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国連や各国の大学・企業と連携し拡大する「Games for Change」の最前線。世界各支部の活動状況と日本の展望をレポート
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印刷2026/10/28 09:30

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国連や各国の大学・企業と連携し拡大する「Games for Change」の最前線。世界各支部の活動状況と日本の展望をレポート

 大阪電気通信大学寝屋川キャンパスで2026年10月24日に開催された「大阪シリアスゲームデイ」にて,IGDA日本理事の佐藤 翔氏によるセッション「G4C、世界各支部の活動状況について」が行われた。

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 佐藤氏は,ゲームやアニメ,漫画の海外進出を支援するコンサルティング会社の経営を通じて世界120か国以上の業界関係者とネットワークを築き,アフリカやラテンアメリカ,中央アジア,東南アジアといったニューマーケットに強みを持つ人物だ。
 また,インディーゲームインキュベーションプログラム「iGi(indie Game incubator)」の事務局長,経済産業省のアクセラレーションプログラム「創風」のゲーム部門アドバイザーとして多数のクリエイターを支援してきたほか,IGDA米国本部の執行部(インキュベーションSIG議長)も務めている。

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 本セッションでは,佐藤氏が世界中のリーダーたちとの対話から得た知見をもとに,アメリカを拠点とする世界的なシリアスゲーム団体「Games for Change(以下,G4C)」の本部および世界各支部の最新動向が共有され,日本ならではのシリアスゲームコミュニティをいかに築いていくべきかが語られた。

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国連機関との連携からXR,ロビー団体との協業まで――G4C本部の多彩な活動


 2004年に設立されたG4Cは,ゲームやVR/ARなどのイマーシブメディア(XR)を通じて,社会課題の解決や学習を支援する非営利団体だ。

 佐藤氏はまず,近年のG4Cが特に力を入れている取り組みとして「国際連合(国連)との連携」を挙げた。2023年からニューヨークの国連本部でイベントを実施しているほか,2026年にはケニアのナイロビにて「Games&SDGs Summit」を開催。ナイロビには国連環境計画(UNEP)と国連人間居住計画(UN-Habitat)の本部が置かれており,両機関ともゲームの活用に深く踏み込んでいるという。

●UNEP「Playing for the Planet」:ゲーム産業が気候変動に与える影響(二酸化炭素排出など)への対策と同時に,膨大な数のゲームユーザーへ環境意識を発信できる影響力に注目したプログラム。小規模スタジオから,日本のバンダイナムコやソニーといった大手メーカーまでを巻き込んだ連携が行われている。

●UN-Habitatによる「Minecraft」を活用した都市計画:スラム地域などの居住空間改善において,専門家だけでなく現地住民の意見も反映させるため,「Minecraft」を使った住民参加型の都市計画プログラムを実施。「夜間に街灯がない場所の危険性」や「夜間に徘徊する野犬(狂犬病リスク)への対策」など,実際に住んでいる人間にしか分からない知見を都市設計に活かす取り組みが進められている。

 また,G4Cのフラッグシップイベントである「Games for Change Festival」は,2026年に90以上のセッションを実施し,2000人以上を動員した。
 同イベントの「G4C Awards」では世界42か国の作品から選抜が行われ,2026年は講談社ゲームクリエイターズラボ発の「ダレカレ」がベスト・イン・インパクト賞を受賞し,テーブルトップ部門でも日本のボードゲーム「アンクラ!!」がファイナリストに選出されるなど,日本の作品も高い注目を集めている。
 なお,長年ニューヨークで開催されてきた同イベントだが,来年(2027年)はアリゾナ州立大学で開催される予定だという。同大学は,シリアスゲームやゲームの社会実装実験で全米トップクラスの取り組みを行っている。

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 このほかにもG4C本部では,以下のような多角的なプログラムを展開している。

●青少年向けプログラム(「Student Challenge」など):8歳から25歳を対象に,気候変動やいじめ防止,メンタルヘルスといった幅広い社会課題をテーマとしたゲームを,1年間かけてじっくり制作する教育プログラム。

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●「XR for Change」:2017年から続くVR/ARなどのイマーシブ技術を扱うイニシアチブで,約1000人規模のサミットや,カーネギーメロン大学のETC(Entertainment Technology Center)と協力した「XR Brainstorm Jam」などを実施。

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●他団体・異業種との連携:全米の退職者が集う極めて強力なロビー団体であり,麻雀ゲームなどを通じてゲームに関心を持つ「AARP(全米退職者協会)」や,Endless Network,アメリカン・エキスプレスなどと提携した開発コンテストの実施。さらにノーベル平和センターおよび「Minecraft」と協力し,ノーベル平和賞受賞者の活動を学べる教育アクティビティのプロデュースや,オンラインゲーム空間でのいじめ防止,シリアスゲームのディレクトリ整備なども行っている。

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地域の課題を映し出す,G4C世界各支部のユニークなアプローチ


 続いて佐藤氏は,世界各地に広がるG4Cの支部(チャプター)の活動を紹介した。そのあり方は決して一様ではなく,各地域の産業構造や社会情勢に合わせて独自の進化を遂げているという。

●G4C LATAM(2010年設立):ブラジル・サンパウロ大学の教員が創設し,近年はメキシコやコロンビアなどでも分散開催を実施。扱うテーマが非常に幅広く,地元の歴史や特定の民族・文化を取り入れたエンタメ寄りの作品も許容しており,チリやグアテマラ,コスタリカなど中南米全域におけるインディーゲームやスタートアップ支援に近い機能を果たしている。また,2026年6月にはリオデジャネイロにて,eスポーツを社会課題解決に活用する「eSports for Change」の講演・実演も行われた。

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●G4C Europe(2013年設立):プラハで設立され,2020年頃からG4C本部と連携。国や自治体の支援に加え,「Creative Europe」をはじめとするEU(欧州連合)の助成金・補助金を活用し,地域単位で連携してプロジェクトを進めるヨーロッパならではのスタイルが特徴だ。2026年は,ロンドン市が注力する「London Games Festival」の一環としてイベントを開催している。

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●G4C Australia(旧G4C APAC):2025年に香港支部が誕生したことで,アジア太平洋(APAC)からオーストラリアへと改称。著名な「Melbourne International Games Week」に合わせてフェスティバルを開催しているほか,インディーゲームの常設展示などで知られる博物館「ACMI」と協力し,オーストラリアやニュージーランドなどで制作された社会的インパクトを持つゲームを,一般市民や学生が遊べる展示コーナーを設けている。

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●G4C Africa(2021年設立):大学主導の支部が多いなか,民間企業が中心となって投資・運営を行っているのが特徴だ。アフリカ最大のゲーム開発者会議「Africa Games Week」内でイベントを実施したり,会場隣の水族館内で講演を行ったりとユニークな施策を展開しており,前述したナイロビでの「Games&SDGs Summit」でもG4C本部との共催で集客や登壇者招聘を主導した。

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●G4C Turkiye(2024年設立):トルコのバフチェシヒル大学のゲーム研究室を拠点に活動。XRハッカソンに加え,保守的な価値観から女性の社会進出が遅れがちな中東地域において,「Women in Games」などの動きと連動し,女性ゲーム開発者を支援するためのミートアップや推進イニシアチブに注力している。

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●G4C Hong Kong・Korea・India(アジア圏の急拡大):2025年に設立された「G4C Hong Kong」のイベントは香港大学で開催され,シリアスゲームを扱う前半と,「Kowloon Nights」などインディーゲームのパブリッシャが集う後半の夜イベントをセットで実施し,隣接するマカオや深圳のイベントとも連動した広域展開を模索している。さらに2026年には韓国の成均館大学を中心とする「G4C Korea」と「G4C India」が相次いで立ち上がり,欧米の第一線のゲームデザイナーや研究者を招くなど活発な動きを見せている。

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共通する「産官学連携」の軸と,“最後の重要地域”としての日本


 世界各支部の動向を総括し,佐藤氏は「XRやeスポーツの活用,歴史・民族テーマの包摂,さらにはエンタメゲームとの距離感や運営母体(大学主導か民間企業主導か)に至るまで,現地のシリアスゲームシーンに合わせて実に多様な取り組みが行われています」と語る。

 しかし,すべての地域に共通している確固たる軸は,「産官学の連携」によって現地のシリアスゲーム発展に努めている点だという。日本においても,地域課題の解決にeスポーツを活用する動きや,デジタル・アナログ双方のゲーム開発,さらにはXRの取り組みなど,世界と連携できる土壌はすでに各地に存在している。

 最後に佐藤氏は,「ここ2〜3年でアジア圏にもG4Cの支部が急速に増えており,世界のゲーム産業およびシリアスゲームシーンにおいて『最後の重要な地域』として日本が残っている状況です。世界的にも日本国内でもシリアスゲームの周辺で地殻変動が起きつつある今,日本のコミュニティをどう活性化し,G4Cとどう連携していくかを具体的に考える時期に来ています」と強調。佐藤氏自身も具体的な動きに向けた準備を進めており,近いうちにアナウンスを行いたいと展望を語ってセッションを締めくくった。

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