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「GeForce GTX 1660」レビュー。税別219ドルからという安価なTuringは性能だけでなく消費電力も要注目だ
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印刷2019/03/14 22:00

レビュー

税別219ドルからという安価なTuringは性能だけでなく消費電力も要注目だ

GeForce GTX 1660
(MSI GeForce GTX 1660 GAMING X 6G)


 2019年3月14日22:00,NVIDIAは,Turing(テューリング)世代のGPU新製品「GeForce GTX 1660」(以下,GTX 1660)を発表した。2月22日に発表済みとなっている「GeForce GTX 1660 Ti」(以下,GTX 1660 Ti)の下位モデルに当たる製品だ。NVIDIAによると,搭載グラフィックスカードの北米市場におけるメーカー想定売価は219ドル(税別)からである。

 4Gamerでは,そんなGTX 1660を搭載したグラフィックスカード「GeForce GTX 1660 GAMING X 6G」(以下,GTX 1660 GAMING X 6G)をMSIから入手できたので,気になるその実力に迫ってみたい。

GeForce GTX 1660 GAMING X 6G
メーカー:MSI
問い合わせ先:エムエスアイコンピュータージャパン MSIお客様ご相談窓口 supportjp@msi.com
メーカー想定売価:3万3980円(税込3万6698円)前後(※2019年3月14日現在)
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※本稿ではGPUおよびカード紹介をライターの米田 聡氏,ベンチマークテスト考察とまとめをライターの宮崎真一氏が担当します。


TU116からTPCを1基無効化,さらに組み合わせるメモリをGDDR5としたGTX 1660


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GTX 1660 GPU。シリコンダイ上の刻印は「TU116-300-A1」だった。GTX 1660 Tiと比べると,TU116に続く3桁数字が100小さい
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GTX 1660 Tiのレビュー記事から再掲となる,SMを構成するブロック2つのクローズアップ。ブロックあたり,INT32(左)とFP32(中央)は16基ずつながら,FP16(右)は32基ある
 GTX 1660が採用するGPUコアはGTX 1660 Tiと同じ「TU116」だ。つまり,Turing世代のGPUではあるものの,リアルタイムレイトレーシングアクセラレータ「RT Core」と深層学習アクセラレータとして機能する「Tensor Core」を持たず,後者の代わりに16bit半精度浮動小数点数(FP16)演算器を搭載するGPUということになる。

 軽くおさらいしておくと,TU116では,32bit単精度浮動小数点数(FP32)の演算器と32bit整数(INT32)の演算器からなる「CUDA Core」を16基と,Warpスケジューラ(Warp Scheduler)と命令発行ユニット(Dispatch Unit)1基ずつ,そしてロード/ストアユニット4基,そして16bit半精度浮動小数点数演算器32基をまとめて1つのブロックとして扱う。そのうえで,このブロックを4基束ね,L1キャッシュとテクスチャユニット4基を組み合わせて演算ユニット「Streaming Multiprosessor」(以下,SM)を構成する仕様となっている。

 そしてTU116では,そんなSMを2基まとめてラスタライズ実行単位としてのクラスタ「Texture Processing Cluster」(以下,TPC),TPCを4基まとめてCPUにおけるCPUコア的に機能するクラスタ「Graphics Processor Cluster」(以下,GPC)とし,さらにGPCを3基搭載してフルスペック構成としていた。GTX 1660 TiはTU116のフルスペック仕様なので,SMの総数は24基,総TPC数は12基であり,総CUDA Core数は1536基となる。

 それに対してGTX 1660では,TU116のフルスペックからTPCを1基無効化した仕様だ。なのでSM層数は22基,総CUDA Core数は1408基。GPUの規模としてはGTX 1660 Ti比で約92%ということになる。

GTX 1660のブロック図。あくまで一例だが,こんな感じで3基あるGPCのうち1つでTPCが1基無効になるわけである。TU116というGPUコアの歩留まり向上のため,TPC 1基分の不良を許容していると紹介してもいいだろう
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GTX 1660 GAMING X 6Gが搭載するGDDR5メモリチップ。「MT51J256M32HF-80:B」(8Gbp品,チップ状の刻印は8KB77 D9VVR)で,仕様上のメモリクロックは8GHz相当となる
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 もう1つ重要なポイントとしては,GTX 1660が,Turing世代のGPUとして初めてGDDR5をグラフィックスメモリとして採用する点が挙げられる。GTX 1660 TiではGeForce RTX 20シリーズと同じGDDR6メモリを採用していたが,GTX 1660ではより低コストで低クロックなメモリを採用しているわけだ。
 メモリインタフェースが192bit,メモリ容量が6GBという点でGTX 1660とGTX 1660 Tiの間に違いはないのだが,メモリクロックはGTX 1660が8GHz相当,GTX 1660 Tiが12GHz相当と1.5倍の違いがあるため,メモリバス帯域幅にも192.1GB/s対288.1GB/sという大きな違いが生じている。

CUDA Toolkitに含まれる「DevQueryDrv.exe」を実行した結果。L2キャッシュ容量はGTX 1660 TiやGTX 1060 6GBなどと同じ1.5MBだった。なお,GTX 1660でもグラフィックスメモリ容量3GB版が登場する可能性はあるようだ
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 以上を踏まえ,GTX 1660とGTX 1660 Ti,GTX 1660 Tiの置き換え対象となっている「GeForce GTX 1060 6GB」,そしてNVIDIAがGTX 1660による置き換え対象として位置づける「GeForce GTX 1060 3GB」(以下,GTX 1060 3GB)の主なスペックをまとめたものが表1だ。
 GPUの動作クロックはGTX 1660のほうがGTX 1660 Tiより若干高いが,その差はブーストクロックで15MHz,ベースクロックで30MHzなので,GPUの規模差を埋めることはできないレベルという理解でいい。

※メモリクロック9Gbps相当となった後期モデルでは「GP106-410」(関連記事)。また,末期には上位モデルと同じGP104版も登場した(関連記事
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 なお,そのほかのスペックはGTX 1660とGTX 1660 Tiで同じ。念のためお伝えしておくと,以下に挙げるような「レイトレーシングと深層学習を除く,Turing世代のGPUならではの特徴」をサポートする点でも両GPUの間に違いはない。

  • FP32とINT32のオーバーラップ実行対応
  • L1キャッシュと共有メモリを統合したUnified Cache Architectureの採用とクロック引き上げ実現
  • FP32比で2倍のスループットが得られる16bit半精度浮動小数点演算性能
  • 新世代のピクセルパイプラインレンダリング概念であるVariable Rate Shadingと,それを応用したContent Adaptive ShadingおよびMotion Adaptive Shading

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[2018/09/14 22:00]


ブーストクロックを高めたクロックアップモデルとなるGTX 1660 GAMING X 6G


 ここからは入手したGTX 1660 GAMING X 6Gをチェックしていくことにしよう。

Dragon Center
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 カードの動作クロックは,ベースが未公開で,ブーストは1860MHz。前述のとおりリファレンスだとブーストクロックは1785MHzなので,75MHz高いことになる。
 なお,付属アプリケーション「Dragon Center」(Version 1.0.0.30)で確認すると,この1860MHzというブーストクロックは「Performance」という動作モードのものになっていた。

後述するテスト環境で,MSI製オーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.6.0)から追ったところ,最大クロックは1935MHzに達していた
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 Dragon Centerにはあと2つ「OC」「Silent」という動作モードがあり,OCモードではブーストクロックがPerformanceモードから15MHz,メモリクロックが160MHz相当それぞれ上がる。一方のSilentモードは,ブーストクロックがPerformanceモードから60MHz下がった設定だが,メモリクロックはリファレンスと同じ8GHz相当のままとなっていた。
 どの動作モードでも「Power Target」(電力目標)は100%のままだ。

カード長は250mm弱。少なくともコンパクトとは言えないサイズ感だ
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 そんなGTX 1660 GAMING X 6Gのカード長は実測約247mm(※突起部除く)。NVIDIAはGTX 1660でFounders Editionの設定を行っていないため,「リファレンスと比べてどうか」という話はできないが,エントリーミドルクラス市場向けGPU搭載のカードとしてはやや長めと言っていいように思われる。

 250mm弱というカード長,その最大の要因となっているのは90mm角相当のファンを2基搭載するGPUクーラー「Twin Frozr 7」(ツインフローザー7)だと言ってしまっていいだろう。
 基板長が実測約236mmのところ,カード後方に約11mm,I/Oブラケット部から約22mmそれぞれはみ出た格好のクーラーが,基板全体をすっぽりと覆うようなデザインになっている。

基板のGPU実装面はTwin Frozr 7クーラーが,背面は金属製バックプレートがそれぞれ覆う。バックプレートはEMIシールド兼補強板として機能するそうだ
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 なお,搭載する2基のファンは,最近のMSI製グラフィックスカード上位モデルでよく見られる「Torx Fan 3.0」(トルクスファン3.0)となっていた。一般的なファンブレードと,整流効果をもたらし,エアフローを向上させるためと思しき2つのコブ付きブレードが交互に並ぶ特徴的なデザインだ。
 なお,ファンは工場出荷時設定で,GPUの温度が60℃以下になると回転を停止する「Zero Frozr」機能が有効になっている。

Zero FrozrをDragon Centerから無効にし、ファンを常時回転するよう変更してみた例。なお,スクリーンショットで見える「Cooler Boost」は,クリックするとファンが常時最大回転数で動作する機能となっている。なお,ファンの回転数設定はAfterburnerから変更することになるのだが,バージョン4.6.0では100%に設定しても回転数が変わらないなど,その設定がうまく反映されなかった。このあたりはAfterburnerのアップデート待ちだろう
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 外部出力インタフェースはDisplayPort 1.4×3,HDMI 2.0b×1。PCI Express補助電源コネクタはリファレンスどおりの8ピン×1となる。
 補助電源コネクタは,I/Oブラケット部よりはみ出た基板の上に,マザーボードへ差したときの垂直方向に向かって差さる仕様なので,PCケースのサイズ次第で補助電源ケーブルの取り回しに難儀する可能性があることは押さえておきたい。

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4系統の外部出力インタフェースは横一列に並ぶ仕様
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補助電源コネクタの仕様はリファレンスどおりだ

 GPUクーラーの取り外しはメーカー保証外の行為であり,取り外した時点でメーカー保証は失効する。そのことをお断りしつつ,今回はレビューのため特別にクーラーを取り外してみよう。
 すると,GPUと接触するヒートプレートから6mm径のヒートパイプ3本で放熱フィンへ熱を拡散させるGPUクーラー構造と,基板上で電源部とメモリチップなどを覆う補強板兼ヒートシンクの形状を確認できた。

GPUクーラーを取り外したところ(左)と,さらに補強板兼ヒートシンクおよび背面カバーを外したところ(右)。補強板兼ヒートシンクは必ずしもメモリチップ全体を覆っているわけではなかったりする
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GPUのヒートプレートから3本のヒートパイプが直上の放熱フィンへと熱を伝えるという,このクラスの製品ではよく見かける構造をTwin Frozr 7は採用している。補強板兼ヒートシンクへのエアフローを十分確保してあるように見えるのは評価できるところだ
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 というわけで基板だが,見る限り,電源部は4+2+2フェーズという理解でよさそうだ。メモリチップ用の空きパターンは2個空いているものの,これはグラフィックスメモリ容量8GB版のGTX 1660が検討されているから……というよりも,グラフィックスメモリ8GB仕様のGPUを搭載するカードと基板設計を共用しているからと考えるほうが妥当と思われる。

基板単体のGPU実装面(左)とその背面側(右)
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 GPUコア用の電源部を構成していると思われる4フェーズ分のインダクタにはシールが貼ってあって正体不明だが,その右側2個のやや小ぶりのインダクタにはMSIが継続的に採用している高品質チョークコイル「SFC」のロゴが刻んである。同じものではないにせよ,似たようなチョークコイルを採用しているはずだ。

4+2+2フェーズと見られる電源部。メインの4フェーズで採用しているフェーズコントローラICはPower MOSFETを集積したON Semiconductor製の「NCP302045」だった。写真で右隣に見える2フェーズ分のICはON Semiconductor製なのだが,型番が分からない(※「NCP5360R」かもしれないが,読み取れなかった)。写真で右下に見える小さな2フェーズのICは中国Green Solution Technology製のドライバ「GS9216」だ
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最大8フェーズに対応できるOn Seniconductor製のフェーズコントローラ「NCP81610」が電源部の基板背面側にあった
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GPU背面側のパスコン。MSIが継続的に採用している高耐久タンタルコンデンサ「Hi-c CAP」と思われるチップが4つ載っていた


GTX 1660 TiおよびGTX 1060の2モデルと比較。GTX 1660はリファレンスクロックでもテスト


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 テスト環境の構築に話を移そう。
 今回,比較対象としては,先に表1でその名を挙げたGTX 1660 TiとGTX 1060 6GB,GTX 1060 3GBを用意した。直接の上位モデルとの性能差を確認しつつ,置き換え対象のGTX 1060 3GBを含むGeForce GTX 10シリーズのミドルクラス市場向けGPUと比較してみようというわけである。

 前述のとおり,今回用意できたGTX 1660 GAMING X 6Gはクロックアップモデルとなるため,今回は,カードの工場出荷時設定に加え,MSIのオーバークロックツール「Afterburner」(Version 4.6.0)を用いてリファレンス相当にまでブーストクロックを下げた状態でのテストも実施する。また,比較対象として用意したカードのうちGTX 1660 Ti搭載の「ROG-STRIX-GTX1660TI-O6G-GAMING」も同様にクロックアップモデルとなるため,こちらはAfterburnerからブーストクロックをリファレンス相当にまで下げた状態のみでテストを行うことにした。
 いずれも立派なクーラーを搭載しているため,「リファレンス相当のクロック設定におけるベストケース」に近いスコアになるはずだが,Founders Editionが存在しないため,そこはやむを得ないものとして話を進めたい。

 テストに用いたグラフィックスドライバはNVIDIAから全世界のGTX 1660レビュワーに対して配布された「GeForce 419.35 Driver」だ。同じリリース番号のドライバが北米時間2019年3月5日にリリース済みなので,今回のドライバはそのGTX 1660対応版という理解でいいだろう。
 そのほかテスト環境は表2のとおりとなる。

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 テストにあたって,Windowsの「電源プラン」は,とくに断りのない限り,最高性能が発揮できるよう「高パフォーマンス」で統一している。
 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション22.1準拠。テスト解像度は3840×2160ドットと2560×1440ドット,1920×1080ドットの3つとするが,NVIDIAはGTX 1660のターゲット解像度を1920×1080ドットとしているため,アスペクト比16:9でその上にあたる2つの解像度では「ゲームをプレイできるか」ではなく,上位モデルおよび従来製品との力関係を確認していくことになる。


3DMarkではGTX 1660 Ti比で8割強のスコアを示すGTX 1660だが,一部の挙動に謎も


 以下,文中,グラフ中とも,GTX 1660 GAMING X 6Gのブーストクロックをリファレンス相当にまで落とした状態を「GTX 1660」,GTX 1660 GAMING X 6Gの工場出荷時設定を本文中は製品名,グラフ中は「MSI 1660」とそれぞれ表記することをお断りしつつ,「3DMark」(Version 2.8.6528)の結果から順に見ていこう。

 グラフ1はDirectX 11世代のテスト「Fire Strike」における総合スコアをまとめたものとなる。GTX 1660はGTX 1660 Ti比で84〜85%程度のスコアに留まる一方,置き換え対象となるGTX 1060 3GBに対しては1920×1080ドット条件で約14%高いスコアを示した。
 ただ,解像度が高くなるにつれてGTX 1060 3GBとのスコア差はどんどん縮まっていく。GTX 1660とGTX 1060 3GBだとメモリバス帯域幅は同じで,容量に2倍の違いがあるのにこういう結果となっている以上,単純にこのクラスのGPUだと4K解像度と相対するには力不足ということのように見える。

 一方,その理屈だと3840×2160ドット条件におけるGTX 1660とGTX 1060 6GBのスコアも似たものとなるはずなのだが,どういうわけかGTX 1660のほうがスコアは低かった。スペックだけならGTX 1660のほうが若干高いスコアを示してもいいと思うのだが,この理由はこれだけだとよく分からない。
 GTX 1660 Tiでそこまで不自然に見えるスコアが出ていない以上,考えられるのは,ドライバの最適化が足りていない,初採用となるGDDR5メモリコントローラの効率がよろしくないといったあたりだが,この点については後段であらためて考えたいと思う。

 なお,GTX 1660 GAMING X 6GはGTX 1660より1〜2%程度高いスコアだった。多少なりともクロックアップの効果は出ていることになる。

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 続いてグラフ2は,そのFire StrikeからGPUテストのスコア「Graphics score」を抜き出したものだ。全体的なスコア傾向は総合スコアを踏襲しており,1920×1080ドット解像度での実行となるFire Strike“無印”でGTX 1660はGTX 1660 Tiの約86%,GTX 1060 6GBの約108%,GTX 1060 3GBの約116%という結果になっている。
 GTX 1660 GAMING X 6GのスコアがGTX 1660比で最大約2%増しというのも総合スコアと変わらない。

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 同じくFire Strikeから,ソフトウェア処理で物理シミュレーションを行う,事実上のCPUテストにおけるスコアを抜き出したものがグラフ3だ。今回のテストではCPUを揃えているため,スコアはキレイな横並びとなった。

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 GPUとCPUの両方へ同時に大きな負荷をかける「Combined test」の結果を抜き出したものがグラフ4となる。
 ここでGTX 1660のスコアはGTX 1660 Ti比で75〜85%程度と,総合スコアよりも開く傾向が見られた。一方,GTX 1060 6GBに対しては105〜107%程度,GTX 1060 3GBに対しては113〜114%程度と,安定して高いスコアを示している点に注目したい。全体として,GPUのポテンシャルに応じたスコア差が顕著に出ている印象を受ける。

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 DirectX 12ベースのテストとなる「Time Spy」の総合スコアをまとめたものがグラフ5である。
 ここでGTX 1660はGTX 1660 Tiの84〜85%程度,GTX 1060 6GBの93〜103%程度,GTX 1060 3GBの102〜110%というスコアだ。Fire Strikeの総合スコアおよびGraphics scoreと同様に,ここでもより負荷の高いTime Spy ExtremeでGTX 1660はスコアを大きく落とす傾向が見られる。
 GTX 1660 GAMING X 6GのスコアはGTX 1660の約102%なので,この点もFire Strikeとよく似ていると言えるだろう。

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 グラフ6はそんなTime SpyからGPUテストの結果を抜き出したものになるが,ここでGTX 1660のスコアは良好だ。GTX 1660 Tiに対して85〜86%程度というのは総合スコアを踏襲する一方で,対GTX 1060 6GBでは128〜129%程度,対GTX 1060 3GBでは138〜140%程度と,これまでにない圧倒ぶりを見せつけているのである。
 総合スコアとの乖離が甚だしいが,ともあれ,DirectX 12世代のアプリケーションを前にすると,GTX 1660はより最適化の進んだTuring世代のGPUを搭載するだけのものを示すとも言えそうだ。

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 Time SpyのCPUテスト結果を抜き出したものがグラフ7で,Fire StrikeのPhysics scoreと同じく,今回のテストではCPUを揃えているため,スコアも横並びとなった。

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ゲームでは「おおむね安定してGTX 1060シリーズより速い」と言えるGTX 1660


 実際のゲームアプリケーションを用いたテストだと,どういう傾向が見えるだろうか。
 まずグラフ8〜10は「Far Cry 5」のテスト結果である。ここでGTX 1660は,平均フレームレートでGTX 1660 Tiの82〜85%程度,GTX 1060 6GBの113〜117%程度,GTX 1060 3GBの128〜165%と,良好なスコアを示した。3DMarkで言えばTime SpyのGraphics scoreに近い結果といったところだ。
 とくにNVIDIAがターゲット解像度だとしている1920×1080ドットでGeForce GTX 10シリーズのミドルクラスGPUに有意なスコア差を示しているのは目を惹くところだが,これは,Far Cry 5がFP16を活用しており,最新世代のGPUで優位性を発揮しやすくなっていることと無関係ではないだろう。

 GTX 1660 GAMING X 6Gの平均フレームレートはGTX 1660比で104〜105%程度と,クロックアップの効果は3DMarkよりも大きくなった。

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 続いて「Overwatch」の結果がグラフ11〜13となる。ここでGTX 1660は,平均フレームレートでGTX 1660 Tiの85〜86%程度,GTX 1060 6GBの109〜110%程度,GTX 1060 3GBの118〜119%程度というスコアになった。Far Cry 5のテスト結果と比べるとGeForce GTX 10シリーズのミドルクラスGPUに対する優位性は縮まっているが,「Far Cry 5のテストほどには最新世代のGPUへは最適化されていない,また相対的に描画負荷の低いタイトルでも,従来世代の製品に対してこれくらい高いスコアを見込める」ということかもしれない。
 このあたりは続くテスト結果を見て行けば傾向が掴めるだろう。

 なお,1920×1080ドット解像度のスコアを見る限り,今回用意したGPUであれば,どれも垂直リフレッシュレート144Hz対応のディスプレイと組み合わせて快適にプレイできることを期待できるレベルにある。
 GTX 1660 GAMING X 6GのスコアはGTX 1660とほとんど変わらなかった。

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 グラフ14〜16は「PLAYERUNKNOWN'S BATTLEGROUNDS」(以下,PUBG)のテスト結果だ。
 ここでGTX 1660の平均フレームレートはGTX 1660 Tiの87〜89%程度,GTX 1060 6GBの115〜117%程度,GTX 1060 3GBの127〜133%程度。GeForce GTX 10シリーズのミドルクラスGPUとの間にあるギャップの規模はFar Cry 5とOverwatchの中間的なところに落ち着いた。OverwatchよりもPUBGのほうが描画負荷は大きいので,GPU規模で勝るGTX 1660の優位性がより出た,といったところか。

 1920×1080ドットのフレームレートは最小110fps台なので十分だと言えるが,「高」プリセットを軸にもう少し下げると,建物の多い場所でも安定して100fps超えを狙えそうだ。

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 「より高解像度のテスト条件でスコアが伸びきらない」という,3DMarkの総合スコアと似たスコア傾向になったのが「Fortnite」である。
 グラフ17〜19を見ると分かるように,GTX 1660の平均フレームレートは,1920×1080ドットだとGTX 1660 Tiの約91%,GTX 1060 6GBの約122%,GTX 1060 3GBの約134%と,良好なスコアを示すのだが,これが3840×2160ドットだと順に約81%,約84%,約100%と,明らかに“一人負け”な感じになってしまう。

 気になる実フレームレートは1920×1080ドットで平均90fps台。グラフィックス設定のプリセット「エピック」だと,ちょっと足りないかもしれない。垂直リフレッシュレート144Hz対応,もしくはそれ以上のスペックを持つの液晶ディスプレイと組み合わせて使っていくには,プリセットを見直す必要がありそうだ。

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 これまでとは少し異なるスコア傾向になったのが,グラフ20〜22の「Middle-earth: Shadow of War」(以下,Shadow of War)である。
 GTX 1660とGTX 1660 Tiのスコア差はここまでとそう変わらない一方,GTX 1660とGeForce GTX 10シリーズのミドルクラスGPUとの間では,描画負荷が高くなるほどスコア差が開いた。

 Shadow of Warでは高解像度テクスチャパックを導入しているため,グラフィックスメモリに対する負荷が大きい。それゆえにGTX 1060 3GBとのスコア差が開くというのは分かるのだが,同様の傾向が,メモリ周りのスペックが同じ対GTX 1060 6GBとの間でも生じるのは解せない。とくに,1920×1080ドットで平均フレームレートがGTX 1060 6GBの約92%に留まるのは本当に謎だ。ただ,これだけでは何とも言えないというのも正直なところである。

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 グラフ23は「ファイナルファンタジーXIV: 紅蓮のリベレーター ベンチマーク」(以下,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ)の総合スコアをまとめたものだが,ここでGTX 1660はGTX 1660 Tiの80〜85%程度,GTX 1060 6GBの約105%,GTX 1060 3GBの112〜113%程度というスコアを示した。ざっくり言えば,Overwatchと近いスコア傾向だ。
 ただ,GTX 1660 GAMING X 6GのスコアはGTX 1660より4〜6%程度高く,この点ではFar Cry 5と似た傾向とも言える。

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 そんなFFXIV紅蓮のリベレーター ベンチにおける平均フレームレートと最小フレームレートをまとめたものがグラフ24〜26だ。
 平均フレームレートは総合スコアを踏襲する形となっているが,ここで注目したいのは最小フレームレートである。というのもGTX 1660は,GTX 1060 6GBに対して8〜23%,GTX 1060 3GBに対して18〜33%程度高く,平均フレームを大きく上回るスコア差を示しているからだ。FFXIV紅蓮のリベレーターでは,総合スコアの開き以上にGTX 1660のほうが快適だと見るべきだろう。

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 グラフ27〜29は「Project CARS 2」の結果だが,平均フレームレートを見ると,GTX 1660はGTX 1660 Ti比83〜86%程度,GTX 1060 6GB比104〜106%程度,GTX 1060 3GB比111〜151%程度というスコアになった。GTX 1060 3GBは解像度3840×2160ドット条件で明らかにメモリ容量不足となっているが,それを除けば全体的なスコア傾向はOverwatchに近い。
 解像度1920×1080ドット条件でGTX 1660 GAMING X 6GがGTX 1660より約5%高い平均および最小フレームレートを示す点も押さえておきたいところだ。

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 以上,3Dベンチマークを一通り終えたところで,「なぜGTX 1660は一部のテストにおいて高解像度条件におけるスコアが振るわないのか」をざっと確認してみたい。今回は「Sandra 2018 SP4」(Version 2018.12.28.49)から,GPUでCUDAを使って演算処理を行い,そのときのグラフィックスメモリアクセス遅延を計測する「General-Purpose(GPGPU) Memory Latency」(以下,GP(GPGPU)Memory Latency)を実行してみることにした。
 このテストは必ずしもゲーム用途と同じメモリアクセスを行うわけではないが,それでもグラフ30,そしてそのスコア詳細をまとめた表3を見ると,GTX 1660は,L2キャッシュの容量を超える2MB以上で,GTX 1060シリーズと比べてアクセス遅延が大きいのが分かる。

 この結果から,「GTX 1660のGDDR5メモリコントローラはPascal世代のそれと同じものではなく,グラフィックスメモリを多用する局面で遅延がフレームレートを左右する可能性が高そうだ」くらいは言えそうだ。

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GTX 1660 Ti比で消費電力は25W以上低減。TuringなのにPascalより消費電力が低い


 GTX 1660のTDP(Thermal Design Power,熱設計消費電力)は上位モデルであるGTX 1660 Tiだけでなく,今回比較対象として用意しているGTX 1060シリーズと同じ120Wになっており,PCI Express補助電源コネクタの仕様は8ピン×1でGTX 1660 Tiと変わっていない。では,実際の消費電力はどうなっているだろうか。
 「4Gamer GPU Power Checker」(Version 1.1)を用いて,FFXIV紅蓮のリベレーター ベンチ実行時におけるカード単体の消費電力推移を見てみることにしよう。

 結果はグラフ31のとおり。グラフ画像をクリックすると横に引き延ばしたものを表示するようにしてあるので,ぜひそちらも合わせてチェックしてもらえればと思うが,GTX 1660の消費電力は100W弱を中心として変動しているように見受けられる。
 150W超の回数を数えてみると,GTX 1660が48回だったのに対してGTX 1660 TiとGTX 1060 6GBは63回なので,GTX 1660のほうが消費電力は低いと言ってよさそうだ。ただ,GTX 1060 3GBは35回で,それと比べるとGTX 1660は高めに見える。

※グラフ画像をクリックすると拡大版を表示します
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 そこで,グラフ31における中央値を算出し,グラフ32にまとめてみることにしたが,ここでGTX 1660はGTX 1660 Ti比で約26W低かった。今回のテストに用いたGTX 1660とGTX 1660 Tiはいずれもグラフィックスカードメーカーオリジナル設計のカードなので,「カード設計の違い」がスコアに影響している可能性がある点には注意が必要だが,それでも「GTX 1660の消費電力はGTX 1660 Tiより確実に低い」とは言ってしまってよさそうだ。
 また,中央値で比較すると,GTX 1660がGTX 1060 6GBやGTX 1060 3GBをも下回る消費電力というのも注目に値する。

 GTX 1660 GAMING X 6Gの中央値はGTX 1660と大差なかった。

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 念のため,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いてシステム全体の最大消費電力も計測しておこう。
 テストにあたっては,Windowsの電源プランを「バランス」に切り換え,さらに,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイ出力が無効化されないよう指定。そのうえで,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点をタイトルごとの実行時,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」とする。

 その結果がグラフ33だ。
 ここで各アプリケーション実行時におけるGTX 1660とGTX 1660 Tiとの差は26〜69W程度。ピーク値をスコアとして採用している都合上,4Gamer GPU Power Checkerよりもスコア差は広がる傾向となった。
 一点気になるのは,GTX 1060 6GBと比べれば「中央値だけでなく,ピークで比較してもGTX 1660のほうが消費電力は低い」と言えるのに対し,GTX 1060 3GBとの比較ではそうも言えなくなっているところだ。ここからは,GTX 1660とGTX 1060 3GBでは前者のほうが消費電力のピークが上がりやすい傾向を読み取ることができるだろう。

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 最後にGPUの温度もチェックしておきたい。ここでは,温度を約24℃に保った室内に,テストシステムをPCケースに組み込まない,いわゆるバラックで置いた状態から,3DMarkの30分間連続実行時を「高負荷時」として,アイドル時ともども,「GPU-Z」(Version 2.17.0)から温度を取得することにしている。

 GPUごとに温度センサーの位置や温度の制御法,それにGPUクーラーも異なるため,横並びの比較にあまり意味はない。それを踏まえてグラフ34を見ると,GTX 1660は高負荷時の温度が60℃台と,大型クーラーを搭載するだけのことはあるスコアを示している。GTX 1660 GAMING X 6Gでもあまり変わらない,良好な数字だ。
 なお,アイドル時の温度がやや高めなのは,本稿の序盤で触れたとおり,Zero Frozr機能が有効になり,ファンの回転が停止するためである。

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 筆者の主観であることを断ったうえで,GeForce GTX 1660 GAMING X 6Gの動作音について簡単に言及しておくと,静音性がかなり高い印象を受けた。少なくともGTX 1060 6GBのFounders Editionより動作音が小さいことは間違いない。


実勢価格で税込3万円を切れば人気に火が付く? ミドルクラス市場向けGPUとしてバランスはよいGTX 1660


GTX 1660 GAMING X 6Gの製品ボックス
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 以上,GTX 1660の3D性能はGTX 1660 Tiの8割強で,少なくとも1920×1080ドット解像度でゲームをプレイする限り,多くのゲームタイトルでGTX 1060 6GBより5〜20%程度,GTX 1060 3GBより10〜30%程度高いフレームレートを期待できる。
 極端な高解像度環境においてGDDR5メモリコントローラの遅延が影響したと見られる挙動が生じ,スコアを落としたものの,NVIDIAがターゲット解像度だとする1920×1080ドットに留まる限り,メモリ周りの問題を危惧する必要もまずないだろう。

 さらに,消費電力がPascal世代より下がっている点は評価したい。「Pascal世代より微細化が進んでいる一方,消費電力は相応に上がっている」というのがTuring世代のGPUに対する世間の評価だったのではないかと思うが,GDDR6ではなくGDDR5メモリを組み合わせた効果かどうか,GTX 1660の消費電力は置き換え対象となるPascal世代のグラフィックスカードよりも低い。この点は,ミドルクラス市場向けGPUとして賞賛すべきポイントだ。

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 北米市場における搭載グラフィックスカードのメーカー想定売価は,冒頭でもお伝えしたとおり219ドル(税別)から。同279ドルのGTX 1660 Tiカードが日本では3万5000〜4万円(税込3万7800〜4万3200円)程度で販売が始まったのに対し,それより60ドル安価なはずのGTX 1660カードは,極端な高付加価値モデルを除くと2万7800〜3万3800円(税込3万24〜3万6698円)程度で販売が始まる見込みとなっており(関連記事),少なくとも“初値”に関して言えば,GTX 1660 Tiと比べて買い得感はやや下がることになる。

 市場を見渡してみると,極端な高付加価値モデルを除き,GTX 1060 6GBカードは税込2万4500〜3万円程度,GTX 1060 3GBカードは2万2500〜2万6000円程度(※いずれも2019年3月14日現在)で購入可能だ。
 なので,まずは税込3万円切りを果たし,最終的に置き換え対象となるGTX 1060シリーズの中心価格帯まで落ちてくるようになると,GTX 1660の存在感はかなり大きくなってくるのではなかろうか。

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 ただし,GTX 1660 Tiのレビュー記事でも言及したように,Turing世代のGPUでありながら,リアルタイムレイトレーシングにもDLSSにも対応していないので,今後,これらが主流となったときに利用できない。その点に覚悟は必要なのは,このGTX 1660も同様だ。

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[2019/03/14 22:01]
  • 関連タイトル:

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  • 関連タイトル:

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