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「バーチャファイター」に受け継がれる哲学――不定期連載「原田が斬る!」,第8回はセガ・青木盛治氏にVFシリーズの未来を聞いた
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印刷2021/07/07 10:00

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「バーチャファイター」に受け継がれる哲学――不定期連載「原田が斬る!」,第8回はセガ・青木盛治氏にVFシリーズの未来を聞いた

画像集#015のサムネイル/「バーチャファイター」に受け継がれる哲学――不定期連載「原田が斬る!」,第8回はセガ・青木盛治氏にVFシリーズの未来を聞いた

 鉄拳シリーズのプロデューサー・原田勝弘氏による対談企画「原田が斬る!」の第8回をお届けする。
 久々の更新となる今回の対談相手は「Virtua Fighter esports」(バーチャファイター eスポーツ。PS4 / ARCADE)のチーフプロデューサーを務める,セガの青木盛治氏だ。「バーチャファイター」(以下,バーチャ)シリーズは3D格闘ゲームの始祖にして,原田氏が手がける「鉄拳」のライバルと言える存在。かつてのゲームセンターでは,バーチャと鉄拳がしのぎを削っていたことを覚えている人も多いだろう。プレイヤーも「バーチャ派」「鉄拳派」に分かれ,日夜意見をぶつけ合っていたものだった。
 しかし,こうした熱い時代はやがて終わりを告げることとなった。2010年の「Virtua Fighter 5 Final Showdown」以降,バーチャシリーズの新作が発表されなかったからである。

画像集#002のサムネイル/「バーチャファイター」に受け継がれる哲学――不定期連載「原田が斬る!」,第8回はセガ・青木盛治氏にVFシリーズの未来を聞いた

 10年が経過し,東京ゲームショウ2020において,突如「バーチャファイター×(クロス)esports」プロジェクトが発表された(関連記事)ときに,バーチャファンは「本当にバーチャが復活するのか?」「いや,ゲームじゃないかもしれない」など,喜びと戸惑いの入り交じった反応を見せた。10年の沈黙はそれほどに重いものだったのだ。
 そして,2021年6月1日。「Virtua Fighter 5 Final Showdown」をPS4用にリメイクした「Virtua Fighter esports」の配信が始まった(アーケード版は翌6月2日に稼働開始)。かつてバーチャに青春を捧げた“バーチャ勢”が一様に活気を取り戻したことは,読者諸兄もご存じのとおりだ。

 “バーチャ復活”のカギは何だったのか。復活の狼煙を上げたのが新作「バーチャファイター6」ではなかった理由とは? この10年,3D格闘ゲームの最前線を走ってきた原田氏が,ライバルであり盟友でもあるバーチャのチーフプロデューサーに訊いてみた。

――2021年5月25日収録

「Virtua Fighter esports」公式サイト

「原田が斬る!」記事一覧



偉大すぎたブランド――バーチャファイター


原田勝弘氏(以下,原田氏):
 青木さんと直接お話しするのは初めてですね。僕の中では,「ボーダーブレイク」の“牛マン”のイメージです。

青木盛治氏(以下,青木氏):
 僕も,原田さんのことはTwitterや映像でよく拝見しています。

原田氏:
 バーチャは僕が入社した時からの目標であり,ライバルであり,いい意味での敵でした。ただ,大変失礼ながら,「Virtua Fighter esports」の登場は“10年遅いんだよ!”と言いたい心境ですし,ファンもそう感じているのではないかと思います。

青木氏:
 お待たせしすぎました。10年……は,やはり長いですよね。

原田氏:
 いきなりですけど,僕の思い入れから伝えさせてください。
 セガさんの「バーチャファイター」は,本当は僕がライバルと呼ぶことすらおこがましいくらいの,3D格闘ゲームの金字塔です。1990年代に「目標にしてます」「いつか追い抜きたいです」なんてことを言おうものなら,「何を生意気な!」ってバッシングを食らうのが当然の作品でした。
 1996年に直属の課長だった中谷(中谷 始氏。のちのバンダイナムコスタジオ社長)から,「鉄拳はあと何年作ったらバーチャを抜ける?」と聞かれたことを覚えています。そのとき僕は,2年で1作として少なくとも5作品――つまり最低10年はかかると答えたんですが,それでも絶対の自信はありませんでした。それくらい,バーチャは特別な存在だったんです。

画像集#003のサムネイル/「バーチャファイター」に受け継がれる哲学――不定期連載「原田が斬る!」,第8回はセガ・青木盛治氏にVFシリーズの未来を聞いた

4Gamer:
 2年で1作というのも,今から考えるとすごいスピードですけども。

原田氏:
 あの当時は,それが普通だったんだよね。いい時代でした。バーチャと鉄拳で,コミュニティ同士が敵対してるみたいな関係で。アンチなコメントがくると,僕はかえって燃えたものです。

青木氏:
 ええ,分かります。

原田氏:
 でもその後,バーチャシリーズは途切れてしまった。そして月日が経つにつれ,バーチャのコミュニティの反応も変わってきた。シリーズが続いていたときには蚊ほどにも思われていなかった僕のところに,ある日から「原田さん,バーチャ作ってよ」ってメッセージが来るようになったんです。もちろん,最初は冗談だったんだと思いますよ。

4Gamer:
 それが少しずつ冗談じゃなくなってきたと。

原田氏:
 そう。実際,それから僕に届くメッセージも,だんだんシリアスになってきました。「本当に何とかなりませんか?」って。あとは「セガからライセンスを受けて作れない?」とか「原田さんからセガに働きかけられないですか」とか。要はバーチャ復活のために力を貸してほしい,ということですね。

4Gamer:
 それはいつ頃のお話ですか。

原田氏:
 最初に言われるようになったのが4年前くらい,訴えがシリアスになってきたのが3年前くらいかな。なので,観測気球としてバーチャのことをTwitterで語ってみたんですよ。「“2”の曲もいいけど,久々に聴くと“3”の曲もいいよね」とか,「アキラの曲はどの作品でもいい」とか。そうしたらすっごく喜ばれた。「原田さんがバーチャについて話してくれてる!」って。あのバーチャ勢がですよ?

4Gamer:
 そこは「お前がバーチャを語るな!」じゃないのかと。

原田氏:
 いや,そうなんですよ。「バーチャに媚びてんじゃねえ!」とか,「頼むからバーチャのキャラを鉄拳に出すなよ!」とか。もしもバーチャが続いていたなら,絶対に言われていたはずなんです。

4Gamer:
 でもそれだけ,ファンにとっては切羽詰まった状況だったということですね。

原田氏:
 新作を渇望していたんだと思います。いえ,僕自身にもその思いがありました。バーチャにはライバルでいてほしいですから。こうした声はセガさんにも届いてたと思うんですが?

青木氏:
 当たり前ですが,バーチャの情報は常に追いかけていましたし,確実に届いてましたね。全員ではないにしろ,バーチャシリーズの開発者もセガにはまだいますし,僕自身も原田さんのTwitterを拝見していて,火が消えていないことは認識していましたし,社内でも「まだバーチャはいける」と感じていた者は多かったと思います。

原田氏:
 それがようやく実ったのが今回ということですよね。「Virtua Fighter 5 Final Showdown」から数えれば11年,沈黙が破られることになった経緯を,青木さんの視点からお話いただけますか。

青木氏:
 今回のバーチャ新作の話が出て,僕のところに話が来たのが2019年秋ごろでした。過去にバーチャの開発経験もあり,ファンでもあったので「バーチャ,面白そうだな」と思って関わることになりましたが……。最終的にはめちゃくちゃしんどかったですね(笑)。

原田氏:
 そりゃまあ,しんどいでしょう(笑)。

画像集#004のサムネイル/「バーチャファイター」に受け継がれる哲学――不定期連載「原田が斬る!」,第8回はセガ・青木盛治氏にVFシリーズの未来を聞いた

4Gamer:
 青木さんに白羽の矢が立ったのには,なにか理由があったのでしょうか。

青木氏:
 当時,僕はアーケードを主軸とするセガ・インタラクティブにいて,第二研究開発本部――いわゆるAM2研に所属していました。一方で,セガゲームス内にある龍が如くスタジオにも「Virtua Fighter esports」の開発について話がありまして,こちらはコンシューマゲームがメインの組織です。「ボーダーブレイク」では同じ作品をアーケードとコンシューマ両方に展開する経験があり,また「ぷよぷよeスポーツ アーケード」にも関わっていたことから,僕に声がかかったのかもしれません。
 eスポーツを軸に,バーチャをアーケードとPS4のプラットフォームで展開していく。こうした方針が最終的に決まったのが,2020年の2月でした。なので,実質の開発期間は1年間ということになります。

4Gamer:
 コロナ禍の初期くらいですね。

青木氏:
 そうなんです。プロジェクトがチームアップしたところで,1回目の緊急事態宣言になってしまって。誰も経験したことのない在宅開発を余儀なくされました。開発機を自宅に持って帰るわけにもいかず,あのときは困り果てました。

原田氏:
 ああ! それ,なぜか人づてに僕のところにも相談が来たやつですよ。当時,どこも困ってましたからね。「在宅開発をどうやればいいだろう」って。セガさんにもバンダイナムコでのやり方をアドバイスさせてもらいました。

青木氏:
 ああ,それだと思います(笑)。まあ,そんなこんなで,在宅環境での開発が本格的に始まったのは2020年5月頃でした。セガ・インタラクティブとセガゲームスではやっぱり文化が違っていて,その混合スタッフをリモート環境の中,ワンチームにするのはとても苦労しましたね。

原田氏:
 組織文化の融合をリモートでやったわけですね。考えるだけで頭が痛くなりそう(笑)。

青木氏:
 いやもう,本当に。さらに全世界同時配信というのも僕としては初でしたし,そのうえにダブルスタジオ制,リモート開発まで重なってしまって。軽々しく手を上げるんじゃないと思いました(苦笑)。

原田氏:
 ちょっと気になってることがあるんですが,2020年の発表時,里見さん(里見治紀氏。当時はセガグループ代表取締役社長CEO)が「まずは国内から」というのを強調されていたじゃないですか。グローバル展開が当たり前のご時世に,「これはどういう意味だろう?」とずっと気になっていたんです。当時は全世界同時配信の予定ではなかったんですか。

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[2020/09/26 00:35]

青木氏:
 そういうわけではないです。コピーに「まずは」の3文字を入れるかどうかは,ギリギリまで悩みました。理由はeスポーツというものへのコミュニティの意識が,日本と海外では異なるからです。日本ではeスポーツを標榜するゲームは今や珍しくありませんが,海外だと「これはeスポーツです」って発売前に決めつけられるのを嫌がるんですよね。

原田氏:
 そこは分かりますよ。eスポーツ化はコミュニティが作っていくものであって,メーカーが決めることじゃないと。

青木氏:
 なので,国内版は「Virtua Fighter esports」,海外版は「Virtua Fighter 5 Ultimate Showdown」と名前を分けることにしました。海外ではeスポーツという単語を使わないけれど,自然発生的にeスポーツ化の動きは出てくるだろう……と。そういう意味で,「まずは国内から」という言葉になったんですね。

原田氏:
 でもそこは,国内も「Ultimate Showdown」で良かったんじゃないですか?

青木氏:
 「ぷよぷよeスポーツ」に続くeスポーツタイトルであることを,社内外にもしっかり意識付けしたいという狙いを優先しました。ただ,僕自身はそこまで強くこだわっているわけでもないんです。タイトルが違うと,提出するROMも増えて大変ですし(苦笑)。

原田氏:
 eスポーツを謳うとハードルが上がる側面というのも,あると思うんです。ストリートファイターや鉄拳ではプロツアーやワールドツアーで世界規模の大会をやっていますが,これはコミュニティやスポンサーを含む,強固なつながりがあって初めて成り立つものです。
 こうした体制を作っていかないと,eスポーツは謳いにくいと思うんですが,そのあたりはどうなんです?

青木氏:
 すぐに動けるのは国内とアジアですね。欧米を巻き込んだ展開は,確かに“これから”になります。欧米にも昔からバーチャのコミュニティがありますから,徐々に取り組んでいくつもりです。

原田氏:
 なるほど。まずは草の根から始めるという感じで,本当に“これから”の再始動なんですね。

画像集#005のサムネイル/「バーチャファイター」に受け継がれる哲学――不定期連載「原田が斬る!」,第8回はセガ・青木盛治氏にVFシリーズの未来を聞いた


2つの組織文化の統合から生まれた「Virtua Fighter esports」


原田氏:
 ちょっと脱線しますけど,開発中に社内から「遊ばせてくれ」っていう人が寄ってきませんでした?

青木氏:
 きました(笑)。社外はもちろんですが,社内にも情報をクローズしていたのに加えて,リモート開発ですからね。知る人は少ないはずなのに。

原田氏:
 バーチャファン達はずっとヤキモキしてましたからね。ウチにも元バーチャプレイヤーが結構集まっているんですが,「原田さん,何か情報を持ってませんか? 外注スタジオの動きで分かりますよね?」ってよく聞かれました(笑)。

4Gamer:
 バーチャ作ってるって聞いたら,そりゃあ気になるでしょう。

原田氏:
 いや,僕は関係ないから(笑)。でも,いざ発表されて,手放しで喜んでいるのは僕くらいで,バーチャファンであればあるほど慎重に構えてましたよね。「原田さん,これ携帯アプリで,格ゲーでさえないかもしれませんよ」とか。あとほら,何だっけ?

4Gamer:
 ……「eスポーツチームの名前説」と「エナジードリンクの新作説」ですかね。

原田氏:
 それそれ。もう,「ガッカリしたくないんですよ!」って,恋に臆病な人みたいになってて(笑)。

青木氏:
 (苦笑)。「Virtua Fighter esports」を発表する前にも,原田さんが主催されている“日本格ゲー連合”にお誘いいただきましたよね。あのときは対外的に話せることが何もなくて,お断りさせていただくしかありませんでした。すみません。

原田氏:
 でも,ずいぶん検討してはくださったじゃないですか。

青木氏:
 ええ,お返事まで1週間くらいかかりましたね。返信内容も僕が書きましたよ(笑)。

原田氏:
 なので,僕らは逆に「何かバーチャに動きがあるんじゃないか?」と。本当に何もないなら,検討する必要すらないはずですし。

青木氏:
 「本当に作ってた!」って喜んでもらえるんじゃないか……とは思ってました(笑)。

原田氏:
 日本格ゲー連合のLINEグループでも,返事がなかなか来ないことで「こりゃあ何かやってるぞ!」って。あそこで即答してたら,発表のとき僕らはもっと驚いてたと思うんだけど(笑)。


4Gamer:
 「Virtua Fighter esports」について,原田さん的に何か気になった部分はありましたか。

原田氏:
 PlayStation PlusとPlayStation Now会員は追加費用なしでダウンロードできる形ですけど,これはすんなり決まりました?

青木氏:
 すんなり……ではなかったですね。そこも議論がありました。「セガ60周年なんだから60円でいいんじゃない?」みたいな(笑)。これからは若い世代に遊んでもらわないといけないですし,1人でも多くのプレイヤーに届けたいということで,今回の形に落ち着きました。
 10代,20代は「バーチャファイター」という名前を聞いたことはあっても,中身は知らないという人がほとんどです。そこにフルプライスでパッケージの格闘ゲームを出しても,買ってもらえないでしょう。

原田氏:
 そうですよね。最もゲームを買う欧米の20代でも,昔遊んだ思い出のゲームの中に「バーチャファイター」が入っていない可能性のほうが高いわけですから。それよりこれ,キャラクターのモデルは解像度を上げたリマスターじゃなくて,作り直してますよね。「そこに金をかけるんだ」って部分が,ちょっと意外でした。

画像集#013のサムネイル/「バーチャファイター」に受け継がれる哲学――不定期連載「原田が斬る!」,第8回はセガ・青木盛治氏にVFシリーズの未来を聞いた

青木氏:
 キャラクターやステージ,UI,すべて作り直しています。「龍が如く」シリーズのドラゴンエンジンを使っているんですが,龍が如くスタジオにはリアル調のキャラクターが得意なデザイナーが多いんですね。彼らが「やるからには」と,プライドを持って制作してくれたおかげだと思っています。ただ……VFのIPホルダーであるAM2研との調整には苦労しました。

原田氏:
 ああ,件の組織文化の違いですね。

青木氏:
 どうもAM2研から見ると,「アキラっぽくない……」ということが結構多くて。“技術は高いがバーチャを深く知らない部署”と,“どこよりバーチャをよく知る部署”が一緒に仕事をするわけですから,社内で監修し合っているようなものでした。

原田氏:
 分かります。テクノロジー観点の意見と,キャラクター観点の意見がぶつかり合う,みたいな感じですよね。

青木氏:
 ええ,そこの橋渡しや調整が僕の役割でもあるんですけど。それで,落とし所として定めたのが“キャラクターセレクトに登場するグラフィックス”という目標でした。

原田氏:
 ああ,あれプリレンダリングのハイエンドモデルですものね。

こちらが“キャラクターセレクトに登場するグラフィックス”(「Virtua Fighter 5 Final Showdown」公式サイトより)
画像集#018のサムネイル/「バーチャファイター」に受け継がれる哲学――不定期連載「原田が斬る!」,第8回はセガ・青木盛治氏にVFシリーズの未来を聞いた 画像集#017のサムネイル/「バーチャファイター」に受け継がれる哲学――不定期連載「原田が斬る!」,第8回はセガ・青木盛治氏にVFシリーズの未来を聞いた

青木氏:
 はい。前作では時代的なこともあって,“あの絵”とゲーム内の3Dモデルには,結構な違いがありました。でも皆の頭の中に強く残っているのは,“あの絵”のほうです。あれに近づけていくというゴールを決めたら,担当デザイナーが理解しやすくなり,そこからはクオリティが一気に上がっていきましたね。


原田氏:
 ヒットエフェクトが強化されているのも面白いですね。

青木氏:
 これは,eスポーツ的な観点から追加した要素です。バーチャは試合を観戦する側にも“今,何が起こっているのか”を理解する力が求められるので,そこを直感的に,分かりやすくしたかった。いかに目立つようにして,それでいて違和感がないようにする,つまり,プレイヤーさんが気づかないうちに受け入れられるものを目指しました。

原田氏:
 反対の声はなかったですか。

青木氏:
 なかったです。ただ最初はエフェクトが盛り盛りだったので,古参プレイヤーから「邪魔だ」という意見があり,何度も調整して今の形になっています。

画像集#012のサムネイル/「バーチャファイター」に受け継がれる哲学――不定期連載「原田が斬る!」,第8回はセガ・青木盛治氏にVFシリーズの未来を聞いた

原田氏:
 プレイした感じ,違和感はまったくなかったですね。3ステージくらいまで遊んでから,やっと「あれ,そういえばヒットエフェクトが追加されたんだ」って気付いたくらいです。

青木氏:
 やり過ぎてしまって「これじゃない」と言われないように,慎重に調整しました。前作に携わった片桐(大智氏)にも,プレイヤー目線からしっかり監修してもらっています。

原田氏:
 新キャラクターや新技は入っていないんですよね。

青木氏:
 入っていません。見た目以外は調整していないので,ゲームバランスはそのままです。

原田氏:
 アップデートで追加する可能性もありませんか。

青木氏:
 「5」の最終調整版である「Final Showdown」がベースなので,バランスについてはこれ以上いじるべきではないと考えています。新キャラクターや新技を追加するとそれを崩すことになりますし,よりマニアックな方向へ進むことになります。それでは新規プレイヤーが入りづらくなってしまいます。


通信対戦のこれから


原田氏:
 これ,通信はP2Pですよね。ロールバック方式は入ってます?

※ロールバック方式……通信対戦の遅延を軽減する仕組み(ネットコード)の一種。遅延したフレームを省いて描画することで,画面の同期を実現する(関連記事)。

青木氏:
 基本的にはP2Pですが,ロールバックは現状入れていません。セガ・オブ・アメリカからは,「とにかくロールバックを入れろ!」って何度も言われましたけど(苦笑)。

原田氏:
 ああ,ですよね。きっと言われただろうな,と容易に想像できます。
 ただ2D格闘と比較して,バーチャファイターのようなアニメーション方式の3D格闘にロールバックを導入すると,いろいろとトレードオフもあって課題が多いのも事実ですね。影響する箇所については広く知られていないので。

青木氏:
 「Virtua Fighter 5 Final Showdown」のXbox 360版やPS3版を出した当時は,ロールバックの概念はあまり知られていなかったこともあって,遅延を吸収する仕組みを自前で開発して実装していました。今回もこれを踏襲しています。

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[2010/09/06 18:41]

4Gamer:
 原田さんのいう「トレードオフがある」とはどういう意味なのでしょうか。

原田氏:
 3D格闘ゲームの場合は,ロールバックが起きた際にとくにアニメーションの部分への影響が大きいんですよ。これに関しては他社の2D格闘ゲーム開発者の多くからも「かなり影響大きそうですね」という見解が寄せられるレベルで,3D格闘ゲームのアニメーション再生手法への影響はやっぱりありますね。

青木氏:
 2D格闘ゲームはヒットする座標が少ないので,確かに向いていると思います。一方,バーチャだとアニメーションが数フレーム飛んでしまうだけで,かなり違和感のあるものになってしまう。なので,おっしゃるとおり,トレードオフがあります。とくにバーチャのアニメーションには大きく影響を与えてしまいますね。

原田氏:
 ロールバックが発生しても,アニメーションや初動の絵の作り方などの面で,3D格闘ゲームに比べて2D格闘ゲームは違和感が発生しにくいというのは事実で,先に述べたとおり,各社の2D格闘ゲームの開発者もそこは同様の見解を示しています。こればっかりは元のゲーム設計が見た目に与える印象なので,相性の問題とも言えますね。当然,アニメーションに関わる表現を2D格闘ゲームのようにしていけば違和感はかなり消えます。

4Gamer:
 なるほど。2D格闘ゲームはリミテッドアニメーション的であるのに対し,3D格闘ゲームはフルアニメーションに近い作りです。入力直後からキャラクターが動き出すので,最初の数フレームを飛ばして表示するロールバック方式では,絵の破綻が起こりやすいと。

原田氏:
 そうですね,パカパカ!カクカク!というのはとても感じやすいです。例えば「ソウルキャリバー」の刀の軌跡なんかは,アニメーションのフレームとフレームを線で全部つないでいるからこそ,あの滑らかさになるわけです。それが,刀の軌跡が飛んだり消えたり戻ったりすると,その分のゆがみが生じる結果になるので,もし皆さんにお見せできるとしたらですけど,分かりやすい例として挙げられますね。

画像集#006のサムネイル/「バーチャファイター」に受け継がれる哲学――不定期連載「原田が斬る!」,第8回はセガ・青木盛治氏にVFシリーズの未来を聞いた

 そういう見た目への影響やトレードオフが大きい3D格闘ゲームは,ロールバックを導入する際には,そのトレードオフに対する表現手法などの解決をかなり多く用意しなければいけません。それに同じ3D格闘ゲームであっても,バーチャと鉄拳では,しゃがみの途中やステップ中の動きの長さが違うから,その影響も違ったものになるはずです。この2タイトルを比較するだけでも,実は同じ3D格闘ゲームというキーワードだけでは括れないんですよ。

4Gamer:
 鉄拳シリーズは3D格闘ですが,「鉄拳7」からはロールバック方式を採用されていますよね。

原田氏:
 はい。「鉄拳」ではロールバック方式を採用していますね。それに連動して,どれぐらいロールバックが発生するか,発生しているかも計測しているのですが,これが日本に代表されるような回線状況が良い環境だと,あまり起こらないんです。なので,海外の環境に合わせて導入しました。

青木氏:
 「Virtua Fighter esports」では,海外との通信テストを毎週のようにやりましたし,「Virtua Fighter 5」がベースである今作の場合においては,この選択が現状のベストだと思っています。観客がいることが前提のeスポーツを謳うなら,なおさらに。セガ・オブ・アメリカのスタッフも,実際にプレイしたら快適な環境に驚いて納得してくれましたし。

4Gamer:
 しかし日米間とか,西海岸と東海岸での対戦になると,さすがに厳しいのでは?

青木氏:
 いや,回線さえ安定していれば問題なく行けます。

原田氏:
 格闘ゲームにとっては,地理的な距離は無論影響が大きいですが,それ以上にパケットロスの影響が大きいですね。パケットロスが少ない回線なら,遠距離でもかなりのレベルで遊べます。

青木氏:
 回線状況が良くない地域で,ロールバックを望む声が大きいことは理解しています。将来的に世界の回線状況が向上していけばいいな,と思いつつも,なかなかそうもいかないので,いろいろと検討していきたいとは考えています。

原田氏:
 コロナ禍の影響で,むしろ今は世界的に回線状況が悪くなっていますからね。トラフィックが世界的に増えて,異常なくらいパケットロスが起こるようになってる。この影響は,格闘ゲーム以外のゲームでも大きくて,「最近のゲームはアップデートのせいでオンライン対戦の状況が悪くなった」なんて言われることも多くなってきました。実は通信周りはまったくいじっていないのですが,全体的な傾向としてかなり影響が出ているなと感じますね。

4Gamer:
 ああ,確かに。夜になるとネット全体が重くなります。

原田氏:
 そういういろんな環境に左右されるから,ネット対戦は難しいんですよね。例えば,日本だとスマートフォンのOSのアップデートだったり,PCのOSの大規模アップデートが入ると,ネットワークインフラそのものが大混雑になります。すると,その影響が一見関係なさそうなアーケードの対戦にまで及びます。
 このあたりは大手通信会社とも情報交換しつつ,統計データを眺めているんですが,見事なまでに連動しているんですよね。そして,このコロナ禍においては,タイトルや地域を問わず,時間帯によって快適さが全然違ってくるようになりました。インターネットという交通事情は,ここまでインフラが整っている日本においてもなかなか安定しませんからね。

青木氏:
 ただ,これを説明するのって難しいんですよね。「ボーダーブレイク」のときもたくさんご意見をいただきましたけど,メーカーの対応を超えた環境要因的なところもあって,対応が難しい。

原田氏:
 こればっかりは仕方ない,というケースも多くあるのですが,お客さんから見ればすべてゲーム側の問題に見えますから。それもまた,仕方のないことなので,なかなかつらいところです。精進するしかないですね。

青木氏:
 トラブルが起こったときにフォローする仕組みだとか,ゲームデザインの段階でラグを考慮した作りにしておくとか。ネットワークには常に問題が発生しうることを前提に作っていくしかありません。

原田氏:
 そうですね。でもそうなると,シリーズの昔と比べたときにプレイ感覚が変わる,というトレードオフがあることが前提になります。先に挙げたとおり,アニメーションへの影響度が大きいバーチャにせよ鉄拳にせよ,言うて四半世紀以上前に生まれたタイトルなので,基本設計の見直しとなると課題は大きい。
 思えば,この四半世紀の間にディスプレイは液晶になり,コントローラと基板の間にはいろいろなチップが挟まるようになって,今はインターネット越しに対戦できるようにまでなってしまったわけで,環境も変わりましたからね。

4Gamer:
 環境が変わり,ハードウェアとソフトウェアが高機能になるたびに,遅延の原因が増えていく。

原田氏:
 ゲームエンジンや描画エンジンにも遅延が挟まる時代ですので。「四半世紀前にそれが分かっていたら,こんな設計にはしなかった!」っていうのが,当然たくさんあるわけです。もちろん,これは少しずつではありますが,設計自体も徐々に変えていたりもするんですね。ただ,先に述べたようにトレードオフも現実としてあるというのは,皆さんにも知っておいてほしいところではあります。

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