カプコン，2021年3月期に複数の大型新作タイトルを発売予定。工程の見直しなどで緊急事態宣言の影響による開発遅延をカバー

　カプコンは2020年5月8日，メディア向けにオンラインで2020年3月期の連結業績を発表した。5月8日に掲載した記事でお伝えしたように，売上高こそ前期比でマイナスになったものの，すべての利益項目で3期連続の過去最高益を達成した。
　また2021年3月期の連結業績予想については，8期連続の営業増益ならびに，すべての利益項目で4期連続の過去最高益を見込んでいるという。本稿では，業績発表およびそれらに関する質疑応答の中から，主に同社の今後の事業展開および業績予想に関する内容をお伝えする。

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　新型コロナウイルス感染拡大による緊急事態宣言がカプコンの業務にもたらす影響については，業績発表の終盤に説明が行われた。カプコンの取締役専務執行役員最高財務責任者（CFO）を務める野村謙吉氏によれば，同社では現在，従業員が在宅勤務や自宅待機にシフトしており，コアビジネスであるゲーム開発事業において戦力ダウンしている状態だという。
　また，たとえ緊急事態宣言が解除されても，感染リスクを考慮すればフル稼働に戻るには時間がかかると予想されることなどから，2021年3月期発売予定の大型タイトルの開発に影響をおよぼす可能性がある。予定しているタイトルは複数あり，いずれも下期発売予定であることから，それぞれの開発工程を見直すなどして予定どおりの発売を目指すとのこと。

　また，アミューズメント施設事業については40店舗中37店舗が休業中（5月8日現在。5月9日より36店舗の予定）で，営業再開は当初5月中旬を予定していたものの，緊急事態宣言の延長を受けて6月に延期になっている。そのため，アミューズメント施設事業については売上高の減少が予想されるが，現在はコストコントロールに務めて収支のバランスを取るスタンスだという。
　さらにアミューズメント機器事業では，当初2021年3月期に複数機種を発売する予定だったが，現在は下期に1機種のみを発売する意向だと野村氏は語った。

　質疑応答でも，新型コロナウイルスの影響に関する質問が目立った。野村氏によると，カプコンは2020年3月期に影響が見られたのはアミューズメント施設事業のみだと捉えているという。具体的には2020年3月単月の売上が前年比約70％だったが，それまでの11か月間が好調だったことで，通期では増収増益になっている。
　またデジタルコンテンツ事業（コンシューマ機およびPC向けゲームのダウンロード販売事業）は第4四半期に売上を伸ばしているが，それはセールなどによる販売促進によるところが大きく，新型コロナウイルスの影響はさほどではないと判断している。

　一方，2021年3月期は，世界のほとんどの国で小売店が営業を自粛していることから，パッケージ販売に影響をおよぼすと予想している。しかし現在，同社の売上の約80％はデジタル販売によるものなので，引き続きデジタルコンテンツ事業に注力し，2020年3月期は2250万本だった販売数を2021年3月期には2800万本に増やす考えであることも示された。
　なお，2020年3月期のデジタル販売比率は73.9％になる見込み。これは下期発売予定である複数の新作大型タイトルのパッケージ需要が大きくなることが理由とのこと。

　eスポーツ事業は，大会が大型イベントにあたることや選手や観客に感染リスクがあることなどから，リアルイベントの開催を見合わせている。現在は，オンライン大会の開催などを検討しているという。
　この事業では引き続き，プロ選手を養成する「eスポーツアカデミー」（仮称）の創設や地方チーム，女性リーグの設立など，市場拡大を見据えて人材や資金の投入を行っていく予定だ。

　プロモーションの面では，E3 2020の開催中止や東京ゲームショウ 2020の幕張メッセにおける開催中止など露出の機会が減っている。その一方，SNSを使ったプロモーションがユーザーに刺さる傾向があるため，今後はオンラインを駆使して新作タイトルなどの各種情報を提供していく考えであることも示された。