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妄想がコンテンツに変わる時代がすぐそこに。PlayStationの生みの親,久夛良木 健氏が語るAI時代のエンタテインメント[インタビュー]
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印刷2026/10/09 07:00

インタビュー

妄想がコンテンツに変わる時代がすぐそこに。PlayStationの生みの親,久夛良木 健氏が語るAI時代のエンタテインメント[インタビュー]

 「妄想することがコンテンツになる」。PlayStationの生みの親として知られる久夛良木 健氏は,AIの進化がもたらすエンタテインメントの未来について,そう語った。ゲーム業界が最先端の技術を切り拓いていた時代から,AIが急速に進化する現在までを見てきた久夛良木氏は,これからゲーム,そしてエンタテインメントがどのように変わっていくと考えているのか。

 電気通信大学は2026年9月29日,「エンタテインメント創造研究教育センター オープニングセレモニー」を,東京 調布のキャンパスで開催した。イベントでは,同大学の特別客員教授を務める久夛良木氏がパネルディスカッションに登壇している。イベントの詳細は以下の記事で紹介しているので,そちらも併せて確認してほしい。

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 電気通信大学は2026年9月29日,「エンタテインメント創造研究教育センター オープニングセレモニー」を開催した。PlayStationの生みの親として知られる久夛良木 健氏や,同校を卒業したゲーム開発者が登壇した2つのパネルディスカッションの模様をレポートしよう。

[2026/09/30 16:41]

 セレモニー終了後,久夛良木氏に改めて話を聞いた。ゲーム業界における技術革新の歴史から,AIとのコミュニケーション,そして「妄想」がコンテンツになる未来まで,久夛良木氏が見据えるエンタテインメントの行方を聞いていこう。

久夛良木 健氏
画像ギャラリー No.001のサムネイル画像 / 妄想がコンテンツに変わる時代がすぐそこに。PlayStationの生みの親,久夛良木 健氏が語るAI時代のエンタテインメント[インタビュー]

4Gamer:
 本日はよろしくお願いします。パネルディスカッションのなかで,ゲーム業界が常に最先端の技術を採り入れてきたというお話がありました。とくに久夛良木さんがPlayStationプラットフォームを指揮していた初代PSからPS3までは,新しい技術やこれから普及していく技術を積極的に採用していたという印象がとても強いです。

久夛良木 健氏(以下,久夛良木氏):
 当時のPlayStationは,間違いなくテクノロジードライバーだったんですよね。ゲーム機として高いリアルタイム性と応答性を実現するために,ありとあらゆるものを採用していった。

 僕らはタイトルのボリュームをどんどん増やして,グローバルなPSチャンネルを作って,巨大なエコシステムができて……とイノベーションを次々に起こしていこうと考えていたんだけど,僕が引退したあとはPCゲームの人材が入ってきて,PCと同じになってしまった。
 それはそれで良し悪しがあって,PCとコンシューマ機が融合することでゲームメーカーにとっては市場のパイが大きくなる。

 でもそれがテクノロジーの進化を呼び起こしたかといえばそうじゃなかった。僕らがチームを組んだNVIDIAや,PS5と組んだAMDは,そのあとAIに行きましたよね。AIのほうがはるかに高度な技術を扱っているけれども,今のゲーム業界はそこに入れていない。

4Gamer:
 ゲーム業界が転換期に来ているともおっしゃっていましたが,その意味ではAIがゲームを変えるものになり得るのでしょうか。

久夛良木氏:
 AIによって,ゲームはエンタテインメントへと姿を変え,人間の感性を変えるものになる。今,世界のゲーム市場の規模は30兆円を超えたけれど,3000兆円規模くらいになるかもしれない。そうなったらもうゲームとは呼ばれないんですよ。

 今のゲームは,基本的にものすごい開発期間と物量をかけて作っていますよね。でもポリゴンだけでキャラクターを表現していたアーケードゲームの初代「バーチャファイター」からそれほど時を経ることなく,初代PS向けの「闘神伝」ではテクスチャマッピングを採用した。

 「闘神伝」の開発チームは10人以下で,開発期間は3か月だったんですよ。今は時間と物量をかけているわりに,ただシェーディングが少し綺麗になった,NPCが多少喋れるようになったくらいで,AIと比較すると進化が止まっているように思える。

 その一方で世界の水面下では,AIによる動画や音楽のリアルタイム生成の研究開発が進められていて,それが今のゲーム機と同じスピードでできるようになるのはいつかというと,2028年から2029年くらいだと予想されている。
 そうなったとき,すべてのコンテンツが変わります。コミュニケーションや妄想がコンテンツになる。妄想することがコンテンツになるんですね。

4Gamer:
 自分の頭の中にあるものが,目の前に現れるようなイメージでしょうか。
 
久夛良木氏:
 自分にとって,もっとも嫌な奴が目の前に現れる(笑)。

4Gamer:
 なるほど(笑)。

久夛良木氏:
 最高の伴侶や最高の友達は飽きるんですよ。嫌な奴は面倒くさいけど,たまに会ってみたくなる。それでぶちのめされて,「何だったんだ,今のオレ……」となる(笑)。それはもうゲームじゃないんですよ。

4Gamer:
 確かに,今までのゲームとは違った感じになりますね。

久夛良木氏:
 これまで皆がなぜ海外旅行に行きたがったかというと,違う世界を見たかったからです。でも妄想がコンテンツになると,「どこでもドア」ができるようなものだから,海外に行かなくとも違う世界に行けるようになる。しかも,そこにいる人間がリアルの人間かどうかは分からない。

4Gamer:
 そのくらいの体験ができる時代が,すぐそこまで来ていると。

久夛良木氏:
 ショート動画がリアルタイム性とインタラクティブ性を持つのだから,恐ろしいことになる。もう,今の推し活なんて比較にならない。

4Gamer:
 推しの対象がそこにいるような感じになるわけですか。

久夛良木氏:
 推しがまさに目の前に存在する。そんな推し活になっていくわけです。

画像ギャラリー No.002のサムネイル画像 / 妄想がコンテンツに変わる時代がすぐそこに。PlayStationの生みの親,久夛良木 健氏が語るAI時代のエンタテインメント[インタビュー]

4Gamer:
 ディスカッションでは,コミュニケーションの重要性についても言及されていました。たとえばゲームだと,どういったコミュニケーションが必要になるのでしょうか。

久夛良木氏:
 たとえば今,入力やUIに関して,どの企業もアクセシビリティをはじめ,コミュニケーション支援をいろいろやってるけれど,それは人間中心設計の途中の段階でしかない。人間中心設計は,もう古いんですよ。

4Gamer:
 人間中心設計ですか。

久夛良木氏:
 たとえばiPhoneは,これまでユーザーが迷わないようにUIを毎年のように変えたり,右利きでも左利きでも使えるようにアクセシビリティを向上させたりと,いろいろやってきているわけです。そうやって人間におもねりすぎているのが今の人間中心設計で,何が起きるかというと,ユーザーが考える機会を失って,ハードウェアやソフトウェアの中身が分からなくなる。

4Gamer:
 これからは人間中心ではなくなっていくのでしょうか。

久夛良木氏:
 AI中心になっていきます。AIは人間を超えないといけないから。

4Gamer:
 そうなると,人間はどうやってAIと付き合っていく──つまり,どうコミュニケーションを取っていけばいいのでしょうか。ディスカッションのなかでは「AIを進化させる」というお話もありましたけれども,それはエンタテインメント創造研究教育センター(CEREC)で学ぶ学生のような人たちがやっていくとは思うのですが。

久夛良木氏:
 むしろ,ありとあらゆるところで,人々がAIとのコミュニケーションを考えることになりますよ。たとえば普段,家族や友人とどう付き合うかについて考えますよね。同じようなことがAIとの間にも起きる。

4Gamer:
 AIを1人の人間として捉えると。

久夛良木氏:
 人間というよりも生命体ですね。そういったSF作品もあるじゃないですか。映画「ブレードランナー」シリーズのレイチェルはレプリカントだったけれども,最終的に子どもまで産む。まさに「妄想できることは実現できる」なんです。

画像ギャラリー No.003のサムネイル画像 / 妄想がコンテンツに変わる時代がすぐそこに。PlayStationの生みの親,久夛良木 健氏が語るAI時代のエンタテインメント[インタビュー]

4Gamer:
 本日のディスカッションや,この場でのお話に限らず,久夛良木さんは常に自信に満ちあふれている印象があります。その源は,どこにあるのでしょうか。

久夛良木氏:
 自信があるというか,いろいろなことを自分でやろうと考えているんですね。だから,他人に物事を投げない。他人にやらせると退化するんです。投げられた人も楽しんでやってくれるなら,チームとしてお互いに進化していけるけれども。

4Gamer:
 メンバーそれぞれが自分で考えることで,チームが成立すると。

久夛良木氏:
 あるとき,「この人とあの人とアイツと一緒にやったら,妄想が実現できるかもしれない」と急に発火して,チームを作るわけです。僕の場合は,その繰り返しですね。だから社員にすることは考えない。1人ひとりバイネームで指名するんです。初代PSのチームメンバーも社員にはしなかった。

4Gamer:
 確かに,いろいろな分野から優れた人材が集まっていました。CERECでは,そうやって1人で勝負できる人材を育てていくわけですか。

久夛良木氏:
 そのとき光り輝いているような,スーパーな人材ですね。そういう人材と一緒に,皆の妄想を実現させる。また別の妄想は,違う座組でやることになるかもしれない。

4Gamer:
 最後に,CERECをどんな環境にしていきたいか教えてください。

久夛良木氏:
 国際色の強い環境になってほしいんですよ。電通大に限らないですけれども,日本の大学は国際色に乏しいんですよね。PlayStationのときもそうだったけど,僕は今,世界のいろいろな国や地域の人たちと一緒に仕事をしている。シリコンバレーもそういった環境なんです。だからCERECも,もっと国際色を強くしてほしいですね。

4Gamer:
 ありがとうございました。

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