ノートPC向けCPU「Ryzen 9 7945HX3D」が発表に。3D V-Cache搭載でゲームノートPCの高性能化を実現

Ryzen 9 7945HX3D

　2023年7月28日，AMDは，ノートPC向けとしては初となる「3D V-Cache」搭載CPU「Ryzen 9 7945HX3D」を発表した。

　おさらいになるが，3D V-Cacheとは，容量64MBのキャッシュメモリを集積したシリコンダイを，CPUダイの上に積層させて大容量キャッシュメモリを実現するAMD独自の技術だ。2022年に発売となったデスクトップPC向けの「Ryzen 7 5800X3D」にて初めて採用され，とくにゲームのフレームレートを大幅に引き上げることができる点が注目された。

　2023年には，Zen 4世代のデスクトップPC向けRyzen 7000シリーズに3D V-Cacheを組み合わせた製品を発表。16コア32スレッドや12コア24スレッド対応のCPUに3D V-Cacheを実装したことで，高いゲーム性能を発揮して注目を集めた。


　今回，発表となったRyzen 9 7945HX3Dは，ざっくり言えばノートPC向けCPUの「Ryzen 9 7945HX」に，3D V-Cacheを組み合わせた製品だ。
　そもそもRyzen 9 7945HXとは，デスクトップPC向けの16コア32スレッド対応「Ryzen 9 7950X」をノートPC向けに改良した製品だ（関連記事）。つまり，Ryzen 9 7945HXに3D V-Cacheを載せたRyzen 9 7945HX3Dは，Ryzen 9 7950X3DをノートPC向けに変更した製品と理解していいだろう。

ブーストクロック5.4GHz，TDPは55W以上など3D V-Cacheによるキャッシュメモリの拡大を除けば，既存のRyzen 9 7945HX3Dとほぼスペックは同じだ

　2基あるCPUダイの片側だけに3D V-Cacheを積層させている点も，Ryzen 9 7950X3Dと変わらない。3D V-Cache自体も，AMDの説明によると，とくに改良は加えられていないようである。

シリコン貫通ビア（Through Silicon Via：TSV）と9μmピッチの高密度バンプを使って容量64MBのキャシュダイをCPUのシリコンダイに結合する

　興味深いのは，「3D V-Cacheによる性能向上率は，TDP（Thermal Design Power，熱設計消費電力）を抑えるほど高くなる」とAMDが主張していた点だ。「Shadow of Tomb Raider」によるフレームレート測定によると，TDP 70Wの設定では，フレームレートの向上率が11％にとどまる。一方で，TDPを40Wに抑えると23％もフレームレートが向上したというのだ。論理的に考えても納得できる話だろう。

GeForce RTX 4080を搭載するPCで，TDPを変えて3D V-Cacheによる「Shadow of Tomb Raider」のフレームレート向上率を調べたグラフ

　AMDは，「競合がこの性能を得るためには，100W超のTDPが必要だ。Ryzen 9 7945HX3Dは，3D V-Cacheによって極めて高い電力効率を実現した」と主張。「Ryzen 9 7945HX3Dは，世界で最も高いゲーム性能を持つノートPC向けプロセッサである」とアピールしていた。

Ryzen 9 7945HX3DとRyzen 9 7945HXの性能を，主要ゲームのフレームレートで比較したスライド。平均すると15％以上もフレームレートが高いそうだ

　なお，このRyzen 9 7945HX3Dは，ASUSTeK Computer製のゲーマー向けノートPC「ROG Strix SCAR 17X3D」に採用されるとのこと。17インチクラスの大型ゲーマー向けノート「ROG Strix SCAR 17」のRyzen 9 7945HX3D搭載モデルで，高いゲーム性能を備えた大型ノートPCを求めるゲーマーには，注目すべき製品になりそうだ。

17インチクラスの大型ゲーマー向けノート「ROG Strix SCAR 17X3D」にRyzen 9 7945HX3Dが搭載される。発売日は8月22日となっているが，国内での展開については明らかになっていない

AMDのRyzen 9 7945HX3D製品情報ページ

AMD公式Webサイト