![]() |
1915年12月6日,アニメーターのマックス・フライシャーは「Method of Producing Moving-Picture Cartoons」(動く漫画を作る方法)と題した特許を出願した。実写のフィルムを1コマずつ映し出し,その上から絵をなぞっていく装置で,のちにロトスコープと呼ばれるものじゃ。
モデルを務めたのは弟のデイヴで,ピエロの衣装を着て動いた姿が,シリーズ「Out of the Inkwell」の道化師ココになった。それから70年あまり経った1989年には,ジョーダン・メカナーも弟を撮影し,その走りや跳躍をなぞって「Prince of Persia」の王子を動かしておる。
今回取り上げる「Silver Pines」の主人公,私立探偵のレッド・ウォーカーもまた,ロトスコープで動いておる。実写をなぞった動きは,キビキビ動くアクションゲームの主人公とはまるで違う。足取りはどこか重たげで,体の運びや息づかいまで,くたびれた中年男そのものなのじゃ。そんな男が,避難命令の出た薄暗い田舎町をひとりで歩き回る。2Dのメトロイドヴァニアにした「SILENT HILL」と言えば,雰囲気は伝わるじゃろうか。
![]() |
物語は,ウォーカーが無人のダイナーで目を覚ますところから始まる。ラジオは避難命令を繰り返し,町には記録的な嵐が近づいておる。外の公衆電話が鳴り,依頼人のジャックマンが,失踪したミュージシャンのエディ・ヴェルヴェットを探せと念を押してくる。最後に目撃されたのはクリムゾン・ベア・モーテルじゃ。ところが当のウォーカーは,なぜ自分がここにいるのかをはっきり思い出せておらん。
![]() |
本作は横スクロールのサバイバルホラーに,メトロイドヴァニアの探索を組み合わせておる。暗がりを照らす懐中電灯や,下水道へ降りるためのマンホールの鍵を手に入れるたびに,町の行ける範囲が広がっていく。行ったり来たりが増えるぶん,頼りになるのが地図じゃ。解けていない謎はウォーカーが書き込んでくれるし,ポラロイドカメラで撮った写真はその場所にピン留めされる。ワシは開かない扉や手の届かない物資箱を見つけるたびに1枚撮っておき,道具がそろってから写真を頼りに戻っておった。
![]() |
住民の多くは逃げ出したが,残っておる者もいる。電話越しでしか話そうとしないモーテルの女,廃アパートをじっと見上げる老人,黙々と穴を掘り続ける者。話しかけても,まともな答えはまず返ってこん。
ただし,町に残っておるのは住民だけではない。そう,当然ながらこのゲームには化物がおる。とくに何度も対峙することになるのが影のようなゾンビじゃ。こやつらは走りはせんが,とにかくしぶとい。殴っても撃ってもなかなか倒れず,じりじりと間合いを詰めてくる,まさにゾンビらしいゾンビじゃ。うめき声も不気味で,どこからかあの声が聞こえてくると,それだけで一気に緊張が走る。
![]() |
戦う手段は,ナイフやパイプによる近接攻撃と,拳銃やショットガンによる射撃じゃ。近接攻撃と回避はどちらもスタミナを使い,とくに回避は1回でそのほとんどを持っていかれる。敵のリーチぎりぎりから1〜2発当てて,相手が仕掛けてきたら避ける。ただ,回避を1回使うとスタミナはほぼ空になり,そのあいだは殴り返すことも,もう一度避けることもできん。だから避けるのは,敵が攻撃の動作に入ったのを見届けてからの1回きり。焦って早めに転がれば,空っぽのスタミナのまま次の一撃を待つことになる。
![]() |
銃には照準が表示されんので,距離があると当てにくい。確実に当てたいなら至近距離まで引きつけることになるが,リロードもミニゲームになっておって,敵を前に弾を込め直す余裕はない。見るからに荒事に慣れておらんウォーカーの手で戦うから,1体を相手にするだけでも気が抜けんのじゃ。
しかも弾は貴重じゃ。敵を倒す以外にも使い道があって,錆びた南京錠のかかった扉は撃ち抜かねば開かん。手元の1発をゾンビに使うか,錠前のために取っておくかは,いつも悩みどころになる。
![]() |
弾を節約したいなら,頼りになるのは忍び足じゃ。しゃがんで移動すれば敵に気づかれずに済むし,見つかっても回避で背後へ回り込める。近接武器にも耐久度があって,補修テープで直しながら使うことになるから,ワシはできるだけ戦いを避けて通り,この敵だけは倒しておきたい,というときにだけ武器を振るっておった。
![]() |
そんなウォーカーを少しだけ支えてくれるのが「追憶の品」じゃ。道中で手に入る装備品の総称で,リロードが速くなる,スタミナが増える,受けるダメージが減るといった具合に,品ごとに効果が違う。
身につけられる数には限りがあるし,付けたところで正面から殴り合えるようになるわけでもない。強くなるというより弱点を少し埋めるためのもので,リロードのもたつきが気になるなら速める品を,回避ですぐ息が切れるならスタミナを増やす品を,という具合に,それまでの戦いで困ったことに合わせて選ぶことになる。
![]() |
持ち歩ける量も限られておる。インベントリは最初18マスで,ショットガンは4マス,キーアイテムにも4マスを取るものがある。何を持って出るかは,倉庫の前で毎回考えることになる。このキーアイテムはまだ要らんじゃろうと倉庫にしまったら,すぐに必要になったなんていうサバイバルホラーあるあるは何度も味わったぞ。
![]() |
セーブにも元手がかかる。町の公衆電話がセーブポイントで,そのたびに硬貨を入れてジャックマンの番号を回さねばならん。同じ硬貨は,自販機で弾や回復薬を買うのにも使う。
つまりセーブ1回ぶんの硬貨は,そのまま弾や回復薬の代金でもあるわけじゃ。ボス戦を前に電話を見つけても,すぐに受話器を取るか,その硬貨で弾を買い足しておくかを考えることになる。
![]() |
くたびれた探偵の重い足取りで,嵐の迫る町を一歩ずつ進んでいく。そんな,「SILENT HILL」のような重苦しい空気が好きなお主であれば,このゲームも間違いなく刺さるはずじゃ。日本語にもバッチリ対応しておるから,少しでも気になるなら遊んでみるのが吉じゃぞ!































