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印刷2019/07/04 12:00

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カードパワーの“比較”がカギ。一線級プロゲーマーの思考と技術が語られた「Tredsredのハースストーン必勝塾」をレポート

 4Gamer.netを運営するAetasは,Blizzard Entertainmentが展開するオンライン対戦カードゲーム「ハースストーン」PC / iOS / Android)のワークショップ「Tredsredのハースストーン必勝塾」関連記事)を,2019年6月29日に開催した。

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 講師を務めるのは,ハースストーンのプロゲーマーとして活躍し,6月14日〜16日にラスベガスで開催されたマスターズツアーでも好成績を収めたTredsred選手。本稿では,Tredsred選手が提唱する“比較理論”の詳細が語られた講義の様子と,その内容の一端をお伝えする。

 ちなみに,4GamerではTredsred選手によるハースストーンのコーチング企画記事も掲載している。ゲームプレイやデッキ調整における基本的な考え方などが語られているので,興味がある人はそちらも要チェックだ。

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[2018/12/29 00:20]

「ハースストーン」公式サイト



カードの強さをマナ基準で定量化する「比較理論」と,その活用方法


 まず初めに,Tredsred選手は講義の前提として,競技シーンで活躍できるレベルまで到達するために必要なのは「ハースストーンというゲームに対する本質的な理解」であり,最終目標は「すべての行動の理由を説明できるようになること」だと語った。

講師を務めたプロゲーマーのTredsred選手
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 それを実現するため,Tredsred選手が本講義でメインテーマとして掲げたのが,先述した「比較理論」である。“理論”というと何やらおカタい印象を受けるかもしれないが,要するに「カード同士の強さを正しく比較できれば,確実に強いカードを選ぶことができるよ」という話だ。

 デッキ構築以外の面でも「発見」というメカニクスが存在するハースストーンにおいては,複数の選択肢からカードを“選ぶ”シーンが非常に多い。そこで適切な判断を行うためには,正しい比較方法を覚えておく必要があるのだ。

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 Tredsred選手が最初に提示した例は「ブロンズ・ゲートキーパー」と「シルバーバックの長」。この場合,同じマナコストでありながらステータスとキーワード能力に優れる前者が“強いカード”であることは,ほぼ自明と言って良いだろう。

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 しかし,クラス制限やマナコストが異なるカード群を比べるのは容易ではない。また,カードパワーが近いカードほど比較が難しくなっていく。ゲームプレイの中で,悩ましい3択にぶち当たり,結局選んだカードを活かせないままゲームセットを迎えてしまった,という経験を持つプレイヤーも少なくないはずだ。

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 Tredsred選手いわく,上級者ほど複数の評価軸を持ち,比較計算を素早く実行できるという。ここでは,Tredsred選手が用いているカードパワーの比較方法である「マナ換算」の方法が解説された。

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講義ではハースストーン関連のデータを収集している外部サイトの活用についても触れられた。とくに特定カードを引いたときの勝敗を表示する「ドロー勝率」は重要で,カード個別の性能を測るには重要な指標になるという。ただし,コントロールデッキなどで用いられる長期戦に強いカードは使用率が低くなる傾向にあり,ドロー勝率は実際の強さより低めに表示されがちなので注意しよう
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◯カードパワー比較
 「マナ換算」とはその名の通り,カードの効果やテキストをすべてひっくるめてマナコストに換算する考え方である。これによって,あらゆるカードの効果を同じ尺度で評価できるというわけだ。

 このとき注意が必要なのは,カードの消費量である。2マナで3ダメージ+凍結を与える「フロストボルト」と,4マナで6ダメージを与える「ファイアーボール」は,マナコストと結果だけを見ればフロストボルトの方が優秀に見えるが,「フロストボルト」で6ダメージを与えるためにはカードが2枚分必要となるため,それも勘定に入れねばならない。

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 この考え方は,もちろんドロー効果にも適用可能だ。メイジの代表的なドロースペルである「魔力なる知性」は3マナを支払って2枚ドローしているが,そのときに「魔力なる知性」を手札から使用しているため,手札枚数は差し引き+1枚となる。

 こうした要素を踏まえたうえで,ダメージ1点あたり/手札1枚あたりのマナコストを設定すれば,ここで扱った「ダメージ」と「ドロー」といった異なる効果を持つスペルの効果を同じ視点から比較することができる――というのが,マナ換算によるカードパワーの比較方法である。

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 この比較は,ミニオンにおいても自然に当てはめることができる。ミニオンの話題に触れるにあたり,Tredsred選手が最初に語ったのは「ミニオンはスペルより強い」という前提だ。

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 ボードに出たミニオンは毎ターンダメージを供給できるが,スペルが効果を発揮するのは基本的に1回限り。それを踏まえて,Tredsred選手は「生き残っている間だけダメージを提供できるミニオンは,ある意味で無限の攻撃力を持っている」と話す。

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 そしてハースストーンは,相手ヒーローの体力を削り切ることを目的としたゲームだ。まずは強力なミニオンをベースとしてデッキを構築し,それを補助する形でスペルを投入するのが基本的な考え方だという。

 無限の攻撃力とは言ったものの,当然ながらミニオンは相手も出してくる。このとき,ひとつのミニオンで複数のトレードを行える,もしくは自身より高いマナコストを持つミニオンとトレードできるミニオンが「強いミニオン」だと考えられるわけだ。

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 もちろん,これらの基準はあくまでカードが持つカードパワーを定量化したものであり,常に強さが正しく機能するわけではない。かつて構築入りは難しいと考えられていた「ライトウォーデン」が回復Zooで採用されたように,カードプールや環境との噛合いによってはカードの使用率は変わってくる。

 しかし,Tredsred選手はカード単体の強さと使用率は別として考えるべきだという。カードの強さはマナ換算によって算出可能なため,先んじて「弱いけど噛み合って使われているカード」や「強いけど今は使われていないカード」など,カード別に大まかな評価付を済ませておくことで,環境が変動したときに抜くカード/採用するカードを素早く取捨選択できるのだそうだ。

 その実例として,Tredsred選手はパラディンのスペル「怒りの鉄槌」を取り上げた。3ダメージとドローを同時に行う「怒りの鉄槌」は非常に高いコストパフォーマンスを秘めたカードだが,パラディンの4マナ帯は伝統的に「聖別」や「トゥルーシルバー・チャンピオン」といった鉄板カードが多く,目を向けられることは少なかった。

 そこで,事前に「怒りの鉄槌」が“強いカード”であることを知っていれば,環境が移り変わったときに噛み合いを素早く試すことができる。Tredsred選手が「聖なる怒りパラディン」を素早く完成させられたのは,そうした経緯があってのことだという。

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 新環境の初期にデッキを構築して活躍したいプレイヤーにとっては,こうした思考が大いに役立つことだろう。新拡張「突撃!探検同盟」で素早く強力なデッキを見つけたい人は,発表されたカードのカードパワーを計算してみるのも面白いかもしれない。

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◯フェイス or トレード
 ミニオンの話題が出るにあたり,ゲーム中(対戦中)におけるミニオンの「フェイス or トレード」の問題についても触れられた。

 ボード上に相手のミニオンが存在するが挑発ミニオンが存在しない場合,トレードを行うかフェイスを攻撃するかはよく議論の的となる。一般的にはトレードが安定の選択肢と言われているが,Tredsred選手は「フェイスは一方的にダメージを産む“得な行動”であり,トレードは“引き分け”である」という考え方を提示した。


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 トレードに軸足を置いて「フェイスを攻撃する理由」を見つけるのではなく,リスクが最小化したタイミングを見逃さないために「トレードをする理由」を見つけてからトレードをする,というのがTredsred選手の考え方だ。
 全体的なカードパワーの高いデッキを使用してトレードを繰り返していれば一定の勝率は出せるが,より高みを目指すためにはリスクの見極めを行ったうえでのフェイスへの攻撃が必要になるとTredsred選手は語る。レジェンド上位を目指すプレイヤーは,これを意識してゲームを回してみると何か違いが見えてくるだろう。

トレードの“理由”については,経験の中で学んでいくことになる。ハースストーンを古くから遊んでいるプレイヤーであれば,相手の場にミニオンを残した状態でターンを渡し,メイジの「フレイムストライク」で一掃されたり,パラディンの「剣竜騎乗」でバフされたミニオンにボードの支配権を奪われた経験があるはず
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◯質問コーナー
 講義の最後には,受講者たちからの質問コーナーも設けられることに。Tredsred選手は受講者から事前に受け取った質問に対して事前に回答を用意しており,すべての質問にしっかりと理由を付けて返答していた。


 中でも印象的だったのは「何ターン先まで考えているか」という質問に対する答えだ。Tredsred選手によると,具体的な想像は次のターンまでしか行わず,2ターン以上先の想定はほぼしていないという。重要なのは1ターン後にミニオンを生き残らせることであり,それ以降は変動した状況に合わせて考えるのが効率的とのこと。

 同時に,ゲームの終わらせ方は序盤から想像しておくのが重要だという。つまり,相手のデッキや自分の手札状況を確認したうえで,相手の体力を削りきって勝つのか,ファティーグまで持ち込んで勝つのか……。そういった“目標とする終わらせ方”を正しく設定することで,短気目標に向けて行動を決めやすいという考え方だ。

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 こうした回答ひとつをとっても,あらゆる行動に論理的な回答を用意するTredsred選手の姿勢が感じ取れる。試合ごとに課題を発見し,個々の選択の“理由”を洗練させ続けることが,上達への近道ということなのだろう。

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講義の前半には,導入としてTredsred選手が出場したマスターズツアーの様子についても語られた。スペシャリスト形式の大会では1種類のヒーローしか扱えないため,プレイングによる技術介入や,カードの差し替えによる対策の幅が広いサイクロンメイジを持ち込む形になったという
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 以上,ミッチリと2時間の講義を経て,今回のワークショップは終了となった。競技的なプレイにフォーカスした実用的・論理的な内容だったが,来場者同士で笑いが巻き起こる場面も多く,真剣ながらも楽しげな雰囲気を感じ取ることができた。

 何より面白かったのは,講義の内容が普遍的な“勝つための論理的思考”を養うものであり,扱われた理論を応用すればハースストーンをはじめとするデジタル・アナログを含むカードゲームすべてで通用するという点だ。ハースストーンに限らず,カードゲームの世界でより上を目指したいプレイヤーは,ぜひこれらの内容を実践してみてほしい。

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