本作の基本的なシステムやゲームの特徴については,2026年7月に掲載した体験版のプレイレポートで伝えたとおりだ。今回は,公開中の体験版とは異なる新ステージ「大航海時代」の一部をプレイした感想と,オンラインで実施した開発スタッフへのインタビューをお届けしよう。
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[プレイレポ]“現実”が紙上世界に干渉する。「Chronoscript: The Endless End」の先行プレイで味わった,緻密なアートと確かなアクションの手応え
集英社ゲームズより2026年秋に発売予定の「Chronoscript: The Endless End」は,圧倒的な“手描き力”を武器とするデスクワークスの新作タイトルだ。先行プレイを通して,本作の演出やシステム,ゲームとしての手応えを伝えよう。
“原稿のなか”と現実が交差する
「大航海時代」を先行プレイ
物語の主人公は,長期連載を終えたばかりの編集者。奇妙な編集依頼を受けて山奥の洋館へ赴いたところ,千年の時を生きる執筆家が書き続ける「終わりの続きの物語」のなかに囚われてしまう。
プレイヤーは編集者として原稿世界を“推敲”し,千年にわたって書き続けられてきた物語を完結へ導かなければならない。
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ゲームの基本は,原稿用紙のなかに描かれたフィールドを探索して先へ進む2Dアクション――いわゆるメトロイドヴァニアだ。原稿用紙をまたぎながら道を探し,敵との戦闘やさまざまな仕掛けを乗り越えて先へと進んでいく。
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特徴的なのは,原稿のなかにある“2D世界”と,原稿用紙が置かれている洋館の“3D世界”が互いに影響し合うこと。現実側に置かれた物体が原稿の一部を覆ったり,逆に原稿世界で起きた出来事が現実側へ影響したりと,2つの次元を組み合わせた表現がゲームシステムにも組み込まれている。
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と,ここまでは7月のプレイレポでも詳しく伝えている。ここからは新ステージ「大航海時代」のメディア向けビルドでのプレイをもとに,そこで得られた情報をまとめていく。
なお本作は,リリース時期の変更が発表された際に,キャラクターアクションの改良を含むブラッシュアップ,視認性の向上などが予告されている。今回のメディア向けビルドは操作性の調整前のため,本稿の内容は製品版と異なる可能性がある点にご留意いただきたい。
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「終わりの続きの物語」の内部では,“結末”にたどり着けなかった物語がさまよっている。編集者たるプレイヤーの仕事は,行き詰まってしまった物語を結末まで導くことだ。
攻略する各ステージには固有のテーマがあり,新ステージでは「航海士エリンケス」の物語が展開された。
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大航海時代はいくつかのステージをクリアしたあとに出現するようで,それに伴って使えるアクションもかなり増えていた。無敵時間を利用して敵や攻撃をすり抜けられるダッシュや,使用回数制限がある特殊攻撃など,アクションゲームに求める基礎が揃った状態だ。
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難度はかなり高かったものの,戦闘自体の快適さはだいぶ増した印象だ。
攻撃モーションがすべて再生されてから次のモーションに移る仕様は相変わらずで,通常攻撃の重さは以前と大きく変わっていない。しかし,使えるアクションの種類自体が増えたことで,相手の行動を待つのが“常に正解”な状況は減っている。
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新ステージで驚いたのは,その構造の複雑さだ。一見するとリニア寄りの横スクロールアクションのようだが,かなりの頻度で分かれ道が現れる。単に脇道になんらかのアイテムがあるだけでなく,攻略手段が異なる“別ルート”であることもあり,なかなか攻略しがいがあった。
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休憩ポイントはそこそこ遠くに設定されているので,被弾を抑える立ち回りをかなり意識しなければならない。敵も強いので,ルート選びや探索にもけっこうな緊張感がある。
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横に並べた“紙”を俯瞰するマップは,ビジュアル的に美しく面白い。ルームビューではLTとRTでカメラを自由に拡縮し,見やすい位置に調整できる。
ただ,独特のアート表現を生かしたデザインだけに,人によってはマップの情報を読み取りにくく感じる場面もあるかもしれない。
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0.1秒でまるっと変わる操作感
独自表現をゲームに落とし込む手法とは
今回の試遊で感じた変化や疑問について,開発チームはどのように考えているのか。開発ディレクターを務める藤井トム氏を中心として,メインアーティストの南場ナム氏,集英社ゲームズのプロデューサー・山本正美氏に話を聞いた。
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■体験版を経て見えてきた,難度と操作感の境界
4Gamer:
体験版公開後,国内外からさまざまな反応が届いたと思います。想定どおりだったものと,意外だったものを教えてください。
藤井氏:
トレイラー公開時や事前のテストプレイで指摘されていた問題が,体験版までに解消できているかは不安でしたが,そこが大きな問題にならなかったので,全体としては想定内の反応が多かったと思います。
一方で意外だったのは,このジャンルを遊んだことがない方にも興味を持ってもらえたことです。高難度のエクストラボス戦も頑張ってクリアしてもらえたのは,我々にとっては自信になりました。
4Gamer:
そうしたフィードバックのなかで,あえて変えなかったものや,特に判断に悩んだものはありますか?
藤井氏:
多くの意見は素直に「これは確かに対応したほうがいい」と受け入れられるものでした。かなり的を射たフィードバックが多く,Steamで体験版を遊ぶユーザーさんの理解の深さには驚かされました。
そのなかでも悩んだのが,「下斬りがほしい」という意見です。これに関しては熟考の末,入れない判断をしています。
4Gamer:
上斬りはある一方で,下斬りは入れない。その理由はどこにあるのでしょうか。
藤井氏:
ひとつは,遊びの広がりを作るのが難しかったことです。下攻撃を当ててバウンドするような遊びは大きな魅力ですが,「これを軸に遊ばせよう」と言えるほどの広がりを与えにくかった。
もうひとつは,インク関連の挙動との兼ね合いです。好きな場所にインクを置き,自由に潜ったり攻撃したりできる関係上,下方向の入力をそちらに割く場面が多かったんですね。
そのかわり,ジャンプから地面へ叩きつける攻撃や,ギロチンのように下方向への判定が大きいスキルを用意しています。先に進むほど,下方向への攻撃手段も増えていきます。
4Gamer:
インクの挙動も含め,地上から上方向へ戦うことを意識した作りにも感じました。そのあたりはいかがでしょう。
藤井氏:
そういうところはあります。実際,外部のテスター会社の方からのフィードバックには「空中の敵がかなり強い」というものが多かったです。
メトロイドヴァニアは上下にも広い地形になるので,空中の敵を使うとレベルデザインの幅を広げやすいのですが,頼りすぎると難しくなってしまいます。そのため,上方向の敵に対抗する手段も多く用意しています。
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4Gamer:
公開中の体験版では,最初のボスを倒すまでに使えるアクションがかなり絞られています。これは意図的なものですか?
藤井氏:
はい。メトロイドヴァニアは,最初はできることが少なく,二段ジャンプや回避などが少しずつ開放されていくところにも面白さがあると考えています。
近年は「回避だけは最初から使えたほうがいい」という傾向も強くなっていますが,最初のボスはあえてジャンプと位置取りだけで攻撃を避けてもらう作りにしました。シンプルな操作で敵の攻撃を見切ることには,2Dアクションゲームの根源的な面白さがあると思っています。実際,このジャンルを普段遊ばない方にもクリアしてもらえました。
一方で,「この一種類の攻撃だけでずっと進むのか」という意見も多かったです。そこで,今配信中の体験版にアップデートを実施しまして,そちらでクリア後に今後使えるさまざまなアクションを見せる映像を入れています。
4Gamer:
もうひとつ気になったのが,攻撃後の隙です。不用意に攻撃すれば反撃を受けますが,一方で「ボタンを押したのに次の行動が出ない」と感じる場面もありました。このあたりはどう調整したのでしょうか。
藤井氏:
もともと,アクション全般に「不用意に踏み込んで攻撃すると次の攻撃を避けきれない」というリスクを持たせています。ただ,「攻撃後の硬直が長い」という意見を詳しく調べると,狙っていた隙とは別の問題もありました。
攻撃が終わる前に回避などを入力しておけば,終了後すぐに次のアクションへ移る“先行入力”の仕組みは入っていたのですが,受付時間が短く,プレイヤーは入力したつもりでも受け付けられていないケースがあったんです。
4Gamer:
とはいえ,軽快にしすぎるとゲームの手触りそのものが変わってしまいそうですね。
藤井氏:
そこが難しいところで,受付時間を0.1〜0.2秒変えるだけでも,チーム内で「Dead Cellsっぽくなった」と話すほど手触りが変化しました。
攻撃を見てからすぐ回避できるほど軽快にすると,狙った体験とは別物になってしまうんです。先行入力の受付時間は従来0.175秒程度でしたが,人がボタンを連打する速度を考えると,これでは確かに短すぎました。
そこで,現在は受付時間を広げる修正を適用し,攻撃時の移動量,回復アクションの待ち時間,回避ボタンを押してから無敵になるまでの時間なども調整しています。
ユーザーさんから「遅く感じる」と直感的な意見をいただいても,最初はそれが何に起因するのか分からないことがあります。でも,細かく確認していくと,しっかりとした原因がある。今回のフィードバックでは,そうした発見が数多くありました。0.1秒単位の違いでゲームの手触りが大きく変わるので,改めてアクションゲームの開発って面白いなと思いました。
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■独自の表現を「遊び」に落とし込む手法
4Gamer:
今回のビルドでは,自分でインクを配置するアクションも使えました。高速移動や大ジャンプ,攻撃など幅広く利用できますが,これは「探索用」「戦闘用」と用途を分けて考えているのでしょうか。
藤井氏:
通常の能力は「探索用」「戦闘用」と分けて考えることが多いのですが,インクアクションだけは例外です。高速移動に加えて,壁や天井も進めますし,そこから攻撃にもつなげられる。探索から通常戦闘,ボス戦まで幅広く使うアクションになっています。
4Gamer:
背景の描き込みが非常に細かい一方で,アクション中はキャラクターや敵,攻撃を瞬時に見分ける必要があります。視認性はどのように確保しているのでしょうか。
藤井氏:
最初はモノクロだけで制作していましたが,途中でカラー化したことで,色でもキャラクターを判別できるようになりました。SteamやSNSでいただいた意見でも,視認性への指摘は比較的少なかったので,ある程度はうまくいったのかなと思っています。
大きかったのは,床の描き方です。原稿用紙のなかにも奥行きを感じさせたくて床にパースをつけていますが,アクションゲームでは「どこに乗れて,どこに乗れないのか」が分かるようになっていなければいけません。
そこで,歩ける床の縁に白い線を入れたんです。「この線に沿って進める」と分かるようにしたことで,それまでひとつずつ対処していた問題の多くが解決しました。
4Gamer:
おお,確かに。言われるまで,まったく意識していませんでした。
藤井氏:
自然に機能しているなら成功ですね。ただ,かなり苦労した部分なので,次に作るならパースはなくそうかなと思っています(笑)。
4Gamer:
実際に作っていくなかで,企画段階の想像を超えて大きく育った要素はありますか?
藤井氏:
ひとつは,2D探索型アクションそのものです。企画として目を引きやすいのは3D側なので,そこを前面に出せば分かりやすく差別化はできますが,開発ではメインとなる2Dアクションを磨き続けてきました。3Dとの融合が生きるのも,2D側のクオリティがあってこそですからね。
もうひとつは,インクアクションです。当初は「速く移動する」「高くジャンプする」といった機能しかありませんでしたが,「インクを使う敵がいたらどうか」「インクを利用したスキルを作れないか」とアイデアが加わり,かなり大きな要素に成長しました。
4Gamer:
そうしたアイデアは,藤井さんと南場さんを中心に広げていったのでしょうか。
藤井氏:
企画の中心は私と南場ですが,バトル担当やレベルデザイン担当からも多くの提案がありました。「こういうことができたらもっと広がる」「これがないと難しい」といった意見をもらいながら,チーム全体で発展させています。
4Gamer:
最初の体験版では,3D側は“演出”として見える場面が中心でした。
一方,これまで公開されているトレイラーを見ると,マップ上で見つけた動物にインタラクトするなど,プレイヤーが直接3D側へ干渉するように見える場面もあります。こうした関係は,今後さらに広がっていくのでしょうか。
藤井氏:
はい。物語が最高潮に達するときに,3D側の演出や遊びも同時に跳ね上がるよう設計しています。
ステージはかなり順番どおりに開発してきたのですが,作っていくにつれて我々自身も2D,3Dそれぞれの扱いがうまくなっていきました。後半になるほど2D側の難度を高める手段が増え,3D側のアイデアもよりリッチで緻密になっています。
3D側には演出だけでなく,直接遊ぶ要素もあります。チーム内でも「これを体験版で出せないのはもったいないね」と話していたくらいで,ご質問いただいたように,3Dマップで部屋の中を探して,傷ついた動物を見つけて血を吸うとライフが増えたり,部屋に置かれたワインを見つけることで報酬を得られたりします。
4Gamer:
「メトロイドヴァニア+」という表現には,そうした3D側の遊びも含まれているのでしょうか。
藤井氏:
そうですね。正直,体験版では「+」の部分を1割も表現できていません。我々自身が「メトロイドヴァニアを作る」というところに意気込みすぎて,「+」を見せることがおろそかになっていました。
現在の体験版もかなり序盤ですが,実際のゲームでは“その前”にもプレイする部分があります。そこから進むほど「+」の部分が広がっていき,最終盤で最高潮の体験をお届けできるように設計しています。
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■「大航海時代」から見る,ステージと敵の作り方
4Gamer:
今回遊んだ「大航海時代」は,本編ではどのあたりに位置するステージなのでしょうか。
藤井氏:
自由に行き先を選択できる場面もあるので厳密には決まっていませんが,大まかに4〜5番目に攻略することになるかと思います。
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4Gamer:
かなり上下に広く,分岐も多いステージでした。以前の体験版より複雑に感じましたが,ステージごとに遊びの方向性も変えているのでしょうか。
藤井氏:
ええ。時代や部屋ごとにテーマを設けて,反復感を与えないように意識しています。大航海時代の序盤はインクの配置が多く,空中の敵や弾を撃つ敵も多いです。
火薬や銃が発達してきた時代なので,飛び道具を使う敵を登場させ,フックを使った空中アクションや,船内を上下に移動する遊びを強めています。今回だとカニにもかなり苦しめられたんじゃないかと(笑)。
4Gamer:
カニ,かなり強かったですねぇ。
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藤井氏:
テストプレイでもずっと「カニが,カニが」と言われていて。かなり調整はしたんですが,それでも強い敵として存在感を出してもらっています。
一方,同時期に並行して進められる古代エジプトは,砂漠を長く進む比較的一本道の構成です。砂の中や壁から敵が現れるなど,フィールドに合わせて遊びも変えています。
4Gamer:
大航海時代では,かなり“メトロイドヴァニアらしい探索”が楽しめました。ただ,ほかのステージも同じくらい入り組んでいるとなると,なかなか大変そうですが……。
藤井氏:
そこも異なる体験になるよう調整しています。どちらかといえば,複雑な鍵や扉の仕掛けを解きながら迷路を探索することより,「ベンチから次のベンチまでを攻略する」感覚を重視しています。
多少の分岐や寄り道で報酬を得ながら,敵にやられないようスキルやアクションを駆使して次の休憩地点までたどり着く――という基礎構造を共有しつつ,体験に幅を持たせています。常に複雑なマップを攻略するわけではありません。
4Gamer:
となると,「ベンチから次のベンチまで」の攻略密度がかなり重要になりそうですね。ここはどのように調整していますか?
藤井氏:
かなりルール化しています。例えばベンチから次のベンチまでは,原稿用紙25〜35ページ程度を基準にしています。その区間に何パターンの敵を出すのか,同じ敵との戦闘が続きすぎないか。あとは,ひとつのエリアに新しい敵,報酬,ギミックなどを最低ひとつは入れる,といったルールも決めています。
4Gamer:
そうした基準は,どうやって決めていったのでしょうか。
藤井氏:
既存の名作メトロイドヴァニアを詳細に分析しました。スキルの数やベンチの数,ベンチ間の所要時間などを調べ,自分たちのゲームならどの程度が適切なのかを考えています。
ただ,インクのような独自要素もあるので,基準をそのまま当てはめるわけではありません。例えばインクが多い場所は移動速度が上がり,同じ35ページでも早く抜けられるので,そのぶん距離を伸ばすといった調整をしています。
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4Gamer:
敵についても,見た目と遊びがかなり密接に結びついているように感じました。どのような流れで作っているのでしょう。
藤井氏:
まず私が,大きさや出現数,攻撃範囲,「ジャンプで避ける」「回避で避ける」といったゲーム上の役割を決めます。それを南場が世界観に合わせてデザインし,さらにレベルデザイン側からも地形に合わせた調整が入ります。
その過程で「この見た目ならこう動く」「このサイズのほうが合う」と,遊び自体も変わっていきます。最初の仕様から3割から半分くらい変わることもあります。
4Gamer:
デザインから遊びが変わった,分かりやすい例はありますか?
南場氏:
例えば「狭い場所で壁を跳ねる敵」という仕様から,大航海時代の世界観に合わせてタコのような敵を作りました。砂漠なら,砂の中から出てくる敵や,さらに巨大な敵を考える。地形や世界観から動きも考えていきます。
藤井氏:
僕が印象に残ったのはタツノオトシゴですね。
これは南場が,上半身と下半身の間に水流が流れているデザインを作ってきたんです。それを見て「この水流が回転しているなら,撃った攻撃が戻ってきても面白い」と考えたことで攻撃方法も変わりました。
先ほど話に出たカニもそうです。当初は「歩兵のような雑魚敵をたくさん出す」という仕様でしたが,デザインからハサミを振り回す攻撃が生まれ,さらにレベルデザイン側から,ものすごく速く動く案が出てきました。
最初は「さすがに速すぎる」と思ったのですが,実際に遊ぶと難しくて面白かったんですよ。そういった部分は丸めすぎず,意図的に“尖った部分”として残しています。
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■パブリッシャから見た「Chronoscript」
4Gamer:
集英社ゲームズからは,ゲーム内容についてどのようなフィードバックをしているのでしょうか。
山本氏:
体験版を公開する前に,外部の会社にも協力いただいて,欧米のプレイヤーを含めたプレイテストを複数回行っています。基本的なプレイフィールはその時点でも評価が高かったので,「触り心地に関しては信じていい」とデスクワークスさんには伝えていました。
一方,体験版にはまだ十分に入っていませんが,物語にはかなり深いものが用意されています。そこを理解してもらうための動線や情報の出し方については,「入り口をきちんと作ってほしい」と話しています。
ただ,最終的にどこで線を引くかはクリエイターが決めるものだと考えています。
集英社ゲームズ社内にもテスターがいて,日々プレイフィールについてはレポートを出させてもらっていますが,あくまでもこちらはサポートする立場です。
4Gamer:
山本さんは,藤井さんや南場さんとは以前から交流があったのでしょうか。
山本氏:
藤井さんとは僕がSIEにいたときからの長い付き合いです。
藤井さんと南場さんが会社を作った頃に,一度別のゲームのプロトタイプを一緒に作ったことがあります。そのときに南場さんとも知り合って,「いつか一緒にできたらいいね」と話していました。
そのあとは皆さんご存じのとおり,デスクワークスさんは「RPGタイム!〜ライトの伝説〜」を制作し,多くのインディーアワードを受賞しています。
そうした経緯があるので,今回また一緒に取り組むことになったのは嬉しいですね。
4Gamer:
最初に「Chronoscript」の企画を見たとき,どこに魅力を感じましたか?
山本氏:
デスクワークスさんの,企画を見る視点の独自性ですね。
メトロイドヴァニアは世界的に人気が高いぶん競合も多く,普通なら世界観や設定,ユニークなアクションなどで差別化を考えるところです。
でも,藤井さんから最初に出てきたのは「メトロイドヴァニアって,かなり長い時間マップ画面を見ていますよね」という話だったんです。「そのマップ画面に,位置を把握する以上の価値を持たせられれば,一本取れるんじゃないか」と。
企画書にもそう書かれていて,今現在,3D空間上に2Dのマップが並んでいるゲーム構造が形になっている。「この人たちはゲームを見る視点が違う」と感じました。
4Gamer:
そこから実際にゲームが形になってきて,印象は変わりましたか?
山本氏:
ユニークな着想ほど“出落ち”になる危険があります。僕は前職で「ゲームやろうぜ!2006」や「PlayStation C.A.M.P!」を運営していて,面白そうな企画をたくさん見てきました。ただ,企画時点の面白さを完成したゲーム全体まで持続させられるかは別問題なんですよね。
「Chronoscript」も,企画だけなら“出落ち”になる可能性はあったと思います。でも,今のビルドを遊ぶと,しっかりとゲームとして面白い。集英社ゲームズでは数々のタイトルをマイルストーンごとにプレイしてレビューしていますが,仕事を離れて「明日も続きを遊びたい」と思えるものに仕上がっています。
“予想外”と言うとデスクワークスさんにめちゃくちゃ失礼なんですけど……長年の付き合いでありながら「ここまでたどり着ける人たちだったんだ」というのが,今の率直な感想ですね。これから,この作品がどんな着地を見せるのか楽しみです。
4Gamer:
ありがとうございました。
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