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[レビュー]大容量キャッシュ搭載CPU「Ryzen 9 7950X3D」は,究極のゲーマー特化型CPUだった!
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印刷2023/02/27 23:00

レビュー

究極のゲーマー特化型CPU

AMD Ryzen 9 7950X3D

Text by 米田 聡


 3月3日に,AMDのデスクトップPC向けCPU「Ryzen 7000 Series Processors with AMD 3D V-Cache Technology」(以下,Ryzen 7000X3D)のうち,Ryzen 9シリーズに属する2製品が国内発売となる。AMD独自のキャッシュメモリ技術「AMD 3D V-Cache Technology」(以下,3D V-Cache)を採用するCPUとしては,2022年4月に登場した「Ryzen 7 5800X3D」に続くもので,卓越したゲーム性能をアピールしているのが,ゲーマーにとって見逃せないところだ。

Ryzen 9 7950X3D
メーカー:AMD
税込メーカー想定売価:11万1800円前後(※2023年2月27日現在)
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 今回は,最上位モデルとなる16コア32スレッド対応の「Ryzen 9 7950X3D」をテストしたので,その詳細やゲームにおける性能を確認してたい。


周波数コアと3D V-Cacheコアが混在するRyzen 9 7950X3D


 まずは概要からまとめておこう。Ryzen 7000X3Dのラインナップは,以下の3製品だ。なお,「Ryzen 7 7800X3D」だけは,少し遅れた4月6日に世界市場では発売予定である。国内発売日とメーカー想定売価は明らかになっていない。

  • Ryzen 9 7950X3D:16コア32スレッド,2023年3月3日発売,11万1800円
  • Ryzen 9 7900X3D:12コア24スレッド,2023年3月3日発売,9万5800円
  • Ryzen 7 7800X3D:8コア16スレッド,2023年4月6日発売,449ドル(約5万8000円)

Ryzen 7 5800X3Dでの積層ダイ構造を示したスライド。基本的にはRyzen 7000X3Dでも変わっていない
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 AMDによると,3D V-Cacheそのものは,Ryzen 7 5800X3Dからとくに変わっていないとのこと。概要は同CPUのレビュー記事にもあるが,改めて簡単にまとめておこう。3D V-Cacheは,容量64MBのキャッシュメモリを実装したキャッシュメモリダイを,CPUのシリコンダイ(CPU Complex Die,以下 CCD)上に積層して,L3キャッシュ容量を拡大する技術だ。「TSV」(Through Silicon Via,シリコン貫通ビア)技術によって,容量64MBのキャッシュメモリとCPU側のL3キャッシュが,完全に一体となっている。
 CCDとキャッシュメモリダイを薄く削って積層しているので,チップの厚さは既存のRyzen 7000シリーズと変わらず,同じヒートスプレッダを利用しているといったあたりも,Ryzen 7 5800X3Dと変わらないようだ。

 Ryzen 7000X3Dにおける最も大きなトピックは,2基のCCDを実装するRyzen 9シリーズが登場した点にある。これまで3D V-Cacheを搭載するのは,CCDが1基のRyzen 7 5800X3Dのみだったので,大きな違いだ。なお,本稿ではAMDに習って,CCDを2基搭載するRyzen 9を「Ryzen 9 7000X3D」と呼ぶ。

 これも既報だが,Ryzen 9 7000X3Dでは2基あるCCDのうち3D V-Cacheを搭載するのは片方の1基だけだ(関連記事)。
 チップを積層する3D V-Cacheは高度な技術で,製造コストは決して安くない。2基のCCD双方に3D V-Cacheを搭載すると,かなり高額な製品になってしまうだろう。より現実的な価格を実現するためには,3D V-Cacheを搭載するCCDを,1基に抑える必要があったのではなかろうか。

AMDでは,片側のCCDにだけ3D V-Cacheを搭載する構造をAsymmetric Chiplet Designと呼んでいる
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 そのためRyzen 9 7000X3Dでは,3D V-Cacheの有無によってCCDの特性が非対称になる。これは,性能面ではあまりいいことではない。同じメモリ領域を共有する関連性の高いスレッドが,2基のCCDをまたいで動作している場合,拡大したキャッシュメモリが有効に機能しないだろうことは,想像に難くない。下手をすると,キャッシュメモリのスヌーピングやライトバックが増加して,レイテンシがむしろ増加するといったケースも考えうる。

 だがAMDは,「非対称なCCDにも利点がある」と主張する。3D V-Cacheを載せているCCD「3D V-Cacheコア」は,動作クロックを――おそらく熱的な問題で――高くできないのに対して,3D V-Cacheを載せていないCCD「周波数コア」は,高クロック動作が可能になるためだ。
 そこで,キャッシュが有効に機能するメモリレイテンシの影響が大きいアプリケーションは,3D V-Cacheコアで動作させる。一方で動作周波数が効くアプリケーションは,周波数コアメインで動作させるといった使い分けを行うことで,一挙両得になるというのが,AMDの主張だ。

 性能が異なるCPUコアが混在していると聞くと,Intelの第13/第12世代Coreプロセッサが採用するハイブリッドアーキテクチャに似た印象を受ける人がいるかもしれない。しかし,ハイブリッドアーキテクチャにおける「P-core」と「E-core」は,異なる設計で性能も明確に差があるのに対して,Ryzen 9 7000X3Dでは,キャッシュメモリ容量と動作クロックが異なるだけで,CPUコアそのものの設計は同じである点が異なる。
 Intelのハイブリッドアーキテクチャでは,優先的に処理すべきワークロード――たとえばゲーム――をP-coreに割り当てればいいので,そのために「Intel Thread Director」というハードウェアをCPU内に組み込んで,OSのスケジューラにスレッド割り当てのヒントを与えるという方法を取っている。

 一方,Ryzen 9 7000X3Dの場合,Thread Directorに類するハードウェアは持っていない。また,「周波数コアを優先したほうが高い性能が得られる」とか,「3D V-Cacheコアを優先したほうが高い性能が得られる」という判断は,実際にワークロードを動かしてみないとできない。そこでRyzen 9 7000X3Dでは,ハードウェアではなくドライバソフトで,この問題を解決しているわけだ。
 その鍵になるのが,Ryzen 9 7000X3D対応チップセットドライバに含まれる「AMD 3D V-Cache Performance Optimizer Driver」(以下,3D V-Cacheオプティマイザ)と,「AMD PPM Provisioning File Driver」(以下,PPMドライバ)である。

Ryzen 7000X3Dに対応する「AMD Chipset Software 5.01.03.005」には,PPMドライバと3D V-Cacheオプティマイザの2つが含まれていた
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 AMDによると,3D V-Cacheオプティマイザは,「実行しているワークロードの性能をリアルタイムで測定して,優先するCPUコアを調整するドライバ」だそうだ。3D V-Cacheコアのほうが性能がいいようなら3D V-Cacheコア側に,そうでないなら周波数コア側へと,ワークロードの割り当てを動的に変更するという。
 この動作は完全に自動で行われ,ユーザーが何かを設定したり行ったりする必要はまったくないと,AMDは強調している。手動による設定変更も可能だが,「AMDのラボ内では,手動で設定して性能が上がったケースはない」とのこと。手動で設定しても性能を下げるだけなので,自動に任せてほしいというのが,AMDの見解だ。

 2つめのPPMドライバは,「ゲームが起動したことを検出したら,周波数コア側を停止状態(パーキング状態)にして,3D V-Cacheコアだけでゲームを動作させる」機能を持っている。つまりゲーム実行時は,16コアのうち,3D V-Cacheコア側の8コアしか使われないようにするわけだ。
 16コア中8コアが使用されないとなると,なにかもったいない気もする。しかし,先述のように性質が異なるCCDをまたいでスレッドが動作すると,レイテンシが悪化する可能性が否定できない。PPMドライバによって,ゲーム実行中は周波数コアを強制的に停止状態にしてしまえば,その種の問題が起きないわけだ。

 ただ,たとえばゲームをプレイしながらストリーミング配信を行うとか,ゲーム同時に別の作業も行うといったように,ゲームと同時に別のタスクを実行しているときは,周波数コアの停止状態が解除されて,16基のCPUコアすべてが動作する。このときには3D V-Cacheの恩恵をゲームが完全には受けられなくなるものの,ゲームと同時に実行している別のタスクも,高い性能が得られる仕組みだ。


利用するには各種条件があるRyzen 9 7000X3D


 以上のように,少しややこしい動作を行うRyzen 9 7000X3Dシリーズだけに,利用するにはいくつかの条件がある。

msinfo32.exeを実行すれば,「システムの要約」ページでVBSの状態を確認できる。Ryzen 9 7000X3Dシリーズの性能を十分に発揮するには,例のように「実行中」になっていなくてはならない
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 まず,ドライバソフトがWindowsの「Virtualization-based Security」(仮想化ベースのセキュリティ,以下 VBS)を前提にしているため,OS側でVBSが有効になっている必要がある。Windows 11は標準で有効だが,Windows 10はそうではないので,注意が必要だろう。また,Windows 11でも利用しているアプリケーションやハードの制限で,無効化されていることもある。
 また,Windowsの設定で「ゲームモード」が有効になっている必要がある。Windowsインストール時にWindowsをエンターテイメントで利用する設定にしていれば,ゲームモードは初期状態で有効だが,そうでないならWindowsの設定から,「ゲーム」→「ゲームモード」を選んで,スイッチをオンにしておこう。

設定の「ゲーム」にある「ゲームモード」がオンになっている必要がある
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 さらに,「Xbox Game Bar」の最新版がインストールされている必要がある。Xbox Game BarはWindows 11なら初期状態でインストール済みで,自動で更新も行われるはずだが,念のため,「Microsoft Store」アプリを開いてXbox Game Barの更新を確認しておいたほうが安全だ。
 PPMドライバが周波数コアを停止状態に切り替えるのは,Xbox Game Barがゲームとして認識しているアプリケーションが実行されているときである。Xbox Game Barは,「DirectXを利用しているならばゲーム」と自動で判断してるようなので,特別なの設定はまず必要なさそうだが,念のために確認しておいたほうが安全かもしれない。
 ゲーム実行中に[Windows]+[G]キーを押してXbox Game Barのオーバーレイをポップアップさせたうえで,歯車型の「設定」ボタンから設定ダイアログを開く。「全般」タブにゲームタイトルが表示されているはずだが,その上にある「これをゲームとして記憶する」というチェックボックスがチェックされていないなら,チェックを入れてゲームを再起動しなければならない。

Xbox Game Barの設定画面例。赤枠部分が「これをゲームとして記憶する」のチェックボックスだ。マイナーなタイトルや,βテストや早期アクセス中のタイトルは,ゲームであっても認識されていないことがあるので,手動でチェックを入れよう
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 PPMドライバをインストールした状態で,Xbox Game Barからゲームと認識されているアプリケーションを実行すれば,周波数コアが停止状態に切り替わる。
 たとえばRyzen 9 7950X3Dの場合だが,Windows標準の「リソースモニタ」を起動した状態で「FFXVI暁月のフィナーレベンチ」をウインドウモードで実行してみよう。ベンチマークのウインドウをフォアグラウンドにすると,リソースモニタでは「CPU 16」から「CPU 31」までが停止になっていた。ベンチマークのウインドウをバックグラウンド状態にすると,CPU 16〜31は再び動作し始める。このような方法で,PPMドライバの挙動は簡単に確認できるわけだ。

FFXVI暁月のフィナーレベンチでPPMドライバの動作を確認している様子。画像右下にみえるCPU 16〜21が「保留」になっている。これが停止状態だ
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Precision Boost OverdriveとCurve Optimizerに対応


 Ryzen 7000X3Dシリーズではもうひとつ,新しい要素として自動オーバークロック機能「Precision Boost Overdrive」(以下,PBO)と,「Curve Optimizer」に対応した。

 PBOとは,CPUの消費電力リミッタを外して,自動オーバークロック機能である「Precision Boost 2」の動作を高める機能だ。一方の「Curve Optimizer」はコア電圧と周波数カーブ(V-Fカーブ)を,CPUごとの特性に合わせて最適化することで,Precision Boost 2の動作を高める機能である。V-Fカーブの最適化には1時間強ほどかかるが,AMD製のオーバークロックツール「Ryzen Master」が自動でやってくれる。
 どちらもRyzenユーザーにはおなじみの機能だが,前世代のRyzen 7 5800X3Dでは,CPUコアクロック倍率は変更できず,PBOも使えなかった(※メインメモリのオーバークロックのみ可能)。Ryzen 7000X3Dシリーズも,コアクロック倍率を変更できない仕様である点は変わっていない。

 だが,Ryzen 7000X3Dシリーズでは,PBOとCurve Optimizerが利用できるようになった。

最新のRyzen Masterを使うと,Ryzen 7000X3DシリーズでPBO+Curve Optimizerの設定が可能だ
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 この2つを組み合わせることで,若干の性能向上が図れるとAMDはアピールしている。PBOとCurve Optimizerのどちらも自動で有効化できるのが利点であり,軽いオーバークロックで性能を上げてみたいというPCユーザー向きだ。筆者もRyzen 9 7950X3Dで試して,一部のベンチマークで若干の性能向上は確認できた。

CINEBENCHのスコアが,PBOとCurve Optimizerで向上したというAMDのベンチマーク結果
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 ただし,これらを有効化した状態では,4Gamerベンチマークレギュレーション規定のテストはほとんど完走せず,ときにPC自体がハングアップをすることもあったため,PBOとCurve Optimizerのテストは断念せざるを得なかった。
 完全自動設定のままでの安定動作は難しいようで,BIOS(UEFI)のバージョンが進むか,さらなるチューニングをユーザー側で行う必要がありそうだ。


Ryzen 9 7950X3DとCore i9-13900Kのゲーム性能を比較


 それでは,Ryzen 9 7950X3Dのゲーム性能を中心にチェックしていきたい。比較対象としては,Intelにおいてトップクラスのゲーム性能を持つ「Core i9-13900K」(以下,Core i9-13900K)を選択した。6GHz動作を誇るCore i9-13900KSが発売となったので,今となってはCore i9-13900KがデスクトップPC向けの最高性能とはいえなくなっているが,ゲーム性能はあまり変わらないので比較対象として十分だろう。
 また,12コア24スレッド対応の「Ryzen 9 7900X」も用意した。Ryzen 9 7900Xと16コア32スレッドのRyzen 9 7950Xのゲーム性能は,あまり変わらなかったので,3D V-Cacheを持たないノーマル版Ryzen 9との比較用として利用できるはずだ。
 テストに用いたCPUの主な仕様を,表1にまとめておこう。

※RyzenはCPUコアの動作クロックを示す
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 MSI製のSocket AM5対応マザーボード「MEG X670E ACE」はゲーマー向けを謳う堅牢な作りが特徴のマザーボードである。22+2+1の強力な電源回路を搭載しており,前世代よりも消費電力の大きなRyzen 7000世代の性能を遺憾なく発揮できる。今回はAMDからレビュワー向けにRyzen 7000X3D対応BIOSが提供されたので,それを利用した。
 対するLGA1700対応マザーボードには同じくMSI製の「MPG Z790 CARBON WIFI」を利用した。おおむねMEG X670E ACEと同クラスのゲーマー向けマザーボードと理解していい。

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MEG X670E ACE
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MPG Z790 CARBON WIFI

 テストに試用した機材は表2のとおりだ。

※クリックすると詳細版を表示します
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 なお,MPG Z790 CARBON WIFIでは,AMDのEXPOメモリプロファイルが問題なく利用できたので,メモリ設定はEXPOメモリプロファイルのDDR5-6000設定に揃えている。
 CPUクーラーは,ASUSTeK Computer製の大型液冷クーラー「ROG RYUJIN II 360」を使用した。ファンおよびポンプの設定は,アグレッシブに冷却を行う代わりに騒音も大きい「ターボ」プリセットとしている。

 実行するテストは,4Gamerベンチマークレギュレーションバージョン26に準拠する。ゲームのグラフィックス品質は高負荷よりを採用するが,CPUによるゲーム性能の差を引き出すため,グラフィックス品質をできるだけ下げずに描画負荷を下げる設定を採用した。具体的には,DLSSに対応しているタイトルではそれを利用することで,レンダリングの負荷を軽減しようというわけだ。
 さらに今回は,現行のゲーマー向けGPUとして最強の性能を誇るGeForce RTX 4090を搭載するMSI製グラフィックスカード「GeForce RTX 4090 SUPRIM X 24G」を使用した。GeForce RTX 4090+DLSSならば,グラフィック品質を保ったままGPU性能によるボトルネックが相当低くなるので,CPUの性能差がしっかりと現れるはずだ。

 そのほか,一部のテストには若干のカスタマイズを加えているが,それについてはテストのパートで触れることにしたい。


おおむね競合を圧倒するゲーム性能を持つRyzen 9 7950X3D


 いつものように3DMark(Version 2.25.8056)の結果から見ていこう。グラフ1は,3DMarkのDirectX 11テストである「Fire Strike」の総合スコアだ。

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 Fire Strike Ultraは,わずかにCore i9-13900Kが上回ったが,同Extremeと無印のFire StrikeはRyzen 9 7950X3Dが,目に見える差を付けてトップになった。ゲーム性能を謳うRyzen 9 7950X3Dがトップということで,ひとまず順当といたところだろうか。

 個別スコアで詳細を見てみよう。Fire StrikeのGPUテストである「Graphics test」のスコアがグラフ2だ。

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 GPU性能を見るGraphics testは,CPUでは差がつきにくいものだが,今回はとくに描画負荷が低いFire Strikeで優位な差がついた。予想に反してトップはRyzen 9 7900Xとなり,Ryzen 9 7900X3Dは次点だった。
 Graphics testは,総合スコアに反映される割合が高いテストであるにも関わらず,ここで2位のRyzen 9 7900X3Dが総合スコアでトップになったのは,少なくともGraphics testによるものではない,ということになる。

 次のグラフ3は,Fire StrikeのCPU性能テストとなる「Physics test」の結果である。

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 Physics testでは,CPUコア数の多いCore i9-13900Kが圧倒的に強い。しかしRyzen 9 7900X3Dのスコアは,同じアーキテクチャの12コアCPUであるRyzen 9 7900Xの約85%に留まった。疑問に思うかもしれないが,理由は簡単だ。先述のとおり,Ryzen 9 7950X3Dでは,ゲームやそれに類するアプリケーションが動作中は,周波数コアが停止状態になってしまう。つまり8コアしか動かないのでRyzen 9 7900Xにも及ばなかったわけだ。そう考えれば順当だろう。

 Graphics test,Physics testともにRyzen 9 7900X3Dは芳しくない結果となっているので,総合スコアでトップになった原因は,最後のCombined testだろうということになる。結果はグラフ4のとおり。

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 Combined testは,CPUとGPUの双方に負荷をかけるテストだ。描画負荷が高いFire Strike Ultraは,Ryzen 9 7900Xがトップに立っているが,同Extremeと無印になると,Ryzen 9 7950X3Dが有意に高いスコアを残した。同じアーキテクチャのRyzen 9 7900Xと比べると,Fire Strike Extremeで1.36倍,Fire Strikeで1.43倍だ。この結果が総合スコアでRyzen 9 7950X3Dがトップになった原因というわけだ。
 Fire Strikeはやや設計が古いテストなので何とも言えないが,Ryzen 7 5800X3Dも,Combined testで優秀な成績を残していたので,倍増されたキャッシュメモリが有効に機能するテストというのは確かだろう。

 続いては,3DMarkのDirectX 12テストとなるTime Spyの総合スコア(グラフ5)を見てみよう。

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 トップを取ったのは,どちらもCore i9-13900Kだ。Ryzen 9 7950X3Dは,Time Spy ExtremeでわずかにRyzen 9 7900Xを上回るものの,CPU性能差が出やすいTime Spyでは,Ryzen 9 7900Xに及ばない結果となっている。

 個別スコアで傾向を調べてみよう。グラフ6はTime SpyのGPUテストとなるGraphics testのスコアだ。

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 描画負荷が高いTime Spy Extremeはほぼ横並びだが,Time Spyでは,Ryzen 9 7950X3DのスコアがほかのCPUと比べて92%前後のスコアに留まっている。

 続くグラフ7は,Time SpyのCPUベンチマークとなるCPU testのスコアである。

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 トップがCore i9-13900Kなのは当然として,Ryzen 9 7950X3Dのスコアは,なぜかRyzen 9 7900Xよりも高く,Time Spy Extremeで約1.13倍,Time Spyでは約1.04倍となった。Ryzen 9 7950X3Dは,8コアが停止状態しているはずなのでRyzen 9 7900Xよりも低いスコアになるはずだが,そうなっていないのが妙なところだ。
 確認できていないが,もしかするとTime SpyがCPUのAffinity(CPUコアに対するスレッドの割り当て)を操作して,停止状態が解除されてしまったのかもしれない。とはいえ,仮にCPU testのスコアが8コア分になったとしても,Ryzen 9 7950X3DがTime Spyで振るわないという総合スコアの結果には違いはないわけだ。

 3DMarkの結果を見る限り,Ryzen 9 7950X3Dの性能は微妙に感じるが,ゲームでどうなるかが重要だろう。

 ゲームテストの1本めとして,「Marvel's Spider-Man Miles Morales」(以下,Spider-Man MM)の結果をグラフ8〜10に示す。Spider-Man MMは,グラフィックス品質を「非常に高い」に設定する一方で,DLSSを有効化してGPU負荷を抑えた。ただし,DLSS 3.0によるフレーム生成は使用していない。

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 グラフのとおり,GPUの描画負荷が低くなってCPU性能の差が現れやすい2560×1440ドットと1920×1080ドットでは,Ryzen 9 7950X3Dが平均,最小ともにトップを取った。とくに1920×1080ドットでは,次点のCore i9-13900Kに対して平均フレームレートで約4%の差をつけている。Spider-Man MMはプレーヤーの操作が必要なのでブレやすいが,それを考慮しても有意に高性能と言える結果だ。

 次のグラフ11〜13は「モンスターハンターライズ サンブレイク」(以下,モンハンライズ サンブレイク)をグラフィックス品質「高」でテストした結果である。

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 モンハンライズでは,Ryzen 9 7950X3Dが2560×1440ドットと1920×1080ドットで平均約320fpsという圧倒的なフレームレートを見せてトップとなった。モンハンライズもプレーヤーの操作が必要ということを割り引いても,十分に好成績と言える。

 やや奇妙なのは,Ryzen 9 7950X3Dでは2560×1440ドットと1920×1080ドットにほぼ差がない点だが,ほかのCPUでも,これらの解像度では差が小さいので,フレームレートがゲームエンジン内部の上限に近づいているのかもしれない。もしそうなら,Ryzen 9 7950X3Dはそれだけ高いフレームレートが出せるということにもなる。

 「Call of Duty: Modern Warfare II」(以下,CoD: MWII)をグラフィックス品質「極限」でテストした結果をグラフ14〜16にまとめた。

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 すべての解像度で,Ryzen 9 7950X3Dは,Core i9-13900Kとほぼ並んだ。ごくわずかにRyzen 9 7950X3Dが上回ってはいるものの,1フレームにも満たない微妙な差なので互角と見るべきだろう。

 次の「Fortnite」は,グラフィックス品質を「最高」としたが,レンダリング解像度を50%に引き下げてGPU負荷の低減を図った。また,今回はリプレイの代わりに,NVIDIA製のベンチマーク専用マップ「TILTED TOWERS BENCHMARK」を使用してテストした。これは,同じシークエンスのフレームレートを測定できるマップである。
 その結果がグラフ17〜19だ。

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 ここまでとは異なり,Fortniteではすべての解像度で,Ryzen 9 7950X3DよりもCore i9-13900Kのほうが有意に高い平均,最小フレームレートを記録した。
 Fortniteは従来から,新しいCPUではフレームレートが出ないという傾向を見せることがあり,今回もそれが繰り返された可能性はある。開発元は,こまめにFortniteをアップデートしており,新CPUへの対応も随時を行っているようなので,Ryzen 9 7950X3Dも今後のアップデートでフレームレートが上る可能性はあるだろう。現時点では,Core i9-13900Kに軍配が上がった,という程度にとらえておくのが良さそうだ。

 グラフ20〜22に,「God of War」(以下,GoW)における平均および最小フレームレートをまとめた。グラフィックス品質は「ウルトラ」設定で,DLSSを有効にしてレンダリング負荷を低減している。

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 2560×1440ドットと1920×1080ドットでは,Ryzen 9 7950X3Dの平均フレームレートがわずかにCore i9-13900Kに届かないが,最小フレームレートはRyzen 9 7950X3Dのほうがやや高い。Core i9-13900Kとの差は,最大でも2%に満たないうえ,GoWはテスト中に操作する必要があるタイトルなので,ブレやすいことを考慮すると互角と見るのが無難だろう。

 FFXIV暁月のフィナーレ ベンチの総合スコアをグラフ23にまとめた。

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 Ryzen 9 7950X3Dがすべての解像度でCore i9-13900Kを圧倒したと見ていいだろう。1920×1080ドットで44000超というのは驚きで,これまではFFXIV暁月のフィナーレ ベンチで比較対象を圧倒してきたCore i9-13900Kを,1割も上回る。「FFXIVベンチキング」の座を,AMDが奪還したと見ていい結果だ。

 グラフ24〜26に,FFXIV暁月のフィナーレ ベンチにおける平均および最小フレームレートをまとめた。

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 これまでAMDのCPUでは,最小フレームレートがやや低い傾向が見られたのだが,Ryzen 9 7950X3Dは,最小フレームレートもCore i9-13900Kを有意に上回る。拡大したL3キャッシュが有効に機能しているのだろう。

 ゲームテストの最後となる「F1 22」の結果がグラフ27〜29である。F1 22でも,グラフィックス品質を「超高」にする一方,DLSSを有効化してレンダリング負荷を下げている。

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 F1 22でも,すべての解像度でRyzen 9 7950X3DがCore i9-13900Kを有意に上回った。平均,最小ともにCore i9-13900Kよりも高いフレームレートを記録している。4K解像度での差はわずかだが,2560×1440ドット以下では,Ryzen 9 7950X3Dの最小フレームレートがCore i9-13900Kの平均とほぼ同等であり,圧倒したと言っても過言ではない。

 Ryzen 9 7950X3Dのゲーム性能を見てきたが,これまで最高クラスのゲーム性能を誇ってきたCore i9-13900Kに対して,4勝2分け1敗という結果になった。1敗のFortniteは,今後のアップデートでフレームレートが向上する可能性がある。
 Ryzen 9 7950X3Dは,平均フレームレートだけでなく最小フレームレートも優秀という点も見逃せない。平均以上に,最小フレームレートはゲームの快適さを左右することもある重要な指標だ。というわけで,Ryzen 9 7950X3Dは現時点で最強のゲーム性能を持つCPUだ,と言い切っていいだろう。


Ryzen 9 7950X3Dはゲーム録画の性能も良好


テストに用いたOBS Studioの録画設定
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 Ryzen 9 7950X3Dは16コア32スレッド対応のCPUなので,今回はレギュレーション26をベースに「OBS Studio」(version 29.0.2)によるゲーム録画もテストしてみた。
 今回の録画設定は,解像度を1920×1080ドットのみとする代わりに,画質を左右する「CRF値」を極めて画質が高くなる「18」に設定することで,CPU負荷を高めている。

 また今回は,CoD MW2のベンチマークシーンを録画してみた。CoD MW2のベンチマークシーンは,最後にベンチマーク結果が表示されるだけでなく,CPUとGPUのボトルネックが表示されるので,より詳細な情報が得られるだろうという判断だ。
 結果は下の動画のとおりである。


 録画品質自体はRyzen 9 7950X3DとCore i9-13900Kは互角といえる程度で,どちらもスムーズに録画できている。一方で,Ryzen 9 7900Xはこれだけの高画質設定だと,動画のフレーム落ちが多すぎて実用にならない。

 最後のベンチマーク結果を見ると,Ryzen 9 7950X3Dは平均198fps,Core i9-13900Kは平均210fpsで,Core i9-13900Kに軍配が上がった。最小フレームレートもCore i9-13900Kのほうが優秀で,OBS Studioで録画しながらゲームをプレイしたときの快適さは,Core i9-13900Kのほうが上と見ていいかもしれない。

 少し面白いのは,CPUの「ボトルネック」を見ると,Ryzen 9 7950X3Dが「36%」に対してCore i9-13900Kが「53%」で,Core i9-13900Kのほうが大きくなっている点だ。Ryzen 9 7950X3Dにおいて,録画中のCPUボトルネックが小さいということは,16コア32スレッドが正しく機能している,つまりPPMドライバがゲーム録画の負荷を正しく認識して,16コアすべてを開放したことを示す。また,ゲーム録画スレッドを,正しく周波数コア側に割り当てている可能性が高いとも推測できる。
 ゲーム中は8コアしか使わないRyzen 9 7950X3Dだが,ゲーム録画のようにマルチレッドのタスクを実行するときには,しっかりと16コアが開放されることが,これで確かめられた。決して8コアが無駄になるわけではなく,必要に応じて16コアすべてが使われるという点が,Ryzen 9 7950X3Dの強みと言えそうだ。


ゲーム以外のアプリケーションでもまずまずの性能を見せる


 AMDは,「クリエーター向けのアプリケーションなど一般向けのアプリケーション性能ならば,Ryzen 9 7950X3DよりもRyzen 9 7950Xのほうが,高い性能を得られる」と断言している。理由は簡単で,3D V-Cacheコアのクロック周波数が上がらないためだ。
 とはいえ,ゲームPCでゲーム以外のアプリケーションを活用しているゲーマーは多いはず。16コア32スレッドのRyzen 9 7950X3Dを求めるようなゲーマーは,一般アプリケーションの性能向上も期待しているだろう。レギュレーション26に準拠したゲーム以外のアプリケーションの性能もざくりと見ていきたい。

 グラフ30は,「PCMark 10」(version 2.1.2574)のテストである「PCMark 10 Extended」の結果から,Fire Strike相当の「Game」を除くスコアをまとめたものだ。カスタムでの実行になるので,総合スコアは集計されない。

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 すべてのテストでCore i9-13900Kが頭ひとつ抜けていて,Ryzen 9 7950X3DとRyzen 9 7900Xは,横並びに近いと言っていいだろう。16コアなので,マルチコアが効く「Digital Content Creation」は,Ryzen 9 7950X3Dがもう少しスコアを伸ばしてもよさそうには思うが,3D V-Cacheコアのクロック周波数が伸びないために,このような結果になったと思われる。
 PCMark 10の結果を見る限り,Windowsの使い勝手やクリエーター向けのアプリケーションは,Ryzen 9 7900Xと大差なさそうだ。

 動画エンコードソフト「FFmpeg」(Nightly Build Version 2021-10-14-git-c336c7a9d7-full_build)による動画のトランスコードにかかった時間をまとめたのがグラフ31である。

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 H.264は,すべてのCPUがほとんど横並び。H.265になると,次点のCore i9-13900Kに対して20秒程度の差をつけてRyzen 9 7950X3Dがトップの成績となった。Ryzen 9 7950Xほどの性能は持たないとAMDが明言していることを考えると,Ryzen 9 7950X3Dの成績はまずまずだろう。ビデオエンコードでも十分に高性能なCPUと言えそうだ。

 3D V-Cacheコアのクロック周波数は伸びないと述べてきたが,実際のところどうなのか。エンコード中における動作クロックの推移を,「HWiNFO64」を使って調べてみた。その結果をグラフ32にまとめている。

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 エンコード中,周波数コアは4.7GHz前後で,3D V-Cacheコアは4GHz前後を中心に推移した。3D V-Cacheコアも,最大値なら4.7GHz前後に達するが,そこまでクロックが上がる頻度は極めて低い。周波数コアと3D V-Cacheコアには,全負荷時におおむね700MHz前後の差があると理解するのがよさそうだ。

 写真現像ソフト「DxO PhotoLab 6」(Version 6.3.1.134)を用いたRAW現像時間をまとめたのがグラフ33である。

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 このテストでは,Core i9-13900Kが圧倒的なトップとなった。Ryzen 9 7950X3Dは,Ryzen 9 7900Xよりも4秒ほど短かったが,この程度の差はブレの範囲になるので,ほとんど互角と見ていいだろう。

 続くグラフ34は,3Dレンダリングベンチマーク「CINEBENCH R23」の結果である。

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 意外,と言っては何だが,このテストではCore i9-13900KとRyzen 9 7950X3Dがマルチコアでおおむね横並びの結果を残した。3D V-Cacheコアのクロック周波数が伸びないわりには,まずまずと言っていいだろう。一方,シングルコアの性能は,Zen 4世代Ryzenとして妥当なものだ。つまりシングルコア実行時に,CINEBENCH R23のスレッドが期待どおり周波数コアに割り当てられたことを意味している。

 ベンチマークテストのトリは,「7-Zip」(Version 22.01)の結果である(グラフ35)である。

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 Ryzen 9 7950X3Dがトップで,Ryzen 9 7900Xに対して1.26倍のスコアを収めた。7-Zipのテスト回数は10回であるが,テスト時間はごく短い。したがって,3D V-Cacheコアのクロック周波数があまり抑えられることなく,16コアらしいスコアが出たと見ていいだろう。短時間なら,3D V-Cacheコアのクロック周波数が足を引っ張ることはないというわけだ。

 ゲーム以外のアプリケーション性能をざっくりと見てきたが,AMDがRyzen 9 7950Xほどの性能は得られないと明言しているわりには,良好な性能を有すると結論できそうだ。長時間CPUに負荷をかけるような処理だと,12コア24スレッドのRyzen 9 7900Xとあまり変わらない程度の性能になりそうだが,短時間なら16コアの実力を見せるCPUと言えよう。


ゲームで驚異的な電力性能を見せるRyzen 9 7950X3D


 最後に,レギュレーション26に準拠した方法で,Ryzen 9 7950X3Dの消費電力を見ていこう。グラフ36,37はアプリケーション実行中におけるCPU単体の最大消費電力をまとめたものだ。

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 注目すべきは,ゲーム実行時の最大消費電力だ。Ryzen 9 7950X3Dで最大をつけたのはCoD MW2時の約113.3Wだった。対するRyzen 9 7900Xは,GoW実行時の約141.7W,Core i9-13900Kにいたっては,Fortnite時に驚異の約370.9Wを記録している。Ryzen 9 7900Xもゲーム中のピークは低いが,Ryzen 9 7950X3Dはそれに輪をかけて消費電力低いと言える結果だ。

 ゲーム以外のアプリケーション実行時もまずまずで,CINEBENCH R23実行時に約166Wをつけたのが目立つ程度。Ryzen 9 7900Xと大きくは変わらないと見ていいだろう。ゲーム以外の性能はRyzen 9 7900Xと大差がなかったので,妥当な結果だ。

 次のグラフ38,39は,アプリケーション実行中の典型的な消費電力を示す消費電力中央値である。

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 ここでも,Ryzen 9 7950X3Dのゲーム実行時における電力性能の高さが見て取れる。Ryzen 9 7950X3Dは,Spider-Man MM実行時に約74.2Wをつけているが,ほとんどのゲームで60W台に収まる。Ryzen 9 7900Xより優秀なのはもちろん,フレームレートが同等以下のCore i9-13900Kが190W近い消費電力中央値を叩き出すことを考えれば,Ryzen 9 7950X3Dのゲーム中の電力性能はまさに圧倒的である。フレームレートあたりの消費電力は,現時点で最強と断言していいだろう。

 ゲーム以外でも,Ryzen 9 7950X3DはRyzen 9 7900X以下の消費電力中央値に収まった。Ryzen 9 7950X3Dは3D V-Cacheコアのクロックが押さえられるために,TDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)が120Wに押さえられるため,これは当然の結果でもある。すべてのテストで公称TDP以下の消費電力中央値に収まっているので,12コア24スレッドのRyzen 9 7900Xと同等以上のマルチスレッド性能が得られることを考えれば,極めて優秀といえる。

 参考までに,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,各テストの実行時におけるシステムの最大消費電力をグラフ40,41にまとめておこう。

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 今回はGeForce RTX 4090というモンスター級の電力を消費するGPUを使っているので,システム消費電力はGPUが支配的だ。それでも,Ryzen 9 7950X3Dは,ほかのCPUに比べて有意に低い消費電力を記録した。ゲーム実行中,ピーク時は700W近い消費電力を叩き出すCore i9-13900Kに比べれば,圧倒的に使いやすいCPUといえる。


ゲーマー特化型CPUの決定版


Ryzen 9 7950X3Dの製品ボックス
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 Ryzen 9 7950X3Dの性能を見てきたが,ゲーム性能は文句なしだ。Core i9-13900Kと同等以上のゲーム性能を持ちながら,ゲーム中の消費電力が半分以下なので,ゲームメインのPCユーザーがCore i9-13900Kを選ぶ理由はないだろうと言っていいくらいである。

 ゲーマー以外ならどうかというと,Ryzen 9 7950X3Dは,微妙な存在かもしれない。ゲーム以外でも3D V-Cacheが効くアプリケーションはあるだろうが,ほとんどのアプリケーションは,最大クロックが高いRyzen 9 7950X,あるいはCore i9-13900Kのほうが,高い性能が得られるはずだ。ゲーマー以外がRyzen 9 7950X3Dを選ぶ理由はあまりなさそうで,そういう意味において,Ryzen 9 7950X3Dは究極のゲーマー特化型CPUという稀有な存在といえる。

 なお,発売が4月なのでテストは行えなかったものの,ゲーム性能だけなら8コアのRyzen 7 7800X3Dも,あまり変わらないと思われる。Ryzen 7 7800X3Dなら,8コアを待機状態にするというPPMドライバの世話になる必要もなく,高いゲーム性能が得られるだろう。
 ゲーム最優先でマルチスレッド性能はあまり必要としないというゲーマーなら,Ryzen 7 7800X3Dが価格帯性能比のいい選択になる可能性が高い。ゲーマーであれば,Ryzen 7 7800X3Dの性能が判明するまで待ってから,どちらを買うべきか検討してもいいだろう。

AMDのRyzen 9 7950X3D製品情報ページ

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    Ryzen(Zen 4)

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