そんな地球外への冒険を自分でも体験してみたい,という人に刺さりそうなゲームが,「Reentry - A Space Flight Simulator」(PC。以下,Reentry)。宇宙船の操縦をリアルに再現した宇宙航行シミュレータで,過去にNASA(アメリカ航空宇宙局)が進めた有人宇宙飛行計画である「マーキュリー計画」(1958〜1963年),「ジェミニ計画」(1961〜1966年),「アポロ計画」(1961〜1975年)を体験できるものとなっている。
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フィンランドのスタジオLyra Creativeによって2015年に開発が始まった本作は,2018年にアーリーアクセスを開始し,2025年に正式リリースとなった。
シミュレータとゲームの中間点を満たすことを目指しているとのことで,一部簡略化されている部分もあるようだが,スクリーンショットをご覧いただければ分かる通り,コックピットのスイッチや計器類はかなり細かく再現されている。
たとえそれがどんな機能を持つのかさっぱり分からなくても,無数のスイッチやボタン,計器がぎっしりと規則的に並んだコントロールパネルには,夢とロマンが詰まっている。宇宙船の操縦席は,その最たるものといえるだろう。
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Steamレビューが「圧倒的に好評」な本作だが,残念ながら現時点では日本語表示に対応していない。また,自動車やバイク,さらには飛行機とも違う乗り物のため,宇宙系の知識をある程度持っている人でも,ハードルは高くなりそうだ。
たとえばトム・ハンクスさんらが出演した映画「アポロ13」のように,緊急で「電力節約のため,コックピット内の照明を消さないと生存が難しくなる」という状況になったとして,どこを操作したらいいのか瞬時に分かる人はどのくらいいるだろうか?
そんなさまざまなトラブルも想定しながら1つずつ操作を覚え,実行していくのが本作の面白さだとは思うが,「実際プレイしたらどんな感じか」というイメージをつかんでもらうため,このジャンルの超初心者である筆者が,本作の基本を学べる「Academy」モードの「Project Apollo Lessons」を体験してみた。
機械翻訳の力を借りつつのプレイとなったので,時々変な日本語訳があるかもしれないが,ゲーム内の英語の説明などを基にアポロ宇宙船(司令船)の操作系(スイッチやボタン類)のいくつかを紹介してみたいと思う。
今日は構えず,照明スイッチの場所だけでも覚えて帰ってください。
マーキュリー計画の概要と宇宙船(カプセル)のコントロールパネル
アポロ計画と宇宙船の紹介に進む前に,その土台をつくったマーキュリー計画とジェミニ計画に軽く触れておこう。アポロに至るまで,操作系がどのように進化し,設計思想が変化していったのか,その端緒を見ることができるだろう。
Reentryの公式サイトには,NASAのものとされるドキュメントがアップされているので,各宇宙船の実際のコントロールパネルの図面の一部もそこから抜粋しておく。ゲーム画面と図面を見比べると,コントロールパネルが実物とほぼ同じデザインのまま,Reentry内で再現されていることが分かるはずだ。
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マーキュリー計画は,1958年から1963年にかけて,NASAが主体となって進めたアメリカ初の有人宇宙飛行計画で,無人ロケット20回,有人ロケット6回の打ち上げが行われた。1961年に宇宙飛行士のアラン・シェパード氏が宇宙空間の弾道飛行に成功したが,それは旧ソ連のユーリ・ガガーリン氏による世界初の有人宇宙飛行(ボストーク1号)から約3週間後のことだった。
打ち上げロケット(LV:Launch Vehicle)には,リトル・ジョー(試験用ロケット)や弾道ミサイルをベースに開発されたレッドストーンとアトラスが採用されており,ReentryのMissionモードでも後者2つの名前を確認できる。
カプセルは1人乗りで,宇宙飛行士1人がやっと入れるような,電話ボックスほどの空間だったという。基本機能を効率よく確認・操作できるようにするためか,コントロールパネルは宇宙飛行士を囲むようなU字型に配置されている。
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ジェミニ計画の概要と宇宙船(カプセル)のコントロールパネル
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ジェミニ計画は,1961年から1966年の間にNASAによって実施された,マーキュリー計画に続く2つ目の有人宇宙飛行計画で,無人飛行2回を含む全12回の打ち上げが行われた。主な目的は,地球周回軌道における長期間滞在,宇宙船同士のランデブー(接近飛行)とドッキング(連結),船外活動といった,人間を月面へ送り込むために必要な技術の確立だった。打ち上げロケットにはタイタンII GLVが採用されている。
カプセル内は左シートに船長,右シートにパイロットという2人乗り。左右と中央のパネルに加えて,上部にはオーバーヘッドスイッチ群とサーキットブレーカー群のパネルが配置されている。有人の宇宙船として革新的だったのは,軌道を変えられる操縦機能を備え,コンピュータや燃料電池が搭載されたことだった。
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アポロ計画の概要と宇宙船(司令船)のコントロールパネル
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アポロ計画は,1961年から1975年にかけてNASAによって実施された,月面着陸と地球への安全な帰還を目的とした有人宇宙飛行計画。11回の有人飛行が行われ,1969年に宇宙飛行士のニール・アームストロング氏とバズ・オルドリン氏によって,人類初の月面着陸という偉業が成し遂げられた。
打ち上げロケットにサターンVが採用されたアポロ宇宙船は,「司令船」「機械船」「月着陸船」という3つのモジュールで構成され,唯一地球に帰還する司令船のコックピットは,左に船長(Commander),中央に司令船パイロット(Command Module Pilot),右に月着陸船パイロット(Lunar Module Pilot)という並びの3人乗りに。操作系も大幅に増加・複雑化している。
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打ち上げ準備中のアポロではどんな作業が行われていたのか?
Academyモードにある「Project Apollo Lessons」を構成するのは18のトピック。1つだけでもかなりの手順を踏む必要があり,すべては紹介しきれないので,今回は「Lesson1-PRE LAUNCH」での,基本の操作系をメインに取り上げていきたい。
膨大な数かつ,省略名だらけのうえ,ぎゅうぎゅうに詰められたテキストなど,混乱しやすい状態になっている操作系を少しでも分かりやすくするため,アポロの各パネルにはナンバーが振られている。レッスン1に出てくる10枚のパネルを掲載したうえで,それぞれに配置されている操作系の機能を紹介していこう。
なお,紹介はパネル番号順ではなく,ゲーム内の「チェックリスト」に従った,おおまかな作業順としている。
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![]() パネル1。画面中央上部にパネル番号の「1」が見える |
![]() パネル2 |
![]() パネル3 |
![]() パネル5 |
![]() パネル6 |
![]() パネル7 |
![]() パネル8 |
![]() パネル9 |
![]() パネル100 |
![]() パネル325 |
◆【パネル8】INTERIOR LIGHTS
司令船のコントロールパネルは,3か所のフラッドライト(全体照明)で照らされる。また,スイッチ類の名称表示や,デジタル表示は,個別に明るさの調整が可能になっている。
パネル8の「INTERIOR LIGHTS」にある3つのノブは,主に船長が座る左シート側のデジタル数値表示(NUMERICS),コントロールパネルを含む船内を照らすフラッドライト(FLOOD),パネルに内蔵され,スイッチやボタンの名前などを浮かび上がらせる照明(INTEGRAL)を制御する。ゲーム内ではマウスの右ボタンで反時計回り,左ボタンで時計回りに操作可能だ。
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◆【パネル5】INTERIOR LIGHTS
パネル5側の2つのノブは,主に月着陸船パイロットの座る右シート側の内蔵照明やフラッドライトを制御する。
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◆【パネル100】LEB(Lower Equipment Bay) LIGHTS
司令船パイロットが座る中央シートの下,パネル100上にある3つのノブは,「LEB」と呼ばれる,パイロットの足元付近の照明を制御する。暗い場所だが,懐中電灯を使用するか,フラッドライトに加えてINTEGRALをMAXまで回すと画像のように文字の輝度も上がり読みやすくなる。
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◆【パネル2】DSKY(Display and Keyboard Assembly,ディスキー)
アポロには,AGC(Apollo Guidance Computer)と呼ばれるコンピュータが搭載されており,これを利用して司令船と月着陸船のナビゲーション,誘導,制御を行う。DSKYは,そうしたAGCを操作・表示するためのインタフェースだ。
AGCは,司令船用のCMC(Command Module Computer)と月着陸船用のLGC(Lunar Guidance Computer)に分かれており,スクリーンショットはプログラム01(慣性システムの調整)をCMCで実行しているところ。
激しい揺れによって操作が困難になることが予想される場合は,プログラム起動失敗などのトラブルに備え,コードだけをあらかじめ入力し,あとはENTERを押すだけの状態にしておくこともある。
余談だが,ACG上で動かされたほとんどのソフトウェアプログラムは,職人が手作業で細い銅線を編み込んだ「コアロープメモリ」なるものによって作られていたそうだ。
また,用途の違いから単純比較は難しいが,一部の仕様に限れば,アポロのコンピュータはファミコンと同程度の性能だったと俗に語られることもある。
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◆【パネル1】FDAI(Flight Director & Attitude Indicator),通称「8-Ball」(エイトボール)
上下左右のない宇宙空間において,機体の姿勢などを確認するために使用される計器。これ自体はあくまで数値を確認するものだが,ゲームでは,ピッチ(機首が上下する動き),ロール(旋回),ヨー(機首が左右に振れる動き)を[W][A][S][D][Q][E]キーを使って調整する(スクリーンショットはプログラム01が実行され,正しい打ち上げ姿勢になるまで自動回転した後の状態)。自動または手動での制御が可能。
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◆【パネル8】AUTO RCS(Reaction Control System) SELECT switches
水平にズラリと並ぶ16個のスイッチは,自動姿勢制御を行うRCSスラスター(噴射装置)に電力を分配するもの。MNA(メインバスA)やMNB(メインバスB)に接続する,あるいは無効にすることができる。各スイッチは,左からロール,ピッチ,ヨーにグループ化されている。
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◆【パネル3】DC INDICATORS switch
各電気システムを監視するために使用されるセレクタースイッチ。故障時,重要な電気システムに使用されるバッテリーCのチェックは,打ち上げ準備中(ゲームでのレッスン1)に必須とされている。
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◆【パネル3】DC VOLTS meter
DC INDICATORSで選択した電源の電圧はここで確認する。
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◆【パネル1】FDAI Switches>SCALE
FDAIの感度を調整する。レッスン1の打ち上げ準備中は5/5に設定。
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◆【パネル1】RATE switch
手動運転時の角速度(物体が回転運動をするときの速度)の操作を可能にする。レッスン1の打ち上げ準備中はHIGHに設定。
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◆【パネル1】TRANS CONTR switch
機体の姿勢は,主に「並進操作スティック」と「回転操縦ハンドコントローラ」で制御されるが,こちらは並進操作スティックの電源スイッチ。アップにすると,打ち上げ後の機体上昇中に電源がスティックに供給される。
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◆【パネル1】ROT CONTR PWR switches>DIRECT switches
回転操縦ハンドコントローラに電力を供給するためのスイッチ。レッスン1の打ち上げ準備中はダイレクトパワー1をアップ(MNA/MNB)に設定する。
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◆【パネル1】CMC MODE switch
コンピュータの動作モードを選択できる。レッスン1の打ち上げ準備中は手動制御のFREEに設定し,燃料が使用されないようにする。
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◆【パネル1】BMAG(BODY MOUNTED ATTITUDE GYROS) MODE Switches
姿勢と角速度情報を得るためのバックアップ用ジャイロのスイッチで,3つあるジャイロのどれからデータを受信するかを決める。
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◆【パネル6】S BAND switch and thumbwheel
S BANDは,約2.2GHzの無線周波数帯を使用してアポロと地球間を結ぶ通信・追跡システム。コマンド,テレメトリ(機体の状態データ),音声,映像を1つのリンクで送受信できた。これは月着陸船パイロットが座る右シート側のスイッチで,T/Rは送受信,RCVは受信専用。サムホイールでレベルを制御する。
なお,S BAND系を用いたシステムは,地球から約38万キロメートル離れた月面着陸のテレビ中継時にも活用された。
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◆【パネル9】VHF(Very High Frequency) AM switch and thumbwheel
S BANDとは別に実装された超短波の無線システム。主用途は近距離での双方向音声通信で,司令船と月着陸船間や宇宙飛行士間などで使用されたようだ。こちらもサムホイールでレベルを制御するものになっており,スクリーンショットは船長が座る左シート側のスイッチ。
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◆【パネル1】SPS(Service Propulsion System) THRUST DIRECT ON switch
月周回軌道への投入や離脱,地球に向けての推進などに使用された,パワフルな液体燃料ロケットエンジンのスイッチ。レッスン1の打ち上げ準備中はオフにする。
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◆【パネル1】ΔV THRUST switches
「ΔV」とは,ロケットや宇宙探査機が運動状態を変化させるために必要な「速度の変化量」を表すもので,このスイッチは,AとBのエンジン噴射弁のコントロールを作動可能状態にするために使用する。
誤操作を防ぐためなのか,カバー付きのスイッチになっており,左クリックでカバーが開き,右クリックでカバーを閉じるとスイッチが自動的に押し下げられてオフにできる。
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◆【パネル1】LV/SPS IND switches>α/PC IND switch
上方に配置されている「LVα/SPS Pc gauge」に,ロケット側,もしくは機体側の情報を切り替えて表示させるスイッチ。Pcの場合は燃焼室圧を示し,燃焼中の値は通常100%になる。レッスン1の打ち上げ準備中はαになっていることを確認する。
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◆【パネル2】EDS(Emergency Detection System), ABORT SYSTEM
スイッチをアップ(AUTO)にすることで,2基以上のエンジン停止や打ち上げロケットの状態異常など,打ち上げ中止につながる情報を検出するためのシステム。
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◆【パネル7】SCS(Stabilization and Control System),TVC(Thrust Vector Control) SERVO POWER
TVCはロケットの推力の方向を変える装置。プライマリチャネルとセカンダリチャネルをどのバスにつなぐかを選ぶ。
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◆【パネル2】FC REACS(Fuel Cell Reaction) VALVES
燃料電池へ供給される反応物の流量を制御するバルブのスイッチ。ダウン(LATCH)にすることで,打ち上げ,上昇,軌道投入の各フェーズ中に誤ってバルブが閉じてしまうことを防ぐ。
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◆【パネル2】SEC COOLANT LOOP switches
EVAPスイッチは,機体の冷却に使用される二次系水-グリコール蒸発器の制御を可能にするもの。PUMPスイッチは,ACバス1,またはACバス2のいずれかから,冷却液循環用のポンプへ電力を供給する(中央位置でポンプを停止)。
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◆【パネル1】LV ENGINES lights
各ライトの点灯は,打ち上げロケットのエンジンが準備状態になっているが推力は発生していないことを表す。点火前は黄色に点灯し,スラストが90%に達すると消灯する。
ちなみに,5つのエンジンのうち,中央は固定だが,外側の4基は姿勢制御のために噴射の方向を変えられるようになっていた。
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◆【パネル325】Primary Glycol to Radiator handle
機体の各部を循環する冷却液をコントロールするためのハンドル。打ち上げ後の機体上昇中は,空気との摩擦でラジエータが超高温になって本来の役割を果たせないため,このハンドルを引いてバイパスさせる。宇宙空間に到達したら元に戻すと思われる。
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◆【パネル5】MAIN BUS TIE switches
バッテリーバスをメインバスへ接続するスイッチ。BAT A/Cがアップの場合,バッテリーバスAがメインバスA,バッテリーバスCがメインバスBに接続される。上昇中は,これによりバッテリーAが確実に接続され,負荷が分散される。さらにBAT B/CをONにすればバッテリーBも接続され,上昇および再突入の間は,バッテリーAとバッテリーBの両方が燃料電池の電力需要を補助する。
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◆【パネル9】PAD COMM switch and thumbwheel
船長が座る左シート側に配置された,独立した音声信号を用いた入出力系統のスイッチ。打ち上げ準備前は有線(ケーブル)に接続される音声系統で,T/Rに設定すると回線を通じて地上との送受信が可能になり,RCVに設定した場合,乗員は受信のみが可能になる。サムホイールでレベルを調整可能。レッスン1の打ち上げ準備中はオフにする。
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◆【パネル6】PAD COMM switch and thumbwheel
月着陸船パイロットが座る右シート側にあるスイッチ。機能は左シート側と同じだ。
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◆【パネル1】GDC ALIGN pushbutton
IMU(Inertial Measurement Unit)とGDC(Gyro Display Coupler)という姿勢に関わるプラットフォームを連携させるボタンで,使用するときは長押しする。アポロは,機体の総合的な姿勢を求めるための手段としてIMU,GDCの2つを持ち,それぞれのプラットフォームに基づいて算出された姿勢が,パネル1のFDAI1とパネル2のFDAI2に表示される。GDCはバックアップであり,IMUが故障したときはGDCを使用する。
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◆【パネル1】Altimeter
高度計。目盛り上は6万フィート(約18キロメートル)までの高度を計測できると思われる。MAIN COVER,APEX COVERは共にパラシュートの展開に関わる機構で,再突入シーケンス時には5万フィート未満になるまで監視する(レッスン1以外で使用)。
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◆【パネル1】Digital event timer
何らかの操作を一定時間行うときに使用するタイマー。カウントアップとカウントダウンのどちらにも対応し,59分59秒まで設定できる。分秒の設定はカウント部分とは少し離れたパネル1の最下段にあるEVENT TIMER switchesで行う(レッスン1以外で使用)。
爆発事故に見舞われるも,奇跡の生還を果たしたアポロ13号の飛行では,電力節約のために多くの機器の電源を落とし,エンジンの噴射時間計測にも宇宙飛行士の腕時計を使用したエピソードが知られているが,本来はこのタイマーを使うはずだったのかもしれない。表計算ソフトもない時代の話だと思うと,当時の宇宙飛行士や,それを支えたスタッフたちの底力にただただ圧倒される。
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◆【パネル1】Entry Monitoring System (EMS)
地球の大気圏再突入時の速度,高度,飛行状態などを監視するシステム。FUNCTION switch(左上のセレクター),MODE switch(左中央),GTA switch(右上),ΔV/EMS SET switch(右下)のほか,各種インジケータやディスプレイ,ライトなどが配置されている(レッスン1以外で使用)。
タイミングが重要なシーケンスでの操作が必要になるレッスンでは,ストップウォッチの使用も推奨されている。
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利便性よりも危機管理重視の設計
いろいろと眺めてきて,「なぜ同じような機能のスイッチがいくつもあるのか」「まとまって配置されていればいいのに」「当時でももっと進んだシステムがあったはず」などと思った読者もいるのではないだろうか。これは気のせいではなく,「利便性」よりも「宇宙飛行士たちの生還」を第一に設計されたことが大きいようだ。
時には可能な部分を使いまわす一方,どんなトラブルが発生するか分からない宇宙空間で,ある系統がダメになっても別系統で対処できるように冗長化させ,枯れた技術をベースとし,使いやすさを犠牲にすることで生存確率が高められていた。
身近なところではスマホやゲーム機がそうした流れにあるように,近年はタッチパネルを多く採用した宇宙船も登場しているようだ。ロボットアニメで見るような全天周囲モニター&タッチパネルは多くの人の憧れかもしれないが,スクリーンの故障が致命傷になる,感覚的な操作が行えないなどといった課題もあり,特に人命が関わることを考えると,多重の予防措置を備えたスイッチやボタンは要所で残っていくに違いない。
本作のアポロのレッスンには,ここで紹介した以上の数の操作系を使って,さらに踏み込んだドッキングや月に関わる高度なトピックなども用意されている。メインメニューからロードマップを見ると,少なくともバージョン2.0までの開発が決まっており,VRやマルチプレイへの対応も進められているとのこと。
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宇宙から地球への帰還を目指すプレイで,意味するところがよく分からないままでも,チェックリストの指示通りに操作して無事着水できたときは,かなり嬉しかった。今後のアップデートを待ちながら,膨大な数の操作系の機能と役割への理解をゆっくりとでも進めていけば,「なぜそうするのか」が分かって,楽しさの幅はさらに広がっていくだろう。
そうして,自分の力だけでReentry(大気圏再突入)を無事果たすことができたなら,本当に大きな感動が待っているはずだ。
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【参考文献】
称名寺 健荘,森瀬 繚(2007)「図解 宇宙船」 新紀元社
的川泰宣(2025)「トコトンやさしい宇宙ロケットの本 第4版」 日刊工業新聞社
デビッド・ミンデル(2017)「デジタルアポロ ―月を目指せ 人と機械の挑戦―」 東京電機大学出版局
「宇宙探査の基本がわかる本」(2020) 枻出版社




























































































