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  • 発売日:2026/03/20
  • 価格:スタンダードエディション:9680円(税込)
    デラックスエディション:1万780円(税込)
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印刷2026/04/18 09:00

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オープンワールドの新しい基準となりえるか? 「紅の砂漠」はなぜ賛否両論から好評へと覆ったのか。発売後1か月のいま,改めてレビューしてみよう

 Pearl Abyssの新作アクションアドベンチャー「紅の砂漠」PC / PS5 / Xbox Series X|S / Mac)は,2026年3月20日の発売直後,Steamでのユーザーレビューが世界的に賛否両論と評され,厳しい批判にさらされる波乱の船出となった。

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 しかし,発売からわずか3日後に実施された,素早く大規模なアップデートが功を奏したのか,日本では賛否両論のまま()ではあるが,世界全体では「非常に好評」へと評価を覆した。

※記事執筆時点でのレビュー総数約9万件のうち,日本からのレビューは800〜900件ほどであるため,純粋な比較は難しいかもしれない

 また,同時接続プレイヤー数も初動型になりやすいシングルプレイゲームとしては比較的珍しく,初期から上昇し,高い水準を維持。ついには,4月15日時点で500万本以上の売り上げを記録するまでに至った。


 なぜこれほどの劇的な変化が起きたのか。Pearl Abyssはどのような対応を講じたのか。そもそも,紅の砂漠の何が批判の対象となり,のちに何が評価されることになったのか。ストーリーを最後までクリアし,プレイ時間も300時間を超えたいま,改めてレビューしたい。


Pearl Abyss初の家庭用ゲーム機向けオフラインタイトル


 Pearl Abyssは,そもそもMMORPG「黒い砂漠」のみで勝負してきた韓国のゲームメーカーだ。「C9」などのアクション系オンラインPCゲームを開発していたキム・デイル氏が,Rockstar Gamesの「Grand Theft Autoのようなオープンワールドゲーム」を作りたいと考えて立ち上げた会社である。

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[2012/09/27 00:00]

 その後,「紅の砂漠」は2019年に発表された。黒い砂漠に続きMMORPGとなる予定だったが,2020年のThe Game Awardsで「オープンワールドアクションアドベンチャー」として再定義された。
 キム・デイル氏は2014年には韓国インタビューで「革新的なゲームの基準」としてGTA5に言及し,2017年にも「Red Dead Redemption 2を楽しみにしている」と発言。Pearl Abyssのゲーム開発の焦点としても,世界水準と戦うことを見据えていたことだろう。
 MMORPGからの転換にもおそらく,Rockstar Games作品のようなクオリティを目指したい,という強い思いがあったのではないだろうか。

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 とはいえ,GTAやRDR2のような売り切りのゲームの開発は,韓国が得意としてきた基本プレイ無料のMMORPGと,目指すべき方向が異なるはずだ。それらはプレイヤーにある種の「渇き」を作ることで長期プレイや,課金してもらう構造であるのに対し,売り切りゲームは作品の魅力そのもので「満腹感」を作って評判を高める必要がある。このマインドの差は大きい。

 そこで,紅の砂漠では,既存オープンワールド系作品の魅力的な要素を遠慮なく参考にしたようだ。
 筆者に分かるタイトルの範疇では,RDR2系を基本文法に,戦闘はWitcher 3やアサシンクリード,近年のゼルダ諸作品のような謎解きも加え,現代的なAAAのフォーマットとしてまとめ上げたような印象を受けた。
 もちろん,Pearl Abyssが得意とするアクション性などで差別化は図られているものの,彼らが遊んできて「これはいいものだ」と感じたであろうゲームの要素がひしひしと伝わってくるのだ。


ストーリーそのものよりも「ゲーム体験」で惹きつける


 「紅の砂漠」のストーリーは「黒い砂漠」の続編ではない。黒い砂漠経験者でなくともしっかり楽しめる内容だ。黒い砂漠に出てくる要素・名称を使いつつ,独立した物語が展開される。

黒い砂漠に登場したキャラクター名やスキルなどが登場するので,プレイ経験があればニヤリとできる要素は多い
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 物語はファイウェルという大陸が舞台となり,勢力の1つ「灰色たてがみ」の実力者「クリフ」は,「黒い熊団」によって散り散りにされた仲間たちを探し,灰色たてがみの再興を目指す……という形で始まる。どこの文化圏でも伝わる「仲間」と「仇討ち」が主軸の無難な物語になっていて,ストーリーの大筋は分かりやすいものだ。

灰色たてがみの実力者であるクリフ。黒い砂漠のウォーリア,レンジャーに近いスキルを持つ
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同じく灰色たてがみのウンカ。黒い砂漠のジャイアントのようなスキルが特徴
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とある事情で灰色たてがみに身を寄せることになるデミアン。黒い砂漠のヴァルキリーのようなスキルを放つ
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 だが,Steamのユーザー評価において,ストーリーの評価自体は高くない。日本語においては日本語音声がないことも原因の1つだとは思うが,ネイティブ音声が収録されている英語圏や中国語圏プレイヤーからも,ストーリーの弱さは指摘されている。
 売り切りのAAA作品としては,ストーリーの面白さもガッツリ期待されがちだ。今後のPearl Abyssの課題の1つになるだろう。

 まだ攻略中だった担当編集者は,「全体の物語よりも,会話の行間や,話のつながり,感情の伝達,そして関係性の構築が,キャラクター間で弱いと感じる」と話していた。
 確かに,クリフが「灰色たてがみ」に対して愛着を持っており,正義感にあふれる主人公であることは分かる。ただ,彼がそれ以上の人となりを見せることはなく,共感しづらく見える部分がある。イベントの会話シーンも比較的淡白だ。

 おそらくPearl Abyssとしては,あくまでもプレイヤーの自由な散策こそが面白さの中心にあるべきと考えているのではないだろうか。ストーリードリブン,感情ドリブンな仕上がりを強くしすぎると,ストーリーの都合で行き先を指定・限定されてしまう。せっかくのオープンワールドでの探索的ゲームプレイや自由な動線に制約を与えてしまいかねない。このため,あえて多くを語らない選択をしたのではないだろうか。

 また,メインとなるストーリーと並行して,ゲーム序盤では灰色たてがみのキャンプを作ることになる。クリフだけでやれることは少ないが,散り散りになった灰色たてがみの仲間たちを集めていくことで,食事,アイテム生産,交易,床屋,染色ショップなど,さまざまな機能がキャンプに追加されていく。再会シーンはクリフの人望や組織上のポジションなどを感じられる瞬間でもある。

仲間はクリフと再会すると抱き合って喜んでくれる。組織としてもっとも「喜び」の感情が出ていることもあり,印象に残る
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ゲーム中,何人の灰色たてがみが戻ってくるのか? キャンプがどこまで大きくなっていくのか? といったワクワク感もゲームを進めたくなる動機の1つだ
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どこまでも終わりが見えない,オープンワールド探索や謎解き


 本作で高く評価されているのは,何を隠そうオープンワールドの探索だ。
 YouTubeチャンネル「Gaming Interviews」でのインタビュー動画で,Pearl AbyssのPRディレクターであるWill Powers氏は「RDR2よりも(マップが)大きい」と説明している。そして,地上のほかに,空中に存在する建造物「アビス」や飛行要素もある。
 プレイヤーは徒歩や馬で地表マップを2次元的に探索するに留まらず,崖を登ったり,高所からグライダーのように飛び回ったり,切り立った崖や巨大な窪地をパラシュート的に降下して探索したりといった,三次元的な攻略を序盤から楽しめる。


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●目視による発見を重視

 「黒い砂漠」の精神を引き継ぎ,紅の砂漠も「目視で発見する」ことを重視している。
 探索は,プレイヤー自身で何かを発見することの積み重ねだ。クエストではさすがに「このあたり」というマークがミニマップに出るが,「誰かに会いに行く」といった,クエスト内容ですら目的位置はアバウトに示されるのみで,対象人物に矢印が表示されるような分かりやすさはない。

 謎解きは使う要素の種類・ルールに限りはあるが,問題はそれぞれ異なるものになっている。プレイヤーが自分の頭で考えて「これだ!」と発見したとき,パチンと謎が解ける。指示どおりにやらされている感覚はなく,「自分で解いている」という感覚が気持ちいい。

それだけに見落としやすいオブジェクトもたくさんある。例えば地下の出入り口のフタだ。対象にかなり近づかないとマーカーも出ないために気づきにくく,正しい向きや方法でアクセスして初めて機能する
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壁に残された地図からヒントを探す謎解きも,やることは似てはいるが,そのヒントそのものに異なる工夫が凝らされている
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 探索は動機がなければ始まらない。つまりは報酬だ。
 サイドクエストをやったり,世界を開拓したりすることでアイテムやお金が手に入るが,その過程でゲーム知識やパズルのクリアのためのヒント(考え方)が分かる場合もある。それがメインクエストクリアにも役立つことがあり,メインクエストに詰まってしまったときは,サイドクエストや探索をしてみると道が開けることがある。

報酬を先に見せることで「やってみよう」と思わせる仕組みは黒い砂漠譲りだ
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 こういった自発的体験こそが,本作の真のストーリーなのかもしれない。例えば「今日はここをクリアしようと思ったが,できなかったので別のところに行ったらこんなものを発見!」とか「たまたま通りかかった●●でこんな出会いがあった」といった内容がSNSに投稿されているのを見たことがある。
 これは,あらかじめ予定されていたストーリーをなぞるだけでは味わえない体験であり,SNSでの人とのつながりまでを含めての,現代的な冒険体験ともいえる。
 いまにして思えば,オープンワールドアクションアドベンチャーに変更された当時のメールインタビューで,「印象的な演出とオープンワールド世界を楽しみながら,その中での選択でほかのプレイヤーとコミュニティを作ることができるコンテンツ」と話していたのが,まさにこのことを指していたのだろう。

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 12月11日に開催されたThe Game Awards 2020で,Pearl Abyssが開発中の新作「紅の砂漠」のゲームプレイトレイラーが公開されたが,同時にゲームジャンルが“オープンワールドアクションアドベンチャー”へと変更されたことも発表されている。なぜジャンルが変わったのか。そしてストーリーやシステムはどうなるのか。気になる点をメールインタビューで尋ねてみた。

[2020/12/29 00:15]

 戦闘も謎解きもそれなりにハードコアな印象だが,昨今は「インターネットの集合知」でゲームをプレイする時代になってきている。
 そもそも公式でTwitchストリーマーを見るイベントを行っていたりするので,分からない部分は検索したり,コミュニティに頼ったりしよう,という考えなのかもしれない。
 どこで諦めて攻略を調べるかはプレイヤー自身で選べるため,「謎解きが難しすぎて進めない」ということは,あまり本作においては気にしなくていいのではないだろうか。そもそもが,すべて自分で……という作りではないのだろう。

 ちなみに,筆者はストーリークリアまで1回だけ不明点をネットで調べることになったが,実はちょっとだけ後悔している。「ああ,もうちょっとだけ粘れば,自力でそこに辿り着けたかもしれない」という思いが残ったからだ。
 すぐには解けない謎を放っておくのはストレスだが,入浴中や寝て起きたとき,「あれ,これってこうなのでは……?」と閃くような楽しさを味わえることがある。そんな探索や謎解き要素が,200時間を遊んでもまだ底が見えないくらいに続く。やり込み好きの筆者の場合は300時間でようやく一息ついた感じで,「100時間経ってもまだエルナンド(最初の地域)にいる」という人々の証言はまったく誇張ではない。

 それだけに,マップで惜しいと思うところも少なくない。
 例えば,世界の端の処理だ。雄大な景色が眼前に広がるなか,突然「接近不可地域です。」と言われるのは,少々興ざめである。世界に端があることはシステム的に仕方のないことだが,そこをストーリーやアビスなどの世界観と統合してうまく演出したり,見せ方を変えたりしてほしかったというのが本音なところだ。


ストーリーを補完する「知識」


 先にも少し触れたように,本作のストーリーは最低限しか語られないため,クエストのクリア後に登場したボスたちが,結局のところ何だったのか,謎なままである場合が少なくない。そこでチェックしたいのが「知識」である。
 ボスをはじめ,プレイヤーが出会った事柄は,冒険日誌にある「知識」の項目に次々とまとめられていく。知識自体もコレクションコンテンツとして機能し,完成させたくなってくる要素だ。

 ただ,これにも一長一短はある。「知りたければ見てね」という形にすることで,興味がない人はゲームプレイだけに没頭しやすくしている点は長所だといえるが,知識を見ないと分からない背景もけっこうある。逆にいえば,ストーリーを重視する人は知識獲得のたびに知識画面を開く必要があり,プレイのテンポに影響しやすいという欠点も併せ持っているわけだ。

字幕テキストに下線が引かれている場合,その単語は知識に存在する
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やり込み要素でもある「チャレンジ」だが,ゲームが進むと困ったことに?


 本作には「チャレンジ」という,ゲーム中にお題をクリアすると報酬が得られるコンテンツがある。
 戦闘の基本要素から生活要素まで幅広く用意されており,ゲームにどんな要素があるのかを理解するのにも役立つものだ。難度もちょうどよく,強化などに役立つアイテムが手に入るため,挑戦は楽しい体験となるだろう。

 ただし,この記事の執筆時点では問題が1つある。それは,ゲームを進めると戦闘系チャレンジのクリアが難しくなることだ。
 というのも,本作ではクリフらが制圧した敵の拠点などは,敵がリポップしなくなる。つまり,ゲームが進むほど,その地域は平和になり,敵との戦闘が少なくなるのだ。これは,ゲームをやりつくすほどに,戦う相手そのものがいなくなるということでもある。

 いまその対処法を聞かれれば,「チャレンジをオールクリアしたいなら早めに取り掛かるべし」ということになる(とはいえ,そのチャレンジを見つけるのもひと苦労なのだが……)。ただ,今後のアップデートで,ボスの再戦や,一度開放した地域が「再封鎖」によって敵が再び出現するようになると発表されている。そうなれば,ゲーム進行後のチャレンジも進めやすくなるかもしれない。

全40個のアビスのクリアもチャレンジの1つ。クリア後はかなりの達成感があった
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クセは強いが,奥深い操作性


 アクションの命である操作感なのだが,これに難色を示す人は多い。斬撃,弓射撃,キャッチ,打撃,ガード,回避,気,ロープなど,さまざまなアクションを1キャラに集約したために,ゲームパッドのキーが足りず,キーに対して機能重複が発生してしまっている。
 例えば,アイテムを拾う/ジャンプ,座る/ぶら下がる/寄りかかる/摂理の力が同一キーという状態だ。また,近くのインタラクト・オブジェクトの状態によって,そのキーで何が発動するかが変わる点にも注意しなければならない。
 結果として,アイテムを拾おうとしてジャンプしてしまうのはよくあることで,摂理の力を利用しようとして座ったり,崖などのふちにぶら下がってしまったりという挙動も発生し,プレイヤーをイラつかせることがあるだろう。

 どうしてこうなってしまったのかは,2つの要因が考えられる。まずは,Pearl Abyssの経験不足だ。
 MMORPGの「黒い砂漠 CONSOLE」に続いて,家庭用ゲーム機向けでリリースする2番目の作品ではあるが,黒い砂漠がもともとPCのキーボード&マウス操作に最適化されており,ゲームパッド操作はなんとか詰め込んだ印象は否めなかった。

 そしてもう1つは,ゲームの下地としてRDR2を大いにリスペクトしたためだろう。ボタンを連打したり長押ししたりしてダッシュさせるキャラの動かし方はもちろん,アイテムドロップと回収の操作感,UIなどからRDR2の文脈を感じられるのだが,本作はRDR2よりも明らかに操作バリエーションが多いタイトルなので,もう少し工夫が必要だったかもしれない。

 とはいえ,このゲームパッドのすべてのキーを使う操作に慣れると「多様なモーションの戦闘」が楽しめるようになるのは確かだ。
 黒い砂漠よりもキャラクター,馬の移動などのスピード感が抑えられ,世界にリアリティも増しているが,スキルなどを発動した瞬間には黒い砂漠由来の派手なアクション,瞬間的なスピード感を発揮し,ゲームらしいフィードバックが得られるのだ。

最初の関門ともいわれる砕石機械との戦闘。難しい場合は少し装備を鍛えてから挑戦してもいいし,実のところあとに回しても問題はない
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敵にトドメを刺す瞬間,一瞬スローになるなどのタメ演出が入り,これが気持ちいい
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射撃術大会,弓術大会などの射撃コンテンツはマウスだと余裕だったが,ゲームパッドでは難しく感じた
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独自エンジン「Black Space Engine」で描かれるグラフィックスと雰囲気


 RDR2を意識したことによって,紅の砂漠が次世代ゲームとして実現すべきビジュアルレベルを大いに引き上げられたのは確かだろう。緻密なキャラクターアニメーションは,近年のオープンワールド作品としては特筆すべきレベルの作り込みだ。
 謎解きや機械の操作などはキャラの緻密なアニメーションが組み合わせられているが,動物の屠殺シーンなど,しっかり描画すると待機時間がかかるシーンは,ゲームテンポを損なわないようにナイフをさっと入れる程度にされている。このバランス感覚は絶妙で,アニメーションに対してプレイヤーとして感じる納得感が非常に高く,高級感がある。

 高精細なグラフィックスと相まって,ファイウェルにいる没入感は高く,ここは大いに評価できるポイントだ。レイトレーシングやRay Reconstructionなど,処理の重い描画技術を用いつつも,独自エンジン「Black Space Engine」によって比較的軽量な動作を見せている。

扉を開ける,ハンドルを回す,ボタンを押しこむ,剣を挿して引っ張る……キャラクターがさまざまなインタラクトアニメーションを行うので,見ていても飽きない
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とくに曇りがちの天気だと実写のように見える瞬間も
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やや重めのキャラ操作も,風景を見て歩くときにはちょうどいい
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家庭用ゲーム機のシングルプレイゲームとしては,にわかには信じがたいレベルの超高速アップデート


 そして,現在プレイヤーに高く評価されているのが,リリース後のアップデート速度だ。
 それも軽微なバグ修正や数値調整といったリリース初期にありがちなものだけではなく,コンテンツやスキルの仕様変更,アイテム管理方法など,ゲームの根幹になりそうな部分まで,どんどん手を入れている点は驚きを隠せない。

 とくにアイテム管理が象徴的だ。先行プレイ時にはアイテムを保管するための「個人倉庫」がなく,キャラクターバッグの中ですべてやりくりするしかなかった。筆者も不便ながら「必要なアイテムを取捨選択するデザインなのだろう」と納得していたし,開発としても通常はそれがコンセプトだとして押し通すものだ。
 しかしPearl Abyssは,発売後のプレイヤーニーズに合わせて,リリース3日後のアップデートで240枠の「個人倉庫」を急遽追加,その後はゲームの進捗によって最大1000枠まで増えるアップデートまで行った。プレイヤーの要望を素早く汲んだのだ。

 さらに,サブキャラクター扱いであるデミアンとウンカの強化だ。彼らには「摂理の力」というゲームの謎解きで必要なスキルが欠けていた。これもプレイヤーの指摘後に迅速に追加された。バグで発生させることができたクリフの高速飛行も,正式なスキルとして取り入れられた。

 Pearl Abyssは「4月から6月にかけて順次実装する」と目標を発表しながら,アップデートの一部をその翌日に実装するような,常識破りのスピード感を披露し続けている。海外の大型掲示板であるRedditでは,アップデート速度を絶賛する半面,Pearl Abyssの労働環境を心配する声がジョーク半分に飛んでいる。

 これは間違いなく「黒い砂漠」の開発・運営経験が生かされている部分であり,とくに「決断が早い」ということは間違いないだろう。開発者が「それはそうだな」「そちらのほうが面白いな」と思ったものは,どんどん実装の決断を下さなければ,会議と決定だけで1週間が飛んでしまうはずだ。

 黒い砂漠のアップデートもその連続だった。素早く,小さくコアコンテンツを作り,徐々に見栄えのするものに膨らませていくような,アジャイル的な開発手法を得意としてきたのだ。紅の砂漠においても,その「素早く形にする経験値」が存分に発揮されているのだろう。

 直近のアップデートで個人的にかなり気に入っているのが,カメラの上下左右位置,視界範囲(FOV)を設定できる項目が追加されたことだ。没入感や攻略のしやすさの点で大きな影響を与える。こういったディテールへのこだわりは嬉しい人も少なくないだろう。

カメラの視界範囲=100。探索や戦闘で状況判断がしやすい
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カメラの視界範囲=0。風景やオブジェクトが大きく見えて没入感が上がる
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「超大盛系ラーメン」のように人を選ぶが,韓国ゲーム史としても記念碑的な作品


 紅の砂漠を一言で表すなら,食べても食べても底が見えない,「超大盛系ラーメン」だ。いつまでも遊べるMMORPGを作ってきたクリエイターたちが「俺たちの最強の一杯」として作り上げたと考えると,この溢れんばかりのボリューム感は納得できる。
 情熱を感じられる世界の作り込み・戦闘・コンテンツ量……とにかく「マシマシ」にして,1つのゲームタイトルにどこまで盛れるか挑戦したのだ。それだけでも労力を感じられ,一定の評価が与えられるだろう。

 また,近年の赤い点や黄色いマーカーを追うだけになりがちなゲームへのアンチテーゼなのか,とことん自分で考えることを求めたことも,古き良きゲームの原体験を思い出させてくれる。
 現状では「歴戦の大作ゲーマー」や「大作MMORPGを遊べる人」のようなコアプレイヤーが主要なファン層になるだろう。
 個人的には「とりあえずメインクエストを終わらせる」という目標を持って,必要最低限のサイドクエストをこなす形で進めたため,最後まで食欲が落ちずにストーリーを食べきれた。メインクエストをどのくらいでクリアできるかは腕前によると思うが,50〜150時間くらいはかかるのではないだろうか。

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 そして,Pearl Abyssはそれらの客だけをターゲットとする頑固親父の店ではなく,顧客の声を聞く店だ。今後は難度選択も用意される予定で,きっと誰でも美味しく食べられる味を目指しているのだろう。
 このペースでアップデートが続くとしたら,半年後のゲームの姿はまったく予想できない。
 個人的には黒い砂漠のように,ライト層が自分が美味しいと思うコンテンツだけを狙って遊び,マイペースに消化していける仕上がりになることを期待したい。それくらいの下地,ポテンシャルは間違いなく感じられる作品だ。

 規模や改善速度など,さまざまな観点で注目を集める紅の砂漠は,「Lies of P」「Stellar Blade」などに続き,韓国の売り切りゲームとして記念碑的な作品になるだろう。
 それだけでなく,今後発売されるオープンワールド作品にとっても無視できない存在になるはずだ。コンテンツ量や世界の密度,アップデート頻度など,これからの新しい比較の「基準」になる可能性もある。

ストーリーやアビスのクリア後も続けて遊べる。平和な世界でも探索やチャレンジ,埋められていない知識の収集など,やることは尽きない
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デミアン,ウンカはまだまだ使い勝手がクリフに及ばない。彼らで遊ぶための戦闘要素のテコ入れや,コスメティクスの充実なども期待したいところだ
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