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「TEPPEN」インタビュー。独自のシステムが誕生した経緯や登場キャラクターの選定基準,開発の苦労,そして今後の展開を岡野D&荻原Dに問う
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印刷2019/09/03 15:00

インタビュー

「TEPPEN」インタビュー。独自のシステムが誕生した経緯や登場キャラクターの選定基準,開発の苦労,そして今後の展開を岡野D&荻原Dに問う

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 ガンホー・オンライン・エンターテイメントとカプコンが共同で開発したスマートフォンアプリ「TEPPEN」iOS / Android)は,歴代のカプコン作品から多種多様なキャラクターが登場する対戦型デジタルカードゲームだ。

 今回4Gamerでは,本作のディレクターを務める岡野勇樹氏と,同じくディレクターを務める荻原 智氏に,2人が本作に関わることになったきっかけから立ち上げ当初の開発現場の様子,本作に登場する作品やキャラクターの選定基準,ストーリーモードを実装した経緯などを聞いた。

所属する企業は違えど志を同じくする,カプコンの岡野勇樹氏(左)と,ガンホーの荻原 智氏(右)
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ほぼ1日でベースが完成?

新企画のスタートは突然に


4Gamer:
 「TEPPEN」をワールドワイド,そして日本を含むアジアで展開されての率直な手応え,ご感想を聞かせてください。

荻原 智氏(以下,荻原氏):
 日本にリリースしていない状態で北米欧州向けに先行配信するのは,私自身初めての体験でした。そこで感じたのは,北米欧州のプレイヤーの熱量のある意見ですね。
 我々が懸念していた点に対しては「ここがダメ」「ここが変わればレビューで5点をつけるのに」といった意見が,逆に我々が推したい部分に対しては「ゲーム性が新しい」「とてもいいアート」といった意見が集まり,的確な批評とその盛り上がり方に驚かされました。

岡野勇樹氏(以下,岡野氏):
 私も荻原さんと同じく,ワールドワイド先行でアプリを配信するのは初めての経験でした。我々が考える面白さと,海外のプレイヤーさんが感じる面白さ,その認識が合致しているかどうかは,正直,出してみるまでわからない部分だったんですよ。
 ただ,各所のレビューでは,とても好意的に受け止めてくれている内容のものを多く見かけ,我々がやってきたことは間違っていなかったと自信を持てましたね。

4Gamer:
 ちなみに,アジア圏での配信は1か月遅れた形となりましたが。

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荻原氏:
 やはりアジア圏,とくに日本では「まだなんですか!」という声はたくさん聞こえていました。社内でもそういった反応が出ていましたね。サプライズでリリースしてみたら「日本では配信しないのかよ!」と。それは当然ですよね(笑)。

 リリース時の公式サイトはEFIGS(英語,フランス語,イタリア語,ドイツ語,スペイン語)圏内の言語のみでしたし,アジア圏の配信についての情報が漏れないよう,徹底していましたね。

4Gamer:
 アジア圏の配信時期が分からなかったので,約1か月後にアジア圏の配信が始まったときは「意外と早い」という印象を受けました。

荻原氏:
 日本サービスがスタートしたときは,たくさんの方から「やっときたか」と言っていただけましたし,すごく活発に意見が出てきました。
 「TEPPEN」が面白いことは自負していましたが,リアルタイムとターンが合わさった新しいゲーム性にどんな反応が出てくるのか,実際のところ期待と心配が半分といったところでした。
 それでも実際に出たあとの反応は「プレイ感覚が新しい」「テンポが良い」といったものを多くもらえたので,少しホッとしたところもありますね。

岡野氏:
 日本国内のプレイヤーさんは,北米欧州のプレイヤーさんと近い部分の批評はもちろんのこと,それ以上に細かいところを見ていただけている印象です。例えば,「UIはこうしたほうが遊びやすい」「あれとこれのバランスが悪いのでこうしてはどうか」など,指摘内容が非常にピンポイントなんですよ。

 いただいた意見は非常にありがたいものが多いのですが,すべて反映させることはできないので,さまざまな意見をうまく取り入れて,「TEPPEN」をより良いものにしていきたいですね。

 それと,日本は攻略情報が素早く拡散されていくイメージがあるので,後発ながらも日本の攻略が海外に波及することも十分あり得ると思いますよ。日本,アジアが加わったことで,ゲームの環境が活性化されることにも期待しています。

4Gamer:
 そもそもお2人はどのような経緯で「TEPPEN」のプロジェクトに関わることになったのでしょうか。

岡野氏:
 私は,本作に携わる前はスマートフォンアプリ「モンスターハンター エクスプロア」iOS / Android)のディレクターを担当していました。そんなある日,本作のエグゼクティブプロデューサーである辻󠄀本(良三氏)とプロデューサーの井上(真一氏)から呼び出され,「いま暇か?」と聞かれまして……。

4Gamer:
 間違いなく暇ではないですよね(笑)。

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岡野氏:
 よくよく話を聞くと,ガンホーさんと共同でカプコン作品のキャラクター総出のカードゲームを作るから企画書を書いてほしい,とのことで。私はガンホーさんとのお付き合いがなかったのですが,もともとカードゲームはすごく好きなジャンルで興味もあったので,引き受けたんですよ。そのあと,企画書の納期を聞いて「ガンホーさんとの打ち合わせがあるから,明日までによろしく」と言われたときは冗談かと思いましたね(笑)。

4Gamer:
 相当な無茶ぶりだと思いますが,どう対応したんですか。

岡野氏:
 もともと,カードゲームでやりたいと思っていた構想自体はあったので,ひとまず翌日には企画書がまとまりましたね。もちろんいまの「TEPPEN」がこの時点であったわけではなく,そのあとのガンホーさんとのすり合わせで今の形になっていきました。……というのが,私が本作に関わることになった経緯ですね。

4Gamer:
 すごく唐突な始まりだったんですね。荻原さんはどのような経緯で「TEPPEN」のプロジェクトに?

荻原氏:
 私も似たような感じなのですが,情報量の少なさで言えば,こちらのほうが勝っている気がしますね(笑)。最初は「明日ミーティングに出てもらえるか」ぐらいの軽い感じで誘われて,本当に何の情報もないままミーティングに参加してみたんです。
 そしたら,一方的に存じ上げている辻󠄀本さんと,初めてお目にかかる井上さんと岡野さんがいらっしゃって……。
 同席していた弊社の森下(一喜氏)が「いまからカードゲームを作ることになったから」と言い始めたときは,「……は!?」ってなりましたよね。そんな動揺が収まらないうちに,岡野さんが作った企画書が回ってきて,あれよあれよという間に巻き込まれていきました(笑)。

4Gamer:
 なかなかに衝撃的なスタートですね(笑)。最初の企画書はどんな内容だったのですか。

岡野氏:
 最初はターン制をベースにしたカードゲームを提案しましたね。

荻原氏:
 私は最初,企画書も持っていっていなくて,森下がパワーポイント1枚で説明をした程度だったんですよ。私はその説明もそこで初めて聞いたんですけど(笑)。
 ただ,私もカードゲームのような戦略的な遊びはもともと好きなので,次の会議までにこちらからも企画書を持っていくことになったんです。で,その企画書を考えている段階で森下が「ターン制で待つのが嫌だ」と言い始めて……。

4Gamer:
 カードゲームと言えばターン制が定番なので,なかなか難しいオーダーですよね。

荻原氏:
 そうなんですよ。さらに,昨今のデジタルカードゲームのほとんどが先行有利になっているのですが,それに対して「なんで先攻が有利なことに納得してるの?」と問われもしました。
 先攻と後攻のバランスを取るために,後攻のMPを増やしたり手札を増やしたりと,さまざまな方法があると言えばあるのですが,そもそも先攻って,ボクシングで言えば,最初の1発を自由に殴れるのと同じなんですよ。
 企画屋としてはダメなんですが「なんでこれに納得しているのか」と聞かれてハッとしましたね。正直,自分もカードゲームプレイヤーとして「それはそういうもの」と思ってしまっていたので。

4Gamer:
 そこへの疑問はなかなか気づきませんね。

荻原氏:
 言われてみれば確かにそうだなと思い,もっとリアルタイムな遊びのほうがフェアだし,テクニックも関わってきて面白いんじゃないか,みたいな話になったんです。そうしたガンホー側での企画会議を経て,次に行われたカプコンさんとの合同ミーティングでは,リアルタイム寄りのカードゲームを提案しました。
 そのあと,それぞれが企画を持ち帰ってブラッシュアップすることになったんですが,その次の合同ミーティングでは,お互いが逆の企画を提案していたんです。

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4Gamer:
 つまり……?

岡野氏:
 私がリアルタイムのカードゲームを提案し,荻原さんはターン制のカードゲームを提案していたんです。荻原さんもそうだと思うのですが,お互いに気を遣ったり,単に相手の意見に流されたりしたわけではないんですよ。
 実際に意見をぶつけあった結果,本作で大事にしたい2つの要素が共存できる形をお互いが見つめ直した結果だったと思います。

4Gamer:
 大事にしたい2つの要素とは?

岡野氏:
 「カードゲームの気持ち良さ」と「すばやく判断することが評価される頭脳戦」という2つです。
 まず「カードゲームの気持ち良さ」は,人それぞれだとは思うのですが,私は「このカードで勝負だ!」「ならば俺はこのカード!」というような,相手を上回っていく部分だと考えています。これはカードゲームの醍醐味ですし,このジャンルを選んだ時点で外せない要素でした。

4Gamer:
 確かに。

岡野氏:
 もう1つの「すばやく判断することが評価される頭脳戦」は,漫画「キングダム」を読んでいて思いついたんです。
 一般的なターン制のカードゲームは,1ターンごとにものすごく考えて最善の一手を探しますよね。最初「キングダム」で描かれる戦いを見たとき,同じように戦を始める前にじっくり考え,それをぶつけ合っていたんです。
 ただ,「キングダム」で描かれる戦いは,もちろん想定通りでは終わらず,戦のなかでさまざまなアクシデントが起き,臨機応変に対処していくことが求められ,その結果,そこにドラマが生まれるんですよ。こうしたアクシデントには「正しい選択」が必要なのはもちろん,それと同じくらい「すばやい判断」が重要なんです。
 カードゲームの頭脳戦でも,「腰を据えて考える」だけでなく「限られた時間の中ですばやく判断する」,つまり“変化する状況に合わせて最善を探して自らの動きを変えること”が評価されてもいいんじゃないかと考えたんです。

4Gamer:
 質の違う頭脳戦を同居させると。

岡野氏:
 最初に提出した企画書はターン制ではあったものの,「すばやく判断することが評価される頭脳戦」の要素であるアクティブレスポンスも含んでいました。しかし,ユニット同士のバトルはターンを想定していたので,荻原さんのおっしゃっていたリアルタイムでの戦いのほうがハマるなと。
 そこでユニット同士のバトルをリアルタイムにしたうえで,アクティブレスポンスによるターンでのカードの応酬を融合した企画を練り上げて,私からはリアルタイムのカードバトルをあらためて提案させてもらったというわけです。

荻原氏:
 あの応酬は面白かったですね。真逆の企画書がくっついて,いいところに落ち着いたというか,新しい感覚の手応えがありました。

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ブレーキが壊れているくらいが丁度良い

ネルギガンテの初期案は“デッキ全除外”の能力だった


4Gamer:
 ガンホーとカプコン,開発はどのように分担していたのでしょうか。

荻原氏:
 大まかな切り分けとしては,ベースとなるゲームデザインは両社共同で検討を進めたうえで,ゲームシステムやバランス面をガンホー,世界観やアート,BGMなどをカプコンさんが担当しているのですが,そもそもはっきりと分かれているわけではないです。
 企画書の段階から両社で話し合っていますし,岡野さんから提案していただいた内容を活かしたり,逆にこちらからの提案を入れ込んだりもしていますね。
 ちなみに,最初の頃はゲームシステムを加味したうえで提案してきていた岡野さんですが,今となっては無茶ぶりがすごいんですよ(笑)

4Gamer:
 と言いますと?

岡野氏:
 どのタイトルでもそうだと思いますが,やっぱり最高レアリティのカードは,出して気持ち良かったり,盤面を覆せたりする“圧倒的な魅力”が必要だと思っているんですよ。
 加えて,世間で認知されているキャラクターであれば「このキャラならきっとこんな能力があるよね」という期待に応える必要があるので,「やりすぎかな」ぐらいの内容を提案しちゃうんです。

4Gamer:
 まずはそのIPのらしさを重視している,と。

岡野氏:
 その考えをもとに提案すると,「これそのまま入れたらゲーム終わりますよ?」と,荻原さんが真顔で返してくるんです(笑)。そこからゲームとして成立するように,いい形に整えてもらうことは多々ありますね。
 例えば,ロックマンシリーズの「エックス」であれば,原作と同じように,倒した相手の能力をコピーできるようにしたかったんですよ。それを実現するとなると,新しい仕様を実装する必要があったのですが,荻原さんも「そのほうが絶対にいいから」と言ってくれて,調整してくれましたね。

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荻原氏:
 IP関連の能力に関しては,岡野さんが本当に無茶なことを言うんですよ(笑)。ただ,そこは私たち以上の想いを持っている部分だと思いますし,思い切った意見を出していただけるのは,本当にありがたいですね。

4Gamer:
 遠慮なく言ってくれたほうが斬新なアイディアが出てきそうですし,話を聞く限り,結果的に良かったように見えます。

荻原氏:
 逆に,岡野さんが引いてくれることもあるんですよ。レジェンダリーの「ネルギガンテ」は,当初,デッキをすべて除外してその枚数分だけ攻撃力とHPが上昇するカードだったんです。

4Gamer:
 尖ってますね。

荻原氏:
 結局,この案はボツになってしまったんですが,“古龍を喰らう古龍”であるネルギガンテの,自身を傷つけながら強力な力を発揮するキャラクター性を踏まえて,ダイナミックなものにしたかったんです。
 ただ,考えたら分かりますけど,初手でネルギガンテを出すと攻撃力とHPが20以上の化け物スタッツになっちゃうんですよね(笑)。

岡野氏:
 テストで入れてみたらバランスが崩壊しました(笑)。

荻原氏:
 そこで調整が入るわけですが,当時は過敏に調整してしまい,ゲームバランスを重視しすぎて“らしさ”が失われてしまったんですよ。

岡野氏:
 当時はデッキから2,3枚を除外して,攻撃力とHPが6になるぐらいのノリでしたね。

荻原氏:
 岡野さんは「何度も調整を繰り返した結果なので,バランス的にこの形が落としどころであればそれでいいですよ」と言ってくれたんですが,やっぱり“らしさ”は失いたくないですし,ネルギガンテをデザインしたときの最初のコンセプト“デッキを除外した分だけ強くなる”が守られていないんですよね。
 そこであらためて考え直し,ゲームバランスが崩れない範囲であれば,もっと除外するデッキ枚数を増やし,大きなスタッツで出せるようにしたいと,逆に私から岡野さんに提案させてもらいました。

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4Gamer:
 無茶な提案くらいのほうがいい気がしますが,調整する側は大変そうですね……。

荻原氏:
 最初のうちはそうでもなかったんですよ。レジェンダリーの扱いとして,私は盤面に叩きつければ戦況にインパクトを与える,くらいを想定していたんですが,岡野さんは「1枚のカードで盤面がひっくり返るって,カードゲーム的にはあんまり美しくない」という意見の持ち主だったんです。

岡野氏:
 野球で例えるなら,1番バッターのコモンが,4番バッターのレジェンダリーまでどのようにつないでいくかが重要だと考えていて,ちゃんとつないでいかないと真価を発揮できない,というようなカードにしたかったんです。レジェンダリーの詰め合わせが最強にはしたくなかったので。

荻原氏:
 基本的な考え方は同じだったのですが,本作の場合レジェンダリーは1枚しか入らないため,その考え方だと盤面への影響力が弱くなり魅力が半減してしまうので,レジェンダリーはもっとはっちゃけましょう,とこちらが提案したんです。
 そのときくらいからですかね,岡野さんからの無茶苦茶な提案が増えたのは……。「無茶を言っても調整してくれるから大丈夫だ!」という謎の安心が生まれたのか,とんでもない提案が出てくるようになったんですよ。「これは“出したらゲームに勝利する”くらいでいいですよ」とか言いだして。何を言っているんだと(笑)。

4Gamer:
 ブレーキが一気に壊れちゃいましたね(笑)。

岡野氏:
 でもこれ,実はちょっといい話でもあるんです。私はいままでディレクターとして,自分のタイトルのすべてを管理しなければいけないという重責のなかで,発想も選別も全部1人でやってきたんですね。それは良いことでもあるのですが「これはバランスが取れるかな」「これは工数が足りないな」と考え方が丸くなってしまい,やる前から諦めたこともいくつかあったんですよ。

4Gamer:
 1人で責任を負うとなると,より慎重になってしまう面がありますよね。

岡野氏:
 荻原さんとの2人体制であれば,本当に無理なときは無理と言ってくれるし,調整も可能な範囲でしてくれる,こちらが間違ったことを言っても訂正してくれるので,とても頼れる存在なんです。
 単純に“これって楽しいよね”と思ったことをきちんと提案していこうと思ったのが,まさにブレーキが壊れたタイミングかなと。荻原さんからすれば「急にヤバい提案をするようになった」と思いますよね(笑)。

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荻原氏:
 「原作で無敵だから無敵にしよう」とか言い始めて,何があったのかと思いましたよ(笑)。逆に,岡野さんがほとんど担っているBGMやアートなどについて,最初は多少遠慮していた部分があったのですが,これくらいを境に私からの遠慮もなくなりましたね。

4Gamer:
 遠慮がなくなるとガッツリぶつかるシーンも出てきそうですが。

岡野氏:
 意見が対立したことはありますが,険悪になったことはないですね。お互い目指すところは同じなので,相手の話を聞くうちに「確かにそのほう良いな」となることが多いんです。

荻原氏:
 一応,お互いが折れなかったときのために,世界観やアート面に関しては岡野さんが,ゲームシステム側の部分については私が最終的な判断を下す,と決めてはいたんですが,これまで一度もそういった状況にはなっていないので,完全な対立というのはないですね。岡野さんもおっしゃってますが,相手の話を聞くとほとんど納得できるんですよ。

岡野氏:
 とはいえ,私は最初,そもそもディレクターが2人いる状況が不安だったんです。もっとケンカすると思いませんでしたか。

荻原氏:
 私はその不安がなかったんですよね。PCのオンラインゲームを作っていたときも,開発側と運営側にそれぞれディレクターとプロデューサーがいて,協議しながら話を進めていたんですが,そこでもあまり大きく揉めたことはなかったですし。ここまで意気投合して同じ方向に進んでいけるとは思いませんでしたけどね(笑)。
 もちろんなれ合いになっているわけではなくて,それぞれがしっかりと意見を持っているので,ディスカッションは多いですし,その中での気づきや発見もたくさんあります。

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4Gamer:
 ちなみに,お2人が遠慮なく言い合える間柄になったのはいつ頃でしょうか。

岡野氏:
 最初の企画書を出したのが2年前の夏で,そのときはまだここまでの関係ではなかったですね。

荻原氏:
 その後,本格的に動き始めたのが2年前の冬ごろで,ガッツリと話すようになったのは2018年4月くらいだと思います。1年半ぐらい前からですね。

岡野氏:
 当時は,ミーティングのたびに大阪から出張していたのですが,今は週の半分を東京で過ごしています。


肝になったのはリアルタイムとターンの切り換わり


4Gamer:
 本作は,あまり見たことのないゲームシステムなので,開発を進めるうえでもかなり苦労したのでは?

荻原氏:
 企画書で出し合った内容をある程度まとめたあと,すぐにプロトタイプを作ることになったんですが,弊社側は私とプログラマーとデザイナーの3人が,会議室に閉じ込められたんですよ(笑)。

4Gamer:
 閉じ込められた!?

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荻原氏:
 とにかく極秘案件だったんです。TEPPENについて知っている人はほんとに限られてましたね。で,まずは遊び心地を確認できるものが必要とのことだったので,1か月くらいでプロトタイプを作りました。当初は「リアルタイムの進行が止められて不快感はないか」など,体験に関わる部分の細かい調整に苦労しましたね。

4Gamer:
 リアルタイムとターン,両方の要素があるからこその問題ですね。

荻原氏:
 また,岡野さんがおっしゃったような「相手がそれを出すなら自分はこれ」という戦い,“応酬感”も大事にしたいと思っていました。アクティブレスポンスにおける10秒間の殴り合いが果たして本当に気持ちよく成立させられるのか,ここも随分頭を悩ませた部分です。

荻原氏:
 細かい部分だと,ユニットが攻撃するまでの表現も試行錯誤しましたね。最初は各カードの下に表示したゲージが溜まりきったら攻撃する形だったんですが,それだとどうしても画面の両端を常に確認しないといけなくなるんですよ。

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4Gamer:
 左右に分かれて表示されるとなると,視線の移動が忙しくなりそうですね。

荻原氏:
 そこはただただ不便な部分だと思ったので,現在のように画面の中央を見ていれば戦況がひと目で分かるようにしました。盤面を把握しやすくするために,UIに関する議論はかなり重ねましたね。

岡野氏:
 あと盤面の話で言えば,出せるユニット数も最大3体ではなく最大6体で,前列と後列があったんですよ。

4Gamer:
 前列と後列があると,そもそもルールから変わってきそうですが。

荻原氏:
 そうなんです。結局,6体を管理する形は現実的ではなかったので,戦いに集中できる3体に落ち着きました。あと,スタッツなどの数字に関して,最初はもっと大きい数値だったんですよ。殴り合っている感覚,数字の出る気持ちよさを感じてほしいと思って。

岡野氏:
 確かに大きな数字のほうが爽快感はあるのですが,プレイ中の計算が難しくなってしまうんですよ。限られた時間で瞬時に判断するという本作の方針から考えると,数値の桁は小さくて計算しやすい仕様にしたほうがいいと考えました。

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荻原氏:
 戦略的思考をするうえでの情報処理や見やすさをプロトタイプで詰め,いろいろな桁数を試していき最終的に今の桁数になりました。できあがったものを両社で遊んだ結果,手応えとしてはかなりいいものになったのを覚えています。こうしたバトルデザインは最初の1か月でほぼほぼ決まっていきましたね。

4Gamer:
 攻撃ゲージはシンプルなデザインになっていますが,こちらは例えば,デフォルメされた小さいユニットが飛んだり跳ねたり這いずったりしながら近寄ってく,みたいなデザイン案はありませんでしたか。

荻原氏:
 UIを模索しているなかでいろいろな意見は出ましたね。現在のものは,地味と言えば地味なのですが,画面の中央だけで情報を把握できるようするため,見た目の賑やかさよりも,わかりやすさを重視しました。似た話だと,リュウの攻撃ゲージはグーパンチが飛んでいくなど,モチーフに沿ったものにするという話もあったんですよ。

開発段階のリュウ
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4Gamer:
 それはまた画面の印象が変わりそうですね。

荻原氏:
 でも,ユニットごとにモチーフを変えると,そこに意味が生まれてしまう可能性があったんです。例えば,パンチには剣が強い,剣には杖が強い,みたいな属性相性などですね。本当はそういった意味を持っていなかったとしても,パッと見で勘違いが生まれてしまうかもしれないので,そこはいっそシンプルなものにして,純粋に「見やすいこと」を重視する調整をしました。


シームレス性にこだわったヒーローアーツ

着想は「ストリートファイターV」


4Gamer:
 岡野さんから見た,リアルタイムとターンが同居するからこその苦労はどんなところでしょう?

岡野氏:
 根っことして気にしていた部分は荻原さんと同じで,リアルタイムの最中にゲームが止まって大丈夫か,というところですね。切り口を少し変えると,我々がいちばん悩まされたのがヒーローアーツの演出なんです。ヒーローアーツは当初,いまのように画面全体に大きく出てくるものではなく,最初から最後まで小窓のなかで完結する形だったんですよ。

4Gamer:
 それはどのような理由で?

岡野氏:
 ゲームのテンポ感を損ないたくなかったのが大きいですね。ただ,ここには2つ課題がありました。
 まず,小窓だけで演出していた場合,ゲームは進行し続けているため,ヒーローアーツへの対策が容易になってしまうんです。例えば,真空波動拳が発動するまで5秒かかるとして,その5秒の間にシールドを張るなどすれば対応できるんですよ。
 これはこれでゲームとして戦略性の幅が広がるようにも思えるのですが,対象のユニットが場から離れて不発に終わる可能性もありますし,そもそも複雑になりすぎてしまうので,良くないということになりました。

4Gamer:
 必殺技なのに不発の可能性があるのはちょっと残念ですよね。

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岡野氏:
 そうした懸念点を払拭するため,発動時には画面を全部止めて,演出を全面に出してあとに効果を及ぼすようにしてみたら,今度はテンポ感が問題になりました。ヒーローアーツを撃つたびにゲームが止まってやきもきすることが増えてしまったんです。
 テンポ感を保ちつつ,ヒーローアーツの演出による見栄え,ダイナミック感も大事にしたい,これらを両立させるのにはどうしたらいいのか,本当に悩みました。

4Gamer:
 演出面でも魅力のある要素にしたかったと。

岡野氏:
 すでにゲームを深くプレイしてくれているみなさんであれば,当然やりやすさを求めてテンポ感を重視すると思いますが,バトルを見ている視聴者,あるいは初心者のプレイヤーさんはダイナミックさを求めていると思ったので,そこも担保したかったんです。

4Gamer:
 そこからどういったきっかけで現在のような形に?

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岡野氏:
 弊社のタイトルで恐縮なのですが,「ストリートファイターV」PC / PS4)でクリティカルアーツが発動する瞬間,実はゲーム内の時間が止まっているんですよ。演出が入ったあとに時間が動き出すのですが,あれで時間が止まっていると感じるプレイヤーさんはおそらくいないと思います。

4Gamer:
 それはなぜでしょうか。

岡野氏:
 動きは止まっているけど,さりげなく演出につながってゲームも再開される,一連の流れがシームレスにつながっているから,ゲームを止められたと感じにくいのではないか,と思っています。
 そうした点を参考にし,バトル中にいきなりゲーム全体が変化するのではなく,まず小窓のなかで演出が始まって,そこから大画面の演出に移り変わり,再びもとの画面に戻っていく,という形に落ち着きました。


荻原氏:
 少し補足すると,今の大画面の演出って上下が少し切れているんですよ。最初は本当に全画面に出していたんですが,それだと盤面から完全に切り離され,意識が変わってしまう可能性がありました。
 小窓から全画面への移り変わりで演出のシームレスさを出しつつ,大画面の上下から盤面が見える形にすることでゲームへの意識も途切れないようにしました。本当に少しでもつながっているように見せたくて,秒数とかにもこだわりましたね。

岡野氏:
 ありましたね。いまは演出全体の長さがどのヒーローでも基本的に同じ秒数になっていますが,当時は演出によって長短があったんですよ。それだとゲーム体験が変わってしまうので一律にしたのですが,演出を全部直すのは結構大変でした。


バイソンは飛ばない

議論を重ねたユニット性能


4Gamer:
 カードの内容や性能はどのように決めているのでしょうか。

荻原氏:
 ゲーム側はこういう体験を与えたい,逆にアート側はこういう表現や世界観でまとめたい,といった部分を話し合って決めていきます。当初はもちろん細かいパラメータなどは決めていなくて,簡単な方針を決める程度でした。当時はマンパワーで作っていたので,岡野さんと缶詰になって,会議室で1日中,「まずは赤のカードを100枚作ろう」みたいに進めていました。

岡野氏:
 延々とやっていましたね(笑)。

荻原氏:
 いまはもうちょっとスマートにやっていますけどね(笑)。当時は「『空戦』持たせたい!」「このキャラクターは飛ばないから!」みたいな話し合いをしていました。バルログは飛ぶか飛ばないかはアツい議論でしたね……。

岡野氏:
 バルログは許容範囲ですけど,バイソンに空戦を持たせるのはダメです,なんて話をワイワイとしていましたね。

結局,バルログにも空戦がつかなかったようだ
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荻原氏:
 そんな感じで,当時は,ユニットのコンセプトに合った形でMP,攻撃力,HP,能力を大雑把に決めてました。その後,カードデザインの方針に則ってパラメータに落とし込み,実際にプレイしてカードの評価をしながら調整を進めました。相当な枚数あったんですが,そこはカードチューニング,テスターチームが頑張ってくれました。

4Gamer:
 ユニットとヒーローアーツの性能はどちらに合わせたのでしょうか。

岡野氏:
 本作の基本的なユニット感は,MP3,攻撃力2,HP6みたいなバランスになっているんですが,実はこのバランスになる前からヒーローアーツを考えていたんですよ。なので,ユニットの性能に合わせてヒーローアーツを調整した形になります。いくつかのヒーローアーツは,あとから強引に演出を合わせたものもありますね。

荻原氏:
 カードでもありましたね,それ。実際にテストプレイをしてから,一部のレアリティを入れ換えたこともあったんですが,そこでまた岡野さんが無茶なことを言ってくるんですよ……。「このカードはイラストがエピッククラスだから,やっぱりエピックにしよう」みたいな(笑)。

岡野氏:
 このあたりはすでにブレーキが壊れていたときですね(笑)。

荻原氏:
 ちょっと待てと(笑)。

岡野氏:
 あと,効果とイラストを入れ換えることもよくありましたね。効果自体は据え置きで,このキャラとこっちのキャラを入れ換えて,とか。

荻原氏:
 登場する作品それぞれにファンの方がたくさんいらっしゃるので,ゲームライクにバランスを調整しつつ,イラストと効果がかけ離れすぎないように,というのは意識しましたね。
 その関係で途中から再調整することも多く,本当にいろいろな人に頑張ってもらいました。遊んでいただける人に「この能力はこのキャラっぽいよね」と思ってもらえれば嬉しいですね。

4Gamer:
 ちなみに,そのほかに没案のようなものはありましたか。

岡野氏:
 初期の企画書にあったのは,バトル中にヒーローアーツが成長するシステムですね。例えばリュウであれば,最初はヒーローアーツを使えないけど,カードをある程度使うと真空波動拳が使えるようになり,さらにカードを使うと威力が上がっていく,みたいな。最初期の没案なのであまり細かくは覚えていないのですが(笑)。

荻原氏:
 これはヒーローが「成長」している感じがほしいという意見から生まれたアイディアですね。威力が上がっていくというよりは,ヒーローアーツが変化していくような形だったと思います。ただ,実際に遊んでみると,バトル中にアーツが変化していく部分までコントロールするのが難しかったことや,どのアーツに合わせてデッキを作っていくのかが分かりにくかったことから,オミットとなりました。
 でも,成長要素は別の形で残っているんですよ。遊んでいる人はご存じかと思いますが,ヒーローアーツは最初1つしか使えないのですが,ヒーローのレベルを上げると最大3つに増えるんです。

画像集 No.025のサムネイル画像 / 「TEPPEN」インタビュー。独自のシステムが誕生した経緯や登場キャラクターの選定基準,開発の苦労,そして今後の展開を岡野D&荻原Dに問う

4Gamer:
 そこにはどのような意図が?

荻原氏:
 ヒーローアーツは,最初にある真空波動拳や黒き選別などは,その色の特徴を表すシンプルな効果にしてあって,2個目,3個目のものは,ダメージ効果を上げる電刃練気,連撃を付与する滅・昇竜拳など,遊び方を増やしていくようなものになっています。
 フェアに戦うという意味では,ヒーローを獲得した瞬間からすべてのヒーローアーツが開放されているべき,みたいな考えかたもあると思いますが,本作ではある程度そのヒーローでの遊び方に慣れていったところで触れてほしいんですよ。プレイヤー自身のプレイ体験とともに成長し,習得していくようなイメージですね。

岡野氏:
 カードを集めるのもそうなんですが,せっかくヒーローとして立てているので,プレイしてくれたことに対するプレイヤーさんへの恩恵といいますか,ヒーローと一緒に成長していく関係性を楽しんでいただければと思います。


リオレウスは赤ではなく緑だった

二転三転したキャラクター選定


4Gamer:
 「TEPPEN」に登場するキャラクターや作品はどのように選ばれたのでしょうか。

岡野氏:
 まずは人気のあるキャラクターを積極的に採用しました。そのうえでゲームバランスなどを加味して選定するのですが,キャラクターの特徴も大きなポイントになっています。
 例えば「ストリートファイター」だったらまずはリュウ,となるとケンも入れたい,でも,本作にはいろいろなタイトルのキャラクターが出てくるわけだから,リオレウスやネルギガンテのようなモンスターや,エックスなどのレプリロイド,ロボットも必要になる。それだと男性ばかりになるから春麗やモリガン・アーンスランドなどの女性もほしい,そんな感じで決まっていきましたね。

荻原氏:
 キャラクターの選定は,カプコンさんからご提案をいただいて進めていったのですが,ゲームバランスや見せ方を話し合っているうちに二転三転しました(笑)。

岡野氏:
 しましたね(笑)。

4Gamer:
 「ヴァンパイア」シリーズからはデミトリ・マキシモフではなく,モリガン・アーンスランドが登場しているのは,やはり男女比を考えて?

岡野氏:
 1つに男女比もありますが,純粋にモリガン・アーンスランドは「MARVEL VS. CAPCOM」シリーズなど,原作の「ヴァンパイア」以外の格闘ゲームにも早くから参戦していて,「ヴァンパイア」は知らないけど,モリガン・アーンスランドだけは知っているというプレイヤーも多いんですよ。

開発段階のモリガン・アーンスランド
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4Gamer:
 「バイオハザード」シリーズから登場したヒーローが,アルバート・ウェスカーなのも似たような理由なのでしょうか。

岡野氏:
 これは,ジル・バレンタインが登場したからこそ言えるのですが,普通に考えたらアルバート・ウェスカーの前にジル・バレンタイン,あるいはクリス・レッドフィールドですよね。ただ,弊社のタイトルではダークヒーローが少なく,紫や黒のヒーロー選定が大変なんです。
 そんな中でアルバート・ウェスカーは,ダークヒーローでありながら「バイオハザード アンブレラ・クロニクルズ」でプレイヤーキャラクターにも抜擢されるほど,1人のキャラクターとして確立しているので,ジル・バレンタインより先に登場しました。ジル・バレンタインが出るまでは,なぜアルバート・ウェスカーなのかとはよく言われましたが(笑)。

荻原氏:
 海外のレビューで書かれていましたね。「ジルはいないのか!?」「ジルが来たら神ゲーなのに!」みたいな声が多くて,当時は「もうちょっと待って!」と思っていました(笑)。


4Gamer:
 ちなみに,開発途中で色の変わったヒーローなどはいますか。

荻原氏:
 実は,リオレウスは赤ではなく緑でした。そもそも緑は,ユニットの能力が高めでユニット自体が強力というコンセプトがあります。その点から,モンスターであるリオレウスは緑に入るのがゲーム的に自然ではないかと,当初は考えました。
 ただ,キャラクターの印象と一致しなかったことと,リオレウスが攻撃的だったり,攻撃手段として火炎を放ったりすることから,赤色のイメージが強く,本作では赤に属することになりましたね。今思えば,むしろ赤がぴったりだったわけですが(笑)。

岡野氏:
 カプコン作品は攻撃的なキャラクターが多くて,何も考えないと赤と黒だけになってしまうんですよ。例えばエックスもチャージショットにフォーカスすれば攻撃的な赤ですし。でも,エックスの魅力はそこだけじゃないですよね。いろいろと新しい技を覚えたりライフアップしたりするので緑らしくもあるんです。
 最終的には,各キャラクターが持つ複数の特徴や魅力を踏まえたうえで,パズルのように当てはめていき,今の形になりました。

開発段階のリオレウス
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最初は5色で考えていた

似た色味の紫と黒を採用した理由


4Gamer:
 ヒーローやカードは4つの色に分けられていますが,そもそもなぜ赤,緑,紫,黒の4色になったのでしょうか。紫と黒は色味も近いですし。

荻原氏:
 実は,最初は5色だったんですよ。デジタルカードゲームの多くは,本作で言うところのヒーローが立っていて,そのヒーローでしか使えないカードと,ニュートラルなカードがあって,それらでデッキを構築できるものが多いんです。
 でも,自分たちとしては,単色をメインにしつつデッキの組み合わせによっては混色のような“組み合わせの発明”をしてもらえるかもしれない,といった可能性にも挑戦したかったんです。当時は,トレーディングカードゲームでは定番ながら,デジタルカードゲームで実現できているところは珍しいと考え,その方向からアプローチすることにしました。

4Gamer:
 新しさに挑戦したかったと。

荻原氏:
 あとは色味の印象として,赤ならカードゲームを触っていなくても攻撃的な印象を持つでしょうし,緑なら回復的な印象を持つだろうと思いました。ここからが悩みどころだったのですが,例えばカウンター色,コントロール色,破壊色,と分けた場合,ヒーローの割り当てが難しかったのと,そもそも5色だと分かりにくいのではないかと思ったんです。

4Gamer:
 そこで4色に絞っていったんですね。

荻原氏:
 これ,実は岡野さんからご提案いただいたんですよ。カウンターとコントロールは1つの色にまとめたほうがシンプルでいいんじゃないかと。ヒーローのラインナップ的にも,ダンテやモリガン・アーンスランドのような,魔人や魔族としてまとめられるキャラクター達がいたので紫でいくことになりました。
 最後に,破壊やリスクのイメージがある色として,アルバート・ウェスカーのようなキャラクターをまとめる黒が決まった感じですね。

4Gamer:
 赤,緑,黒のなかに紫が入るのは珍しいですよね。

荻原氏:
 そもそも黒と紫の色味が近いことも問題になったのですが,アートディレクターが黒と紫の色味を調整すれば見やすさを担保できる,と言ってくれたのは大きかったです。色が決まったあとは,色に合わせて能力を割り振っていくなどして,個性を出すようにしていきました。

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岡野氏:
 リリース時のヒーローは8体でしたが,最初は4体の予定だったんですよ。5色で進めようとしていたときは5体だったのですが,色を減らした結果「4体は少なすぎやしないか」となり,8体でリリースすることになりました。

荻原氏:
 これが地獄への始まりでしたね……。なんせ作業が2倍になるわけですからね(笑)。ただ,せっかく2体ずつ作るなら,ヒーローごとにプレイングを分けたいと思い,同じ赤でもリュウなら直接的な火力系,リオレウスなら攻撃力アップ系にするなど,ヒーローごとにベーシックデッキのコンセプトを変えました。同じ色でも各ヒーローで特徴が出ているのは,この流れで生まれたものですね。

4Gamer:
 ヒーローの色で言えば,エックスと春麗は緑に分類されますが,衣装やデザインが青い印象があるので,個人的には2人とも青のイメージです。

岡野氏:
 確かに,どちらも青っぽいイメージはありますね。本来,キャラクターをデザインする場合,服装などの見た目と属性をマッチさせるのが王道なのですが,本作ではキャラクターデザインがすでに決まっているので,普通に考えるとキャラクターの見た目で属性を決めることになります。
 しかし本作の場合は,見た目だけで属性を決めてしまうと,本作のゲームシステムにハマらないことが多いので,キャラクターの特徴を重視して属性を割り振っています。……とはいえ,特徴に重きを置くとイラストの見た目と属性がかけ離れてしまうこともあるので,背景やパーティクルで属性の色を出すなどの工夫でカバーしていますね。
 例えば,レジェンダリーの「超文明の遺物 エックス」であれば,緑感を出すために背景をわざと森にしているんですよ。作画ではそういった部分でのフォローも大切にしています。

荻原氏:
 ゲーム側でも持たせる能力の印象などに注意して,なるべくその色らしい印象を持てるようにしていますね。

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最終的なヒーロー数は決まっている

ヒーロー,カードパックの追加ペースは?


4Gamer:
 日本,アジア圏でのリリースと同時にジル・バレンタインが追加されましたが,今後はどのようなペースでヒーローを追加されていくのでしょうか。

荻原氏:
 先日開催させていただいた「TEPPEN Asia Japan Premiere」でも発表したように,ひとまず2019年内に新たなヒーローとカードパックをリリースする予定ですので,そちらを楽しみにしていただければと思います。

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 ガンホーは本日(2019年8月8日),カプコンと共同開発したスマホ向け新作アプリ「TEPPEN」(テッペン)のメディア向け発表会を東京都内で開催した。本稿では,ゲームの内容や今後のロードマップに関する発表や,梅原大吾氏らプロゲーマーによるエキシビションマッチが行われたイベントの模様をレポートする。

[2019/08/08 22:09]

岡野氏:
 あとはあれも言っていいんじゃないですか? 最終的にヒーローがどれくらいの数になるのか,そこは現時点で設定してあるんですよ。

4Gamer:
 ちなみにその数は……?

岡野氏:
 それは言えないですね(笑)。

4Gamer:
 えぇ……(笑)。いま出ている数の倍よりも多くなるのでしょうか。

岡野氏:
 倍よりは……,多いかな?

荻原氏:
 私はいまの会話は何も聞いていなかったということで(笑)。具体的な数やペースはお伝えできませんが,新規ヒーローが増えたからといって,既存ヒーローの影が薄くなるような状況にはしたくないと思っています。

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4Gamer:
 今後ヒーローが増えても,既存ヒーローの活躍の場もあると。

荻原氏:
 そうですね。また,ヒーローとパックはある程度一貫性のあるコンセプトを持たせているので,ヒーローアーツだけが単独でインフレすることはありません。例えばジル・バレンタインなら,新要素である「探索」をキーにしたヒーローアーツがあるので,新カードパック「DAY OF NIGHTMARES」のキーとなる遊びも,なんとなく想像していただけるかと思います。今後も,ヒーローとカードパックは何かしらのコンセプトや一貫性を持って作っていく予定なので,ご期待ください。

4Gamer:
 今後もヒーローを先に出して新要素を見せつつ,その後にカードパックをリリースするような形になるのでしょうか。

荻原氏:
 今回はジル・バレンタインが出たあとにカードパックが出る形となりましたが,ヒーローとカードパックが同時に出るパターンもあるかもしれません。ただ,ヒーローが出てからカードパックが出るまでにとても時間が空くようなことはなく,トレンドが移り変わらないくらいのタイミングで出していくと思います。

4Gamer:
 なるほど。カードパックを出していくペースは決まっているのでしょうか。

岡野氏:
 そこもまだ詳しくはお伝えできない部分ですが,プレイヤーさんの状態を見ながら判断していきます。例えば,すでに控えているヒーローは,プレイヤーさんのご意見をくみ取りながら検討していくつもりです。
 ありがたいことに,さまざまなリクエストをいただいているので,それらを無碍にするつもりはありません。プレイヤーさんが求めているキャラクターをできる限りタイムリーに実装したいと思っており,カードパックも同様に,求められているタイミングで出していきたいと考えています。

4Gamer:
 ゲーム内ではすでに,アンリミテッドとスタンダードの区分がありますよね。つまり今後,いわゆる“スタンダード落ち”が発生していくと思うのですが,カードパックが出るスパンが決まっていないと,スタンダード落ちのタイミングがバラついていきますよね。となると,カードパックが出るタイミングは一定になりそうな気がしているのですが。

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岡野氏:
 ……しっかり分析されていますね(笑)。

荻原氏:
 まさに本作は,大会などを行うことを前提としているため,スタンダード落ちは避けてとおれません。カードゲームである以上,カードプールがどんどん増えていくのは自明の理ですし,強く公言はしないまでも,UIで見せておく形に落ち着きました。

4Gamer:
 ということは。

荻原氏:
 もしかしたら推測されているとおり,そう遠くないうちに,一定のスパンでカードが追加されるようになるかも,と思っていただいても大丈夫かと思います。


ただの補完要素ではない

フレーバーテキストで広がる「TEPPEN」の世界


4Gamer:
 今後追加されていくヒーローは,すべて自由に使えると思っていいのでしょうか。

荻原氏:
 その認識で問題ありません。極端な話,お金を払わないと入手できないヒーローなどは,大会実施を公言している以上,絶対にありません。必ず手に入ります。
 実は,北米欧州版でリリースした際には,各ストーリーをクリアしないとヒーローを開放できない仕様だったんですが,アジア圏にリリースするタイミングで,最初から全員使えるようにしたんです。

岡野氏:
 そもそものお話を補足すると,カードゲームである以上,プレイヤーにとってはカードをプレイすることがメインであって,それ以外のものは補完要素だと思っているんですよ。でも,カードゲームとしてみなさんに愛着を持っていただくには,ゲーム性以外の部分でも2種類の魅力が必要だとも思っています。
 まず1つはカード1枚1枚の魅力。これは,手前味噌になってしまうんですが,弊社が長年培ってきたキャラクター達を登場させることで,担保できていると思います。もう1つは,キャラクター達が集まった世界観の統一感。これがないと,いまいち没入できないんですよね。

4Gamer:
 とくに今回は多種多様なキャラクターが登場するだけに,そこは大事になりそうです。

岡野氏:
 極端な話,アニメ調のエックスとリアル調のアルバート・ウェスカーが並んだら,1つの作品としての統一感が弱くなってしまいますよね。なので,今回はオリジナルのキャラクターの魅力を損なわない形で必要に応じてアレンジを加え,1つの統一された世界を表現できるアートを目指しました。
 そして,その世界観を補完するのがストーリーモードです。もちろん,まずは「強いカードが欲しい」「バトルをプレイしたい」,これで構わないのですが,自分が愛用しているカードや好きなカードを入手したとき,そのキャラクターがどのような生き様なのかが気になる方への答えとして,ストーリーモードやフレーバーテキストを用意しています。これらの存在で奥行きを感じてもらい,「TEPPEN」にさらなる愛着を持っていただければ嬉しいですね。

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4Gamer:
 カードゲームが原作を知るきっかけになることも往々にしてありますもんね。

岡野氏:
 そういった経緯でストーリーモードを実装していたので,ストーリーモードをクリアしないとヒーローを使えないのは順序が逆になっていると思い,最初から全員使える形にしました。
 なので,まずは気になったキャラクターを使ってみてください。もし興味が湧いたり愛着を持ったりしたら,ストーリーモードやキャラクターのフレーバーテキストを読んでみてほしいです。

4Gamer:
 ストーリーモードでは各ヒーローの冒険のプロローグが描かれていますが,こちらの続きは配信されるのでしょうか。

岡野氏:
 結論から言うと,幻影の地に向けて旅立ったヒーローがどんな冒険をするのか,あるいはジル・バレンタインのように新しく加わったヒーローがどう関わっていくかなどは,今後明らかになっていきます。
 リリース時から出ているコアパックのカードでは,オーソドックスな,原作にもありそうなシーンを切り取った表現のカードが集められているのですが,今後追加されていくカードパックでは,先のシナリオがわかるようなマッチアップであったり,フレーバーテキストだったりを追加していきます。

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4Gamer:
 直接的にストーリーを出していくのではなく,断片的な情報で想像を膨らませる。

岡野氏:
 そのほうがカードゲームとして,プレイヤーさんも嬉しいと思うんですよ。読み物をただ渡されるよりは,たくさんカードを持っていれば少しずつわかるようになっていくような,自分の資産として楽しめますしね。
 なので,今後は「TEPPEN」だからこそ起こり得る,リュウとリオレウス,アルバート・ウェスカーとエックスのようなマッチアップも楽しんでいただければ嬉しいですね。


TEPPEN.ChはUIを含め改修予定

ランキングのデッキはあえて非公開に


4Gamer:
 先日開催が発表されたグランプリはどのような遊びになるのでしょうか。

荻原氏:
 8月20日からグランプリ“CORE”を開催するのですが,これは3ラウンド制で行われる,ランクマッチとはまだ別軸の対戦コンテンツですね。勝つと最終的に新しく追加されるカードパックのチケットなどをもらえるのですが,ランクマッチがレーティング制で縦の順位を決めるものだとすれば,グランプリは複数の期間のなかでの連勝数を競って,負けた時点で敗退という,少数で競っていくモードになります。

4Gamer:
 安定して勝ち続けることが重要なんですね。

荻原氏:
 そうですね。例えば,全5回のうち一定回数勝利すればAグループに,そこでまた何回か勝てばBグループに,最終的には決勝ラウンドに進出した者同士で競い合う,といった感じで複数のラウンドに分けて戦うことになります。
 毎月毎月,レーティングポイントの累計だけで競うのではなく,同じ勝率の人同士で戦って最終的に何勝できるのか,そんな少し違った対戦を提供したくて用意したのがグランプリですね。

「TEPPEN」公式サイト,「グランプリ」解説


岡野氏:
 グランプリは,ランクマッチとは環境が違うんですよ。そこも新しいと思います。いまはまだ初代カードパック「CORE」しかないので,ランクマッチと同じ環境なのですが,例えば,今後は特定のパックのみで対戦する環境を提供できたらとも考えています。その場合,あらためてデッキを考え直す必要が生まれるので,違った面白さが生まれるのではないかなと。

4Gamer:
 対戦形式で言えば,その場で引いたカードで構築した即席デッキを使う,いわゆる2ピック形式のバトルは今後実装されるのでしょうか。

荻原氏:
 ここはノーコメントで……と言いたいところですが,ゲーム内タブで「コロシアム」の中に「グランプリ」しかないことを考えると,想像はつくかと思います。

4Gamer:
 なるほど。期待しても良さそうですね。ゲーム内タブで言えば,「TEPPEN.Ch」はどういった意図で実装されたコンテンツなのでしょうか。

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荻原氏:
 あそこは,ランクマッチなどの対戦から,オススメしたい対戦や,面白い対戦を特定のアルゴリズムで自動的に抽出する場所で,使用されたデッキが公開される場所でもあります。対戦をただ抽出しているだけでなく,デッキ作りの参考になる場となっていたり,チュートリアル動画への導線になってたりもします。
 ただ,リプレイデータを収集してくる仕様上,クライアントやサーバーのアップデートをした直後は,「入荷待ちだぜ」と何もない状態となってしまいます。これは,翌日になればまた対戦動画が見られるようになるのでご安心ください。

4Gamer:
 ゆくゆくは大会の試合などが配信されることも?

岡野氏:
 そうですね。チャンピオン帯の人達をうまく収集してオススメしていくような拡張もしたいと思っています。
 またUIも改修していく予定で,そのときに何の動画が上がっているかをもっとわかりやすくしていきたいですね。タグを付けるのか言葉で絞るのかなど,方法はまだ分かりませんが,動画をもっと見たくなるような形にしていくつもりです。

4Gamer:
 「TEPPEN.ch」はデッキを確認できますが,ランキングでは確認できませんよね。

荻原氏:
 ランキングでのデッキ公開は対策を考えられてしまうのでフェアじゃないと思い,非公開としています。できるだけプレイを重ねたうえで実際に読み取ってほしいですね。
 例えば,「TEPPEN.Ch」で公開されているデッキはキュレーションされたものなので問題ないのですが,ランキングのデッキがタイムリーに見えてしまうと,本作の本質とは違った部分の読み合いが生まれてしまうので,それは違うなと。

4Gamer:
 対戦相手のデッキが見られないのも同じような理由ですか。

荻原氏:
 そうですね。基本的には近しいランクの人とマッチングするようになっているので,あまり生の状態でデッキを見せてしまうのはよくないと思っています。


ガンホー作品は登場するとしてもコラボ扱い

要望次第で水着スキンなどの販売も?


4Gamer:
 今のところ,登場しているのはカプコン作品のキャラクターだけですが,ガンホー作品のキャラクターが登場する予定などはありますか。

荻原氏:
 いまの基本的な方針としては,カプコンさんのキャラクターでしっかりとやらせていただくつもりです。今後どうなるかはまだわかりませんが,仮にガンホーのキャラクターが入るとしても,この作品での扱いとしてはコラボになると思います。
 こっそり入れちゃっても面白いですけどね。「あれ,これオラージュじゃない?」みたいな。そうしたら多分もう私はこの席にいられなくなると思いますが(笑)。

岡野氏:
 それはそれで面白いですけどね(笑)。

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4Gamer:
 ちょっと切り口は変わりますが,今後,カードパック以外での課金要素に,ヒーローのスキンなどは登場する予定はありますか。例えば水着のジル・バレンタインが使えるなど。

荻原氏:
 ヒーロースキンは,レビューでもご意見としていただいているので,前向きに検討したいですね。
 仮に水着のジル・バレンタインを出すとして,ヒーローアーツなどは変わらず,ただただ見た目が変わるスキン的な扱いがいいとは思っています。ただ,スキンも一概に何でもかんでも入れる,というわけにはいかないので,ひとまず今は前向きに検討します,とだけ。

岡野氏:
 水着のような季節系のものもいいですが,ジル・バレンタインならS.T.A.R.S.時代のコスチュームなども良さそうです。このあたりはプレイヤーさんのご意見を聞きながら選定していこうと思います。

4Gamer:
 これはただの願望なのですが,ドット絵のエックスを使いたいです!

荻原氏:
 それはアリなんですか!?

岡野氏:
 まずアートディレクターを攻略するところからですね(笑)。でも,シークレットのカードにするのは面白いかもしれないですね。

荻原氏:
 スキンとは少しずれますが,カードパック以外の課金要素としては,すでにデッキが作られている「構築済みデッキ」は可能性があるかもしれません。カードプールがある程度溜まってきた段階で,新規プレイヤーさんが遊びやすい環境を提供する意味でも,検討していきたいと考えています。ひとまず,いまのところはまったく新しい課金システムを入れる予定はありません。

岡野氏:
 当たり前なのですが「お金をかければすごく強くなる」みたいな課金システムは入れません。そこは約束します。


エモート機能の予定はナシ

ネットワーク面は早急な改善を予定


4Gamer:
 続いて,ゲーム内の仕様についてうかがいたいと思います。
 ヒーローのレベルを上げていくとベーシックカードが手に入りますが,例えばダンテをレベル16まで育てないと「ジャックポット」が手に入らないなど,ややハードルが高い印象を受けています。せめて,入手方法をゲーム内で表示するなどすることはできないでしょうか。

荻原氏:
 そうですね。経験値が入ったときに次のレベルで入手できるカードを表示してはいますが,実際,ベーシックカードの入手方法がわからなくて困っている方を見かけることも多いので,改善すべきところだと思っています。

岡野氏:
 その点で言えば,最初からヒーローが全員使えるようになった関係で,デッキ編成のリストに最初から9個のデッキが入っている状態になったのですが,新規デッキの作り方が分からないというご意見もいただきました。

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荻原氏:
 デッキ編成の画面で下にスクロールして,「+」をタップすれば新規デッキの編成に進むのですが,現状だと分かりにくくなっていますね。例えばスクロールできることを明示する矢印を付けるなど,見せ方を考えていきたいと思います。

4Gamer:
 あとは,対戦中,あるいは対戦終了後に対戦相手とのやり取りができるような,いわゆるエモート機能が入っていませんが,こちらは実装する予定はありますか。

荻原氏:
 開発時には仕様があったのですが,これはオミットしました。やっぱり,どういう表現にしても,煽りっぽくなってしまうケースが多いんですよね。それに加えて,リアルタイムでゲームが進行する以上,あまりその機能を使っている余裕もなかったので,いまのところは実装する予定はありません。

4Gamer:
 表情が見えないので,ただのお礼が煽りっぽくなるという。

荻原氏:
 ただ,対戦相手の動きが本当にすごくて驚くこともあるじゃないですか。そういうときのためにひと言送れてもいいかな,と思うこともあります。

4Gamer:
 対戦終了後に「いいね!」みたいなものが送れるくらいがちょうどいいかもしれませんね。そこからフレンド登録やコミュニティの形成につながる可能性もありますし。

荻原氏:
 確かに一理ありますね。こちらは要検討とさせてください。

4Gamer:
 ヒーローのライフを回復するアクションカードなどが,上限である30を超えて回復しないのは仕様でしょうか。

荻原氏:
 開発中に上限がかかっていない状態があったんですが,赤と緑で対戦したときに緑側のヒーローのライフが50近くになり,30枚しかデッキがない状態では倒しきれないような状態ができてしまって……。

岡野氏:
 あれは絶望的でしたね(笑)。

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荻原氏:
 これがまかりとおると,ヒーローのライフを回復することでタイムアップ勝ちを狙うことができてしまうんですが,それは正直我々の望んでいる戦い方ではなくて,できれば5分間で完全決着になるようなスピード感になってほしいんです。
 「TEPPEN Asia Japan Premiere」で行われた,ときどさんとJustin Wong(ジャスティン・ウォン)さんの試合のように,互いにコントロール色が強いと時間切れになることもあるんですが,基本的には完全決着で「俺がTEPPENだ!」と思ってほしいんですよ。なので,あまりにもゲーム時間が長くなるような設計は考えていません。

4Gamer:
 ゲームの仕様について最後に1つだけ聞かせてください。現在,ネットワーク面でのトラブルが若干あるようですが,その点についてはいかがでしょうか。

荻原氏:
 通信関連で不安定な部分などはご指摘いただいていて,こちらは早急な改善を目指しています。
 ネットワークや端末に依存しているところもあるのはリアルタイムでやっている苦しさでもあるのですが,対戦をメインにしている以上,言い訳のできない部分なのでチーム内の課題として取り組んでいます。


デッキ構築は慣れたらでOK

好きなカードで戦うことが脱初心者への鍵


4Gamer:
 初心者のプレイヤーに向けて,デッキ編成や立ち回りに関するアドバイスはありますか。

荻原氏:
 まず最初にお話しできるのは,とあるゲームメディアがすごくしっかりとデッキの紹介や立ち回りが書かれているので,こちらを見ていただくのがいいと思います。4Gamerさんって言うんですけど(笑)。

4Gamer:
 わざわざ宣伝いただきありがとうございます(笑)。

荻原氏:
 真面目な話,差支えのない範囲でお話しさせていただくとすれば,最初は焦ってMPが溜まるとすぐにユニットを出したくなるのですが,そこはグッと我慢してほしいです。基本的にはMPが溜まるのを待って,カウンターを狙っていくのがオススメです。

4Gamer:
 焦らないのが大事。

荻原氏:
 ゲーム内のTipsにも書いているのですが,攻撃力2/HP5のユニットが攻撃力2/HP4のユニットと殴り合ったら,前者が勝って生き残るんですよ。そういった基本ルールのもとに,相手がこれを出してきたら,こっちはこれを出せば負けない,みたいな部分をまず押さえてほしいですね。

4Gamer:
 アクションカードの応酬,アクティブレスポンスで押さえるべきポイントはありますか。

画像集 No.034のサムネイル画像 / 「TEPPEN」インタビュー。独自のシステムが誕生した経緯や登場キャラクターの選定基準,開発の苦労,そして今後の展開を岡野D&荻原Dに問う

荻原氏:
 アクティブレスポンスは,最初は難しく感じるかもしれませんが,理解してうまくハマったときに脳汁が出る,面白いシステムになっています。まず覚えていただきたいのは1つだけ。「あとから使ったカードの効果から発動していく」ということですね。もう少し踏み込んだ話をすると,アクティブレスポンス中はボーナスでMPが2増えるので,それも有効活用してほしいです。

4Gamer:
 では,岡野さんからはデッキ編成についてのアドバイスをお願いします。

岡野氏:
 「TEPPEN」を初めて遊ぶときは最初にもらえるカードパックを全部開いてから好きなヒーローを選び,編成画面にある“アシスト編成”のボタンを押してください。そうすると新しく入手したカードを使って,ヒーローに合ったデッキが自動生成されます。
 その後,デッキのアレンジをしたいと思ったら,「TEPPEN.Ch」に出ている動画や上手いプレイヤーのデッキを参考にするのがいいですね。

4Gamer:
 最初から無理に自分で考えようとする必要はない,と。

岡野氏:
 最初はデッキをそっくりマネするくらいでもいいと思います。慣れてきたら自分でカードを入れ換えていく,くらいで。それと,できあがったデッキはある程度使い続けるのがオススメですね。同じデッキを使っていれば,そのデッキに採用した30枚の効果は自然に覚えられますし,対戦相手が使う流行のカードもだんだんと把握できます。

4Gamer:
 カードを覚えるのはとても大事なことですよね。

岡野氏:
 カードリストを眺めてすべて暗記する必要はまったくないので,自分が好きな30枚を使い続けて対戦を繰り返していけば,自然と戦い方も身について強くなっていくと思います。なので,まずはランクマッチやフリーマッチで,気軽に対戦していってください。自分の好きなカードでプレイすることが,初心者を脱出するいちばんの鍵になると思います。

荻原氏:
 岡野さんのおっしゃっているとおり,急いでカードを集めたり,どれが強いカードなのかと考えたりするよりは,好きなカードを使って対戦するのがいいと思います。

4Gamer:
 「初心者だし負けて当然!」くらいの心持ちだと,負けても凹まずに済みますよね。


イラストを楽しむだけでもいい

絶対に後悔させない作品


4Gamer:
 今後の展望などについて,お話しできる範囲で教えてください。

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荻原氏:
 まずは,すでに発表されている世界大会などに向けて,しっかりとカードパックのアップデートをしていったり,環境をちゃんと作っていったりと,安定した土台を作り上げていくのが目下の目標かと思っています。とにかく土台が大事なので,しっかりと着実に足元から作り上げていきたいですね。

岡野氏:
 ジル・バレンタインや新パックの追加で新しい遊びが提供できると思いますし,「TEPPEN」だからこそできるようなシチュエーションのイラストも用意していますので,期待してほしいですね。

4Gamer:
 最後に「TEPPEN」をすでに遊んでいるプレイヤー,そして気にはなっているけどまだプレイしていない人に向けて,それぞれメッセージをお願いします。

荻原氏:
 すでに遊んでくれているみなさん,ダウンロードしていただき誠にありがとうございます。いろいろなご意見を日々いただいていて,すごく研究してくださっているところが見え,届けたかった新しいカードゲーム,アルティメットカードバトルを楽しんでもらえているようで,本当に嬉しく思います。

 まだプレイしたことがない方は「カードゲームって難しそう」と思っている人がほとんどだと思います。実は頭で考えすぎずともポンポンカードを出すだけでも楽しめますし,追求しようとすればターン制のカードゲーム以上に奥行きがある作品となっているので,まずは触ってみてほしいですね。

画像集 No.039のサムネイル画像 / 「TEPPEN」インタビュー。独自のシステムが誕生した経緯や登場キャラクターの選定基準,開発の苦労,そして今後の展開を岡野D&荻原Dに問う
岡野氏:
 すでに「TEPPEN」をプレイされているみなさまには,末永くプレイしてもらえるように,今後も新しいシステムや遊びなどを追加し,今までにない体験を提供したいと考えているので,ご期待いただければと思います。

 まだプレイされていない方にお伝えしたいことは,まずは本作に登場するキャラクターだけでも見てほしいということですね。もちろんゲームも素晴らしい内容になっているのですが,カプコンのキャラクターが新しい形で登場していて,グラフィックスもダイナミックに表現されているので,それを見るだけでもワクワクしていただけると思います。

 まずは試しにプレイしてもらって,少しずつ感覚を掴んでもらえれば,きっと最後は「TEPPEN」の虜になっているはずです。騙されたと思って,ぜひインストールさえしていただければ! 最高の満足を! 約束します! 荻原さんが!(笑)

荻原氏:
 最後に投げたね(笑)。

岡野氏:
 でも本当に,決して後悔はさせないアプリになっていますので,ぜひよろしくお願いします。

4Gamer:
 本日はありがとうございました。

――2019年8月14日収録

遊び心も忘れない2人。ちなみに,ディレクター2人にランクを聞いてみたところ,岡野氏,荻原氏ともにチャンピオンランクとのことであった。「最高の満足を約束します」と胸を張るのも頷ける
画像集 No.008のサムネイル画像 / 「TEPPEN」インタビュー。独自のシステムが誕生した経緯や登場キャラクターの選定基準,開発の苦労,そして今後の展開を岡野D&荻原Dに問う

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