Jerry Chu / 香港出身,現在は日本の大学院で勉強中
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Jerry Chu「ゲームを知る掘る語る」Twitter:@akemi_cyan |
「The Witcher 3」にポーランドの歴史を見る
「The Witcher 3: Wild Hunt」(PC / PlayStation 4 / Xbox One)は魔法剣士ゲラルトの冒険譚であると共に,小国が列強国に侵略される光景をも描いているRPGだ。
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前作「The Witcher 2: Assassins of Kings」では,隣接するテメリア王国に対して侵略を目論む南方のニルフガード帝国が刺客を放ち,国王を暗殺した。その場に居合わせたゲラルトは“王殺し”の汚名を着せられるが,牢獄を脱出し,暗殺者を追って各地を巡っていく。
その続編「The Witcher 3」になると,ニルフガード帝国の侵略はさらに進んでおり,王を失った小国は抵抗する術を失っている。
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「The Witcher」シリーズは,ポーランドに拠点を置くCD PROJEKT REDによって開発されている。ご存じのとおり,ポーランド人にとって戦争と侵略は決して遠い話ではない。
ポーランドはヨーロッパの中心に位置し,かつてはロシア帝国やハプスブルク君主国,オスマン帝国,神聖ローマ帝国などの列強に囲まれ,紛争が絶えない地域だった。18世紀には列強の侵攻に晒され,ポーランド王国の領土はロシア帝国,プロイセン王国,ハプスブルク君主国によって分割され,王国は消滅した。
第一次世界大戦後,ポーランドは独立に成功し,束の間の平和を得る。しかし,第二次世界大戦に突入すると,ナチスドイツの支配下に置かれ,多くの国民が強制収容や処刑など,過酷な仕打ちを受けてしまう。ナチスドイツが戦争に敗れたあとも,ポーランドの実権はソ連が握っていたため,国民は圧政と貧窮の生活を強いられた。ポーランドがようやく自由と平和を迎えたのは,なんと1989年のことである。
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200年近くもの間,ポーランドは幾度となく戦火にまみれ,戦争の痛ましい記憶は国民の心に刻まれているはずだ。これを踏まえて「The Witcher 3」をプレイすると,北方諸国が帝国に攻め込まれるシーンにポーランドの面影が見えてくる。
ドワーフの鍛冶屋は侵略者に徴用された挙句,村人に蔑まれる。兵士の誹りを恐れた店の主人は,王国の紋章を隠すように外す。仕える国を滅ぼされた兵士は,レジスタンスを組織してゲリラ戦を起こす。兵役中にアルコール依存になってしまった兵士が家族に見放される。作中で描かれる数々のシーンは,ただのフィクションではなく,現実味を帯びた歴史のエピソードのように感じられる。
「The Witcher」シリーズの原作は,ポーランドのファンタジー小説「Saga o wiedźminie(邦題:魔法剣士ゲラルト)」であり,ゲーム内にもスラヴの文化が随所に見られる。たとえばボッチリングやレーシェンなど,「The Witcher 3」に登場するモンスターはスラヴ民俗に由来したものが多い。
また,著名なコンポーザーMikolai Stroinski氏が手がけた「Commanding the Fury」をはじめとする,多数の楽曲がスラヴの音楽をルーツとしている。
「The Witcher 3」はポーランドのバックボーンであるスラヴ民俗に強く影響を受け,そのうえでポーランド人の悲惨な戦争の記憶が刻み込まれていると筆者は感じる。
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ポーランドで生まれたゲームと言えば,2014年にリリースされた「This War of Mine」も戦争をテーマにしている。ただ,前線で戦う兵士ではなく,戦争に苛まれる一般市民に焦点を当てている点がユニークだ。
プレイヤーは無力な一般市民であり,生き残るためには弱い老人からわずかな食料を奪ったり,助けを求める子供を拒んだりと,良心を痛ませる行為を余儀なくされる。これまでになかった視点から戦争の悲惨さを見事に浮き彫りにし,斬新な作品として高い評価を受けている。
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戦争の被害者であるポーランドから「The Witcher 3」や「This War of Mine」が生まれ,一方で戦争の勝利者たるアメリカでは「Call of Duty」や「Battlefield」などのミリタリーシューターが大ヒットを記録している。歴史上の立場の違いがあればこそ,このような対照的な図式になったのではないだろうか。戦争でもがき苦しむ者の悲愴さを描ける作品がポーランドで生まれたのは,むしろ必然なのかもしれない。
※この記事は「毒撚媒體 LonelyMedia」「熱血時報 Passion Times」に寄稿されたものを原著者によって翻訳・加筆したものです。
| ■■Jerry Chu■■ 香港の引きこもりゲーマー。中学の頃は「真・三國無双」や「デビルメイクライ」などをやり込み,最近は主に洋ゲーをプレイしている。なるべく商業論を避け,文化的な視点からゲームを論じていきたい。現在はゲームプログラマーを目指して勉強中。 |























