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本日は「ドラゴンクエストの日」。ファミコン版からHD-2D版まで,“6つのDQI”をプレイして,シリーズ40年での進化や変化を確認してみた
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印刷2026/05/27 07:00

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本日は「ドラゴンクエストの日」。ファミコン版からHD-2D版まで,“6つのDQI”をプレイして,シリーズ40年での進化や変化を確認してみた

 初代「ドラゴンクエスト」(以下,DQI)が任天堂のファミリーコンピュータ(以下,ファミコン)用ソフトとして発売されたのは,本日(2026年5月27日)からちょうど40年前になる1986年5月27日のことだった。そして5月27日は,日本記念日協会によって「ドラゴンクエストの日」に認定・登録されている。

 この日が日本のゲーム業界やゲーム文化における重要な足跡となっているのは間違いない。国内の家庭用ゲーム機市場でRPGというジャンルが大きな人気を集めるようになった要因は,ドラゴンクエスト抜きに語れないだろう。

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 そんなシリーズの第1作であるDQIは,時代の流れによるプラットフォームの刷新や技術進歩に合わせて,移植やリメイクが何度も行われている。同じ「DQI」であっても,それぞれには時代性に起因する違いがあり,プレイヤーの世代や環境によって,その体験も異なるはずだ。

 シリーズの40年を振り返るには,現在まで11作がリリースされているナンバリングタイトルを順に追っていく手もあるかもしれないが,“同じ題材”を扱った複数のDQIを比較してみるのも面白そうだ。

 ということで本稿では,ファミコン版,そのリメイクであるスーパーファミコン版,さらにその移植版となるゲームボーイ版フィーチャーフォン(いわゆるガラケー)版スマートフォンアプリ版,最新のリメイク作であるHD-2D版のDQIをエンディングまで試遊したうえで,それぞれにどんな特徴があり,時代の流れの中でどのように変化していったのかをまとめてみたい。

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目次





ファミリーコンピュータ版「ドラゴンクエスト」

(1986年5月27日リリース)

 初代「ドラゴンクエスト」は,PCなどからの移植ではないファミコン向けのオリジナルタイトルとして初のRPGとされることもある。

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 じっくりと腰を落ち着けて物語やキャラクターの成長を楽しむことを主眼に置いたDQIは,アクションやシューティングといった,反射神経や動体視力が求められるゲームが主流だった当時のファミコン市場では,異色の存在だったといっていいだろう。

 システム面には荒削りな部分が多々あり,ハードウェアの性能やデータ容量の制限による“至らなさ”も目につくものの,全体的な完成度はかなりのものだと感じられる。今回改めてプレイして,「ファミコン初の(オリジナル)RPG」としてこの作品が出てきたことに感心したほどだ。まさにエポックメイキングなタイトルだろう。

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 今さらではあるが説明すると,本作は町や城で得た情報をもとに必要なアイテムを揃え,モンスターとの1対1の戦いを繰り返して成長し,最終的に竜王を倒すことを目的としたRPGだ。

 モンスターとの戦いは常に1対1で,ホイミやギラなど,後におなじみとなる独特の語感を持った呪文の多くが,本作ですでに登場しているのも印象的だ。

 ファミコンのプレイヤーにはまだ珍しかったRPGというジャンルを迷いなくプレイしてもらう意図なのか,NPCとの会話やアイテムの入手,扉の開け方といった操作を学べるチュートリアル的な要素が,ゲームのスタート地点(ラダトーム城)に用意されていたことも,当時としてはかなり先進的で,よく語られるところだ。

ラダトーム城周辺の風景。海の向こうに最終目的地である竜王の城がそびえる“近くて遠い”配置が印象的だ。作品ごとにこのエリアのスクリーンショットを掲載するので,違いを確認してほしい
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 システムの根幹となるコマンドメニューも,この時点から存在しており,メインメニューの項目は「はなす」「じゅもん」「つよさ」「どうぐ」「かいだん」「しらべる」「とびら」「とる」の計8項目。

 本作に登場するキャラクターには正面のグラフィックスしか用意されていないので,誰かに話しかけたいときには,まず「はなす」を選んだうえで,「きた」「ひがし」「みなみ」「にし」という“話しかける方向”を決めることになる。

 後のシリーズ作品では欠かせないコマンドになる「そうび」は存在しないが,これは武器や防具を入手した時点で自動的に装備する仕組みになっているからだ。セーブ機能は,20文字のひらがなを組み合わせるパスワード「ふっかつのじゅもん」となっている。

「かいだん」や「とる」は,後のナンバリング作品には登場しない,ファミコン版DQIならではのコマンド。店で武器や防具を買うと,それまで使用していたものが自動的に下取りされる
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 そのほかの細かいシステムなどについては,2016年に掲載した記事が詳しいので,そちらも確認してほしい。

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 本日(2016年5月27日),国民的RPG「ドラゴンクエスト」が誕生30周年を迎えた。そこで本稿では,シリーズの原点であるファミリーコンピュータ版「ドラゴンクエスト」を振り返ってみたいが,それだけでは少々味気ないので,発売時に生まれてもいない編集者が,時代の違いに戸惑いつつプレイしたレポートとしてお届けしよう。

[2016/05/27 00:00]

 そんなファミコン版DQIだが,個人的には,2026年の現在にプレイしてみると,かなり“飴と鞭”がある作品に仕上がっていると感じた。

 “飴”となるのは,「ゲームの進行に必要な謎解きやフラグ立てに理不尽な点がない」ことだ。ゲーム内には町を中心にかなりの数のNPCが存在しているが,その多くが直接あるいは間接的にゲームのヒントをしっかりと語ってくれる。それらを覚えたりメモを取ったりしておけば,それほど迷うことなくクリアできるであろう設計だ。

ゲーム開始早々に聞ける直接的なヒントのひとつ。ほかにも進行に必須のアイテムや強敵ゴーレムへの対処法など,各所に役立つヒントがちりばめられている
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 「それはゲームとして当たり前では?」と思う人もいるだろうが,当時のゲームでは,謎解きや隠しアイテムのありかが完全なノーヒントで,攻略本を見ないとまず解けないことが珍しくなかった。

 それがDQIでは,フレーバーテキストやちょっとしたお遊びの会話などを除くと,体感で7〜8割程度は有用な情報で占められており,それらをしっかり把握すれば“正解”にたどり着けるようになっている。

「壁のへこみが入口」という,現代のゲームでは見る機会がなさそうな情報
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 また上でも軽く触れたとおり,ゲーム開始時に(半ば強制的な形で)基本操作を学べるチュートリアルが用意されているのも特徴的だ。細かい世界設定やプロローグなどを取扱説明書に任せているところはあるが,ゲーム内でも,物語的な背景を含めてセリフで説明されるのは,今見ても丁寧な作りだ。

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 一方で“鞭”は,現在のプレイヤーからするとキツいなと感じる部分だ。まずは“こなれなさ”の問題(たとえば会話に方向指定が必要など)があるが,それを除いたとしても,ゲームバランスがシビアなのだ。

 ゲーム開始直後の主人公は本当に無力で,もらったお金で装備を整えても,スライム相手ですら気を抜けない。敵を倒して得られるお金や経験値も非常に少ないので,レベルも上がりにくく,橋を渡ると(ゲーム内での説明どおりに)敵が一気に強くなる。

 つまり不用意に遠出すると簡単に死んでしまうので,かなり地道なレベル上げと資金稼ぎが必要になる。この作業は現代の感覚からすると退屈だし,自分の腕だけを頼りにどんどん進んでいくアクションやシューティングゲームが主流だった当時,“先に進まず力をつける”ことに戸惑ったプレイヤーは少なくなかったと思う。

 戦闘自体のバランスもなかなか厳しい。敵がラリホーを使うと主人公は確実に眠ってしまうし,ダメージ計算の乱数幅が大きいのか,同じ敵の同じ攻撃であっても被ダメージを読みづらい。

 また,1対1の戦いのうえ,バフやデバフの呪文がないため,正面からのガチンコ勝負をせざるを得ないのも厳しいところだ。

 敵を眠らせるラリホーや,呪文を封じるマホトーンなどの“搦め手”もあるにはあるのだが,効くかどうかはランダム。仮にラリホーが効いても,目覚めた敵は次のターンを待たずに即攻撃してくるし(ちなみに主人公は目覚めたターンで行動できない),呪文以外にも強力な攻撃手段を持つ敵が多いので,マホトーンも“効いたら勝てる”といったものではない。

 要するに,レベルが足りていて装備が整っていれば正面から戦って敵を倒せるが,そうでない場合は逃げたほうがいい,となりがちなのだ。

 さらに,ホイミでのHP回復量がだいたい20未満と少ないうえに,薬草の価格が24ゴールドと高いため,ベホイミを覚えるまではHP管理が大変なところも厄介だ。

 加えてエンカウントのばらつきが大きく,3歩連続で敵が出てきたり,会心の一撃が出たと思ったら外れたり(後のシリーズ作品では必中)といったように,プレイヤーのストレスにつながるような仕様も見受けられる。

後のシリーズ作品に比べると,敵の不意打ちが多いようにも感じる
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ダンジョンは真っ暗で,たいまつを使っても見えるのは周囲1パネル分だけなのも,結構つらいポイント
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 近年のシリーズ作品なら,サブクエストをこなしたり,錬金の素材を集めたりといった過程で自然とレベルや装備は整っていくし,戦術の幅も広く,うまく弱点を突いて強敵を倒すこともしやすい。だが,極限までシンプルな本作では,そういった“横道”の部分がないので,大変に感じてしまうのだろう。

 結果的に,レベルに余裕がある状況を作りにくく,戦闘はかなりヒリついたものになる。竜王を倒すまでかなり緊張感があるプレイを続けることになるだろう。
 難度の高さでは続編の「ドラゴンクエストII 悪霊の神々」(以下,DQII)が話題に挙がることが多いが,個人的には「DQIも決して簡単ではない」という印象だ。

 偉大なるオリジナル版ではあるのだが,良くも悪くも尖っていて,今なら余計に人を選ぶ,といったところだろうか。

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コラム ファミコン版をベースにしたMSX / MSX2版

 ファミコン版から約半年後に,MSX版とMSX2版の「ドラゴンクエスト」がリリースされた。時期が近いことからも想像できるように,ゲーム内容としてはファミコン版とほぼ同じだ。今回はソフトのパッケージを撮影したので,その雰囲気をお伝えしよう。

黒がMSX版,白がMSX2版のパッケージ
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 MSX版とMSX2版はほとんど同じパッケージデザインだが,裏面に掲載されているスクリーンショットの色合いが微妙に違っている。発色数が多いMSX2版のほうがファミコン版に近い印象だが,2枚を比較しなければ気付かないかもしれない。

ちなみに,MSX版のパッケージ裏では,キラーリカントのスクリーンショットにリカントマムルの説明がついてしまっている
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 実際のプレイでは,MSX版はもとよりMSX2版も,ファミコン版と同じ操作感というわけにはいかなかったようだ。プレイ動画を見る限り,描画がスムーズではないし,音楽も寂しい。

 とはいえ,ファミコンを持っていなかったMSXプレイヤーにとって,大ヒットタイトルである「ドラゴンクエスト」がリリースされた意味は大きかっただろう。

 移植版ながら,ファミコン版と「ふっかつのじゅもん」の互換性があったようで,そこも興味深いポイントだ。当時はお遊び的な文字列のじゅもんがプレイヤーの間で話題になっていたので,それらを含めて楽しめたわけだ。

MSX版の販売元は小西六エニックスとなっている。当時の小西六写真工業(現在のコニカミノルタ)とエニックス(現在のスクウェア・エニックス)が合弁で設立した企業だ
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取扱説明書はモノクロ印刷。内容的には,ファミコン版と同じのようだ
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 5月27日は「ドラゴンクエストの日」。ちょうど38年前,RPGというものが一般には浸透していなかった時代に,ファミコン用ソフト「ドラゴンクエスト」が発売された。新しいジャンルを受け入れてもらうための工夫が感じられる,同作の取扱説明書を読み返してみた。

[2024/05/27 09:00]





スーパーファミコン版「ドラゴンクエストI・II」

(1993年12月18日リリース)

 スーパーファミコン版のDQIは,DQIIとカップリングされたリメイク作品だ。システム的には,1992年に同じくスーパーファミコン向けに発売された「ドラゴンクエストV 天空の花嫁」(以下,DQV)に近いものとなっており,ファミコン版から大幅に進化し,非常にプレイしやすくなった。

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 パッと見て分かるのが,グラフィックス面の大幅な強化だ。プラットフォームの刷新により表現力が飛躍的に高まり,フィールドや町のリアリティが向上。ファミコン版では常に正面を向いていたキャラクターにも,横向きや後ろ向きのグラフィックスが用意された。

 だがその一方で,武器や盾が主人公の見た目に反映される要素は失われ,たとえ丸裸でも,剣や盾を装備しているグラフィックスになった。

 戦闘時に攻撃や呪文のエフェクトが表示されるようになり,テキストのサイズが大きくなって漢字が使われるようになったのも大きな変化だろう。もちろんサウンド面でも,ファミコン版から大きな進化が感じられる。

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マイラでは村全体に湯けむりが漂っている。後のDQIでも見ることがない,レアな演出だ
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 シリーズのナンバリングタイトルでは「ドラゴンクエストIII そして伝説へ…」(以下,DQIII)から採用されたバッテリーバックアップによるセーブ機能「冒険の書」が実装されており,ふっかつのじゅもんをメモする必要はなくなっている。ただしセーブできるのは,ファミコン版でふっかつのじゅもんを聞けるラダトーム王がいる部屋だけであり,あくまでパスワードがセーブ機能に変わっただけだ。

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 ちなみにファミコン版で,竜王の「世界の半分をお前にやろう」という誘いに乗ると,“闇の世界”をもらうことになり,レベル1かつ丸裸状態のふっかつのじゅもんを教えられたうえで,ゲームオーバーとなる。いってみればバッドエンドだ。

 だが本作では,竜王の誘いに乗ると,夢オチのように宿屋で目覚めるという,興味深い変更が加えられている。

 ふっかつのじゅもんなら,1つ前にメモしたもので再開すれば済むが,すべてを失った状態でセーブが行われるとシャレにならないから,ということだろうか。カップリングされた続編(DQII)との整合性を保つため,バッドエンドで終わるわけにはいかないといった理由もあるかもしれない。

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 ストーリー面では,竜王を倒して光の玉を取り戻すベース部分に変化はないものの,各種NPCの増加やセリフの追加,調整により,さらに詳しく世界観を理解できるようになった。

 その一方で,「ポートピア連続殺人事件」と「ドラゴンクエスト」の交換を望む女性や,「キムこう」(週刊少年ジャンプのゲーム記事コーナー「ファミコン神拳」のメンバー)など,一種の“お遊び”的なNPCが姿を消している。その理由としては,オリジナルから7年の時間が経過し,ドラゴンクエストという存在が,実験的なRPGから国民的RPGに変化していたこともあるだろう。

 なお,筆者がプレイした限り,後のDQI移植作品においても,NPCのセリフはほとんどがスーパーファミコン版のものを微調整して使われているようだ。

スーパーファミコン版で新たに登場したカップルのNPC。この世界が大きな危機にある……という状況を,より具体的に描くために追加されたと思われる。後のDQIでも引き続き登場し,HD-2D版でも同様の立場を担っている
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 ゲームシステム面では,ファミコン版の“鞭”として挙げた部分のほとんどが改善されている。DQVのシステムをベースにしていることも関係していると思うが,ダメージのばらつきが大幅に低減されたほか,敵のラリホーで確実に眠ることはなくなり,会心の一撃は必ず当たるようになった。

 特に嬉しいのが,戦闘で取得できる経験値や資金が2倍程度に調整されて“稼ぎ”に費やす時間がかなり少なくなったことだ。加えて物価も消耗品を中心に良心的で,たとえばやくそうは24Gから10Gと半額以下になり,鍵も(店によって価格は異なるが)手に取りやすくなっている。

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攻撃や魔法のエフェクトも実装された。とはいえ敵は1体のみなので,ほかのシリーズ作品での全体攻撃に比べると,派手さは控えめ
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 スーパーファミコン版は全体的に難度が低下してプレイしやすくなっているし,現代の感覚から見ても理不尽感はほとんどない。本作のゲームバランスが,後にリリースされるDQIで踏襲されていったのも納得がいく。

 DQIIIで初登場し,以降のシリーズ作品で採用されているステータスアップ用の「たね」や,ラダトームとメルキドに新設された「預かり所」といった新要素もうまくなじんでいる。

 たねによってレベルアップ以外でも能力を高める手段が増えたのは地味ながら見逃せない改良点だ。スーパーファミコン版のアイテムそのものはファミコン版と比べて劇的に増加しているわけではないが,預かり所のおかげで「せんしのゆびわ」のような雰囲気アイテムをとっておけたり,全滅時に大金を失う可能性を減らせるようになったりしたのは,プレイヤーにとって嬉しいところだろう。

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 さらに興味深いのは,重要アイテムを入手したときに,そのアイテムのアイコンが主人公の頭上に表示される演出だ。
 これは後のフィーチャーフォン版やスマホ版では採用されなかったのだが,最新のHD-2D版で復活した。かなり時代を先取りした仕様だったのではないだろうか。

説明書や別売りのガイドブックなどを読まないと分からなかったアイテムの見た目が,ゲームをプレイするだけで分かる
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 メインのコマンドは「はなす」「じゅもん」「つよさ」「どうぐ」「とびら」「しらべる」の6項目となった。「とる」は「しらべる」に統合され,「かいだん」は自動で階段を昇降するようになったので消滅している。

 また,前述のようにキャラクターに各方向のグラフィックスが用意されたため,「はなす」の方向指定は不要になり,武器や防具の装備が任意になった関係で「つよさ」のサブメニューとして「そうび」の項目が新設された。

状況に合わせた機能を使う「べんりボタン」があるので,「はなす」や「しらべる」を使う必要はあまりなかったりする
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 ステータスでは「みのまもり」が新たに登場し,前述のたねの一種である「まもりのたね」で直接数値を上げられるようになった。ただし数値そのものは,ファミコン版の守備力の計算式である「すばやさ÷2」とほぼ同じ値に調整されているので,能力自体に大きな変化はない。

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 むしろ大きく変化したのは「すばやさ」だ。ファミコン版のすばやさは,「戦闘開始時,不意を突かれるかどうか」の判定に影響していたようだが,スーパーファミコン版では,ターンごとの行動順決定に,主人公とモンスターのすばやさが参照されているようだ。

 結果として,ファミコン版では多くの戦闘で主人公が先手を取れたが,スーパーファミコン版では,すばやさが高いメタルスライムなどを相手に先手を取ることがかなり難しくなった。加えて乱数によって行動順が入れ替わり,敵が後攻→先攻と“連続攻撃”をしてくるケースもしばしば発生するようになった。

 そのほかの細かな変化としては,キャラクターの移動単位が半パネル分に変更された関係上,1パネルの移動に2歩必要になったことがある。これ自体にはあまり大きな意味はないのだが,現在地とラダトーム城の位置関係を示す「おうじょのあい」で表示される数値も2倍になった,あるアイテムを探すためのヒントも,ファミコン版とは違うものになっている。

リメイク版で追加された新キャラ(といってもDQIIIには登場している)のひとり。特定の時期にしか会えない
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 スーパーファミコン版は,HD-2D版を除くDQI移植作品のベースになっているため,ある意味ではオリジナルのファミコン版より息が長いといえるかもしれない。実際のところ,ゲームとしての完成度は(開発時にそこまで意識されていたかは別として)21世紀の現在でも十分に通用するものだ。


ゲームボーイ版「ドラゴンクエストI・II」

(1999年9月23日リリース)

 ゲームボーイ版「ドラゴンクエストI・II」は,初の携帯ゲーム機向けDQIだ。モノクロ表現のゲームボーイに加えてゲームボーイカラー,ゲームボーイソフトをスーパーファミコンでプレイ可能にするスーパーゲームボーイにも対応している。

 ゲーム内容は基本的にスーパーファミコン版の移植だが,ハードウェア性能の関係上,簡略化されているところが多い。限られた性能や表現力のなかで,スーパーファミコン版に近づけるための工夫が見て取れるし,その結果として新たな表現が追加されているのも特筆すべきところだ。

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 スーパーファミコン版との一番大きな違いは,グラフィックスの調整に加えて,町やラダトーム城などのマップ構成にまで変更が加えられている点だ。具体的には,平屋だった建物の多くに,NPCがいる2階が増設されている。

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NPCが狭い場所に放り込まれたようなエリア。こういった場所がところどころに存在する
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 おそらく,同時に表示できるキャラクター数の制限などから,物理的にエリア分けをせざるを得なかったのだろう。ほとんどの建物は元の雰囲気を壊さないように再構成されているが,1階に階段しかなく,店主を含めて2階に移動している店もあるなど,その苦労がうかがえる。

 メッセージウィンドウは最大2列のテキストしか表示できないので,テキストそのものに変更はなくても,区切りが変わっている。漢字も使用されているが,文字サイズや解像度の問題からか,その種類は減少した。これもハードウェアの性能に合わせた変更点だろう。

画数が多いものはさすがに難しかったようだが,テキストは漢字入り。ファミコン版とスーパーファミコン版の中間のような雰囲気だ
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戦闘シーンはシンプルながら背景が描かれており,エフェクトもきちんと入っている
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 戦闘画面でもグラフィックスは簡略化されているが,若干抽象的ではあるものの背景が描かれている。また,物理攻撃や呪文のエフェクトもあり,とくに「ほのおのつるぎ」での攻撃では炎の斬撃がきっちりと表現されるなど,クオリティは決して低くない。モンスターも小さめのサイズと少ない色数ながら特徴をとらえている。

 細かいところだと,毒の沼が(ゲームボーイカラー準拠なら)赤系の色で表示されるのもシリーズ作品としては珍しいが,これも使える色数が影響しているのではないかと思われる。

赤っぽい毒の沼。これはこれで毒々しい感じである
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 システム面では,「ぼうけんのしょ」に加えて,携帯ゲーム機向けのセーブ機能「ちゅうだんのしょ」(中断セーブ)が追加されたことが目を引く。戦闘時以外は基本どこでも記録できるが,ロードするとそのデータは削除され,さらにフィールド以外では,再開時に“そのエリアに入った場所”,具体的には町の入口や建物の階段などに戻される仕様だ。

 ちなみにキャラクターの移動単位は,ファミコン版と同じ1歩=1パネル分に戻されている。中断セーブの仕様も含めて,こちらもハードウェアに起因する制約があったのかもしれない。

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 その一方で,本作にはスーパーファミコン版でも採用されていない演出が2つある。1つは,竜王とその配下のモンスターが空中からラダトーム城を襲撃し,光の玉とローラ姫を奪い去る様子を描くオープニングデモだ。ファミコン版やスーパーファミコン版だと,このあたりは基本的にテキストによる説明となっていたので,なかなか印象深い。

ありそうでなかった,ストーリーを演出するデモシーン
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 もう1つは,ファミコン版で実装されていながら,スーパーファミコン版で省略された「装備に応じて主人公の見た目が変わる」システムだ。ゲーム開始直後は両手に何も持っていないが,武器と盾の状況に応じて,きちんと装備が反映される。

 ただしファミコン版と同様に,武器ごとの違いまでは表現しない。ゲームをある程度進めて剣と盾を装備した時点から,あまり意味のない要素になってしまうのだが,こだわりを感じるポイントだ。
 重要アイテムの取得時にそのアイコンが表示される演出も,スーパーファミコン版から継続して採用されている。可能な限り移植元を再現しようとしているのだろう。

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 メインのコマンドは「どうぐ」「じゅもん」「つよさ」「そうび」の4つで,「はなす」「しらべる」「とびら」が撤廃された。

 ゲームボーイのゲームはファミコンと同じく,基本的にAボタン,Bボタン,方向キーを使って操作するのだが,Aボタンが「べんりボタン」に割り当てられており,会話や扉の開錠などはAボタン1つで行える。

 移動中に道具や呪文を使いたいときはBボタンを押してメインメニューを表示させるのだが,その際にキャラクターやマップが消え,コマンドウィンドウのみが表示されるので,シリーズ作品に慣れている人は面食らうかもしれない。

 おそらくこれもゲームボーイの性能から来ていると思われるが,いわば伝統のような「コマンドメニューのオーバーレイ表示」から離れる,思い切った仕様といえそうだ。

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メルキドの前にゴーレムが立ちふさがる演出も。もちろん倒すといなくなる
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 ゲームバランスに大きな調整はないようで,プレイフィール自体はスーパーファミコン版とほぼ変わらない。だが裏を返せば,十分な性能とはいえないハードウェアでそれが実現できたのだから,移植のクオリティは非常に高いといえそうだ。さらにはちょっとした追加要素まで取り入れたわけだから,開発チームの苦労がしのばれる。


フィーチャーフォン版「ドラゴンクエストI」

(2004年3月配信開始)

 携帯電話(フィーチャーフォン,ガラケー)の普及拡大と性能向上に合わせて登場したDQI。大手キャリアが提供していたiアプリ,EZアプリ,S!アプリとしてリリースされたが,今回試遊したのはiアプリ版で,NEC製の端末「N900iS」にプリインストールされたものとなる。

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 すでにアプリの配信や端末の販売は終了しており,中古品の端末もゲーム機ほどの流通量はないと思われるので,ファミコン版やスーパーファミコン版,ゲームボーイ版よりプレイのハードルは高いと思われる。

 ゲーム機ではなく通信端末向けにリリースされたDQIだが,実は後のスマホ版(と,それを家庭用ゲーム機向けに移植したもの)のベースとなったので,後に与えた影響は少なくない。

 本作ではグラフィックスが全体的に刷新されたのが目を引く。例えばファミコン版からゲームボーイ版まで,主人公を含めたキャラクターは一貫して1ブロック単位で描かれていたのだが,本作からは縦2ブロックに拡張され,より精細に描かれるようになった。

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 このスタイルがシリーズで初めて採用されたのはDQVなのだが,同作のシステムをベースにしたと思われるスーパーファミコン向けDQIでは採用されていなかった。ここでやっと追いついたわけだ。

 それに応じて,町やダンジョンのグラフィックスもより鮮やかに描き直されており,明らかにクオリティが一段階上がっている。HD-2D版ではキャラクターを除いて3Dグラフィックスが導入されたので,2Dグラフィックスとしてはここで1つの完成形に達したといっていいかもしれない。

 非常に細かいところになるが,町のグラフィックスでは,ラダトーム城の東にいる神官のようなキャラの後ろや,メルキドの町の南に「十字架」が配置されているのも印象に残った。ご存じの人も多いと思うが,シリーズ初期作品の教会などにあった十字架は,近年では別のシンボルに差し替えられている。本作の時点ではまだ使われていたようだ。

 フィールドのグラフィックスもさらにアップグレードされた。ゲームボーイ版までの山地や森林の表現は「『山』や『木』といった単一のパネルを敷き詰める」という古典的な作りだったが,フィーチャーフォン版では,山や木といったものに複数種のパネルが用意され,それらを組み合わせて表現するスタイルになっている。これによって“つなぎ目”がわかりづらい,自然な感じになった。

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 戦闘時に表示されるモンスターのグラフィックスも新たなものに差し替わっているので,全体的な迫力も増している。ただし,この時点だとアニメーションは採用されていない。

 端末の画面は縦長だが,ゲーム画面そのものは上下がカットされたほぼ正方形という,現在では珍しい画面比率になっている。ガラケー版より前の作品はテレビに準拠した横長で(ただしゲームボーイ版は正方形に近い),後のスマホ版は完全な縦長なので,その中間といえそうだ。

 ゲームシステムでは,レベルアップのタイミングと上限が変更されたことが目立つ。ファミコンからゲームボーイ版までのレベル上限は30だったが,本作では50に引き上げられており,1回のレベルアップで上がるステータスや,呪文を覚えるレベルも変更されている。

 例えばゲームボーイ版までだと,ベホイミを覚えるのがレベル17,ベギラマは19だが,フィーチャーフォン版ではそれぞれ24と26になっている。ただしゲームバランスそのものに大きな変化はなく,「竜王を倒すためにベホイミが欲しい」といったところは変わらない。要するに,レベルの刻み方を変えた感じだ。

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 このような調整の狙いを推測すると,携帯電話でのプレイは移動中などのコマ切れ時間が多くなるため,その中にレベルアップという嬉しい体験を増やしたい,あるいは一種の区切りを多めに用意したい,といったところではないだろうか。ファミコン版の説明で書いたように,長時間レベル上げの作業を続けるのは大変だし,それがゲーム専用ハードではない携帯電話となればなおさらだ。

 また,ゲーム開始時に王の部屋から外に出ようとするタイミングで兵士が駆け寄ってきて,メニューを開く方法などを説明する演出が追加されたのも印象的だ。ボタンの数が多く,操作方法があまり直感的ではないフィーチャーフォン向けの配慮かもしれない。

 そういったガイド的な要素としては,「たびのこころえ」というゲーム内マニュアル(ヘルプ)の実装も大きい。ダウンロード配信のため紙の説明書を添付できない事情や,可能な限りゲーム内で説明を済ませるという,現在に続く時代の流れによるものだろう。

 中断セーブは,同じ携帯用ハードウェア向けの作品ということで,ゲームボーイ版から継続されている。ロードするとセーブデータが消える仕様は同じだが,フィールド以外ではエリアの入口に戻される仕様はなくなり,中断した場所から再開できるようになった。

 さらに「たびのねいろ」という,アプリ側での音量調整機能も追加されている。テレビや携帯ゲーム機のように,ハードウェア側でまとめて音量調整をするとは限らず,アプリ単位での調整が必要になったために用意されたのだろう。

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 細かいところでは,移動時の1歩が半パネル分に変更されたほか,重要アイテム取得時のアイコン表示がなくなった。装備に応じて剣と盾の有無が変わる主人公のビジュアル要素も省略されている。残念ながら“かつての要素の全部入り”とはいかなかったようだ。

 操作方法は上下左右のカーソルキーに囲まれた中央の決定ボタンが「べんりボタン」になっており,(ボタンの配置を除けば)ゲームボーイ版に似た印象だ。コマンドは「どうぐ」「じゅもん」「つよさ」「そうび」で,これもゲームボーイ版と同じだが,コマンドのオーバーレイ機能は復活している。

 また,ボタン1つで「オプション」を開くことが可能で,こちらには,上でも説明した「ちゅうだんのしょ」「たびのねいろ」「たびのこころえ」,そして「バトルメッセージのはやさ」が用意されている。

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 フィーチャーフォン版はスーパーファミコン版に続き,再度「新しいDQI」として開発されたと思われる作品だ。それはハードウェアの性能的にスーパーファミコン版を超えることが可能であったということだろうし,ゲーム機とはさまざまな点で異なる携帯電話向けの調整を施す必要もあったためだろう。

 現在プレイすると,画面が小さくなったにもかかわらず,画面構成やユーザーインタフェースに大きな変更がないため,文字などが読みにくいといった問題を感じる部分はある。

 ただ,プレイ感がそれまでのDQIと大きく変わったわけではない。ゲームのバランスにあまり手が入っておらず,物理的なキーとボタンで操作する仕組みになっているからだろう。そういった点で,後述するスマホ版に見た目は似ているが,相違点も多いところが興味深い。

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スマートフォン版「ドラゴンクエストI」

(2013年11月28日リリース)

ドラゴンクエストのタイトルロゴ以外には,DQポータルのアイコンも。ちなみに今回はAndroid版をプレイした
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 フィーチャーフォン版から10年近い年月を経てリリースされたのが,スマホ版のDQIだ。現時点で最も手軽にプレイできると思われるDQIで,「ドラゴンクエスト ポータルアプリ」から購入とDLを行う。基本的にはフィーチャーフォン版の移植作品であり,グラフィックスなどもそれに準じたものだ。

 なお,本作は複数回のアップデートが行われており,ゲーム内の仕様は時期によって多少異なるようだが,本稿の記述は2026年4月にプレイしたバージョンをもとにしている。

 本作の特徴をひとことで表すなら,「スマホに最適化されたDQI」になるだろう。前述のようにベースはフィーチャーフォン版だが,インタフェースや操作方法,そして描画関係の実装が大きく異なる。結果として,プレイフィールも多少異なる仕上がりだ。

 一番大きな差異は,タッチパネルを使った操作を取り入れるため,ゲーム画面の下部に半透明の仮想キーパッドが配置されたことだ。といっても,この上に指を置く必要はない。例えば主人公の移動などは,画面内の適当な場所に指を置いて,移動したい方向に指をスライドさせればいい。仮想キーパッドは,「現在実行している操作を画面上で確認する」ためのものといった印象だ。

 ただ,物理的なボタンを押すわけではないので,細かい入力は少しやりづらい。とくに主人公の向きだけを変更するには少々コツがいり,タッチパネルの弱点が出ているように感じた。

 とはいえ,そういった点への対策も取り入れられていて,話したり扉を開けたりするのに主人公の向きを調節する必要はない。近づいて「!」マークが表示されたら,べんりボタン(というか画面のどこか)をタップすればいい。

入力しているキーが光って表示される仮想キーパッド。「!」が表示された状態で画面をタップすれば,状況に応じた行動が実行される
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 この「!」マークは,地面に落ちている何かを拾ったりするときのヒントにもなっている。結果的に,本作では謎解きの難度が下がったのだが,スムーズな操作性を優先した仕様ということだろう。

 フィーチャーフォン版からの変更点としては,ゲーム画面がほぼフルスクリーン表示されるようになったことがある。(使用する端末にもよるが)描画される範囲が大幅に拡大されて,見通しが非常によくなった。縦方向なら,ちょっとした町がすっぽり1画面に収まってしまうぐらい……といえば,その感覚が分かるだろうか。なので画面から感じる雰囲気も,かなり違ってくる。

フィールドの表示範囲もこのとおり。端末にもよるだろうが,竜王の城がある魔の島の半分弱は最初から確認できる(左)。また複数の建物が画面内に収まる場合は,こんな表示になることも(右)
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 またユーザーインタフェースもタッチパネル用に大きく変更されている。例えば商店などでは,カーソルを移動させるのではなく,直接商品名をタップして売買するようになったし,預かり所でお金を出し入れするときは,位ごとに数字を直接設定する。呪文やアイテムも,項目一覧から直接選ぶ仕組みだ。

 こちらに関しては全般的に操作しやすく,主人公の移動とは対照的だ。本作は,タッチパネルによる操作の向き不向きを感じられるゲームでもある。

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 システム面では,世界地図が標準で実装されて,フィールドではいつでも右上のアイコンをタップして確認できるようになった。地図が所有アイテムとして「だいじなもの」に入っているといった形ではなく,純粋なゲームとしての機能だ。

 ダンジョンでは「たいまつ」や「レミーラ」を使わなくても,主人公の周囲1パネル分が表示されるようになり,光源の必要性が低下した。もちろんそれらを使えば,さらに周囲を広く確認できるので,1画面の表示範囲が広がったことも踏まえると,引き続き有用なアイテムであることは変わりがない。

 また中断セーブはロードしてもデータが消えなくなり,純粋にセーブ枠が増設された形になった。さらにオートセーブも用意されており,意図しない状態でゲームを終了してしまっても,復帰しやすくなっている。

 主人公が最初から「たけざお」を持っているところも,本作のみの仕様だ。とはいえ,ゲームの進行にはほぼ影響がないレベルなので,使うか売るかは好みの問題になる。国王に謁見するなら,「たけざお」ではなく「ぬののふく」を装備していったほうがいいような気がするが……。

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 一方で,フィーチャーフォン版まで使われてきた印象的なドット風のフォントは,今作から普通のゴシック体になっている。おそらくシステムフォントをそのまま使うようになったからだろう。決して読みづらくはないが,「あの文字を含めてドラゴンクエスト」と思っているファンにとっては残念かもしれない。ちなみに十字架は別のシンボルに変更されている。

 以前に戻った仕様としては,恐らく操作性の問題からか,1歩の移動距離が半パネルから1パネル分になったこと,レベルの上限が50から30に再変更されたこと,が挙げられる。レベル上限については,もともと刻み方が変わっただけだったので,ほとんどプレイに影響はない。

1歩の距離が変わるたびに,教えてくれる内容が微妙に変わる人(左)と,タッチパネル用のカスタマイズメニュー(右)
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 移動中のコマンドは「どうぐ」「じゅもん」「つよさ」「さくせん」に変更されており,「そうび」は「さくせん」のサブコマンドに移された。フィーチャーフォン版では(物理的な)オプションボタンがあったが,スマホにはそれに該当するものがないためだろう。

 ちなみにフィーチャーフォン版の「たびのねいろ」は,1項目ですべてのボリュームが変更される仕組みだったのが,スマホ版ではBGMとSEが別に設定できるようになった。

ゲーム内の音量調整と世界地図。意外なようだが,DQIで世界地図が利用できるようになったのは,スマホ版が初めて
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 本作はユーザーインタフェースや操作系の変更が目立つが,それ以外にもダンジョンでの光源の必要性低下や,中断セーブの利便性向上,世界地図の実装など,全体的にユーザーフレンドリーな調整が施されている。

 “ヌルくなった”と嘆く向きもあったこれらの仕様だが,スマートフォン向けゲームの市場では,歯ごたえのある大作RPGのようなものではなく,幅広い層が手軽にプレイできるものが大ヒットしていたことが少なからず影響しただろうと思われる。ファミコン版の登場から四半世紀以上が経過し,時代の流れに合わせる必要があったのではないだろうか。

コマンドメニューはオプション用の物理ボタンがなくなったので,若干変更(左)。ダンジョンは狭いながらも周囲が表示されるが(右),画面全体に表示される範囲が広いこともあり,たいまつやレミーラは変わらずありがたい存在
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 ちなみにスマホ版DQIは,Nintendo SwitchやPlayStation 4向けにDLソフトとして移植されている。画面のレイアウトは従来と同じ横向きになり,コントローラでプレイできるので,環境があるならこちらを選ぶのもいいだろう。


HD-2D版「ドラゴンクエストI&II」

(2025年10月30日リリース)

 本企画のトリを飾るのは,昨年10月に発売されたHD-2D版「ドラゴンクエストI・II」に収録された「ドラゴンクエストI」だ。

 HD-2D版DQIIIのシステムを引き継いで制作された本作は,グラフィックス,ゲームバランス,ストーリーや演出,ゲームシステムなど,ありとあらゆる要素が刷新されたリメイク作で,むしろ同じ部分を探すほうが大変なほどの変化があった。

 従来のリメイク作は細かい部分の違いこそあれ,スーパーファミコン版をベースに作られていたが,HD-2D版で,ついに“まったく新しいDQI”になったといっていいだろう。

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 違いを挙げていくとキリがないので,逆に“変わらない部分”をピックアップしてみよう。かなりざっくりとした分け方になるが,以下の4つになるのではなかろうか。

  • 冒険の舞台がアレフガルドであること
  • 伝説の勇者の子孫である主人公が,基本的に1人で冒険や戦闘をすること
  • 目的は世界を危機に陥れる竜王を倒し,光の玉を取り戻してアレフガルドに平和をもたらすこと
  • 会話によってヒントを集め,ターン制の戦闘を繰り返し,レベルアップや装備の更新で自身を強化し,ゲームを進めていくゲームシステム

 このような根幹に関わる部分は残っているが,それ以外は総取っ替えだ。これまでは細かい部分に注目してプラットフォームごとの変化を見ていったが,その観点では記事が終わらないので,「ストーリー」「戦闘とゲームバランス」「アイテム」「システム」の項目に分けて,それぞれ大きな変化をピックアップしていこう。

HD-2D版DQIIIに準拠する形で,城と町は一体化しており,かつ内海に面するようになっている。また3D化されたが視点は固定で,竜王の城はここからは見えない
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●ストーリー
 前述したとおり,物語の大枠に変化はない。「アレフガルドを救うために竜王を倒す」という根幹は同じだ。ただし多数のイベントや演出が追加されており,導入部も大幅に変化した。

 HD-2D版の主人公は,丸裸で王に謁見し,お金や鍵を渡されて冒険へ送り出される謎の存在ではなく,最初からきっちりと装備を整えた,頼れる冒険者として描かれている。彼がラダトームを訪れたのも,夢に登場した謎の声に導かれたから(DQIIIの勇者と同じ),という理由付けがされている。

王様からいくばくかのお金をもらえるのは同じだが,王の部下を助けた褒美という名目になっている。また後述するように鍵の位置づけが変わった関係で,宝箱には鍵が入っていない
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 道中にも多数のイベントが追加されており,例えばロトの洞窟では新米冒険者と出会ってその後も不思議な縁があったり,DQIIIでお馴染みのカンダタ(の子孫)が登場して戦闘&謝罪の繰り返しがあったりと,ほぼメインクエストしかなかった従来のリメイク作とは,一線を画している。頻度は多くないが,シーンによってはボイス付きで楽しめるので,なかなか新鮮だ。

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道中でたびたび出会う新米冒険者たち。どうやらDQIIIの主人公一行(ロトとその仲間)のパロディになっているようで,ちょっと面白い
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 また竜王がなぜ光の玉を欲し,ローラ姫を誘拐したのかの経緯と理由もちゃんと描かれるなど,従来のDQIで不明だった部分がしっかりと掘り下げられているのは嬉しいところだ。

 なお,これまでのDQIにおけるローラ姫の救出は“任意目標”だったのだが,今作ではゲームのクリアに必須となった。主人公とローラ姫が結ばれないと,DQIIに登場するローレシア国などが生まれないなど,後の時代との齟齬を避けるためかもしれない。

ラダトームの町から竜王の城を眺める場面がイベントとして追加された。フィールドでは確認できなくなったが,やはり対岸に竜王の居城があってこそのDQIなのだろう
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 個人的に印象深かったのは,助け出したローラ姫をラダトームにすぐ送り届けないことが,単なるやり込みやお遊びではなく,それなりに意味のあるシナリオ分岐になったことだ。姫と一緒に歩くと複数のイベントに関わることになり,姫は喋らない主人公の代わりに会話したり,戦闘を少しサポートしてくれたりする。

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 ローラ姫はファミコン版から,平和を取り戻してアレフガルドを去ろうとする主人公に付いていくなど,かなりの行動派ではあった。そしてHD-2D版では,それを裏付けるような活躍を見せてくれる,本当に芯が強くて相当なことにも動じない強い女性であると再確認できたのは面白かった。あるいは主人公への愛が,そうさせているのかもしれない。

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●戦闘とゲームバランス
 本作では,モンスターの攻撃などにアニメーションが取り入れられた。そして,プレイヤー側は変わらず1人なのに,複数のモンスターが同時に登場するようになったことが,大きな変化と言えるだろう。

 つまりほとんどの場合,プレイヤーは数的不利の状態で戦うことになるため,以前のゲームバランスとは根本的に異なっている。オプションの難度設定やどれぐらい寄り道するかにもよるだろうが,個人的にはバッチリ冒険(ノーマル)でも「結構歯ごたえがあるゲーム」という印象を受けた。とくにゲームの後半に入ったあたりで,グッと難度が上がる印象だ。

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 その理由は大きく分けて2つある。1つは単純に数的不利からくる高難度だ。敵の複数攻撃に十分耐えられるだけの体力がないと,よくてジリ貧,悪ければあっという間に倒される。デバフや状態異常を付与してくるモンスターも多く,「ギリギリ勝てる」ぐらいで挑むと,少し運が悪いだけで棺桶に直行だ。

序盤で印象的だったのが,ドラキーが呪文を使ってきたこと。“少し強いスライム”ぐらいの認識だったので驚かされた
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 筆者は出現する敵に合わせて,状態異常耐性を上げるアクセサリーを頻繁に付け替えていたが,それでもダメなときはダメだった。本作には,HD-2D版のDQIIIと同じくAIによるオート戦闘も用意されているが,ギリギリの戦いが続くので,そちらを使おうという機会はほとんどなかった。

 なお,敵の出現数増加に対応して,武器や呪文にも複数の敵を対象にしたものが登場している。だが,グループ攻撃(同じ種類の複数モンスターに対する攻撃)の充実ぶりに比べると,全体攻撃のものがやや少ない。さまざまな敵を相手にしながら「ブーメランはちょっと火力が寂しいから,イオ系の呪文で全体攻撃したい」などと何度も思ってしまった(本作にイオ系の呪文は登場しない)。

敵の弱点が攻撃前から分かるようになったのも,HD-2D版の特徴だろう
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 出現した敵を強力な攻撃で一気に吹き飛ばすことができるようになったのは,ゲームも後半に入ってから。結果的にザコ戦の難度は,従来のDQIより低いどころか,進行度によっては高く感じることがしばしばあった。

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 高難度のもう1つの要因は,ボス戦になると力押しが通じにくくなることだ。本作では従来のDQIに比べて,対峙することになるボスが増えているのだが,それぞれ強力な物理攻撃を容赦なく放ってきたり,繰り返し仲間を呼んできたり,ブレスを連発してきたりと,かなり異なる行動パターンを持っている。

 基本的には「そのボスに特化したような行動を取らないと倒しづらい」という感じで,いわゆるギミック系ボスのような調整がされているようだ。

最初のボスの呪文を,マホステでかき消している状態。呪文は強力だが,それ以外の行動はあまり怖くなかったりする
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 そのため,完全な初見でボスに勝つのは結構難しい。例えばブレスが痛いなら耐性防具を装備する,物理攻撃が強すぎるなら「みかわしきゃく」で回避率を上げる,あるいは「うけながし」で相手に返すなど,相手の行動を見極めて,それに応じた対処が必要になるからだ。

 ガッツリレベルを上げれば小細工は必要ないのかもしれないが,個人的には普通にプレイしているだけではそこまでレベルを上げられないと感じた。また,ふくろに入れている装備は戦闘中に付け替えられないので,対応する装備を持っていてもやり直しになってしまうのが,少々面倒だった。オートセーブがあるので,大きな問題にはならないが……。

ドラゴン系はとにかく炎攻撃が強烈なので,火炎耐性を高めておくとだいぶ楽になる
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 このような調整になっているのは,とくにファミコン版のDQIで顕著だった「レベルを上げて装備を整え,物理攻撃で倒す」という攻略法(これはRPGジャンルにおける定番の戦い方にもなった)における戦略性の薄さを解決したかったからではないだろうか。

 技や武器が増えたとしても,1人で戦う以上,役割分担や連係攻撃といった戦い方はできない。その制限があるなかで戦い方に変化をつける手段として,ボスの攻撃パターンを偏らせるのは効果的なように思える。ある意味でドラゴンクエストらしくないボスたちかもしれないが,緊張感の中で考えを巡らせる戦闘が楽しめるのは確かだ。

 このように個々の戦いは厳しいが,ダンジョンなどの探索という単位で考えると,楽になった部分もある。本作のデフォルト設定では,レベルアップ時にHPとMPがフル回復するのだ。かつてのように「MPが尽きて打つ手がなくなる」という事態を避けやすくなっているし,MPが少なめでも,場合によってはレベルアップによる回復を見込んで進むのが賢いやり方になるだろう。

 ちなみに後述するアイテムと同じく,出現するモンスターの数も一気に増加している。追加対象は主にDQIIIとDQIIに登場するタイプとなっており,ロトシリーズで統一が図られている。とはいえDQIの世界に「わらいぶくろ」や「おおねずみ」がいるのを見たときは,オールドファンとして少々驚いてしまった。

図鑑も用意されているので,いつでも敵の詳細を確認できる
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●アイテム
 本作には大量のアイテムが後のシリーズ作品から逆輸入されており,非常に道具欄が華やかになった。武器や防具はもちろんのこと,消耗品も多数追加されており,中でも「いのりのゆびわ」をはじめとしたMP回復用のものが増えている。

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 大きな変更点としては,頭防具とアクセサリー枠が追加されたことがある。上でも少し触れたが,アクセサリーは各種の耐性を高めたりステータスを底上げできたりするし,頭防具は守備力に加えて回避率を向上させたり,MPの消費量を減らしたりもできる。筆者のプレイでも,一番多く取っ替え引っ替えした枠だった。

アクセサリーは状態異常を防ぐものから,呪われたものまでさまざま。同時に2つ装備できることもあって,選択の幅は広い
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 「巻物」という重要な消耗品が追加されたことも忘れてはいけない。これはいわゆるスキルの書で,読むとその巻物に応じた呪文や特技を覚えられる重要な代物だ。

 巻物で覚えられるのは,レベルアップで覚えるものとは別の呪文や特技。呪文ではヒャド系やリホイミ,特技なら「ゾンビ斬り」や「とうぞくのはな」といった定番もあり,前述の厄介なボスに効くものもあるので,漏らさず入手したいところだ。探索によって冒険を進めやすくする要素でもあるだろう。

巻物で覚えられるスキルのお役立ち度はまちまち。設定上は勇者ロトが仲間たちと残したものらしい
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 それまでのプレイヤーが驚くような変更も加えられている。とくに大きいものとしては,ダンジョンが暗闇ではなくなり,それに対応する形でたいまつとレミーラが削除されたことだ。

 「暗闇に包まれたダンジョンを,たいまつやレミーラの明かりを頼りに進む」という要素はDQII以降のナンバリングタイトルにはない,DQIならではのものだった。そこへついに手が入ったわけだ。

 前述したように,スマホ版ではたいまつやレミーラを使わない探索が可能になっていたので,段階的な仕様変更が進められたことになる。

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 もう1つの大きな変更点は,カギ(魔法の鍵)が購入可能な消耗品ではなくなって,「とうぞくのかぎ」「まほうのかぎ」「さいごのかぎ」という定番の構成になったことだ。当然ながら後のシリーズ作と同じように,3つすべて入手しないとゲームをクリアすることはできない。

 各種のカギの入手にまつわるイベントも新設されており,主人公がまほうのかぎを入手した後に,消耗品としてのカギが作られたエピソードも用意されているなど(購入はできない),既存作品とのつながりも感じられる。

 「たいまつ」と「壊れるカギ」のシステムは良くも悪くもDQIを象徴するようなルールであり,初のリメイクとなったスーパーファミコン版はもちろん,さらに約20年が経過したスマホ版ですら根本的な変更が入ることはなかった。HD-2D版の開発では,まさにいちから仕様を見直す方針があったのだろう。

●システム
 AIによるオート戦闘やたいまつ,巻物などにはすでに触れているので,それ以外の大きな変更点をこちらで挙げていこう。

 まず根本的な変化としては,キャラクター以外が3Dグラフィックスで描かれるようになったことがある。フィールドはもちろん,町やダンジョンなどもすべて3D化されており,かつてドットグラフィックスで描写されていた世界とは,雰囲気が大きく変わっている。

 スケール自体も大きくなって移動に必要な時間も増えていると感じたし,結果として「1歩」という概念もなくなった。ただしHD-2D版のDQIIIと同じように,視点の変更機能は存在しない。

町などのロケーションがアイコン然としたものではなく,それぞれの特徴を捉えたものになったのも,以前との違いだ
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 全体的なマップの構成や作りは従来のDQIをベースにはしているものの,実質的に一新といってよく,とくに新たなロケーションはかなりの数が用意されている。大きな町は新設されていないが,旅の宿屋や集落の廃墟,ダンジョンや人間以外の集落など,かつて何もなかったスペースに,さまざまなスポットが追加されているので,繰り返しDQIをプレイしてきた筆者も,新鮮な気分で冒険できた。

 個人的にはドムドーラの南にメダル王の城が配置されたのがありがたく,ここを拠点に冒険する時間が長くなった。説明の順番が逆になったが,城があれば渡すものがある……というわけで,世界各地に「ちいさなメダル」が散らばっている。これを一定数集めるともらえる報酬には,ありがたいものが多い。

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 HD-2D版以前のDQIはクリアに必須のアイテムが少なく,「ぎんのたてごと」や「たいようのいし」など,ごく限られたものがフラグになっていた。

 だが本作ではDQIIから5つの「紋章」が逆輸入される形で追加されただけでなく,これらを主人公が実際に作成するイベントが展開される。紋章はクリアに必要なアイテムであると同時に,主人公を強化する力が込められており,集めるほど新たな能力が開花していく。

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 紋章の中でとくに大きな効果を持っているのが,「いのちの紋章」だ。この紋章を入手するとHPが増えるうえ,既存の特技や呪文を大幅に強化して放つ「超絶技」を発動できるようになる。発動条件は体力が半分以下になるか,特定の特技を使うこと。消費MPは大幅に増えるが,バトルの切り札になり得る。

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 これら以外にも,預かり所がなくなって,その役割は「ふくろ」が担うようになったとか,ルーラがHD-2D版DQIII準拠で町やダンジョンのどこでも移動先が選べるようになったなど,従来と違う仕様は多いのだが,今まで挙げてきたものに比べればだいぶ小粒だ。「同じ部分を探すほうが大変」と書いたのが本当であることを分かってもらえただろうか。

HD-2D版の共通仕様として,ルーラと世界地図が一体化した。分かりやすいうえ,利便性も向上。町の中に直接飛ぶか,それとも町の外に行くかといったことも選べる
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 恒例のメインメニューに触れておくと,コマンドは「どうぐ」「じゅもん」「そうび」「とくぎ」「おもいで」「さくせん」の計6種類だ。当然ながら決定ボタンは便利ボタンを兼ねており,扉は鍵があれば全自動で開くようになっている。

 念のために説明しておくと,「おもいで」はNPCの会話をヒントとしてゲーム内に記憶しておく機能で,「さくせん」にはシリーズお馴染みの「まんたん」機能や各種システムの設定,戦いの統計が見られる「せんれき」や,さらに充実したヘルプとなった「旅の心得」などが固まって配置されている。

 システムが一新されたので,結果として仕組みは複雑化し,それに対応する形で項目も増えたといえそうだ。

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“3世代のDQI”が紡いだ40年の歴史


 以上,1986年にリリースされたオリジナルのファミコン版DQIから,2025年のHD-2D版DQIまでを一気にまとめてみた。そのうえでの感想としては,「ファミコン版とHD-2D版のDQIはまったくの別物だが,それに至るまで大まかに3つの世代に分かれている」といったところだろうか。具体的には,以下のとおりだ。

  • 第一世代 ファミコン版
  • 第二世代 スーパーファミコン〜スマホ版
  • 第三世代 HD-2D版

 シリーズの始祖であり,家庭用ゲーム機用RPGというジャンルを開拓したファミコン版DQI。時代の流れに合わせてシステムを改修し,グラフィックスを強化したうえで,バランス調整を施したスーパーファミコン版。それをハードウェアや時代に合わせて,微調整していったのがゲームボーイからスマホ版のDQIだ。最後はいちからシステムを見直すことで,まったく新しいDQIを作り出したHD-2D版となるだろう。

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 この分け方には根拠もある。それは攻略方法が「ファミコン版DQI」「スーパーファミコン版〜スマホ版DQI」「HD-2D版DQI」と綺麗に分かれるからだ。前述のとおりファミコン版は別格の荒削りな作品なのだが,次のスーパーファミコン版からスマホ版までプレイフィールは驚くほど変わらない。同じ攻略手順で,同じぐらいの探索やレベル上げをおこなえば,概ね同じようにクリアできる。

何度ものリメイクでも変わらなかったのが,装備の価格。敵が落とすお金は増えており,消耗品の価格は変わっているのだが,装備に関しては据え置きだったのが印象深い
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 もちろん操作方法などは違うし,見た目も変わっているのだが,根っこの部分は変わらなかったのだ。これだけの月日が流れているのだから,意図的に変更しなかったのだろうし,逆に時代が変わる中でも,基本的な部分を変えることなくリリースできたことがすごい。たとえばファミコン版をDQ1.0とすると,スーパーファミコン版はDQ1.2,その後はハードに合わせてDQ1.22,DQ1.3〜などとバージョンが変わっていったような印象だ。

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 それだけにHD-2D版のDQIには,非常に驚かされた。リメイクはリメイクなのだが,ファミコン版からスーパーファミコン版での「世界の解像度が上がった」といったものとは明らかに違う,いい意味で「別の世界線のDQI」という印象すら受けた。先ほどの例で挙げるなら,「DQI Ver.2.0」とでも呼びたいところだ。

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 そう感じる理由はいくつもある。鍵の存在自体が変貌したり,出てくる敵が大幅に変更されて使う戦法も変わったり,イベントが一気に増えてカンダタや妖精が重要な役割を果たしたり,明確にDQIIIの勇者(つまり主人公の先祖)が描かれたり……といったものが積み重なっていったのが原因だと思う。ローラ姫を連れて歩くと,余計そう感じる機会が増えた印象だ。

ドラゴンクエストシリーズでの食に関する描写は少ないが,少なくともアレフガルドで大根が食されていたことは確かなようだ
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 ちなみに,これから筆者のようにDQIのオリジナル版と各リメイク版の違いを実体験したいなら,Wii本体と,Wii用ソフトである「ドラゴンクエスト25周年記念 ファミコン&スーパーファミコン ドラゴンクエストI・II・III」を手に入れて,ファミコン版とスーパーファミコン版をプレイし,その後に現在配信中のHD-2D版をプレイするのが現実的ではないかと思う。入手のハードルはそれほど高くないはずだ。

 あるいは実機でファミコン版をプレイできるならば,それに加えてスマホ版とHD-2D版をプレイするのもいいだろう。40年という時の流れを感じるには,それでも十分だと思う。

 なお今回プレイした中で,個人的に一番気に入ったのはゲームボーイ版だ。限られたハードウェア性能の中で,何とかスーパーファミコン版と変わらないゲーム体験を提供したいという気概があり,実際にそれが成功していると感じられたからだ。かつて家庭用ゲーム機の性能がアーケードゲームに大きく後れを取っていた時代,そういった移植作品があったのを思い出した。機会があれば,ゲームボーイ版をゲームボーイカラー環境でプレイしてほしい……といったところで,今回のDQIを巡る旅を終えるとしよう。

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 最後に,記事中で紹介できなかった過去の「ドラゴンクエストの日」企画記事のリンクを入れておくので,そちらも楽しんでほしい。

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[2023/05/27 10:00]

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