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国産初のクレーンゲーム機を捜索する中で,後継機「クラウン603」を発見・復元
事の発端は,タイトーが2025年秋に開始した「クラウン602」の全国捜索プロジェクトにある。クラウン602は,1965年に台東貿易(当時)から発売された国産初のクレーンゲーム機とされている(諸説あり)。
同機は当時の技術を駆使した画期的な製品だったが,詳細な記録は社内にも残されておらず,現在ではわずかな写真資料が残るのみとなっている。
そこで同社は,国産クレーンゲーム機の登場から60周年という節目に,全国に向けて同機に関する情報提供を呼びかけたのだ。
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2026年初頭に捜索期間が終了するまでに,WebやSNSを通じてプロジェクトに寄せられた情報は4400件を超えたが,残念ながらクラウン602の所在を特定できるものはなかった。しかし,捜索の過程で後継機にあたるクラウン603の現存個体が発見され,所有者からタイトーに譲渡される運びとなった。
発見された当時のクラウン603は,コードが断線しているなど,復元できるのか疑問に思うほどの状態だったという。しかし,TAITO TECHのスタッフは「中身はおそらく大丈夫」との見立てを示し,同機のオーバーホールに取り組んだ。その内容は,主に以下の2点である。
●電気系統・制御回路の現代的整備:経年劣化が進んだ配線および配電回路を,安全性と耐久性に配慮して再構築。コイン投入からプレイ終了までの一連の動作を復元
●キャビネットおよび装飾のレストア:木製キャビネットやアクリル装飾の傷を修復し,稼働当時のたたずまいとノスタルジックな動作音を再現
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復元されたクラウン603は,クレーンゲームの歴史を示す貴重なアーカイブ資産としてタイトー社内で保管されるとともに,各種イベントや展示会などで披露される予定だ。
その最初の機会となるのが,11月6日から7日にかけて東京ビッグサイトで開催される「AMUSEMENT EXPO 2026」だ。同イベントのタイトーブースにて,復元されたクラウン603が展示される。
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技術サービス部:「タイトーなら,なんとかなる」という期待に応える技術集団
会場では,クラウン603の復元にあたったTAITO TECHの技術サービス部と品質保証課について紹介された。
技術サービス部は,ゲームセンターなどのアミューズメント施設に設置されたゲーム機の故障に対応する部署だ。ただし,単に壊れた機械を修理するだけではなく,「故障を未然に防ぎ,顧客が安心して遊べる環境を維持すること」「店舗運営を技術面から支えること」を使命としている。
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具体的な業務は大きく4つに分けられる。「現場対応」では,店舗の巡回メンテナンスや訪問修理,設置,点検などを実施している。さらに,「故障相談・技術支援」「修理・再生」「パーツ管理・供給」を通じて,ゲーム機の導入から,それを利用する顧客の安全までを支えている。
技術サービス部には4つの強みがあり,1つ目は「全国ネットワーク」だ。フィールドサービスを担当するテクニカルサポートセンター(TSC)は全国18か所に拠点を構えており,約40名の技術者がトラブル発生時などに迅速に対応している。
2つ目の強みとなる「幅広い技術対応力」では,銭湯に設置されているアーケード版「スペースインベーダー」を修理した事例が挙げられた。古い機械であるため,「部品が入手困難」という理由で修理を断られてもおかしくない案件だったが,技術サービス部では「本当に直せないのか,別の方法はないのか」をまず考えたそうだ。交換用の部品も当時の資料もなく,修理方法が分からない中,担当スタッフは機械の状態を一つひとつ確認し,これまでに培った知識や経験を頼りに修理を進めていった。
こうした取り組みの背景には,単に直せるかどうかを判断するのではなく,「どうすれば顧客に使い続けてもらえるか」という視点があるとのこと。こうした対応ができるのも,現場で積み重ねてきた経験やノウハウ,先輩から後輩へ受け継がれてきた知識,全国の技術者が共有してきた事例があるからこそである。
3つ目の強みは「現場で培ったノウハウ」だ。たとえば,クラウン603の復元における配線の交換や細かな改善・調整を可能にしたのは,長年にわたって現場で蓄積してきた経験や知見である。
4つ目の強みとなる「技術を共有する仕組み」は,個人の経験や知識を組織全体で共有し,全国どこでも同じ品質のサービスを提供できる体制を指している。
技術継承のために,部内の教育プロジェクトにも注力している。「レベル認定制度」は,技術者一人ひとりの成長を可視化し,次に何を学ぶべきかを明確にするために設けられた。レベル1は全員が取得するステップで,現在は9名ほどがレベル2の認定を受けている。さらに高度な技術力を要するレベル3については,2026年度内の運用開始を目指し,認定基準を構築しているところだ。
「実機を使った講習」は,マニュアルや資料を読むだけでは技術が身につかないという考え方から採用されている。たとえば,異音がする,振動がいつもと違うといった異常は,現場で機械を見たり触ったりした経験があって初めて気づけるものだ。そのため,実機講習を通じて,どのように原因を絞り込み,判断を下すのかを学んでいく。これは,ベテラン技術者の経験や感覚を次の世代に伝える取り組みでもある。
「TSC情報交換会」は,全国のTSCが技術情報を共有する場として,定期的にオンラインで開催されている。故障事例や改善事例,新機種情報などが共有されるほか,技術者同士のコミュニケーションの場としても機能しており,困ったときに相談しやすいというメリットもある。
こうした技術サービス部の取り組みは,すべて「技術を個人の財産で終わらせない」ために行われている。現場で培われた知識や経験を組織全体で共有し,次の世代へ受け継いでいく。その姿勢が実践されてきたからこそ,クラウン603の復元も成功したというわけである。
品質保証課:「お客様の“楽しい思い出”を陰で支える」品質保証の取り組み
タイトーのゲーム機の品質保証は,主に4つの要素で構成されている。「安全性試験」は,ゲーム機の電気系統に起因する感電や火災,漏電などの危険がないか,ノイズが発生していないかといった点を確認する試験で,電気用品安全法に基づく技術基準をベースにしている。
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「信頼性試験」は,工場出荷から店舗での稼働に至るまで,ゲーム機が正常に動作するかどうかを確認する試験だ。たとえば,倉庫で一時保管されている際の温度や湿度によってゲーム機に異常が生じないか,あるいはプレイ中に発生した静電気によって動作が乱れないかといったことをチェックする。また,メダルゲーム機やクレーンゲーム機に搭載されている機構部品の強度なども確認する。
「検討・確認会」は,ゲーム機などの開発にあたり,関係部署が安全性や信頼性を検討するために開催される。たとえば「PS(Product Safety)検討・確認会」では,機械を取り扱う際に発生する怪我の頻度や程度などを分析し,重大なリスクを取り除くための対策を検討する。
「導入評価」は,他社のゲーム機などを導入する際に,一定の品質を確保するために行われる。
また,これらの試験や評価は,電気用品安全法に基づく技術基準よりも厳しい社内基準で行われているとのこと。というのも,ゲーム機を量産すると,どうしても個体ごとに品質のばらつきが生じるからだ。品質が下振れした場合でも基準を満たさない個体が出ないよう,あらかじめ厳しい基準を設定しているというわけである。
各種試験・検査は,ゲーム機を市場に投入する前にリスクを取り除くことを目的として行われる。とくにアミューズメント機器はさまざまな設定ができるため,必ず最も負荷がかかる設定で確認するという。
会場では,音楽ゲーム機の画面が一瞬消える不具合や,プレイ中に発生した静電気によって動作に異常が生じる不具合などを,事前に検出した事例が紹介された。
現在のタイトーは,従来のゲームセンターにとどまらず,キッズ向けの屋内型パークやスポーツエンターテインメント施設,謎解き・脱出ゲームなど,さまざまな業態のアミューズメント施設を展開している。それぞれの施設に合わせて独自の安全性評価基準を設定し,利用者が安心して楽しめる環境を提供していることも示された。当初は,日本公園施設業協会(JPFA)の「遊具の安全に関する規準」や,欧州規格に準拠した精密点検検査士の話などを参考に,品質基準を整理していったというエピソードも披露された。
今回の説明会では,約60年前のクレーンゲーム機「クラウン603」の復元を通じて,タイトーのアミューズメント事業を技術面から支えるTAITO TECHの取り組みが紹介された。
古いゲーム機を修理するための知識や経験を受け継ぐ技術サービス部と,ゲーム機や施設の安全性を追求する品質保証課。両者の役割は異なるものの,その根底にあるのは,利用者が安心してゲームを楽しめる環境を守るという共通の思いだろう。
クラウン603の復元は,長年にわたって培われてきた技術力の結晶であると同時に,その技術を次の世代へ受け継いでいくことの大切さを示す取り組みでもあった。



























