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本イベントは,エンターテインメントの枠を超え,教育や医療,行政,社会課題の解決などにゲームの技術や知見を活用する「シリアスゲーム」の可能性を探求する取り組みだ。
会場では,今年度より同大学に新設された「ゲーム社会デザイン専攻」の教員陣や国内外の研究者・実践者による講演,さらには学生が授業で制作したゲームの展示やメタバース会場との連動など,多角的なプログラムが展開された。
シリアスゲームをめぐる国内外の潮流
開会にあたり,まずはIGDA日本の理事であり,コミュニティ育成を目的とした作業部会「SIG-Growth」の司会代行を務める佐藤 翔氏が登壇し,主催団体および本イベントの趣旨説明を行った。
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佐藤氏はまず,母体となるIGDAについて,アメリカを中心に全世界で1万人以上の会員と130以上のチャプター(支部),40以上のSIG(作業部会)を擁する国際NPOであると紹介。教育SIGでは世界中の大学関係者が集まり「カリキュラムフレームワーク」の策定を進めており,その最新版ファイナルドラフトが今年末までにまとまり,来年発表される見通しであることにも触れた。
また,佐藤氏自身も世界62か国・120以上のゲームインキュベーターやアクセラレーターが集うインキュベーションSIGの創設者兼委員長を務めているという。
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2002年に設立され20年以上の歴史を持つIGDA日本においても多彩なSIGが活動しており,佐藤氏らが3年前に立ち上げた「SIG-Growth」では,ゲーム産業政策の勉強会や,戦時下におけるプロパガンダ・対プロパガンダでのゲーム利用に関する講演,国境や業界を越えるゲームビジネス,インディーゲーム投資など,業界支援につながるテーマを幅広く扱ってきた。
また,文化庁や三菱UFJリサーチ&コンサルティング関係者と連携したクリエイター・パブリッシャ育成プログラム「グローバルゲームグロース」事業も主催している。
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そうした活動のなかで現在とくに注力しているのが「シリアスゲーム」の領域だ。
2025年7月には立命館大学にて「京都シリアスゲームサミット」を,2026年4月には東京大学にて「東京シリアスゲームサミット」を開催。過去のサミットでは国内の第一人者に加え,ホワイトハウスでゲームジャムを実施した元ゲーム産業担当官のマーク・デローラ氏や,国連環境計画(UNEP)をはじめとする国連機関の関係者が多数登壇し,国際色豊かな議論が交わされたという。
佐藤氏は,今回の「大阪シリアスゲームデイ」について,大阪電気通信大学の協力のもと,国際関係も含めた興味深いテーマを扱う実験的な場として展開していきたいと語った。最後はIGDA日本が運営する「シリアスゲームDiscordサーバー」への参加を呼びかけ,オープニングを締めくくった。
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ゲームを「目的」から社会課題解決の「手段」へ。新専攻が目指す未来
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続いて,最初のプログラムとして大阪電気通信大学の教員陣によるパネルセッション「大学が考えるシリアスゲームの未来」が実施された。
モデレーターは同大学のでシリアスゲームを研究するシン・ジュヒョン氏が務め,パネリストとして総合情報学部 デジタルゲーム学科 ゲーム・社会デザイン専攻から,魚井宏高氏,寺山直哉氏,阿部悟郎氏,森本 健氏,ナガタ タケシ氏,稲浦 綾氏の6名が登壇した。
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セッションの前半では,2003年の学科創設時から在籍する魚井氏から,同大学におけるゲーム教育の歴史が語られた。
日本で初めて大学に「ゲーム」の名を冠した学科を作る構想は2001年頃に始まり,コナミで「パワプロ」シリーズを手掛け,のちに同額に着任した開発者をはじめとする現場クリエイターへのヒアリングを経て,2003年に「デジタルゲーム学科」が開設された。
学科名に「デジタル」を冠した理由について,魚井氏は「当時はPlayStation 2の時代で,単に『ゲーム学科』とすると囲碁・将棋やカードゲームといったアナログゲームのイメージが強く出てしまうため,コンピュータでゲームを作ることを明確にしたかった」と振り返る。
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また,企画・芸術(美術/音楽)・プログラミングの3分野を同時に教え,工学と芸術の双方を包括する学科として認可されたことは,当時としては非常に画期的だったという。
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シリアスゲームとの関わりについて,魚井氏は2002年の学科設立準備中に参加したディスカッションで「エデュテインメント(教育と娯楽の融合)」という概念に触れた際,実はかなり懐疑的だったと明かす。
しかし,のちにスマートフォンが登場して移動中などいつでも簡単にゲームができるようになり,さらにプレイヤーがどう遊んでいるかというデータを容易に収集できるようになったことを受けて,「そうしたデータを拾い上げて社会へフィードバックすることの重要性を目の当たりにするようになり,今ではシリアスゲームの流れにとても肯定的」なのだという。
当時のエデュテインメントではできなかったことが新しい技術によって表現されている点を,非常に面白いと感じているそうだ。
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続いて,今春より「ゲーム社会デザイン専攻」の主任に就任した寺山氏が,同専攻のコンセプトを解説した。
同大学のデジタルゲーム学科は現在,ゲーム制作を主眼とする「デジタルゲーム専攻」,周辺領域へクリエイションを広げる「ゲーム&メディア専攻」,そして新設された「ゲーム社会デザイン専攻」の3専攻体制となっている。
寺山氏は「これまでの2専攻がゲームやクリエイションそのものを『目的』としていたのに対し,ゲーム社会デザイン専攻はゲームを『手段』として使い,社会の諸問題やコミュニケーションの課題を解決することを目的としています」と語る。
「ゲーム設計はすなわち社会設計である」という思いを込めた同専攻では,ゲームが単なる娯楽にとどまらず,コミュニケーションツールや社会のインフラとして機能し始めている時代を見据え,「作る・リサーチする・マッチングする」というカリキュラムを展開している。ゲームの技術や演出力(シーズ)と社会の課題(ニーズ)の間に橋を架ける教育・研究を行っており,卒業後の進路としてもゲーム会社への就職だけでなく,行政や一般企業のDX担当など,ゲームの力で社会課題を解決する多様なキャリアを想定しているという。
なお,同大学の理事長がコナミで「DanceDanceRevolution」を開発した大石益光氏であり,医療や健康といった分野へのゲームの応用に深い理解があることも心強い推進力になっていると紹介された。
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アーティストとしてメタバース関連の活動も行うナガタ氏も,「ゲームを作ることを目標にするのではなく,入口としてゲームを作り,そこから社会に向けて議論していくアプローチが生まれている」と同調。ナガタ氏自身も現在,現実空間ではなくスマートフォンやVRのバーチャル空間上にグラフィティを描き,コミュニケーションやアーカイビングを行う新たな表現に取り組んでいると明かした。
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また,産業界でコンシューマゲーム開発に携わってきた阿部悟郎氏は,英語学習ゲームなどの例を挙げつつ,「いわゆる『ゲーム』と思われている枠を飛び越えたうえで,インタラクティブ性や驚き,遊び心によって体験を強くすることに興味がある」とコメント。
これを受けて寺山氏は,「既存のシリアスゲームの枠に研究を当てはめるのではなく,学生たちと冒険を重ねた結果,4〜5年後には『シリアスゲーム』という言葉の定義すら拡張し,飛び越えていくような動きが大学から生まれたら面白い」と意欲を見せた。
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教育とシリアスゲームの関係性については,教育工学を専門とする稲浦氏がこれまでの指導経験を語った。
稲浦氏は,学生に対してあえて「シリアスゲーム」という言葉を使わず,「教育向けゲーム」「何かを学ぶためのゲーム」と呼んで指導してきたという。その理由は,学生が「シリアス」という言葉の響きに身構えてしまうのを防ぐためだ。
氏は,「学生に社会課題というと,すぐに『地球温暖化をどう解決するか』といった大きなテーマを選びがちですが,もっと身近なところから自分たちにできる一歩を考えることが大切」だと話す。また,デジタルアプリにつなげるためにはアナログでの設計がしっかりできることが重要だとし,「ゼミではアナログゲームを作る取り組みも行ってきました。自分がどう学び,周囲にどう伝えるかを考えること自体が教育につながっていきます」と述べた。
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モデレーターのシン氏も,「シリアスという言葉が『難しい』『面白くない』『お金にならない』といった誤解を生みがちな面はある」とうなずきつつ,近年は日本のインディーゲームのなかから社会課題を扱ったインパクトのあるシリアスゲームが多数登場し,世界中で高く評価されている現状を強調した。
また,産業界で30年間プログラマーとして活躍し,新専攻の設立に合わせて准教授に着任した森本氏は,「同じ問題を解決するにも,人によってこれほど手段や発想が違うのかとその場で実感できるのが大学の良さです」と語り,会場後方に展示された学生たちの授業制作ゲームにもぜひ触れてほしいと呼びかけた。
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セッション後半では,シリアスゲームを学んだ学生たちのキャリアパスや未来像について議論が深められた。
寺山氏は,18歳で入学する学生にとってもっとも身近な「ゲーム×社会」の接点は「自ら作ったゲームを社会にリリース・販売すること」であるとし,自身で会社を興すアントレプレナーシップ(起業家精神)まで含めたキャリア設計や特別プログラムにも挑戦したいと語った。
魚井氏は,「今はAIがあるため,技術的にゲームを作るだけならある程度できてしまいます。だからこそ『何が楽しいのか』『何を伝えるべきか』を本質的に理解している人が,一般の企業や団体に1人でも入ることが重要です」と指摘。
森本氏も,新専攻にはゲーム制作そのものに強い教員陣が揃っているため,純粋なゲームクリエイターを目指しつつ「ゲームを手段としてどう活用するか」という視点を持った人材を輩出したいと力を込めた。
さらに寺山氏は,デジタルゲーム学科3専攻の共通キャッチフレーズが「ゲームを作ったその先へ」であることを紹介し,学生たちに身につけてほしい能力として「ゲーム性の抽象化」を挙げた。
ゲームそのものだけでなく,「ゲーム性とは何か」を要素分解して抽象化し,具象化と抽象化の間を行き来できる能力を学んでほしいとのこと。「そうすれば,社会のあらゆる分野にゲーム性を応用・掛け算して,新しい価値観を生み出していけるはず」だという。
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セッションの終盤には,会場の参加者から「シリアスゲームが教育現場や企業の社員研修など社会のあらゆる場所に,まるで機械の組み込みマイコンのように染み渡り,巨大な経済圏・文化圏を形成するためには,誰かが牽引していく必要がある。その力をもっとも発揮できる大阪電気通信大学に期待している」と熱いエールが送られた。
これに対し寺山氏は,ゲームを新しいカルチャーとして社会に根付かせていくため,学内ギャラリーの設置や高校への出前授業,さらにはリアルとバーチャル空間の双方を活用しながら,「開かれた大学」としてゲームの多様な可能性を体験できる場を数多く作っていきたいと応じ,セッションを締めくくった。











































