オススメ機能
Twitter
お気に入り
記事履歴
ランキング
パッケージ
FINAL FANTASY XVI公式サイトへ
  • スクウェア・エニックス
  • 発売日:2023/06/22
  • 価格:パッケージ版:9900円(税込)
    ダウンロード版:9900円(税込)
    デラックスエディション:1万2100円(税込)
    デジタルデラックスエディション:1万2100円(税込)
  • Amazonで買う
  • Yahoo!で買う
レビューを書く
準備中
お気に入りタイトル/ワード

タイトル/ワード名

最近記事を読んだタイトル/ワード

タイトル/ワード名

LINEで4Gamerアカウントを登録
ドラクエとFF,国産RPGのツートップがもたらした“革新”をバランスよく語る一冊「国産RPGクロニクル」(ゲーマーのためのブックガイド:第73回)
特集記事一覧
注目のレビュー
注目のインタビュー

メディアパートナー

印刷2026/10/29 20:30

連載

ドラクエとFF,国産RPGのツートップがもたらした“革新”をバランスよく語る一冊「国産RPGクロニクル」(ゲーマーのためのブックガイド:第73回)

 三大RPGと聞いて,あなたは何を思い浮かべるだろうか。
 筆者が小学校から高校時代を過ごした1980年代から90年代にかけては,ゲーム雑誌などで盛んに「ウィザードリィ」と「ウルティマ」がセットで取り上げられ,3番手としては「マイト・アンド・マジック」だの「バーズテイル」だのが挙がることが多かった。

 これらはRPGのルーツたる海外作品だが,国産に絞ればどうだろうか。
 「ドラゴンクエスト」と「ファイナルファンタジー」の二強は鉄板で,個人的に3番手には「女神転生」や「ロマンシング・サガ」を入れたいところだが,少なくともツートップは揺らがない。今日ではRPG自体のプレゼンスが下がっているとはいえ,この“常識”はまだ通じるはずだ。

 今回紹介する「国産RPGクロニクル ゲームはどう物語を描いてきたのか?」は,それらツートップに焦点を当てる形で,黎明期から近作に至る“タテの軸”を抽出せんとした評論書である。
 著者の渡辺範明氏は,ドロッセルマイヤー商會の代表取締役として,さまざまなアナログゲームを世に送り出してきた人物である。4Gamerにもたびたび登場しているので,熱心な読者であれば名前をご存じの方も多いのではないだろうか。

画像ギャラリー No.001のサムネイル画像 / ドラクエとFF,国産RPGのツートップがもたらした“革新”をバランスよく語る一冊「国産RPGクロニクル」(ゲーマーのためのブックガイド:第73回)
「国産RPGクロニクル ゲームはどう物語を描いてきたのか?」

著者:渡辺範明
版元:イースト・プレス
発行:2023年6月21日
定価:1980円(税込)
ISBN:978-4-7816-2214-9

購入ページ:
Honya Club.com
e-hon
Amazon.co.jp
※Amazonアソシエイト


 語り尽くされた印象の否めないドラクエやFFだが,それは雑誌やWeb上での断片的な語りが主であり,“クロニクル=通史”となっているものは意外と少ない。ラジオ番組でのトークが下敷きになっているという本書だが,とっ散らかった印象もなく,よくまとまっている。本書の特徴を一言で表すなら,「バランス感覚」となるのではないかと思う。

 具体的に,両シリーズの出発点から確認してみよう。
 1974年に出た「ダンジョンズ&ドラゴンズ」(以下,D&D)のようなテーブルトークRPGから,PLATOなどのネットワーク上でD&Dを遊ぶための各種RPGが1975年頃に生まれ,1981年の「ウィザードリィ」の登場に至る系譜。そしてPLATO文化圏とは別個にデザインされた同じく1981年の「ウルティマ」があって,それらを雛形にして初代ドラクエは誕生した。
 これが1986年で,ゲームデザインとシナリオを担当した堀井雄二氏らが,何ら予備知識のない子どもでも遊びやすいようにアレンジしたわけだ。その遊戯史的な基礎が,本書ではきっちり押さえられている。

 そこから切り口が変わって,ゲームシステム論の観点からFFの特徴が分析されていく。
 作品全体をRPG体験のチュートリアルとして位置づけ,シリーズを追うごとに徐々にRPGの構成要素を拡張していったのがドラクエだとすれば,学生ベンチャーから始まった坂口博信氏らの個性が強く発揮されたFFは,1987年の初代から「全部のせ」であった。ゲームシステムのスクラップ&ビルドを繰り返したことで,若々しい挑戦の気風が生まれ,特定のナンバリングに熱狂的なファンがつくような現象も起きた。

 サウンドひとつとっても,すぎやまこういち氏によるドラクエのBGMはクラシックの風格があって格調高く,対するFFのBGMを担当した植松伸夫氏の楽曲は,ポップスへの目配せがあって内省的,といった具合に対比的に論じられていく。

筆者の暮らすアルゼンチン・ブエノスアイレスで開催された大規模レトロゲームイベント会場で発見した「ドラクエIV」。1本2万ペソ(約2000円)ほどで売られていた
画像ギャラリー No.004のサムネイル画像 / ドラクエとFF,国産RPGのツートップがもたらした“革新”をバランスよく語る一冊「国産RPGクロニクル」(ゲーマーのためのブックガイド:第73回)

 とはいえ,個々の記述にとりたてて新鮮味があるわけではない。むしろ鳥山 明氏によるドラクエのイラストが「海外のRPGが持っていたコアで暴力的な雰囲気を脱臭した」といった,単純化しすぎでは? という記述も散見される。そもそも鳥山 明氏のイラストは,アメコミの影響を強く感じさせるものだし。
 その一方で,FFのイメージアートを手掛けた天野喜孝氏のミステリアスな画風が,「カオス」や「くらやみのくも」に代表されるFFシリーズの抽象的なラスボスの造形とも響き合った,という重要な指摘もあって油断はできない。

 これらの分析は,8ビット機たるファミコンから16ビット機のスーパーファミコン,そして「次世代機」と呼ばれた32ビット機であるPlayStationへ――すなわちハードウェアの移り変わりに即した形で進んでいく。
 論考にも,ハードの性能や売上本数といった産業史的な視点が前景化されていく。大容量のゲームが扱えるようになるなか,ドラクエが「老舗の味」を守ろうとした一方で,FFは環境の変化に最適化する形で活路を開いてきたのだという。
 とりわけ初代PlayStation時代,ドラクエは「VII」(2000年)の1本しか発売されなかった。しかしFFは「VII」(1997年),「VIII」(1999年),「IX」(2000年)の3本を数え,売上本数の面でも業界的なヘゲモニーを掌握したかのように見えた。

 ところが青天の霹靂というべきか,2003年にはエニックスとスクウェアの合併劇が起こり,スクウェア・エニックスとなってしまう。
 著者の渡辺氏は,2002年にプロデューサー採用枠でエニックスに入社したそうで,ちょうど1年が経過したあたりでの大合併に,「あまりに予想外のことに笑ってしまった」と証言している。時折差し挟まれるインサイダーとしての体験談が,類書にはない本書ならではの「味」になっているのだ。

 当時のエニックスでは,なんと入社して1年以内にプロデューサーとして独り立ちするという,「狂気すら感じさせる非常識なシステム」が採られていたそうだ。それを氏は,「社員はゲーム開発における編集者である」という企画会社としてのアイデンティティのあらわれだと説明する。
 ゲームのみにこだわらず,2000年の段階で,中国において丸大豆醤油を普及させる新事業にチャレンジしていたという逸話からも,エニックスの「本気度」が伝わるだろう。

 実際,本書の記述が冴えわたるのはPlayStation 2以降の作品に関してだ。
 たとえば2004年の「ドラゴンクエストVIII」で,力を溜め続けて「スーパーハイテンション」になったときの主人公のデザインは,「ドラゴンボール」のスーパーサイヤ人に寄せたものと紹介されている。これなどは,堀井雄二氏が海外メディアに対して語った英語記事※はあるものの,日本ではあまり知られていない逸話かもしれない。

※「Game Informer」2017年9月号での堀井雄二氏のインタビュー記事より。

スーパーハイテンション(画像は「ドラゴンクエストヒーローズ 闇竜と世界樹の城」より)
画像ギャラリー No.006のサムネイル画像 / ドラクエとFF,国産RPGのツートップがもたらした“革新”をバランスよく語る一冊「国産RPGクロニクル」(ゲーマーのためのブックガイド:第73回)

 2002年から2003年にかけては,ユービーアイソフトが年次報告書でAAA(莫大な予算を注ぎ込んだ超大作ゲーム)という区分を用いるようになり,ゲームが世界的な産業として定着しつつある時期だった。そんな折,日本を代表するAAAシリーズを2つ抱えたスクウェア・エニックスが,どのような戦略を打ち出していったのか。

 たとえばPlayStation 3で出た「ファイナルファンタジーXIII」(2009年)を,渡辺氏は「長いFFの歴史のなかでも特に挑戦作と呼ぶにふさわしい一作」と評価している。ファンを困惑させたストーリーやゲーム構造の飲み込みづらさを紹介しながらも,戦闘の回数を絞って「チームスポーツの監督のような視点」による思考を要求する,ドラマ性を追求した戦闘システムに価値を見出すのだ。

 PlayStation 4とニンテンドー3DSの両方で発売された「ドラゴンクエストXI」(2017年)は,「みんなが望むドラクエ像」にこだわり,ストーリー的にも王道の貴種流離譚を採用したタイトルとなった。
 そのことで生まれた余裕により,PS4と3DSのどちらにも対応できるよう,すべてのマップやグラフィックスを3セット※作成するという,「常軌を逸したやり方」が可能になったというのだ。一本の史観を持つことで,新作のどこが「革新」だったかを言語化している点が,本書の強みといえる。

※PS4用のグラフィックスと,3DS用の2D/3D両モード用のグラフィックス。

「国産RPGクロニクル 物語の革命者たち」(リンクはAmazonアソシエイト)
画像ギャラリー No.002のサムネイル画像 / ドラクエとFF,国産RPGのツートップがもたらした“革新”をバランスよく語る一冊「国産RPGクロニクル」(ゲーマーのためのブックガイド:第73回)
 本書の末尾には,「週刊少年ジャンプ」や「Vジャンプ」の編集者として著名な鳥嶋和彦氏のインタビューも収められている。ゲームの内容をしっかりチェックするために印税率を引き上げた逸話や,名作となった「クロノ・トリガー」(1995年)の裏話も収められており,RPGファンには必読の内容である。

 本書は,世代を超えて愛され続けてきたシリーズの試行錯誤を,できるだけ多角的な視点から取り上げようとした意欲作だ。
 FFの最新作たる「ファイナルファンタジーXVI」(2023年)のことは,本書の続編となる「国産RPGクロニクル 物語の革命者たち」で詳述されているので,こちらも手元にあるとなお良い。同書では冒頭で述べた「女神転生」や「ロマンシング・サガ」シリーズなどについても論じられているので,併せて読み進めてもらいたい。
 きっと,あなたも何かしら,自前の“クロニクル”を語りたくなるはずだ。

関連記事

「国産RPGクロニクル 物語の革命者たち 出版記念! 渡辺範明&橋本吉史&RAM RIDERの偏愛ゲームナイト」レポート。3人の“異業種P”が愛する“偏愛ゲーム”とは

「国産RPGクロニクル 物語の革命者たち 出版記念! 渡辺範明&橋本吉史&RAM RIDERの偏愛ゲームナイト」レポート。3人の“異業種P”が愛する“偏愛ゲーム”とは

 渡辺範明氏,橋本吉史氏,RAM RIDER氏が登壇する「国産RPGクロニクル 物語の革命者たち 出版記念! 渡辺範明&橋本吉史&RAM RIDERの偏愛ゲームナイト」が阿佐ヶ谷ロフトAにて開催された。普段あまり語る機会はないが,それぞれが愛してやまない“偏愛ゲーム”をテーマに据えたトークイベントだ。

[2026/05/18 15:30]

■■岡和田 晃(翻訳家,文芸評論家)■■
 SF・幻想文学やクラシックなスタイルのゲームにちなんだ翻訳紹介を得意とするライター・翻訳家。4Gamer連載の「ファイティング・ファンタジーとその時代」は,「主人公はキミだ! 〜You are the Hero!日本語版〜」(SBクリエイティブ)の別巻となった。ほか近著に,「モンスター!モンスター!TRPG」のソロアドベンチャー「廃都脱出」(共著,FT書房),1960年代のSFアニメや人形劇の脚本などを集めた「山野浩一シナリオ選 空とぶ怪獣ゴアラ/戦え!オスパー ドロメのさいごの戦い 他四編」(編著,小鳥遊書房)などがある。
  • 関連タイトル:

    FINAL FANTASY XVI

  • 関連タイトル:

    FINAL FANTASY XVI

  • 関連タイトル:

    ドラゴンクエストXII 夢の彼方へ

  • この記事のURL:
4Gamer.net最新情報
プラットフォーム別新着記事
総合新着記事
企画記事
スペシャルコンテンツ
注目記事ランキング
集計:10月28日〜10月29日