サービス開始から半年以上が経過した現在は,ボス討伐型チームバトルというゲームシステムはもとより,体験を彩る“マッシュアップBGM”にもプレイヤーたちからの熱狂的な支持が集まっている。
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ゲーム音楽というのは単なるBGMを超えて,我々を作中世界に没入させるガイド役でもある。何時間にも及ぶプレイを通じ,画面越しのキャラクターたちと一体化できたとき,深い感情的共鳴が生まれる。
DDFFの楽曲もまた,崎元 仁氏の重厚なオーケストラ曲にHipHopのリズムを融合させたバルフレアの楽曲や,切ない名曲同士をハイスピードなロックへと昇華させたティーダの楽曲などが,激しいバトルの記憶と分かちがたく結びつき,ファンの心を焦がしている。
そんな珠玉の楽曲群を収めた,待望のオリジナル・サウンドトラック第2弾が,本日(2026年10月30日)リリースを迎えた。
今回はサントラ第2弾を記念し,DDFFの音楽を支える水野雄貴氏,今村貴文氏,廣瀬裕貴氏への超ロングインタビューを実施した。
名曲マッシュアップの誕生秘話から,開発陣がプレッシャーで頭を抱えたという難産エピソード,さらに今後のサウンド展開まで,彼らの飽くなきこだわりを余すところなくお伝えしよう。
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マッシュアップの大反響
4Gamer:
本日は長時間に及ぶかと思いますが,よろしくお願いします。
まずはお初の4Gamer読者に向けて,自己紹介をお願いできますか。
水野雄貴氏(以下,水野氏):
プランナーの水野と申します。
DDFFではキャラクターやシナリオカットシーンの案出しなど,制作全般に携わっています。具体的にはキャラクターのアクションやアビリティ選び,モーション,演出,ボイス,アビリティのイラストやテーマBGMなど,取りまとめて進行する役割です。
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今村貴文氏(以下,今村氏):
コンポーザーの今村です。
DDFFではメインコンポーザーとして楽曲制作を担当しています。
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廣瀬裕貴氏(以下,廣瀬氏):
サウンドディレクターの廣瀬です。
今作ではディレクションよりもプロデューサー的な立ち位置で,アレンジャーさんの選定や予算の管理をしつつ,合間に効果音を作ったりもしています。楽曲のディレクションは現状,今村にほぼ任せていますが,楽曲制作に関わることは2人で相談しながら進めています。
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4Gamer:
あらためて,DDFFのゲーム内容を紹介してもらえますか。
水野氏:
今日はプロデューサーの松本(松本直也氏)がいないので,私からご紹介させていただきますね。
DDFFは,精神的前作といえる「ディシディア ファイナルファンタジー オペラオムニア」から時を経て,今年3月に配信となりました。
ゲーム性はとにかくカジュアルさを意識して,味方チーム3人とライバルチーム3人で,東京に現れたボスの討伐を競い合う,誰でも簡単に遊べる対戦ゲームになっています。
最大の特徴は,歴代FFシリーズのなかでも異色の世界観で,現代の東京を舞台に,おなじみのFFキャラクターたちが現代風の衣服を着て登場することです(※オリジナル版の衣装もあり)。
これまでのFFファンはもちろんですが,この作品からFFを知ってくださる方々に,FFキャラクターをより身近な存在として受け取ってもらえるきっかけとなればと思い,制作してきたタイトルです。
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4Gamer:
それではさっそく本題に入りますね。
DDFFはリリースから半年以上が経過しまして,ファンのあいだでは“マッシュアップBGM”が非常に高く評価されています。開発チームとしてはこの反響,どのように受け止めていますか?
水野氏:
私はもともとFFファンですが,今村さんの楽曲のクオリティには配信前から「ファンなら絶対うれしいに違いない!」という確信がありました。身内が言うとイヤらしい感じがするかもですが,開発中のころからずっと「これものすごくステキな楽曲だ!」と思っていたので。
開発の立場からは「皆さんに喜んでいただけてよかったです」とお答えしますが,1人のFFファンとしては「だよね? みんなもそうだよね? やっぱ好きだよね?」なんて,FFファンの仲間たちにも聞いてもらいたいみたいな。そういう感情でいますね(笑)。
4Gamer:
(笑)。実際に作られた今村さんはいかがでしょう。
今村氏:
本当にありがたい話ですが,なにより“FFシリーズの名曲たちをマッシュアップさせる”という,そもそものコンセプトが斬新でしたので,僕自身も作っていて新鮮な面白みを感じられています。おかげで日々の楽曲制作も,モチベーションがかなり高いです。
廣瀬氏:
もちろん難しさはあるんですけどね。僕らも楽しみながらアレンジできているから,DDFFならではの表現ができた気はしますよね。
4Gamer:
楽曲制作というのは,どこからスタートするのでしょう。
水野氏:
最初は私の提案からですね。
実装するプレイアブルキャラクターと原作のBGMを確認し,「そのキャラを好きな人たちに喜ばれる選曲」を考えていきます。
たとえば,直近ではバッツやクジャが新キャラクターとして追加されました(※インタビュー収録日は10月13日のため,ヤ・シュトラ未登場)。皆さんも実装前は,「バッツならきっとあの曲だろうな」などと予想していらっしゃったかと思います。
そうした期待にバッチリはまった選曲ができると,「そのキャラを愛してくださってる人と同じ目線で選べた!」と思えてうれしいです。
逆に言うと,「ここでそうきたか!」という意外性を出すことは,あまり意識していません。そこはもう,アレンジ曲そのもので皆さんの期待を上回るつもりです。
ある意味,選曲は皆さんに喜ばれるものを,アレンジは皆さんの想像を超えていく奇想天外さ,といった役割分担ですね。
4Gamer:
なるほど。それではここから一部キャラクターの楽曲について,選曲とアレンジの面から聞いていければと思います。
フリオニール:コアすぎないメジャー感を目指した
「反乱軍のテーマ」×「メインテーマ」
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4Gamer:
「ファイナルファンタジーII」のフリオニールは,「反乱軍のテーマ」と「メインテーマ」という,王道の2曲が選曲されていますよね。
水野氏:
フリオニールの選曲は,実は廣瀬さんと話して変えたんです。この日のために,廣瀬さんとのやり取りの社内ログまで探してきました(笑)。
フリオニールは当初,「反乱軍のテーマ」と,ワンダースワン版FF2から使われてきた「戦闘シーンA」の2曲で提案しました。
ですが,廣瀬さんと意見を交わしたとき,「確かに戦闘シーンAは名曲だけど,知る人ぞ知るコア寄りな選曲じゃない?」と言われたことで,もうちょっと広い層に伝えるべきかもと考え直しまして。
その結果,FF2を象徴する「メインテーマ」で再提案して,「それなら間違いないよね」と言ってもらえて,無事に制作に進めました。
これぞまさに,いい曲かどうかとは別軸にある,「より多くの人に伝えるための選曲も大事なのかも」と思えたエピソードです。
4Gamer:
必ずしも「かっこいい曲だからコレにしよう」ではないんですね。
水野氏:
そうですね。多くの方々になじみがある,というのも同じくらい重要だなと今は思っています。
廣瀬氏:
フリオニールのときは実際,アレンジャーの中村佳紀さん(「ファイナルファンタジーVII リメイク」「ファイナルファンタジーVII リバース」などの楽曲制作担当)に,「2曲を1つにまとめるマッシュアップとして,より親和性の高い組み合わせを探りたい」と前向きな相談をいただいたんですよね。
僕自身も「確かに」と思うところがあったので,別候補をいくつか提示して,そのなかから先方に決めていただきました。
水野氏:
その流れのあとで完成品を聴いたとき,私も「あー,メインテーマにしてよかったなあ〜」とまで思えましたしね。
私がFFファンなりの視点で選曲しつつも,それに対して忌憚のない意見をもらえるから,結果としてより良いものを出せる。そういう風通しの良いコミュニケーションができる開発環境でもあります。
4Gamer:
ファミコン世代の楽曲は,シンプルで力強いメロディが特徴ですが,両テーマを現代風にアレンジするにあたり,原曲の持つ泥臭いかっこよさを壊さないようにするなどの工夫はされましたか。
今村氏:
そこは「この曲を現代風にしてほしい」という難題を,アレンジャーの中村さんが巧みにくみ取ってくれました。
その時点で制作済みだった,いくつかのDDFF楽曲を聴いてもらったところ,本作特有の空気感をすぐに理解してくださいまして。
音源の最終的な微調整は僕の担当ですが,この曲に関しては根本的に修正してほしいと思った部分もなかったです。
廣瀬氏:
バトル要素をもっと強くするために,ギターの音色を追加してもらったくらいだったよね。
今村氏:
ですね。というのもこの曲に関しては,DDFFならではのバトル表現に寄せることをメインとしていましたので。
水野氏:
「反乱軍のテーマ」は,アーケード版「ディシディア ファイナルファンタジー」でもアレンジされていた曲ですが,当時は激しいロックの曲調にしたものが非常に好評でした。
対して今回は,同じモチーフだけど違う方向性にできないかと相談したところ,それを見事に形にしていただけてありがたかったです。
ジタン:明るさと葛藤を表現する対極のサウンド
「Melodies of Life」×「独りじゃない」
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4Gamer:
ジタンは,「Melodies of Life」と「独りじゃない」という,物語の根幹に関わるエモーショナルな2曲が選ばれています。これらをバトルのテンポに落とし込もうと考えるのは,なかなか挑戦的だなと。
今村氏:
ジタンの曲はTomoLowさん(「ファイナルファンタジーXIV」「ファイナルファンタジーXVI」の楽曲アレンジを担当)に頼みましたが,こちらは開発初期の楽曲制作だったのもあり,ほかのキャラクターとのバランス感も含めて,アレンジの方向性を決めていきました。
まず,ジタンはパッと見からして明るいキャラクターですから,当初はアガる感じのダンストラックで考えていました。ただ,彼はFF9のストーリー上,単に明るい人物ではないという点と,同時にプロンプトもダンサブルな方向性で固めていたため,そことの差別化をしなければとなりまして。結果,上物はオーケストラをメインで構成しようとTomoLowさんに相談し,今の形に仕上げています。
4Gamer:
ジタンの曲は,前半に歪(ひず)みのような音が入っていて,それでいて後半は柔らかな旋律に移っていきますよね?
このディストーションと優しいメロディの組み合わせは,ジタンが持つ葛藤をイメージされたんでしょうか。
今村氏:
そうですね。これはウォーリア オブ ライトの曲と近い構成ですが,最初に戦闘感を押し出して,そこからパッと別路線に切り替えていく。そうした音のハマりを狙った作りになります。
前半は歪みというか,シンセサイザーなどをメインの楽器とし,後半は優しい感じに持っていく。この作りはDDFFの一つの定型ですね。
4Gamer:
ジタンについては,あえてバトル曲を外して,リノアのように「主題歌を鳴らして戦わせたい」といった狙いがあったんでしょうか?
水野氏:
ご推察のとおりです。
過去のディシディア作品でもそうでしたが,歌ものを流すにしても,メロディだけ使うにしても,通常の曲と比較すると,いろいろな確認やハードルがあります。リノアで採用した「Eyes On Me」もそう。ジタンの「Melodies of Life」もそう。これらは各所の権利が伴う曲ですので。
しかし,今回のDDFFでそこをなんとか叶えられるなら,また違った楽しみ方を表現できるんじゃないかと思い,採用しました。
もう片方の「独りじゃない」は,こちらも原作の印象的な場面で流れる名曲ですから,ほぼ迷わずに決められた1曲です。
それにFF9の「バトル2」は,のちのクジャで使用しています。こうした同タイトルからの実装キャラクター2巡目も意識して,バランスよく割り振っていこうと考えてきた背景もあるわけですね。
バルフレア:開発陣も度肝を抜かれたHipHopアレンジ
「宿命」×「死闘」
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4Gamer:
バルフレアは「宿命」と「死闘」の組み合わせですけれども,前者はファンにも比較的分かりやすい一方,ボス曲の一つである「死闘」は,なぜバルフレアに組み込もうと思ったんでしょう。
水野氏:
バルフレアは当初,「ボス戦」が候補でした。同曲はバルフレアにとって因縁深い,ドクター・シド戦(リドルアナ大灯台)で流れる曲だからですね。バトル前のイベントも含め,バルフレアにとって重要なポイントであると考え,迷わず「ボス戦」を選び,「宿命」とかけ合わせようと「ファイナルファンタジーXII」チームに確認したんですよ。
そしたら「ドクター・シド戦をフィーチャーするんなら,一戦目で流れる『死闘』でもいいのでは?」とアドバイスをいただきまして。
最終的な判断は委ねられましたが,確かにそのとおりだと大いに納得したので,FF12チームの意見を採用させてもらいました。それに「ボス戦」は残しておいても,ほかのFF12キャラクターで使いやすいですしね。さまざまな観点から「死闘」を選んだというのが理由の一つです。
一方で「宿命」は,いろいろと調べながら選曲しているなかで,FF12の派生作品「ファイナルファンタジーXII レヴァナント・ウイング」で「バルフレアのテーマ」的に扱われていると知りまして。
4Gamer:
そうなんですよね。「宿命」はFF12RWにおいて,明確に「バルフレアのテーマ」と位置づけられているんですよね。
水野氏:
ですので,これまたFF12チームに相談したところ,「FF12ではさまざまな意図から曲名を宿命にしたけど,実際あの曲はバルフレアのテーマだからいいと思う」と言っていただけまして。これならバルフレアに寄り添った2曲になるなと思い,本決まりとなったわけです。
こうした選曲の相談は,DDFFのサウンド陣ともしますが,原作を作ってきた方々にもさせていただいています。
そこでリスペクトを持って提案することで,より原作に踏み込んだお返事を聞かせていただけることも多いです。
4Gamer:
しかし,崎元さん特有の重厚なオーケストラサウンドと,現代的なマッシュアップって,組み合わせるのがすごく難しいように思うのですが。制作現場ではどのように融合させているのでしょう。
廣瀬氏:
そこはもう当初,僕から今村に「崎元さんの曲はめちゃめちゃ難しいから,やめとけ」って言ってたんですけどね。
無事にやり遂げてくれましたよね。
今村氏:
いやいや,崎元さんの曲はほんと難しかったですよ!
ハーモニーをいじると,もはや崎元さんの曲じゃなくなる。それはもうFFファンにも喜ばれない曲になりかねないですからね。
それでも,DDFFのゲーム性に合わせるためには,これまでやられてこなかった現代っぽい音楽ジャンルでアレンジしたいという思いは強かったので。バルフレアについてはHipHopのリズムを用いました。
オケのハーモニーはなるべく崩さず,HipHopのリズムの上にストリングスを乗せたり,シンセの音をはさんだりと試行錯誤しました。ある程度の形が見えてくるまで,かなりの時間を費やした記憶があります。
4Gamer:
「崎元さんの曲はアレンジが難しい」とよく耳にするのですが,今村さんでもやはり難しかったのですね……!
今村氏:
しかも,曲前半の「死闘」から曲後半の「宿命」にそのまま移しても,テンポが合わないんです。ですから,最終的には恐れ多くも大胆にアレンジさせていただいてしまって。
水野氏:
私はバルフレアの曲で度肝を抜かれましたよ。
今村さんが手がける曲は毎回,「うわっ! この曲すげえ!」みたいな驚きがあるんですが,このころはもう10キャラクター以上の曲が完成していて,驚きつつも多少は慣れていたんです。
なのに,バルフレアはそれをグッと上回りまして。10回くらい連続で聴いて,とくに「宿命」パートのときは思わず「うわ,マジで」と口からこぼれました。やっぱ今村さんすげえな! って(笑)。
廣瀬氏:
FF12チームからも好評だったよね。「この曲のアレンジャー,誰?」って聞かれるくらいだったし。ほんとありがたいですよね。
4Gamer:
イヴァリースらしい空気感なのに,現代東京に合ってますよね。
今村氏:
結局,重厚なオーケストラサウンドを守っても,現代東京が舞台のDDFFとは空気感が合いづらいんですよね。
なので,そこを削りに削ったぶんだけ現代音楽の要素を入れていく,みたいな作り方を心がけてきました。
プロンプト:軽快なピアノハウスで彩る
「Stand Your Ground」×「Veiled in Black」
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4Gamer:
プロンプトは,リード地方の通常戦闘曲「Stand Your Ground」と,帝国軍との戦いで流れる「Veiled in Black」という,2つの戦闘曲が選ばれています。DDFFの傾向ではわりと珍しい選曲ですよね?
水野氏:
そうかもしれません。
ただ,「Stand Your Ground」は,スーパーファミコン時代のFF作品で言うところの「バトル1」的なおなじみ感があり,「ファイナルファンタジーXV」でも序盤のバトルから聴けるので,そこを狙いました。
クルルで「バトル1」を,リュックで「ノーマルバトル」を選んだのと同じく,みんなが知ってるFF15曲にしよう,という発想です。
4Gamer:
ただ,「Veiled in Black」のほうは,アーケード版でノクトと共に実装された印象も強いので,余計に驚きました。
水野氏:
「Veiled in Black」は,裏テーマといいますか。
ここでは明言しませんが,帝国との戦いで,プロンプトが背負っていたものとか,彼がどんな運命に立ち向かっていったのかとか。そういう深いパーソナル面まで考えて,選んだ曲ではあります。
裏話としては当初,FF15のDLC「エピソード プロンプト」から曲を持ってくる考えがありました。これならプロンプトに寄り添えるし,彼でしか鳴らせない音があるだろうと思ってのことです。けれど,FF15をすべてプレイし直したところ,「FF15ファンだろうと,DLCのサウンドは必ずしも全員が聴いているわけじゃないな」と思い至りまして。
これもまた「名曲だけどコア寄りすぎるかも」の法則にのっとり,プロンプトはFF15本編から2曲を選ぼうと決めたんです。
4Gamer:
下村陽子さんによる激しめのバトル曲同士の融合では,プロンプトの軽快なアクションと重厚さのバランスはどう取ったのでしょう。
今村氏:
プロンプトは開発初期の3〜4曲目に制作していたこともあり,DDFFで意識付けたかった“現代風サウンド”を色濃くすべく,原曲からガラッと変えた1曲ではあります。
彼の人物像を考慮すると,やはりダンストラックなんですよ。おそらく一番分かりやすいダンストラックかもしれないです。
ジャンル的にはハウスですが,ハウスはピアノをメインで鳴らしたりするので,そことの親和性が高い選曲というのも一因でした。
4Gamer:
原曲もそうですが,やはりピアノの音を一番意識したんですね。
今村氏:
しました。一番です。
廣瀬氏:
けっこうスラッと完成したよね。
今村氏:
でしたね。最初からコンセプトが自分のなかで固まっていたので。ああしたいこうしたいが明確だったおかげだと思います。
ティーダ:重圧のなかで生まれたハイスピードロック
「いつか終わる夢」×「ザナルカンドにて」
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4Gamer:
ティーダの選曲は,「いつか終わる夢」と「ザナルカンドにて」という非常に切ない2曲であることに驚かされました。
水野氏:
ティーダの開発時期には,もういろんなキャラクターの曲が仕上がっていたので,「今村さんならバトル要素が薄くてもいけるだろう!」という全幅の信頼から,好き勝手に選んだというのが本音です(笑)。
ティーダの選曲は,リュックと合わせて考えました。「ファイナルファンタジーX」の2キャラクターに計4曲を割り振る都合上,曲をバッティングさせず,納得できる組み合わせを求める必要があったので。
4Gamer:
そうですよね。これは難しい選択だったと思います。
水野氏:
ただ,ティーダの選曲についてはリュックよりも先に考えていて,「いつか終わる夢」を使うことは決めていました。
これは原作でザナルカンド遺跡に到達したとき,「いつか終わる夢」のままフィールドを歩いてバトルに突入し,勝利後もファンファーレが流れずに画面が戻り,同曲が延々と流れるという一連の体験があったので。あの場面を強烈に思い出したことから,すぐにはまりました。
4Gamer:
そういう意図でしたか。
水野氏:
もう片方の「ザナルカンドにて」は,FF10を代表する曲のひとつであること,かつティーダ自身に寄り添った楽曲という意味で,これなら超直球だろうと思って選びました。
ティーダと同時に追加されたステージも侵蝕ザナルカンドでしたから。いろんな意味でぴったりだろうと,今村さんに提案しました。
ティーダの楽曲制作までは,2曲のうち1曲くらいはバトルものを選んだほうが作りやすいだろうし,ゲーム内でもバトル曲として扱うのでやりやすいだろう,などと考えて選曲していました。
ただ,このときはもう「今村さんなら(なんでも)いける!」って思えていたので,この2曲を迷わずお渡ししたという経緯です。
廣瀬氏:
でも今村は,リュックのときに「ノーマルバトルはティーダに取っておきたい」って言ってたんですよね。
だけど,水野さんのなかでティーダの曲はもう決まってたから,「ノーマルバトルはリュックで使ってくれ」って説得した覚えがあります。
今村氏:
そうでしたね(笑)。
4Gamer:
両曲はエモーショナルな曲調ですけれども,バトルBGMとして,前向きに戦意を保てるよう気をつけた点はありますか?
今村氏:
アレンジにはめちゃくちゃ気をつかいました。これは以前,生放送でもお話しさせていただいたんですが,僕はFF10世代とあって,「この曲で失敗したら,まず人としてダメだ!」とばかりに気合を入れていたので,プレッシャーがすごかったんです。納期も遅れましたし……(笑)。
ティーダの人物像にはなるべく寄せたい。だけど2曲とも,そもそも拍子が違うし,どちらも悲しめの曲調だから,バトル曲にするにもめちゃくちゃ悩みました。本当に,最後まで神経を使いましたね。
4Gamer:
いずれもピアノが印象的な曲ですが,アレンジではそのニュアンスをどこまで生かし,DDFFらしさに置き換えていったのでしょう。
今村氏:
ティーダの曲に関しては,DDFFらしさであるシンセサウンドをあまり入れませんでした。やはり,原曲のピアノ感が印象深いので,とくに「ザナルカンドにて」はピアノメインでと考えていました。
そのうえで,もとの三拍子のリズムをハイスピードなロック調に変え,ピアノを鳴らしていこうという発想です。
後半の「いつか終わる夢」も,ストリングスをメロディに加え,あまりシンセっぽくはない方向性でイメージを変えようと試みました。
4Gamer:
曲調をロックにすることは,今村さんが決めたんですか?
今村氏:
そうですね。提案を受けてから,脳内でこの2曲をどうやってつなげようかとひたすら考えた結果です。「ザナルカンドにて」を四拍子にしたらどうなるだろうとシミュレートしたところ,ロックサウンドに乗っければ合うかもと思った次第です。
ロックにしても,古すぎないというか,ちょっと新しめの現代的なロックのイメージを意識しています。
セリス&バッツ:それぞれの歩みと温かさを表現する音作り
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4Gamer:
セリスは「仲間を求めて」と「セリスのテーマ(アリア)」というファン感涙の組み合わせですが,オペラ劇場はやはり外せないですよね。
水野氏:
おっしゃるとおり,「ファイナルファンタジーVI」のオペラ劇場の場面は以前,シーズン報酬のメモリアでも採用しています。
キャラクターガチャの演出でも,セリスが花束を投げるシーンをオマージュするなど,やはりオペラ劇場のイベントは彼女を表現するうえで大きなポイントとなってきますね。
「仲間を求めて」に関しては,FF6全体の後編テーマとも言えると思っています。セリスが1人で立ち上がって,仲間を求めて再起する物語性をDDFFでも表現できたらと考えて,選ばせてもらいました。
ちなみに前作オペラオムニアでは,バーストアビリティというキャラクターごとの最強技がありました。そこでもセリスは「仲間を求めて」という技名で同曲を鳴らしていたくらいだったので,彼女らしさとFF6らしさを体験してもらうために,DDFFでも大事にしています。
4Gamer:
アリアのようなオペラを,バトルのビートに乗せるのは意欲的ですが,これまた今村さんとしては頭を抱えませんでしたか?
今村氏:
この曲のアレンジは栗子洋平さん(「ファイナルファンタジーレコードキーパー」の楽曲アレンジを担当)にお願いしましたが,そのときにセリスらしさを考えたところ,彼女の持つ“美しさ”を表現することは外せないだろうと個人的に解釈していました。
なので,ピアノやハープの音色はオーケストラで組んでもらい,なかでも「美しい大人の女性のイメージで奏でるハープを強調してください」とお願いしたんです。そのあと,僕のほうで今どきっぽいリズムをひとさじ加えて完成という流れでした。
4Gamer:
バッツのほうは,「ファイナルファンタジーV メインテーマ」と「はるかなる故郷」の組み合わせですけれども,バッツといえば「ビッグブリッヂの死闘」を連想するファンも多そうな。
その点,この冒険感と郷愁を選んだ理由というのは。
水野氏:
バッツの開発時期には,ギルガメッシュのボス制作がすでに決定していましたし「ビッグブリッヂの死闘」を背負うならギルガメッシュのほうかなと思っていたので,バッツには当てはめませんでした。
ちなみに「ビッグブリッヂの死闘」単体のアレンジは,廣瀬さんと今村さんが「よかったら作ろうか?」と仰ってくださいまして,DDFFらしく仕上げてくれました(※アレンジ担当はChroma氏)。
そのうえでバッツの選曲ですが,「メインテーマ」のほうはさっくり決まりました。ここは理屈抜きで,私の直感です。彼の明るい性格と,原作の冒険感を出すには最適の曲だろうと。
そもそも「バトル1」がクルルで使用済みでしたし,「バトル2」はボスの恐ろしさを表現するかのような,不穏でシリアスな方向性ですしね。
もう1曲の「はるかなる故郷」は,リックスの村のイベントで,ドルガンやステラとの親子の絆が印象的に描かれていたので,これもまた外せない曲だろうと思い,この2曲で依頼させてもらいました。
4Gamer:
「メインテーマ」のマーチ的なリズムを,グルーヴ感の強い現代音楽のノリに変換するにあたって,難しかったところはありますか。
今村氏:
アレンジはRedsignさん(コンポーザー/音楽プロデューサー)にお願いしましたが,最終的な完成形は発注の時点で見えていました。
というのも,バッツには現代的なグルーヴ感がぴったりだろうなと思っていましたし,「はるかなる故郷」の牧歌的な表現もフォークギターが似合うだろうと想像できていましたので。
メロディの使い方も「ここでAメロをこういう感じにして」と具体的に説明できる状態だったので,あとはそれを形にしてもらいました。
4Gamer:
バッツの曲って,DDFF楽曲のなかでもとくに優しさのようなものを感じるのですが,そうした温かみはあえて残したのでしょうか。
今村氏:
はい,僕としても郷愁的なイメージを強めたかったので。原曲の雰囲気は損ねず,楽器選びにも注意を払って,サビに入ったときにちゃんと爆発させる。こうした考え方で温かみを伝えようとしました。
4Gamer:
開発チームからは,曲に対してなにか感想はありましたか?
水野氏:
今村さんの曲には毎回「合う!」と驚かされてばかりですが,バッツについては私も,温かみを感じる曲調をありがたく思いました。
FF5という作品は,局所的に悲しい場面はあるものの,トータルでは前向きで明るい希望に満ちています。そうした原作の空気感を再現してくれるバッツの曲は,DDFFにとっても最善の1曲だと思っています。
クジャ:FF9の新たな可能性を引き出す
「バトル2」×「破滅への使者」
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4Gamer:
クジャは前半が「バトル2」,後半が「破滅への使者」の構成ですが,前半と後半であえて曲を分けた作りになっていますよね。
今村氏:
クジャはセリスと同じく栗子さん作ですが,廣瀬さんとは最初から「セフィロス方式を採用しよう」って話していました。
つまり,イントロは「破滅への使者」ですが,途中から急変して「バトル2」に入り,締めにもう一回「破滅への使者」に戻る,といったセフィロスのときと同じ曲構成のことです。
曲の感じも,優雅なクジャの姿はオケを中心に表現するべきだろうと考えていたので,セフィロスにはなかった要素として,ドラムの演奏をハードにしてみたり,ギターを添えてみたりして,「ヘビーロックをマッシュアップしてみた」という方向性で整えました。
4Gamer:
「破滅への使者」の原曲は,パイプオルガンとエレキギターの音色が印象的ですが,アレンジでもそこは意識されていましたね。
今村氏:
そうですね。原曲で強い印象を残している楽器に関しては,これまで話してきた楽曲と同じく,大切にしようと考えています。アレンジに使う楽器についても,栗子さんとやり取りして細かく調整しました。
水野氏:
FF9の「バトル2」は,FF5とちょっと近くて,不穏めというかシリアスな感じの曲なんですが,印象がガラッと変わりましたよね。「バトル2はこういう変化もありなんだ」と,私もいい意味で予想外でした。
4Gamer:
私見で申し訳ないんですけれども,FF9の「バトル2」は個人的に,歴代バトル2曲のなかで一番好きな曲なんです。
とくに思い入れのある1曲だったので,クジャのアレンジが本当によかったことは,すごくお伝えしたかったなって。
水野氏:
ありがとうございます!
バトル2界隈でも,かなり好評価のようでうれしいです!
4Gamer:
バトル2界隈(笑)。
廣瀬氏:
やっぱり原曲がいいですからねー。
今村氏:
僕,わりと直近で「ファイナルファンタジーXIV」でも「(FF14におけるFF9の)バトル2」をアレンジしたんですよね。
4Gamer:
そうでしたよねえ。
水野氏:
確かに。FF14側のアレンジを思い出す人もいそうですね。
4Gamer:
その点,FF14版アレンジとの差別化は大変でしたか?
今村氏:
ぜんぜん困らなかったですね。FF14とDDFFでは性質が違いますし,クジャってキャラが立ってるので,やりようが多いんですよ。
ヤ・シュトラ:大人の優美さと女子の可憐さ
「Endwalker」×「マトーヤの洞窟 〜蒼天〜」
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4Gamer:
では,直近の新キャラクター「ヤ・シュトラ」(2026年10月27日実装)についても聞かせていただければと。
今は(インタビュー収録日が10月13日のため)未実装ですが,彼女の選曲は「Endwalker」と「マトーヤの洞窟 〜蒼天〜」だそうですね。
水野氏:
ヤ・シュトラの選曲は,私が初期案を出し,今村さんと廣瀬さんに確認してもらい,それからFF14サウンドチームの祖堅さん(祖堅正慶氏。FF14のサウンドディレクター)らにチェックをお願いし,最終的な着地に至りました。まずは関係各所の皆さまに大変感謝していますと,この場でも御礼申し上げます。
まず「Endwalker」を提案した理由ですが,ヤ・シュトラは「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア」よりも以前,旧FF14の時代から光の戦士(=プレイヤー)とずっと共にあった,FF14の歴史を象徴するキャラクターの1人だと考えました。
そうした背景を踏まえて,FF14の長大な物語で生きてきた光の戦士たちと彼女の関係を,音楽で表せないかと発想しました。
そこで,ハイデリン・ゾディアーク編の物語の締めとなる「ファイナルファンタジーXIV: 暁月のフィナーレ」から,メインテーマ「Endwalker」を最初に選ばせてもらったわけです。
ですので,ヤ・シュトラの1曲目は彼女のパーソナルの部分だけではなく,彼女も含めた,FF14の歴史を象徴する曲として選んでいます。
4Gamer:
なるほど。
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水野氏:
であればと,もう1曲はミクロな視点で,ヤ・シュトラと密接につながった1曲を選び,ブレンドしていこうと考えました。
彼女に寄り添った曲はいろいろと候補がありましたが,関係者の意見をもとに最終的に決めたのが,「マトーヤの洞窟 〜蒼天〜」でした。
ヤ・シュトラはFF14の作中で,マトーヤのもとで修行した日々を「かけがえのない青春よ」と振り返っています。マトーヤの洞窟が彼女にとって大事な場所であり,そこで過ごした時間がかけがえのないものであったとうかがえたので,ならばこの曲しかないだろうと。
FF14チームにも快諾いただき,この2曲で制作を進めました。
4Gamer:
試聴前のため,推測での質問となりますが。
まず,「Endwalker」は壮大で展開も豊富な曲ですが,ヤ・シュトラ用にアレンジするにあたり,どのメロディを切り取ったのでしょう。
今村氏:
メインとなるのは「ボーカルメロディ部分」です。さらに原曲の“ちゃんと聴かないと気づきにくい部分”まできめ細やかに落とし込んでいますので,じっくりと聴き比べてみてほしいです。
4Gamer:
「Endwalker」はコーラス多めの曲ですけれども,ガイアのときみたいにDDFFでもコーラスは多めにしているんでしょうか。
今村氏:
いえ,今回はなしにしています。
4Gamer:
そうなんですね。そこは,あえてのインストといった判断で?
今村氏:
はい,ヤ・シュトラの空気感をフィーチャーするならば,ボーカルは必要ないんじゃないかなと思っていました。それよりも,彼女の優美さをストリングスやピアノで表現したほうがマッチするだろうと。
廣瀬氏:
むしろDDFFの場合,ガイアが特別なんですよね。
今村氏:
そうなんですよね。あれは祖堅さんとの共作だからこそできたアプローチで,ああいうかたちはめったにないので。
4Gamer:
もう一方の「マトーヤの洞窟 〜蒼天〜」のほうはどうでしょう。
今村氏:
「マトーヤの洞窟」はもともとFF1の楽曲ですが,FF14でのアレンジ曲である「マトーヤの洞窟 〜蒼天〜」でしか聴けないメロディにまで着目しています。
それとDDFFではこれまで,派手な戦闘感を強調する曲が主流でしたが,今回は異なる雰囲気の楽曲にチャレンジしています。
フォーカスしたのは,ヤ・シュトラの大人の女性らしさと,女の子らしいかわいらしさの共存,といった表現です。
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4Gamer:
今村さんにとってFF14はホームグラウンドなわけですが,自身の担当作品の曲をアレンジすることにプレッシャーはありましたか? あるいは,祖堅さんから特別なオーダーを受けたりは。
今村氏:
祖堅さんには選曲についてかなり相談しましたが,曲が決まってからはなにも言われませんでしたね。オーダーもとくにないです。
4Gamer:
今村さん的に「祖堅サウンドのこの成分だけは絶対に外せない」みたいなポイントはありますか?
今村氏:
うーん,ガイアのときはその意識が強かったんですけど,今回はとくになかったですね。
これもまた,僕のなかでヤ・シュトラのキャラ解釈があったのと,加えるべき音の要素とを具体的にイメージできていたからだと思います。
4Gamer:
解釈の結果が,大人の女性でありつつ,女子っぽいところもあるヤ・シュトラであったと。
今村氏:
もしかしたら,光の戦士たちにとっての解釈と異なるかもしれませんが,あくまで私の解釈です……(笑)。
廣瀬氏:
まあでも,今回のアレンジは新鮮だったと思うよ(笑)。
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4Gamer:
ますます聴くのが楽しみになりました。
ちなみにヤ・シュトラにも関わる余談ですが,プレイヤーのあいだでは「汎用URが存在するキャラクターは,プレイアブル実装されない」という謎のジンクスがあるのですが。ご存じですか?
水野氏:
はい,存じています。
FFシリーズはナンバリングだけで16まであり,好きな作品の好きなキャラが巡ってくる機会は少ない,だから汎用で実装されたら,もうこの先プレイアブルでは実装されないだろう。みたいな話ですよね? そう思われるお気持ちはすごく分かります。
とはいえ,我々も「大丈夫! ヤ・シュトラはそのうち出るから!」などとは言えませんでしたからね……。汎用URを出すたびに,「ああ,もうこのキャラのプレイアブルはないんだ……」ってガッカリしていらっしゃる方々に対しては,内心で「そのジンクスはひっくり返るから,もうちょっとだけ待っててください……!」という思いはありました(笑)。
4Gamer:
なるほど。
つまり,私のエースさんもまだ望みがあるというわけで(笑)!
水野氏:
ひと言だけ「ともかく皆さんが疑ってるようなルールはありません!」とだけ申し上げておきます……(笑)。
安産だったヤ・シュトラ。難産だったティーダ。BPMの壁を越えたセフィロスや今後のマッシュアップ構想も
4Gamer:
これまでの楽曲で,安産だった曲や難産だった曲はありますか。
今村氏:
安産だったのは,まさにヤ・シュトラです。僕自身がヤ・シュトラをよく知っているので,方向性が決まるのは一番早かったです。
難産のほうは間違いなくティーダです。先ほど水野さんが話してくれたように,いろんな思いも込みで悩みましたので。
廣瀬氏:
ティーダは時間,押したもんねえ。
水野氏:
そのぶん,反響もすごかったですから……(笑)!
今村さんが納品した音源は,我々のみならず共同開発のNHN PlayArtさんにもお渡しします。NHNさんからも毎回「いいですね!」と言っていただけますが,ティーダはとくに熱がこもっていましたね。
ティーダは登場時にシナリオムービーがありましたが,「そこでもこの曲を使いませんか?」と相談されたくらいで。
最初はバトル用の汎用曲を使う予定でしたが,とてつもないクオリティの高さから「もっといろんな人にも聴いてほしいんです!」とおっしゃっていただき,最終的にムービーにも採用されたんです。
なんて話もあるほど,難産だったぶん成果にも恵まれた1曲ですね。
4Gamer:
ほかには,水野さんの選曲の時点で「この2曲を混ぜるのは無理!」と悲鳴を上げたものがあったりは?
今村氏:
それだとリノアですね。最初に魔女戦の「Premonition」を使おうと言われたとき,ギブアップしましたので(笑)。
あとはガイアもです。「Shadowbringers」の前に「消せない約束」が候補に挙げられていたときは,これもギブアップしました。
4Gamer:
似た話で「最終的に落ち着いたものの,ギリギリまで候補に残っていた幻のボツ選曲」は,ほかにもあるんでしょうか。
水野氏:
ギリギリまで残ること自体,あまりないんですよね。
最近だとヤ・シュトラが迷いましたが,だいたいは最初に「これは無理だ」となって削るので,初期段階で悩むことがあまりなくて。
廣瀬氏:
でもこの先,使える原曲がどんどん減っていくから,総数的な意味で曲選びが難しくなっていきそうですよね。
水野氏:
それはありますね(笑)。
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4Gamer:
今後の新キャラクターに向けて,「この曲とこの曲をマッシュアップしたらやばいぞ……!」と密かに企んでいるアイデアがあったりは?
水野氏:
私のほうでは,1キャラクターいます。
まず前提として,新規楽曲は約半年前から発注できるよう,新キャラクターの候補楽曲は常に吟味しています。ここまでのお話でもいろいろなキャラへの思い入れを語りましたが,作品ごとの熱量に違いはありません。どのキャラクターも全力で調べて,考えて,制作しています。
ただ,そうしているとときどき,「この曲とこの曲のミックスはとくにインパクトがありそう」と思えるものに出会うこともありまして。それが現状,1人います。もちろん誰かは言えませんが。
4Gamer:
それは楽しみですね。今村さんは想像ついてますか?
今村氏:
いえ分からないです。ぜんぜん聞いてないです。まあ,先に知っちゃうと変なバイアスがかかりそうなので,知らないでいいかなって(笑)。
4Gamer:
今村さんは作曲時,キャラクターのどこに着目するのでしょう。
今村氏:
一番はやはり,原作やDDFFのゲーム内で実際に動いている姿です。モーションとかを眺めながら,どういう音で表現すべきかとか,人物の背景も調べて,音楽に落とし込むことが多いです。
僕は申し訳ないことに,FF作品をすべてプレイできてはいないので,キャラクターについては社内外の資料でインプットしてから,DDFFの実際のゲーム画面を見て,アイデアを膨らませています。
4Gamer:
これまで「このキャラクターはゲーム内の姿を見た瞬間,アイデアが湧いてきた」みたいなキャラはいましたか?
今村氏:
それでいうと,プロンプトでしょうか。FF15はプレイ済みだったので,ヤ・シュトラと同じく人物像をつかむのが早かったです。
ただ,まったく知らないキャラクターなのに,すぐにイメージが固まった例だと,ティナかもしれません。僕はFF6を未プレイでしたが,DDFFの女子高生姿のティナのビジュアルを目にしたとき,すぐにアイデアが湧いてきて,イメージBGMを作れたくらいです。
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4Gamer:
BPMが異なる2曲をマッシュアップするとき,単純に速い遅いを整えるだけでは成立しなさそうですが,テンポの差はどう埋めるのでしょう。
今村氏:
その話だと,一番無茶したのがセフィロスですね。
「J-E-N-O-V-A」はテンポが速い,なのに「片翼の天使」は遅い。この2曲はどちらも破綻しないテンポを一個ずつ探りました。
ほかの曲でもテンポの速い遅いはありましたが,それらはテンポ単体で考えることはほぼなくて,「脳内でメロディを想像して鳴らせるか」次第です。それができれば成立するかどうかを判断できます。
ですが,セフィロスだけはそれができなくて。とにかくもう,手探りで中間を探すしかないみたいな感じでやりました……(笑)。
4Gamer:
それほどまでに,セフィロスは難しかったんですね。
今村氏:
ええ,テンポって意味では難しかったです。ギリギリを攻めつつも「これは許してもらえるだろうか……」くらいの心情でしたし。
4Gamer:
できた曲は,植松さんなどに聞かせることはあるのでしょうか。
今村氏:
いやいやないです恐れ多い! 植松さんをはじめ,原曲の作曲者の皆さんはお優しい方々だと思いますが,そうだとしても毎回「これ,さすがにちょっと大丈夫だろうか……」って不安になります(笑)。
4Gamer:
今村さんはDDFFで手がけた曲で,「ここのつなぎ目,すごい天才的だ」みたいに自賛したいフレーズなどはありましたか。
今村氏:
手前味噌ですが,やっぱりガイアの曲はすごく上手にマッシュアップできたんじゃないかと思っています。
同曲は正確には祖堅さんとの共作ですが,2つの曲のフレーズをうまく交互に配しつつも,違和感なくまとめられたと感じています。
水野氏:
ガイアは初期キャラクターなので,BGMの完成は数年も前になりますが,チーム内でもすごく好評でしたよね。
私とか松本さんも作業中にずっと流しているくらい,みんなのお気に入り楽曲でした。思い出深いです。
4Gamer:
好きに音楽を堪能できるのは,開発陣の特権ですね。
我々プレイヤーもサントラが出れば流し続けられますが,現状はバトルBGMの設定画面で流しっぱなしにするしか方法がないので。
水野氏:
裏話的には,DDFFの開発初期って,今みたいにバトルで好きな曲を鳴らせる機能自体がなかったんですよ。
4Gamer:
え? となると常にランダム再生とかの想定で?
水野氏:
はい。
ですがそのころ,私が「ディシディアはいろんな名曲をバトルで好きに流せるのが大事な体験だから,BGMカスタム機能を実装しませんか?」とかけ合い,NHN PlayArtさんからも「お客様が喜んでくださるなら,ぜひ」とおっしゃっていただけて,それが実装されて今に至ります。
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4Gamer:
今村さんから上がってきたデモ曲を,チームで試聴するとき,聴いた瞬間にどよめきが上がった曲とかもあったりしますか?
水野氏:
実は試聴会などはやっておらず,担当者が個別確認しているだけなんです。まあ,今村さんが本当にお忙しくて,すっかり夜分になってから「できました」と上がってくることも多いので……(笑)。
どよめきという話だと,これまで何度か言いましたが,最初のころは曲が上がるたびに全員で「すげえすげえ!」と騒いでいました。ティナに始まり,ウォーリア オブ ライトもクラウドも。とくにガイアは選曲に紆余曲折があったものですから,本当に感激しました。
しかし,それが何曲も続くと人間,感動はしつつもだんだん慣れてきます。そんなときにまた一段「今村さん,やっぱすげえ!」と慣れをぶち破ったのが,まさにバルフレアだったわけです。
4Gamer:
私もバルフレアの曲には本当に感動したので,納得です!
水野氏:
あらためてですが,DDFFではどのキャラクターの曲も平等に思いを込めて扱っています。それでもバルフレアが跳ねたのは,「今までほとんどアレンジされたことがない曲」だったからかもしれません。
たとえば「片翼の天使」は超メジャーな名曲であるがゆえに,さまざまなコンピレーション,スピンオフでアレンジされてきました。定番曲ゆえに心つかまれますが,いろいろなバージョンを聞いていると,選曲自体に耐性がついていく節があります。
そのぶん,珍しい選曲で,聴いたことのないアレンジに出会うと,刺さったときの衝撃がケタ外れなんですよね。
ティーダも近いところがあって,「ザナルカンドにて」は定番曲ですが,そのアレンジがあまりにも新鮮であったため,大きな衝撃を受けたことを覚えています。
4Gamer:
皆さん立場は置いといて,1人のプレイヤーとして,一番テンションが上がるのでついつい設定しちゃう,なんてBGMはありますか?
廣瀬氏:
僕はリノアのアレンジが一番好きなんで,ずっと聴いてます。
今村氏:
おお,ありがたいです。僕はライトニングですね。原曲のバイオリンがめちゃくちゃいいし,自分で作っててすごくかみ合ったんで。
水野氏:
私は実は,ないんですよね。
というのも私は,「使うキャラを変えるたび,そのキャラのテーマを設定し直す」ってプレイスタイルなんですよ。ライトニングを使うときは彼女の曲を聴きたい。クジャなら彼の曲をってなるんです。
曲はどれも大好きですが,私はゲームの遊び方と音楽の聴き方を結びつけたい思いが強くて。きっと,今村さんが込めた狙いが曲ごとに刺さってしまっているんだろうなって(笑)。
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廣瀬氏:
そこまで細かく変える人って珍しいんじゃないかな?
水野氏:
そうかもですね。
普通は,自分なりのフェイバリット曲がおそらくあって,それをずっと聴く人が多いのかもしれません。でも私はキャラクターと楽曲を重ねて,気分を合わせて遊びたくなっちゃうタイプですから。
今もクジャで遊ぶときは,今村さんのクジャバトルにFF9の「銀竜戦」とかも入れて,FF9のどれかの曲が流れるようにしてる,って感じでランダム性を加えつつプレイしています。
4Gamer:
それができる曲数ですもんね。
そろそろ,DJライブツアーとかの催しもできるんじゃ……(小声)。
廣瀬氏:
需要あるかなぁ。
4Gamer:
ありますよ(断言)。
今村氏:
需要次第ですね(笑)。
水野氏:
バリューはありそうですけどね!
これだけいろんなFF作品の曲を楽しめるって考えると。
今村氏:
FFシリーズ全体で広く用意してますしね。
まあ,DJツアーに来てくれる人が本当にいるのかどうか。
4Gamer:
皆さんぜひ,お声を届けてください(願望)!
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隠し音の秘密と,今後のサウンド展開
4Gamer:
サウンドの遊び心として,実はまだプレイヤーが気づいていないような隠し音が仕込まれていたりはするのでしょうか。
今村氏:
以前,生放送で話したのですが,ティーダには入ってますね。
隠し音というほどでもないんですが,「いつか終わる夢」は原曲からの引用というか,インスピレーションを受けたフレーズを意識して入れています。原曲を聴きながらなるべく近い音を探しましたし。
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4Gamer:
おお,そうだったんですね。
今村氏:
あとはクジャの曲にも入っていまして,「破滅への使者」の印象的なパーカッションの音を入れてます。
ただ,原曲はちょっと不思議な作りでして,あれは手拍子の音だったのかな? 再現が難しい音色が加えられているんですよね。
廣瀬氏:
たぶんそれ,PSの内蔵音源だからかな。そのせいかも。
今村氏:
あーそういう! あれ再現するのけっこう大変だったんですよ。
まあ,実際には再現しきれませんでしたけど。
廣瀬氏:
僕はオニオンナイトの曲に,実は「ファイナルファンタジーIII」のシステム音をパーカッション的に散りばめてたんですよ。でも確か消されちゃったんですよね。たぶん今村に(笑)。
今村氏:
え!? それこそすばらしい隠し音じゃないですか!
言ってくださいよ! 気付かなかったかもです!
廣瀬氏:
じゃあ,これからどんどん隠し音いれてこっかな。
今村氏:
隠し音をどんどん入れていこうかは,ちょっと斬新ですね。
4Gamer:
あると分かっているのはもう隠しじゃない気も……(笑)。
今村氏:
とはいえ,原曲や原作の大事な部分を取り入れるのはいいですよね。あまり耳に残らない要素のピックアップはすでにしていますが,それこそシステム音とかは本当に隠し音になるので,やってみたいです。
4Gamer:
期待しております,といったところで,そろそろお時間がいっぱいになってしまったようで。
まだまだ話は尽きませんが,最後にあらためて,今後のDDFFのサウンドへの意気込みを1人ずつお聞かせください。
廣瀬氏:
僕はTGS 2026トレーラーで使ったようなボーカルありの歌ものを,今後増やしていければなと考えています。
それと,前に企画してボツになったものですが,「ファンの皆さんに選んでもらった曲でマッシュアップする」とかできないかなって。
キャラクター曲としてやるなら先にキャラを決めないととか,曲の組み合わせ自体に難があったらとか課題は多いものの,皆さんに選んでもらった曲をアレンジしたい,という野望があります。
水野氏:
それいいですね。ユーザーの皆さんがどのような曲をあげてくださるのか,私も気になります。
廣瀬氏:
あとは純粋に,DDFFの今後のシナリオが気になってます。
水野氏:
……がんばってます!
シナリオ展開もサービス半周年を過ぎて,「実はあいつがああだった」や「あのとき裏ではそんな目的が」など,これから段々明かしていくターンに移っていますし,山場になるようなお話も準備しているので,楽しみにしていてください。
廣瀬氏:
それは1周年に向けてってこと?
水野氏:
そうなりますね。
半年や1年の節目では,とくに大きな展開やボリュームのあるストーリーを届けたいので,期待していてください!
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廣瀬氏:
(今村氏を見ながら)
僕らももっと曲を増やさないといけないかもね。やりたいやりたいって言いつつ,なかなかできてなかったシナリオ用の新曲とか。
今村氏:
そうですねえ。
僕としても引き続き,DDFFを彩る楽曲で,ゲーム体験をよりよいものにできるよう,アレンジの幅なども増やしていきたいです。
これまでもかなりの曲数を書いてきましたが,いまだプレイアブルで登場していない,好きなFFキャラクターを待ち望んでいるファンはたくさんいらっしゃるはずです。いつの日かその気持ちに応えられるよう,僕も1曲ずつFFへの愛を込めた曲作りに専念していきます。
水野氏:
私はFFシリーズのいちファンとして,いろいろなことを提案していますが,それを今村さんや廣瀬さんをはじめとするサウンド陣や,キャラクターを制作くださるNHN PlayArtさんなどが協力して形にしてくれていることで,魅力あるBGMやキャラクターを皆さんにお届けできています。
私の仕事は,関係している皆さんがあってこそのことなので,個人的にすごく幸せなキャラクター作りができていると思っています。
今後もファンの方々に気に入っていただけるゲームであり続けられるよう,キャラクターにまつわるBGMをはじめ,キャラクターもストーリーもしっかりと制作していきます。
皆さん引き続き,DDFFにお付き合いいただけますと幸いです!
4Gamer:
本日はありがとうございました。
今後とも期待しております!
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