言語の壁,煩雑なマーケティング,そして国境を越えたPR戦略……こうした“開発以外の重責”を肩代わりし,クリエイターを世界の舞台へと押し立てる「黒子」として,今最も注目しておきたい企業がUkiyo Studiosだ。
![]() |
オーストラリアと日本の双方に拠点を置き,10年近くにわたって活動を続けてきた同社は,パブリッシング支援からローカライズ,さらにはPAXや東京ゲームショウといった大型イベントでのブース運営に至るまで,インディー開発者がグローバル市場で戦うための武器を多角的に提供している。
特筆すべきは,日本と海外の橋渡しを担うその圧倒的な機動力だ。
アソビズムやDevolver Digitalといった日米欧の主要なパブリッシャから未完成のタイトルを預かるまでの信頼を獲得している彼らの存在は,もはや単なる支援組織にとどまらず,インディーシーンの最前線を牽引する「旗頭」の一つと言っても過言ではない。
今回,本誌では同スタジオのキーマンである,創業者でありディレクターのデイヴィッド・カーデナス(David Cardenas)氏と,二人三脚で活動を続けるビジネス開発担当の高橋 温氏に,インディーシーンのの熱気あふれるgamescom latam 2026会場にて話を伺う機会があった。
あまり消費者である我々からは見えてこない,Ukiyo Studiosという裏方企業について,短い間ではあったが説明してもらったので,両氏が語る日本のインディータイトルが持つ真の価値と,国境という概念を溶かしていく彼らの戦略はどのようなものなのだろうか?
![]() |
4Gamer:
まずはお二人の自己紹介をお願いします。
カーデナス氏:
私はもともと,家族が経営するエアコン設置会社の補助をするために会計士の資格を持っていました。
ゲーム好きだったのでオーストラリアのさまざまなゲーム企業に履歴書を送ってはいたのですが,全然取り合ってもらえなかったのです。
で,日本アニメや漫画文化も大好きだったのでハネムーンで妻と冬コミに遊びに行った際,その会場の片隅に展示されていたのが「有翼のフロイライン Wing of Darkness」だったのです。
4Gamer:
それが縁になったと。
高橋氏:
はい。開発元のProduction Exabilitiesさんは,「エースコンバット」シリーズのビジュアル制作などに携わっていた一柳 守氏が立ち上げたスタジオですね。
「絶対に売れるから」って直感があって,その海外展開をサポートしたいとデイヴィッドが思い立ち,その場で申し出たのがUkiyo Studiosの始まりなんです。私は,その通訳が必要ということで呼ばれたのがきっかけになりました。
![]() |
「有翼のフロイライン」プレイレポート。ヒロイックな空中機動を簡単操作で実現できるフライトシューティングアクション
日本のインディーズデベロッパ,Production Exabilitiesが手掛けるフライトシューティングアクション「有翼のフロイライン Wing of Darkness」が,2021年6月3日に発売となる。独特の魅力を持つシナリオと,シングルプレイに特化した演出で抜群の爽快感を実現した本作のプレイレポートをお届けする。
4Gamer:
確かに,日本のインディーシーンは「好きなゲームを作ってみる」ことが主体になっていて,海外で展開することを念頭に置いていない雰囲気はまだ強いですね。海外のインディー開発者たちと比べても,非常に特異に感じます。
「俺のゲームは分かってくれる人だけに楽しんでもらえばいい」っていう職人気質というか,同人的というか。
高橋氏:
はい。すごくもったいないことだと思います。良いゲームは国境を問わず,より多くのゲーマーに遊んでもらえばこそであるはずなのですが,「良いゲームなら売れるはず」というPlayStation 2時代なら通じたであろう観念が残っているのかもしれません。
その考え方の角度を変えてもらうために,ずっとパブリッシャやデベロッパの皆さんとは対話を続けてきたような状態でしたね。
4Gamer:
Ukiyo Studiosは,一般的な “パブリッシャ” とは何が違うのでしょうか?
高橋氏:
私たちは自分たちを“パブリッシング・サービス・プロバイダー”と呼んでいます。
従来のパブリッシャは,IP(知的財産権)の一部や大きな収益シェアを受け取る代わりに資金を提供しますが,私たちは開発者が権利を100%保持したまま,必要なときに必要な専門知識だけをアウトソーシングできるパートナーでありたいと考えています。
「この展示会だけブースを運営してほしい」「北米向けのPRだけ任せたい」,もしくは「提携交渉の仲介をお願いしたい」といった要望に対し,開発者の「黒子」として動くのが私たちの基本スタンスです。
4Gamer:
BitSummitやPAXなども含め,国内外のイベントではUkiyo Studiosさんは縦横無尽という印象ですね。
高橋氏:
はい。私は日本,デイヴィッドはオーストラリアを拠点にはしていますが,今では年間15か所のイベントでゲームの出展をサポートしています。
BitSummit PunchでもCritical ReflexやDevolver Digitalさんなど9つのブースにまたがって……もう40〜50作規模での出展をお手伝いすることになっています。
イベント来場者に向けてゲームを説明する人材とか,そういうブース運営も一手に引き受けているんです。
今回のブラジルも多くの地域から離れた場所にあり,やはり限られた予算や時間しかないパブリッシャやインディー開発者にとっては来るだけでも大変な作業になりますからね。
![]() |
90年代後半を舞台にしたADV「Rain98」開発者インタビュー。世界滅亡を願う少女とプレイヤーを通じて描くテーマとは……[BitSummit]
京都市勧業館みやこめっせにて,2025年7月18日から20日まで開催された「BitSummit the 13th Summer of Yokai」。そのUkiyo Studioブースに新作アドベンチャーゲーム「Rain98」がプレイアブル出展されていた。今回4Gamerでは,本作のディレクターを務めるショーン・T氏にインタビューを実施し,ゲームをとおして表現したいテーマなどを聞いた。
危うい魅力を放つ少女と世紀末の1998年に世界滅亡へ。刺さる人には抜け出せなくなる「Rain98」の魅力とは何か[WePlay2025]
1990年代後半の空気を色濃くまとったサイコホラーADV「Rain98」が,WePlay Expo 2025の会場に出展されていた。平成レトロの残り香が漂うアパートを舞台に,不穏でありながらどこか目を離せない謎の少女・雨原玲奈と奇妙な共同生活を送り,破滅へ向かう物語を体験する作品だ。
4Gamer:
この10年で変わってきたなと感じることはありますか?
カーデナス氏:
やはり新型コロナウイルス感染症は大きかったなと思います。イベントの縮小などで経営も大変な時期はありましたが,好転したのも事実です。
高橋氏:
逆に変わっていないことといえば,どんなゲームでも消費者に見てもらうためにはマーケティングが必要であるということで,我々のやってきたことが実ってきているのを実感します。
今回のgamescom latam 2026では複合ブースを運営しており,日本からC#4R4CT3Rさんの「Rain 98」を出展タイトルとして持ち込みました。
ほかにはポーランドの新興ホラー系パブリッシャ・Black Lantern Collectiveさんの新作である「Don't Let It Starve」と「Moonlight Motel」,オーストラリアのWe Made A Thing StudiosのアクションRPG「Box Knight」などですね。
これとは別で,ホラーゲームパブリッシャのNew Blood Interactiveブースの運営も担当しています。
![]() |
4Gamer:
こうした活動を続けてきただけに,各地でのマーケティング事情には精通されているんではないでしょうか?
カーデナス氏:
本当にそのとおりで,我々Ukiyo Studiosの存在意義としては,ゲームデベロッパの皆さんが成功するための黒子や裏方としての仕事に徹するわけですが,ゲーム市場の最先端の事情にも触れていると思っています。
高橋氏:
ですから最近ではビジネス面でのサポート事業も増えており,例えば今回のようなイベントに来た場合はデイヴィッドがブース運営を担当し,私がビジネスエリアで通訳や提携のお手伝い,さらにはコンサルティングもするというような作業が多角化しているのです。
![]() |
4Gamer:
では最後になりますが,パブリッシャやデベロッパがUkiyo Studiosさんと一緒に仕事する必要がどこにあるのかをまとめていただけますか?
カーデナス氏:
やはり,ゲームに興味があるランダムな人たちが集まってくるイベントに参加することで得られるメリットや機会は非常に多いことに気付いてもらえたらなと思いますね。
実際にプレイしてもらった人からフィードバックを生の声でいただけますし,メディアやSNSでのエクスポージャーにも期待できます。目的を持ってイベントに参加するゲーム企業の人が最も多く集まっている場所ですから,ビジネスの拡大にもつながるでしょう。
質は高いのに露出が少ない日本のインディーには雑多な任務を我々に任せていただき,週末にパソコンから離れてふらっとゲームイベントに立ち寄ってみる感覚で,我々と一緒に仕事をさせていただければなと思います。
![]() |
インディーゲームを追いかけていると,プログラミングやアートに精通した開発者たちは,本来,素晴らしいゲームを作ることにこそ全力を注ぐべきなのだと感じる。
一方で,どれほど優れた作品であっても,作っただけで自然にプレイヤーのもとへ届くわけではない。イベントでのアピールやメディアへの働きかけは,作品を見つけてもらうために欠かせないプロセスでもある。
とはいえ,ゲームイベントに作品を持ち込み,ローカルメディアにコンタクトを取り,来場者を呼び止め,限られた時間の中で笑顔を見せながら,さらに海外の言葉で自作の魅力をピッチする――そうしたスキルまで兼ね備えている開発者は,決して多くないはずだ。
Ukiyo Studiosは,消費者であるゲーマーの視界にはなかなか入ってこない企業かもしれない。
だが,そうした開発者たちのニーズに応え,手の届きにくい部分を支える裏方として,国境を越えて面白いゲームをプレイヤーのもとへ届けるためのエコシステムを作っている。ニッチでありながら,その存在はまさに潤滑油のようなものだ。“浮世(Ukiyo)”のように作品と人が行き交う場を支える企業,といえるのではないだろうか。




















![画像ギャラリー No.003のサムネイル画像 / [インタビュー]日本から世界へ。インディゲームシーンの黒子であり,旗頭でもあるUkiyo Studiosとは何者なのか?[gamescom latam 2026]](/games/991/G999110/20260507032/TN/003.jpg)
![画像ギャラリー No.002のサムネイル画像 / [インタビュー]日本から世界へ。インディゲームシーンの黒子であり,旗頭でもあるUkiyo Studiosとは何者なのか?[gamescom latam 2026]](/games/991/G999110/20260507032/TN/002.jpg)
![画像ギャラリー No.007のサムネイル画像 / [インタビュー]日本から世界へ。インディゲームシーンの黒子であり,旗頭でもあるUkiyo Studiosとは何者なのか?[gamescom latam 2026]](/games/991/G999110/20260507032/TN/007.jpg)



![画像ギャラリー No.004のサムネイル画像 / [インタビュー]日本から世界へ。インディゲームシーンの黒子であり,旗頭でもあるUkiyo Studiosとは何者なのか?[gamescom latam 2026]](/games/991/G999110/20260507032/TN/004.jpg)


![画像ギャラリー No.006のサムネイル画像 / [インタビュー]日本から世界へ。インディゲームシーンの黒子であり,旗頭でもあるUkiyo Studiosとは何者なのか?[gamescom latam 2026]](/games/991/G999110/20260507032/TN/006.jpg)
![画像ギャラリー No.005のサムネイル画像 / [インタビュー]日本から世界へ。インディゲームシーンの黒子であり,旗頭でもあるUkiyo Studiosとは何者なのか?[gamescom latam 2026]](/games/991/G999110/20260507032/TN/005.jpg)
![画像ギャラリー No.001のサムネイル画像 / [インタビュー]日本から世界へ。インディゲームシーンの黒子であり,旗頭でもあるUkiyo Studiosとは何者なのか?[gamescom latam 2026]](/games/991/G999110/20260507032/TN/001.jpg)