第22回「レゴ PlayStation」
1994年12月3日。灰色の小さな箱が、ゲームの歴史に新たなページを加えた。あれから30年余り。全1911ピースのブロックで、ほぼ実寸大のあの姿がよみがえる。押し込めるPOWERボタン、跳ね上がるディスクカバー、そしてその奥に眠る「グランツーリスモ」と「サルゲッチュ」の小さな世界。さあ、もう一度、電源を入れよう。
人間界のゲームに心奪われた魔王・赤城朱音(あかしろ あかね)。目つきも口調も悪いが実はお嬢様な龍恩寺凛(りゅうおんじ りん)。ボードゲームとミニチュアが大好きな天然ギャル・新山穂香(にいやま ほのか)。――そこは私立四亀学園。放課後の空き教室には,今日も3人の姿があった。
ふっふっふ。皆の者、待たせたのう!
![]() |
うわ、なんだそのデカい箱。
わ〜、「Warhammer 40,000:アルティメット・スターターセット」並みの大きさだね。
たとえがニッチすぎだろ。
聞いて驚け! 初代PlayStationをレゴブロックで再現した「レゴ PlayStation」じゃ!
あ、それ買ったんだ〜?
いんや、コネをこねくり回してバ先(編集部)から拝借したのじゃ。
便利なコネだな〜。
なんだ、子供向けの知育おもちゃで遊ぶのか。
甘いのう。箱のここを見てみよ。
18+……対象年齢18歳以上?
そうじゃ。これは大人のためのレゴなのじゃ。
へー。ってか、箱だけじゃなくて説明書までやたらデカくね。
![]() |
ほぼ実寸大の初代プレステを組むんじゃから当然じゃ。完成すれば幅26cm、高さ6cm、奥行き19cm。ちゃんとあの大きさになるぞ。
ふ〜ん。
なんじゃ、反応が薄いのう。レゴ狂いの5歳児に見せたら歓喜の舞を踊っておったぞ。
それはレゴそのものに歓喜したんだろ。
初代プレステって穂香たちが生まれるずっと前に出たハードだしね〜。
1994年12月3日発売じゃったな。ワシにとっては、つい昨日のことのようじゃがのう。
自称500歳の時間感覚、だいぶガバガバだな。
むほほ。画面からポリゴンキャラが飛び出してきたときの衝撃は、今でも忘れられんのじゃ。今日はその感動を噛みしめながら、皆でレゴを組み上げるぞい!
![]() |
とりあえず開けてみたけど、なんか袋がいっぱい〜。
いくつあるんだ、これ。ひーふーみー……14? 多くね?
全部で1911ピースじゃからな。それぐらいはあるじゃろて。
1911!? 終わる気がしねー……。
レゴってこんなに大量のブロックを使うものなの?
ものによるのう。子供向けの車なら400ピース前後じゃし、この前作ったドライブスルー洗車場は583ピースじゃったかな。
ディテールにこだわった大人向けだからこんなに多いってことか。
![]() |
袋に数字が書いてあるけど、これってなんなの?
工程ごとにブロックが袋分けされておるのじゃ。
へー。山盛りのブロックから好き勝手に組み合わせて遊ぶイメージがあったけど、こういうふうになってんだな。
そうそう。開けたらブロックがごちゃまぜになってるのかと思ってた。
自由に作るのもレゴの醍醐味じゃがな。決まったモチーフを作るセットは、番号順に開けて説明書どおりに組み立てていくのじゃ。
袋ごとに工程が分かれてるなら3人で手分けしやすいし、楽勝かも!
とはいえ、このデカい説明書をめくりながら1911ピースはキツくね?
そこで文明の利器じゃ。「LEGO Builder」アプリを使えば、組み立て手順をスマホで確認できるぞい。
それぞれのスマホで見られるのは便利だけど、紙の説明書と何が違うんだ?
見本のブロックが3Dで表示されるんじゃよ。指でぐりぐり回せば、どこにはめるのかを角度を変えながら確かめられる。
おお、マジだ。これならどこにブロックをはめるか一発で分かるじゃん。紙より分かりやすいな。
うむ。では、1袋目を開けるのじゃ!
![]() |
分かってはいたけど灰色のブロックだらけだね。のっけから灰色の何かを作らされてるし。
てか、プレステって見た目はただの四角い箱だろ? 延々と灰色のブロックを積んでいくだけなんじゃねーの。
ふっふっふ、そう思うじゃろ? 大人向けのレゴはひと味違うのじゃ。
ん? なんかカラフルな模様が……。
![]() |
![]() |
このマークは!!
土台にPSマークをあしらっておるんじゃな〜。組み上がったらフタで見えなくなるというのに、粋なことをしよる。
どんどん組んでこうぜ。2袋目からはこの土台にパーツをのせてけばいいみたいだし。
今度はやたらと緑のブロックを使うみたい。それにしても、この丸っこいパーツ、なんか電子部品みたいじゃない?
にょほほー! よいところに目を付けたのう。それはコイル。つまりワシらはいま基板を作っておるのじゃ。
ファッ? 中身まで再現してるってこと!?
![]() |
にょほほー! 基板ができたのじゃ! 分解清掃した思い出が涙腺を刺激するのう。
ん? ブロック以外に緑のビームサーベルみたいなパーツも使うんだな。てか、これどこの部分だ?
![]() |
棒の部分は動かせるみたい。本体からはみ出す感じでつけるようだけど。
位置的にこれ、電源の光を再現してるのか……? 上にスイッチっぽい機構がついてるし、これ電源ボタンのパーツだ!
正解じゃ。POWERボタンもOPENボタンも、ちゃんと押せる仕掛けになっておる。
へー! ブロックの組み方ひとつで、こんな動きまで作れるのか。
押し込んだときのなんとも言えない手ごたえは、サスペンションパーツを使って再現しておるようじゃな。この感触、クセになるの〜う。
![]() |
なんつーか、今どの部分を作ってるかを推理しながら組むのけっこう面白いな。
じゃろう? 完成品を飾るだけがレゴではない。想像をめぐらせながら組み立てる過程そのものも楽しいのじゃ。
ちゃんとハードらしさを感じられるのがいいよね。
今度は、本体の中にしまう何かを作るみたいだな。……これって道路か?
来たのう! それは「グランツーリスモ」のミニチュアコースじゃ。1997年に初代プレステで発売された、リアル系レースゲームの金字塔よ。
ちっちゃい車がコースを走ってる〜! かわいい!
![]() |
そして、もうひとつが「サルゲッチュ」の島のジオラマじゃ。
ピポサルもいるね! 頭のライトの色を選べるみたいなんだけど、赤と青どっちにしよう。
どっちでもよくね?
よくないよ! 赤なら発見されて焦ってるピポサル、青ならのんきに過ごしてるピポサルって感じで、シーンの雰囲気が変わるんだから。
なんかすまん。
![]() |
「サルゲッチュ」は1999年の作品でな。ゲットアミでピポサルを捕まえる、あの独特の操作がたまらんかったな〜。アナログスティックをグルグルしまくったのはいい思い出じゃ。
アナログスティックって、この初代PSのコントローラにはついてなくね?
そうなのじゃ……このセットのコントローラはスティックのない初代のパッド。じゃから、これじゃあピポサルを捕まえられないのじゃ。
いやこれレゴだから。そもそも「サルゲッチュ」を遊べないから心配すんな。
そういえば、朱音ちゃんは何を組み立ててるの? 後のほうの袋を開けてたみたいだけど。
ふっふっふ。ワシが一番楽しみにしておった部分じゃ! このブロックを見れば分かるかのう?
![]() |
〇×□△ボタンってことは、コントローラだ!
うわ〜、色もちゃんとあの色じゃん。
まぁ見ておれ。これをこうしてこうすれば〜。
![]() |
カニ、かな?
カニだな。
違うわい。コントローラの中身の部分なのじゃ。
![]() |
なんだろう。丸みを帯びたこのフォルム、どこかで……。
コントローラの握るとこじゃね?
ご名答! 先っぽのフォルムがそれっぽいじゃろ〜。
じゃあ、こっちの工場の煙突みたいなのは?
![]() |
コントローラの接続端子だ!
ふはははは! そうじゃ、これを本体の前面に挿すのじゃ!
分かりやすいパーツが多いから、なんかついついテンションが上がっちゃうね。
じゃろ? 自分がどの部分を作っているかに気付くたび、当時の記憶がよみがえってどうしようもなく胸が高鳴るのじゃ。大人のレゴはこのエモさも味わいのひとつかもしれんのう。
![]() |
凛ちゃんも、さっきから黙々と組んでるよね。
今いいとこなんだよ。
かっかっか! 外装に入ってから、急に見慣れた姿になってきたからのう。
側面の通気口とか、背面のプラグの差込口まで細かいブロックの組み合わせで再現されててすごいよね。
丸いディスクカバーのあたりとか、あの見た目まんまだしな。灰色のブロックを積むだけって言ったの、撤回するわ。
じゃから言ったのじゃ。大人向けのレゴはひと味違うんじゃと。
![]() |
ついに完成じゃ。なんやかんやで6時間かかったのう。
わぁ〜、ほんとにプレステだ……!
では、お待ちかねのOPENボタンをカチッとな〜。
おお、開いた。
フタが開くと「グランツーリスモ」と「サルゲッチュ」のジオラマが見えるんだね。ディスクの代わりにゲームの世界が入ってるみたい。エモエモじゃーん。
遊んだゲームの思い出まで一緒に組み上げる。これがこのセットの粋なところじゃな。
![]() |
ところで、プレステ本体の裏面ってどうなってるんだ?
ひっくり返してみようか。そーれっと。
![]() |
おわ……。
なんかぞわっとするね。
ほほー! ゴム足部分も再現されているではないか!
ひっくり返すとブロック感がマシマシだねぇ……。
![]() |
完成したのを眺めるより、組んでる時間のほうが楽しかったな。
最初は子供向けの知育おもちゃ、なんて言ってたのにね。
う、うるせーやい。
これで2万7980円か〜。いいお値段だね〜。
大人向けレゴの中ではかわいいほうじゃぞ。「エグゼクター スーパー・スター・デストロイヤー」のセットは4倍くらいするしのう。
ふーん。大人向けのレゴってけっこういいラインナップだよな。眺めてるとほかのもほしくなってくるし。
ねぇねぇ、つぎ作るならもっとデカくてピース数が多いのにしない?
いいのう! いいのう!
ちょうどいいのみっけた。「サグラダ・ファミリア」作ろうぜ。
スペインの建築家アントニ・ガウディのやつ?
そう。本物の建設と同じ順番で組んでくらしいぜ。
![]() |
ほう……。して、ピース数は?
1万2060ピース。レゴ史上最多だってよ。
い、いちまん!? こ、これはお値段もすごそう……。
12万9980円。
ひえぇ……。
でも本物はまだ完成してないんだよね。だったら、むしろ完成させずにおいたほうが、サグラダ・ファミリアらしくない?
じゃあさ、ラストの部分だけ残しておいて、本物が完成する日に3人で最後のピースをはめようぜ。
それ、すっごくいい!
ふむ、ワシらの青春を飾る悪くない1ページになりそうじゃの!






































