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エンタテインメント創造研究教育センター(CEREC)は,ITやAI,VRなどの技術分野に強みを持つ電気通信大学の技術力を,ゲームを中心とするエンタテインメントの創出と結びつける拠点として,2026年1月に発足した。
イベントの冒頭では,学長の村松正和氏より,日本の主要産業の輸出額で,コンテンツ産業は自動車産業に次ぐ2位であり,その6割がゲームであることが示された。政府がコンテンツ産業のバックアップに注力していることを受けて,CERECの発足に至ったというわけである。
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大学とゲーム業界の本音。これからの大学に期待すること
パネルディスカッション1では,村松氏と久夛良木氏がパネリストを務め,大学とゲーム業界,これからの大学への期待について語った。
久夛良木氏は,今や世界のゲーム産業のうちゲームソフトだけでも30兆円規模になっており,コンテンツ領域では最大となっていることを指摘し,さらに今後大ブレイクするだろうと展望を示した。
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その一方で,現在のゲームは規模が大きくなり,ビジュアルが進化しているものの,コンテンツの作り方そのものとしては自身が中心にいた初代PSのプロジェクトから変化がないとも語る。
久夛良木氏は初代PSプロジェクトにて,高度な3Dグラフィックスとリアルタイム反応の両立という,当時のコンピュータではできていなかったことの実現により「世界を変えること」を目指した。そのために,トップで活躍するエンジニアやアーティスト,デザイナーなどを集めることにしたそうだ。
その理由は,ピクサー・アニメーション・スタジオの共同創業者であるジョン・ラセター氏が1986年のSIGGRAPHで発表した3Dグラフィックスの映像作品「ルクソーJr.」にある。久夛良木氏はこれを見て,テクノロジーだけでなくアーティストやデザイナーが作り出すストーリーも必要だと感じたそうだ。
1990年ごろの3DCGは,1台数千万円というシリコングラフィックスのワークステーションを使って制作されることが多かった。主な用途としてはDARPAやNASAといった機関が行う風洞実験などがあり,入力に対する反応はリアルタイムではなく,ゲームには使えなかった。
そこで初代PSプロジェクトでは,少人数のトップエンジニアが3Dグラフィックスの生成アルゴリズムをゲーム機向けにすべて書き換え,それを指先に載るような大きさのチップに落とし込んだ。その期間は1年から1年半という短さだったとのこと。
結果として1994年に初代PSがリリースされ,そのローンチタイトルの1つとなったナムコ(当時)の「リッジレーサー」は,驚きをもって世間に迎えられた。「リッジレーサー」はもともと当時最高峰の3Dグラフィックスを駆使したアーケードゲームで,その筐体に収められた基板には数百のチップが載せられていたが,それがほぼそのままコンシューマ機で動作すると認識されたからである。
久夛良木氏によると,その事実に一番驚いたのはシリコングラフィックスで,氏自身も同社の創業者から「何であんなことができたのか? 我々ができないのに」と問われたとのこと。久夛良木氏はそれに「あなたたちはリアルタイムを考えていない」と返したそうだ。
以上の話をまとめて,久夛良木氏は「世界最先端のテクノロジーをフォローするのではなく,生み出していったのがかつてのゲーム業界」と表現。聴講している関係者や学生に向けて,CERECにおける取り組みには,そうしたアプローチをもって臨んでほしいと呼びかけた。
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久夛良木氏の話を受けて,村松氏はCERECで重要となるのは最先端技術への集中であり,人材を集めてグループを作り,コミュニケーションを取って新しい何かを生み出すことであると説明。学生は電子工学やAIなど自身の専門を極めるべく日々学んでおり,そのうえで横断的にゲームを含むエンタメの創出に取り組むという,CERECのコンセプトが初代PSプロジェクトのそれと合致していると語った。
久夛良木氏もCERECについて,世界各国で技術の進化が起きているなか,優れた人材が集まってチームを組んで何かを作り出せる素晴らしい取り組みであると評した。またそうした取り組みでは「バイネーム」──名指しされることも重要であり,学生には自分の名前を売り出すようなことにもぜひチャレンジしてほしいと話していた。
「学生がこれからゲームを作っていくにあたり,何にフォーカスして学んでいけばいいのか」というテーマでは,久夛良木氏は「ゲームに限らず」と前置きしつつ,絶対外せないものとして「好奇心」を挙げた。人間の脳の神経ネットワークは生まれたときが最大で,成長する過程において同じことを繰り返すなかで,必要ないと判断されたネットワークが次々に切れていくという。氏は「好奇心をなくし『こんなもんだろう』と思った途端に終わってしまう」と語った。
また久夛良木氏は,初代PSプロジェクトのように「世界を変えよう」と考えるのであれば,「これから起こることと,今後起こせることを考える。何手か先を考えて,皆で作っていく」というアプローチが重要であると話す。
とくに昨今,急速に普及しているAIについて「それに人間が使われては絶対ダメだ」と警鐘を鳴らし,「AIを自由に使いこなして自分のやりたいことをやる人材を目指してほしい」と語る。「卒業するために必要数の単位を取る」というような言わばゲーム感覚ではなく,学生には自分の成長や実績につながる勉強の仕方や単位の取り方をしっかり考えてほしい,教員にもそういった指導をしてほしいと呼びかけていた。
さらに現在のAIに関して久夛良木氏は,「生まれたばかりの赤ん坊」のようなものと表現し,さまざまなことを吸収している段階だと説明。現在のAIは過去の事象には詳しいかもしれないが,未来を作り出すには人間とAIがともに成長する必要があると語る。
加えて「AIを使って何かを引き出すだけの人は,AIに使われている」「AIを使いこなすだけでは,もう普通の人」であるとし,「これからはAI自体を進化させることが重要」という持論を披露。それができる人材がこれから求められていくだろうと展望を示した。村松氏もAIと対話し自分を鍛えたり,共創して新たなものを生み出したりすることが今後重要になっていくと話していた。
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ディスカッションの最後に,久夛良木氏は高校時代をコロナ禍で過ごした学生たちには,大学生になっても他者との交流が苦手な傾向があるという事例を示し,改めてコミュニケーションと共創の重要性を説いた。
また村松氏は学長として学生に向け,「10年後どのようなゲームが出るだろうかと考えたときに,必要となる技術を作る側になってほしい」と呼びかけ,それは自身の専門を極め,知見やノウハウを横断的に活用できるCERECのような場でこそ実現できるのではないかとまとめていた。
電通大卒業生が語る,電通大生の強み
パネルディスカッション2では,電通大卒業生のゲーム開発者が,同大学で学んだことのうち,現職に生かされていることなどを語った。
登壇したのは,ソニー・インタラクティブエンタテインメント ゲーミング デベロッパー&フューチャーテクノロジー インタラクション R&Dの栗原洋輔氏と,コーエーテクモゲームス エンタテインメント事業部 ω-Forceブランドの帆山 遼氏の2人だ。
帆山氏は電通大でメディア情報学を専攻し,VRやアバター関連の研究をしていたという。また栗原氏は,触覚技術の研究をしていたとのこと。
「電通大で学んだことで,仕事に限らず役立っていること」というテーマに対して,現在プランナーを務めている帆山氏は,仕様書を作ったり,ゲームのプロトタイプを触ったりするうえで,大学時代に学んだプログラミングの基礎的な考え方が役に立っていると語る。また研究の中で使われていた専門用語がゲーム開発の現場でも使われているなど,さまざまな場面で大学時代に身に付けたことが活用できるそうだ。
栗原氏は「全部」と回答。企業内では1つの製品を作るにあたって多くのスタッフと関わることになり,心理学や語学,社会学といった自身の専門分野以外のこともある程度踏まえなければならないため,大学で学んだことのすべてが生かせていると語った。
「在学中,やっておけばよかったと思うこと」については,帆山氏が外国語をもっと学んでおけばよかったと回答。電通大では英語とドイツ語を学んだが,実際に社会に出てみると中国などほかの国や地域の人と接することが多く,さまざまな言語を学んでおけばよかったと感じているという。
栗原氏も外国語を挙げ,会話ができるとまではいかなくとも,いくつかのフレーズを話せるだけで現地の人たちと打ち解けられると説明。
また自身は修士課程を修了したが,時間の取れる学生のうちに後期博士課程まで進んでもよかったのではないかと感じているとのこと。
「電通大ならではの強み」を問われた帆山氏は,「好きなことを突き詰められることや,探究心のある人が多く集まること」を挙げた。自身も在学中にゲームなどを作っていたそうで,周囲に独学で何かを学んだり,研究に打ち込んだりする学生がいたことから,自然に向上心が湧いたというエピソードを披露。そうした人たちとは卒業後も交流が続いているそうだ。
栗原氏もまた「自身の好きなことに打ち込めて,それを認めてもらえる校風」を挙げていた。
「現役の電通大生に伝えたいこと」として,帆山氏は「自分が何をしたいのか,しっかりと心の声に耳を傾けて大学生活を送ってほしい」と話す。氏自身はゲーム開発者を目指して電通大に入学したので,CERECがある今が羨ましいとも話していた。
栗原氏は,パネルディスカッション1で久夛良木氏が言及した「好奇心」をもってチャレンジしてほしいと話す。また大学入学も就職も,人生全体から見ると次のフェーズのスタートでしかないので,そのあとどうするかをしっかり考えて進んでいってほしいとまとめていた。
久夛良木氏への質疑応答
パネルディスカッションの終了後には,質疑応答のコーナーも設けられた。以下に,その内容を抜粋してお伝えする。
「高校生に好奇心を持たせるには?」という質問に,まず久夛良木氏は「怖がらないこと,怖がらせないこと」を挙げた。とくに日本は親や教員などから「あれをやってはダメ,これをやってはダメ」と言われがちなため,高校生はチャレンジを怖がる傾向にあるという。
しかし親や教員は,むしろ「自分たちがサポートするから,どんどん無茶なことをしろ」と言ったほうがいいし,そのほうが高校生も楽なのではないかと推測。現在自身が代表を務める会社のスタッフはほとんど海外出身で,勝手に何でも始めていることを明かし,「学校もなにか教えるだけでなく,心の壁を開放する場になってほしい」と希望を示した。
またチームで取り組む場合に,メンバー全員がチャレンジを怖がらないようにするためには「みんなで一緒にやる」ことが重要とのこと。みんなで触ってみると,実はエキサイティングで楽しいことが分かったりするという。初代PSプロジェクトでは,計画を立てずにアジャイルで取り組み,失敗したらそれを進化につなげていったことも披露された。
そして,現在水面下ではAIをリアルタイムで動かす試みがなされていることに言及し,ここ数年で既存のプラットフォームやエンタメの定義が変わってしまうかもしれないとした。
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