![]() |
シリーズのファンなら,バイスシティと聞いて2002年の「グランド・セフト・オート:バイスシティ」を思い浮かべるだろう。だが,GTA6のバイスシティは,トミー・ベルセッティが成り上がったあの街の現代版ではないと見られる。
GTAシリーズの世界は,グラフィックスの世代交代に合わせて作り直されてきた。同じ名前の街であっても,作品によってはまったく別の世界に属しているのだ。
![]() |
![]() |
Rockstar自身も,2D,3D,HD(ハイデフィニション)の3つで世界が分かれていると説明しており,こうした世界の区切りは「2Dユニバース」「3Dユニバース」「HDユニバース」と呼ばれている。
本稿では,1997年の初代「グランド・セフト・オート」から29年にわたるシリーズを,この3つのユニバースに沿って振り返る。
実はバイスシティという地名は初代の時点ですでに登場していたし,ユニバースが変わっても受け継がれてきたものも多い。それを知っておけば,GTA6の街並みは一段と味わい深くなるはずだ。
「GTAユニバース」とは何か
GTAシリーズでいうユニバースとは,物語の正史の区切りのことだ。同じユニバースに属する作品同士は,登場人物や事件が地続きになっている。一方,ユニバースが違えば,同じ地名が出てきても別の世界の話になる。
分かりやすい例がロスサントスだ。2004年の「グランド・セフト・オート:サンアンドレアス」では,主人公のCJが1992年のロスサントスを駆け回った。
2013年の「グランド・セフト・オートV」もロスサントスが舞台だが,「サンアンドレアス」で描かれたCJの物語を引き継いだ世界ではない。街の形もまったくの別物だ。両作は別のユニバースに属しているのである。
ユニバースの切り替わりは,シリーズの表現が大きく進化したタイミングと重なる。見下ろし視点だった初代から「GTA2」までが2Dユニバース,「グランド・セフト・オートIII」で全面3D化してからの作品群が3Dユニバース,PS3/Xbox 360世代の「グランド・セフト・オートIV」以降がHDユニバースだ。呼び名も,それぞれの時代のグラフィックスに由来している。
| ユニバース | 発売時期 | 所属する主な作品 |
|---|---|---|
| 2Dユニバース | 1997〜1999年 | 初代「グランド・セフト・オート」,拡張パック「London 1969」「London 1961」,「GTA2」 |
| 3Dユニバース | 2001〜2006年 | 「III」「バイスシティ」「サンアンドレアス」「Advance」「リバティーシティ・ストーリーズ」「バイスシティ・ストーリーズ」 |
| HDユニバース | 2008年〜 | 「IV」とそのエピソード2作(「The Lost and Damned」「The Ballad of Gay Tony」) 「チャイナタウンウォーズ」,「V」,「GTAオンライン」 |
ただし,区切りの基準はあくまで物語のつながりであって,見た目ではない。それがよく分かるのが携帯機向けの2作だ。ゲームボーイアドバンス向けの「Grand Theft Auto Advance」(2004年)は見下ろし視点だが,「III」の1年前のリバティーシティを描いた前日譚なので,3Dユニバースに入る。
「グランド・セフト・オート・チャイナタウンウォーズ」(2009年)も同様だ。見下ろし型の画面ながら舞台は「IV」と同じリバティーシティで,HDユニバースの作品として扱われる。
![]() |
![]() |
とはいえ,ユニバース同士が完全に断絶しているわけでもない。たとえば架空の清涼飲料「Sprunk」は,3Dユニバースの「バイスシティ」で初登場し,HDユニバースの「IV」「V」にも引き継がれている。
人物では,ラジオパーソナリティのラズローが代表格だ。実在の人物でもある彼は,「III」以降の3Dユニバース作品でラジオ番組のホストを務め,HDユニバースの「IV」「V」にも登場する。HDユニバースでも,3Dユニバース時代の経歴を思わせる発言があるほどだ。
つまり,ユニバースの境界線は「物語は仕切り直すが,世界の空気は引き継ぐ」という程度のものだと考えると分かりやすい。ここからは,2Dユニバースより順に,それぞれの世界を見ていこう。
すべてはここから始まった 2Dユニバース(1997〜1999年)
シリーズの出発点は,1997年に発売された初代「Grand Theft Auto」だ。開発したのは,スコットランドのダンディーに拠点を置いていたDMA Design(現在のRockstar North)。画面は真上から見下ろす形式で,プレイヤーは車を盗み,公衆電話で仕事を受けて都市を駆け回る。
この初代の時点で,リバティーシティ,サンアンドレアス,バイスシティというおなじみの3都市はすでにそろっていた。モデルはそれぞれニューヨーク,サンフランシスコ,マイアミだ。
注目したいのはサンアンドレアスで,初代ではサンフランシスコ風の一つの都市にすぎなかった。ロスサントスなどを抱える「州」になるのは,3Dユニバースの「サンアンドレアス」から。同じ名前でも中身が変わるというユニバースの特徴は,すでにここから始まっているのだ。
![]() |
![]() |
物語は,犯罪組織の下っ端が仕事をこなしながら都市から都市へ渡り歩き,裏社会での地位を上げていくというもの。リバティーシティのギャングから始まり,サンアンドレアスを経てバイスシティへと向かう。
後の作品のような作り込まれたドラマはまだなく,各ステージは規定のスコアを稼ぐとクリアになる。それでも,アメリカの大都市を模した街で無法を働くというシリーズの骨格は,この時点でできあがっていた。
◯実在の英国都市を舞台にしたロンドン編
1999年には,初代の拡張パック「Grand Theft Auto: London 1969」が登場する。開発はRockstar Canada(現在のRockstar Toronto)で,Rockstar Gamesの名義で発売された初めてのGTAでもある。
![]() |
![]() |
舞台はその名のとおり1969年のロンドン。架空の都市を中心に描いてきたこのシリーズで,実在の都市をそのまま舞台にしたのは,このロンドン編だけだ。車は左側通行で,セリフには英国のスラングが飛び交い,1960年代英国の空気を色濃く漂わせている。
続いてPC向けに無償配布された「London 1961」は,同じマップと登場人物で,その8年前を描く前日譚だ。なお「London 1961」には,対戦専用のマップとしてマンチェスターも収録されている。
◯時代不詳の街と「クロード・スピード」
同じ1999年には,シリーズ第2作「GTA2」が発売された。こちらは要素も雰囲気も異色で,舞台はどの実在都市にも似ていない「Anywhere City」だ。レトロフューチャー風の荒廃した街で,時代設定もはっきりしない。説明書は「3週間先の未来」とうそぶき,公式サイトの資料は2013年を思わせる一方,作中のラジオは2000年問題に触れている。
![]() |
![]() |
街を仕切るのは7つのギャングで,巨大企業のZaibatsu Corporationや日本のヤクザもその一角を占める。あるギャングの仕事を受ければ,敵対するギャングからの「リスペクト」が下がる。この駆け引きが本作の軸だ。また,騒ぎを大きくするほどSWATや軍隊までが出てくる手配の仕組みも,ここで始まっている。
主人公はクロード・スピードという男だ。宣伝用に実写の短編映像まで作られていて,そこでは彼がギャング同士を争わせる様子が描かれている。この名前に聞き覚えがある人もいるだろう。「III」の無口な主人公も,後に「サンアンドレアス」でクロードという名前だと分かるからだ。服装もよく似ていて,ファンの間では同一人物説が根強い。
ただし,公式に確認された話ではない。そもそも2Dと3Dではユニバースが違うので,せいぜい「別の世界のよく似た男」といったところだ。
2Dユニバースの作品は,物語の面では後続にほとんど引き継がれていない。だが,3つの都市の名前,段階的に激しくなる警察の追跡,車に乗ると流れるラジオといった,今日のGTAを形作る部品は,この3年間でおおむね出そろっていた。そして2001年,シリーズは「III」で一気に3Dへと飛躍する。
発売順と作中の年が逆転する3Dユニバース(2001〜2006年)
2001年,「グランド・セフト・オートIII」でシリーズは全面3Dになった。舞台は再びリバティーシティだ。主人公は銀行強盗の最中に恋人のカタリナに裏切られ,撃たれて捕まってしまう。護送中の騒動に乗じて脱走した彼は,マフィアやヤクザの仕事を請け負いながら,カタリナへの復讐を果たしていく。主人公は最後まで一言もしゃべらない。
![]() |
![]() |
続く2002年の「バイスシティ」は,時代を一気に1986年へさかのぼる。ネオンとシンセサイザーに彩られた1980年代のマイアミを模した街で,主人公のトミー・ベルセッティが成り上がっていく。
トミーはシリーズで初めて声を持った主人公で,声を当てたのは映画「グッドフェローズ」で知られるレイ・リオッタだ。物語は,トミーが立ち会った麻薬取引が襲撃されるところから始まる。
![]() |
![]() |
2004年の「サンアンドレアス」は1992年が舞台だ。サンアンドレアスはここで「州」になり,ロスサントス,サンフィエロ,ラスベンチュラスの3都市と,その周りの田舎や砂漠までが一つのマップに収まった。主人公のCJことカール・ジョンソンは,リバティーシティで5年を過ごしたのち,故郷のロスサントスへ戻ってくる。
◯「サンアンドレアス」がつなぐ人物たち
「バイスシティ」にも「III」と共通する人物は登場していたが,「サンアンドレアス」では,その結び付きがさらに広がる。「III」で主人公を裏切ったカタリナは,ここではCJを振り回す役どころで登場し,やがて新しい恋人としてクロードを連れてくる。「III」の無口な主人公の名前がクロードだと分かるのも,この「サンアンドレアス」でのことだ。
![]() |
![]() |
「III」のマフィアのドン,サルバトーレ・レオーネもラスベンチュラスのカジノに姿を見せ,後に妻となるマリアと出会う。「バイスシティ」からは,トミーの弁護士だったケン・ローゼンバーグや,音楽業界に口を出すケント・ポールが引き続き登場する。別々の街で別々に描かれていた物語が,ここでさらに強く結び付けられたのだ。
◯携帯機の3作が隙間を埋める
本編3作に加え,携帯機向けには,その前日譚にあたる3作品も登場した。2004年の「Grand Theft Auto Advance」は,「III」の1年前にあたる2000年のリバティーシティが舞台。PSP向けの「リバティーシティ・ストーリーズ」(2005年)は1998年のリバティーシティを描き,「III」で主人公に仕事を回していたトニー・シプリアーニが主人公を務める。
![]() |
![]() |
「バイスシティ・ストーリーズ」(2006年)は,「バイスシティ」の2年前にあたる1984年が舞台だ。主人公のヴィクター・ヴァンスは,「バイスシティ」でトミーの相棒となるランス・ヴァンスの兄である。そして彼こそ,「バイスシティ」の冒頭で襲撃され,命を落とす取引相手だ。プレイヤーは,結末を知ったうえで彼の物語を追うことになる。
![]() |
![]() |
こうして並べると,発売順では最初の「III」が,作中の時系列では最後に来ることが分かる。
| 作中の年 | 作品 | 発売年 | 主人公 | 舞台 |
|---|---|---|---|---|
| 1984年 | バイスシティ・ストーリーズ | 2006年 | ヴィクター・ヴァンス | バイスシティ |
| 1986年 | バイスシティ | 2002年 | トミー・ベルセッティ | バイスシティ |
| 1992年 | サンアンドレアス | 2004年 | CJ (カール・ジョンソン) |
サンアンドレアス州 |
| 1998年 | リバティーシティ・ストーリーズ | 2005年 | トニー・シプリアーニ | リバティーシティ |
| 2000年 | Advance | 2004年 | マイク | リバティーシティ |
| 2001年 | III | 2001年 | クロード | リバティーシティ |
「III」のラストでは,救出されたマリアがしゃべり続けるなか,画面の外で一発の銃声が響く。本稿で紹介した3Dユニバースの6作品では,この銃声が時系列上の締めくくりとなる。
ただし前日譚はどれも後から付け足されたものなので,「Advance」と「リバティーシティ・ストーリーズ」のように,細かな設定が食い違うところもある。
3Dユニバースの新作は2006年の「バイスシティ・ストーリーズ」を最後に途絶え,2008年,シリーズは「IV」で新しい世界へと踏み出す。
すべてを作り直した“現在の世界” HDユニバース(2008年〜)
2008年に登場した「グランド・セフト・オートIV」で,シリーズは世界をまるごと作り直した。舞台はまたしてもリバティーシティだが,「III」の街とは地形も歴史も別物だ。
主人公のニコ・ベリックは東欧からやってきた移民で,アメリカでの成功を誇らしげに語る従兄弟を頼ってこの街に降り立つ。にぎやかな風刺はそのままに,物語の手触りはずっと重く,生々しくなった。
![]() |
◯同じ事件を3人の目で見る
「IV」には2009年に2つのエピソードが追加された。「グランド・セフト・オートIV:ザ・ロスト・アンド・ダムド」の主人公は,バイカー集団ザ・ロストのアルダニー支部で副支部長を務めるジョニー・クレビッツ。「グランド・セフト・オート:バラッド・オブ・ゲイ・トニー」の主人公は,ナイトクラブ経営者「ゲイ・トニー」ことトニー・プリンスの用心棒を務めるルイス・フェルナンド・ロペスだ。
この2作はのちに,1本にまとめた「グランド・セフト・オート:エピソード・フロム・リバティーシティ」としても発売されている。
![]() |
![]() |
3作の物語は同じ時期に並行して進み,あちこちで交差する。軸となるのは盗まれたダイヤモンドの行方で,美術館での取引が襲われる場面は,ニコ,ジョニー,ルイスそれぞれの視点で描かれる。「IV」で何が起きたのか分からなかった場面の裏側が,後から明かされていくわけだ。
同じ2009年には,ニンテンドーDS向けに「チャイナタウンウォーズ」が発売された。主人公は三合会の若者ホァン・リー。父から受け継いだ剣を届けにリバティーシティへ来たところ,その剣を奪われてしまう。舞台は「IV」のリバティーシティを縮小したもので,携帯機向けでも同じ世界に属している。
◯「V」で地続きになる物語
2013年の「グランド・セフト・オートV」は,「IV」の5年後にあたる2013年のサンアンドレアス州が舞台だ。主人公はマイケル,フランクリン,トレバーの3人で,プレイヤーは3人を切り替えながら物語を進めていく。
複数の主人公の物語が交差するという点では,「IV」とエピソード2作で描かれた語り口を,1本のゲームの中に凝縮した構成とも言えるだろう。
![]() |
3DとHDの間には物語の断絶があったが,同じHDユニバースに属する「IV」と「V」は,しっかりと地続きだ。分かりやすいのが「The Lost and Damned」の主人公ジョニー・クレビッツだ。
ジョニーらはサンアンドレアス州の田舎へと活動の場を移していて,ジョニーはトレバーが登場する流れで,あっけなく命を落とす。かつての主人公が,新しい主人公の危うさを示すために使われたわけだ。「IV」でニコと銀行を襲ったアイルランド系マフィアのパッキー・マクレリーも,「V」では強盗の仲間として雇える。
◯現実と並走する「GTAオンライン」
「V」と同じサンアンドレアス州を舞台にした「GTAオンライン」は,2013年のサービス開始から今もアップデートが続いている。興味深いのは,物語の時間が途中から現実と一緒に進むようになったことだ。
当初は「V」本編より前の2013年を描いていたが,2017年の「Gunrunning」では作中でも2017年だと明言され,それ以降のアップデートでは配信された年に対応する出来事が描かれている。先のパッキーもこちらに強盗の仲間として登場しており,「V」の後も彼らの人生が続いていることが分かる。
![]() |
つまりHDユニバースは,完結した過去の世界ではなく,今も動き続けている世界だ。「IV」の登場から18年。GTA6はその先に何を描くのか。続いては,ユニバースをまたいで受け継がれてきたものに目を向けてみよう。
世界が変わっても受け継がれるもの
物語はユニバースごとに仕切り直されてきたが,変わらず受け継がれてきたものもある。シリーズが一貫して題材にしてきたのは,アメリカという国と,そのメディアや映画,文化だ。それを形にしてきたのが,架空のブランドとラジオ,そして都市そのものだ。
◯架空ブランドは“世界をまたぐ住人”
ファストフードチェーンの「Burger Shot」は「バイスシティ」で初登場し,「サンアンドレアス」「IV」「V」と,3DとHDの両方で営業を続けている。フライドチキンの「Cluckin' Bell」は「サンアンドレアス」からの参加だ。
「サンアンドレアス」ではこれらの店で食べ過ぎるとCJが太り,走るのもフェンスを登るのも遅くなった。先に触れた清涼飲料のSprunkも含め,こうしたブランドは世界が変わっても同じ看板を掲げ続けている。
とはいえ,どのブランドも皆勤というわけではない。銃砲店の「Ammu-Nation」は「III」「バイスシティ」「サンアンドレアス」といった3Dユニバースの作品や「V」に登場するが,「IV」のリバティーシティには店を構えていない。
ちなみに2026年10月には,マイアミにあるNBAマイアミ・ヒートの本拠地,Kaseya Centerに,Burger ShotとCluckin' Bellが実際の売店として登場した。バイスシティのモデルとなった街で,ゲームの中の店が現実にあふれ出した形だ。
◯ラジオと,ユニバースを越える人々
車に乗ると流れるラジオも,シリーズの風刺を担ってきた重要な要素だ。トーク番組やCMを通して,アメリカ社会のあれこれが笑い飛ばされてきた。
そのラジオを通して存在感を示してきたのが,架空の宗教団体「Epsilon Program」だ。「サンアンドレアス」の宣伝用サイトとして登場し,作中では教祖のクリス・フォーマージュが,ラジオ番組でラズローと口論を繰り広げる。
「V」ではマイケルがこの教団に入信するサイドミッションまで用意された。どちらのフォーマージュも声を当てたのは同じ俳優で,先に紹介したラズローと並んで,3DとHDの両方に姿を見せる数少ない人物の一人だ。
◯同じ名前,違う街
ユニバースの変化をもっとも分かりやすく示すのは,都市の姿だ。初代の3都市は,ユニバースが変わるたびに大きく作り変えられてきた。
| 都市 | 2Dユニバース | 3Dユニバース | HDユニバース |
|---|---|---|---|
| リバティーシティ | 初代の3都市の一つ | 「III」「Advance」「リバティーシティ・ストーリーズ」 工業地帯,商業地区,郊外の3つの島 |
「IV」「チャイナタウンウォーズ」 4つの区と隣のAlderney州。実際のニューヨークにずっと近い |
| サンアンドレアス | 初代の3都市の一つ サンフランシスコ風の都市 |
「サンアンドレアス」 ロスサントスなど3都市を抱える州 |
「V」「GTAオンライン」 州南部のロスサントスと,周辺のブレイン郡などが舞台 |
| バイスシティ | 初代の3都市の一つ | 「バイスシティ」「バイスシティ・ストーリーズ」 1980年代の街 |
GTA6(発売予定) レオナイダ州の中心都市 |
たとえばリバティーシティ。「III」の街はニューヨークを下敷きにしながらも,東海岸や中西部のいろいろな都市を混ぜ合わせたような作りだった。これが「IV」では,ブルックリンにあたるBroker,クイーンズにあたるDukes,マンハッタンにあたるAlgonquin,ブロンクスにあたるBohanと,実在のニューヨークを強く意識した街に生まれ変わった。
ニュージャージーにあたるAlderneyは,リバティーシティとは別の州という扱いだ。GTA6のバイスシティも,おそらく同じような大きな作り変えを経ているはずだ。
◯日本との意外な接点
日本のプレイヤーにとって気になるのが,シリーズにたびたび登場するヤクザだろう。「GTA2」に続き,3Dユニバースのリバティーシティでも,ヤクザは主要な勢力の一つだ。「III」では金融街を拠点にし,組を率いるカセン家の兄妹が主人公に仕事を回す。
その3年前を描く「リバティーシティ・ストーリーズ」でも,当時の組長の妻が依頼人として登場する。強烈なステレオタイプも含めて,アメリカから見た日本の姿を探すのも,少し変わった楽しみ方と言える。
物語や人物は入れ替わっても,ブランド,ラジオ,都市の名前といった“部品”は新しい世界へと運ばれていく。続いては,その最新の運び先であるGTA6について,分かっていることを整理してみよう。
3度目のバイスシティは,どの世界につながるのか
いよいよGTA6だ。発売は2026年11月19日,対応機種はPS5とXbox Series X|S。舞台はフロリダ州をモデルにしたレオナイダ州で,その中心にあるのが現代のバイスシティだ。
主人公はジェイソン・デュヴァルとルシア・カミノスの2人。ジェイソンは詐欺師や犯罪者に囲まれて育ち,従軍を経て,キーズを拠点にする運び屋のもとで働いている。
ルシアは,自分の声と生い立ちを持つシリーズ初の女性主人公だ(初代でも女性キャラクターを選べたが,選んでも物語や性格は変わらなかった)。
第1弾トレーラーの冒頭では,刑務所にいるルシアの姿が描かれている。簡単なはずの仕事に失敗した2人が,州全体に広がる裏社会の陰謀に巻き込まれていく,というのが公式のあらすじだ。
◯街から州へ,1980年代から現代へ
バイスシティが描かれるのは,初代,3Dユニバースに続いて3つ目の世界となる。初代では3都市の一つとして,3Dユニバースでは1980年代の街として描かれてきた。GTA6では時代が現代に移り,舞台も街だけではなく州全体へと広がった。
![]() |
公式に明かされている地域は,バイスシティのほか,フロリダ・キースにあたるLeonida Keys,湿地帯のGrassrivers,寂れた行楽地Port Gellhorn,Ambrosia,Mount Kalaga National Parkといった顔ぶれだ。「サンアンドレアス」で都市が州になったように,バイスシティもまた,その周りの世界ごと作り直されているわけだ。
◯HDユニバースの続きなのか
では,GTA6はどのユニバースに属するのか。現時点で公開されている公式情報には,その所属を明示した説明は見当たらない。ただし,HDユニバースに属すると考えられる材料はそろってきた。
2023年12月の第1弾トレーラーには,「IV」「V」でおなじみのニュース局Weazel Newsが登場した。ただし前述のように,ブランドはユニバースをまたいで受け継がれるので,これだけでは同じ世界だとは言い切れない。
より重要なのが,2026年8月27日に公開された約27分の「Extended Look」だ。この映像に,「GTAオンライン」の2025年のアップデート「Money Fronts」で登場した女性ヴァレンティーナが姿を見せたのである。
![]() |
「GTAオンライン」では通りすがりに近い端役だった彼女は,GTA6ではジェイソンとルシアに警護の仕事を依頼する人物として登場する。ロスサントスで姿を見せていた人物が,バイスシティにも現れたわけだ。
「IV」から「V」へジョニーやパッキーが引き継がれたことを考えれば,GTA6もまた,「IV」から続く世界の一部である可能性は高い。
もしそうだとすれば,序文で触れたように,このバイスシティにトミー・ベルセッティの足跡はない。一方で,ロスサントスやリバティーシティで生きてきた人々が,どこかで顔を出す余地はある。
ヴァレンティーナ以外にも再登場する人物がいるのかは,まだ分かっていない。それを自分の目で確かめるのも,発売日の楽しみの一つだ。
◯発売前に遊んでおくなら
最後に,発売までの数週間で過去作に触れておきたい人のために,今遊びやすい作品を紹介しておこう。
GTA6がHDユニバースの続きだとすれば,まず選ぶべきは「グランド・セフト・オートV」だ。PCやPS5,Xbox Series X|Sといった現行の環境で遊べるうえ,GTA6にいちばん近い時代の世界を描いている。同じ世界で続く「GTAオンライン」では,ヴァレンティーナが登場した「Money Fronts」の物語にも触れられる。
![]() |
HDユニバースの始まりである「IV」は,PC版のほか,Xbox OneとXbox Series X|Sの下位互換で遊べる。エピソード2作を収録した「Episodes from Liberty City」も下位互換に対応しているので,本編と合わせれば3人の視点をまとめて追うことができる。ただしPlayStationではPS3版しかなく,PS5では遊べない点には注意したい。
![]() |
3Dユニバースを振り返るなら,「III」「バイスシティ」「サンアンドレアス」を収録した「グランド・セフト・オート:トリロジー:決定版」が手軽だ。
PC,PS5/PS4,Xbox Series X|S/Xbox One,Nintendo Switch,そしてスマートフォンと対応機種も幅広い。特に「バイスシティ」を遊んでおけば,1980年代のバイスシティとGTA6の現代のバイスシティを見比べる楽しみが生まれる。
作り直され続ける世界
1997年の初代から29年。GTAシリーズは,表現が大きく変わるたびに世界をまるごと作り直してきた。見下ろし視点の2Dユニバース,時代を行き来しながら人物がつながっていった3Dユニバース,そして現実と並走しながら動き続けるHDユニバース。物語はそのたびに仕切り直されたが,都市の名前,架空のブランド,ラジオ,そしてアメリカへの風刺は,形を変えながら受け継がれてきた。
![]() |
GTA6は,その最新の一章であり,3度目のバイスシティでもある。トミー・ベルセッティが成り上がったあの街とは別の世界だが,ネオンの光も,Burger Shotの看板も,きっとどこかにあるはずだ。29年分の世界を頭の片隅に置きながら,11月19日にレオナイダ州へ足を踏み入れてみてほしい。




















































