できるようにする仕組みだ。
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MODは,ゲームに新しい要素を追加したり,グラフィックスや操作性を改善したりするもので,PCゲーム文化を支える重要な存在である。しかし,導入には複雑な作業が必要になる場合もある。ファイルの配置やバージョンの調整など,初心者には難しい部分も多い。
そこでGOGはMOD制作者と協力し,選定したMODを簡単に導入できる形で提供している。MODの権利関係や導入環境の整備についても,GOG側が対応するという。
代表的な例が「Fallout 4」の大型MOD「Fallout: London」だ。
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同作は,ロンドンを舞台にした新たな物語やゲーム体験を楽しめる大規模なMODとして,2024年に公開された。GOGはその配信に協力し,2025年にはワンクリックで導入できる仕組みも提供した。
プレゼンテーションでは,「Fallout: London」の提供によって,元となる「Fallout 4」の売り上げが大きく伸びたことも紹介された。
すでに発売されたゲームであっても,ファンの活動によって新しい楽しみ方が生まれ,その作品に再び注目が集まる。MODを支援することもゲームが長く遊ばれる存在であり続けるための取り組みなのだ。
さらにGOGでは,保存活動を直接支援する「GOG Patrons」というサービスも展開している。
これは任意で参加できる月額5ドルの支援プログラムで,集まった資金はクラシックゲームの修復や維持管理などに活用される。ゲームの遊び放題サービスではなく,保存活動そのものを支えるための仕組みだ。
支援者は,保存する作品の優先順位を決める投票にも参加できる。
実際に2026年7月には,支援者による投票で選ばれた「Thief: Gold」がPreservation Programに加わった。同作には現代のPC向けの互換性改善が施され,コミュニティで制作されたゲームパッド対応MODも取り入れられている。
企業だけでなく,プレイヤーやMOD制作者もゲームの保存に関わる。GOGはその活動を支える場を作ろうとしている。
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保存したゲームが,ほかの場所で遊べるようになっても構わない
今回のプレゼンテーションで,とくに興味深かったのが,GOGのゲーム復活に対する考え方だ。
GOGが保存や復活に協力した作品について,その後,ほかのプラットフォームで販売されることも歓迎しているという。
ゲーム配信プラットフォームにとって,独占タイトルはユーザーを集めるための強みになり得る。しかしGOGは,自社だけでゲームを販売することよりも,その作品が再び多くのプレイヤーに届くことを大切にしているようだ。
その具体例が,先ほど紹介したカプコンの「バイオハザード」シリーズである。
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GOGは2024年,カプコンと協力してオリジナル版「バイオハザード」3作品のPC版を復活させた。現代のPC環境への対応やゲームパッドのサポートなど,さまざまな改善を施している。
その後,2026年4月には,これらの作品がSteamでも発売された。「ブレス オブ ファイアIV」も同様にSteamで販売されており,GOGが共同開発したバージョンが,ほかのプラットフォームにも届けられている。
もちろん,GOGにとっても,ゲームの販売は事業を続けるうえで欠かせないものだ。それでも,自社が手をかけたゲームを独占することにこだわらず,より多くの場所で遊べるようになることを肯定的に捉えている。
こうした姿勢からは,ゲームの保存を自社だけの利益にとどまらない活動として考えていることがうかがえる。
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ゲームを「遊べるもの」として未来へ残す
GOGの取り組みは,ゲームのプログラムを修復するだけにとどまらない。
2026年9月には,一部のクラシックゲームを対象に,当時のパッケージを3Dスキャンして再現する取り組みも発表された。ゲームそのものに加え,箱のデザインなどもデジタルで残そうというものだ。
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こうした活動は,ゲーム業界の外からも注目されている。
2026年10月15日にワルシャワで開催された「Digital Preservation Awards 2026」では,GOG Preservation Programが,デジタル情報の長期保存に関する取り組みとして受賞した。
ゲームを文化的な資産として捉え,それを長期にわたって利用できる状態に保つ活動が,デジタル保存という分野でも評価されたわけだ。
ゲームの保存について考えるとき,過去の作品を資料として保管することと,実際に遊べる状態で残すことには違いがある。
ゲームの映像や音楽,設定資料などを記録しておくことももちろん重要だ。しかし,ゲームというメディアの特徴を考えれば,プレイヤーが自ら操作し,試行錯誤しながら体験できることにも大きな価値がある。
当時のゲームデザインがどのような工夫によって成り立っていたのか。後の作品にどんな影響を与えたのか。それを知るためには,実際に遊んでみることが何よりの近道になる。
GOGが行っているのは,そうした体験そのものを未来に残していくための活動なのだろう。
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ゲームが次々と生まれ,最新の作品へと話題が移り変わっていく一方で,かつての作品をこれからも遊べるようにしておくことにも大きな意味がある。2008年に「Good Old Games」として始まったGOGは,18年を経た現在もその理念を大切にしているということだ。
ゲームを過去のものとして閉じ込めるのではなく,これからも遊ばれ続ける作品として残していく――ワルシャワで聞いたGOGの話からは,そんなゲーム文化の未来を支える仕事の重要性が伝わってきた。
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