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印刷2008/07/09 14:03

連載

ゲーマーのための読書案内 / 第53回:ホーンブロワー<5>『パナマの死闘』

ゲーマーのための読書案内
木の船,鉄の男 第53回:ホーンブロワー<5>『パナマの死闘』→航海,海戦モチーフ

 

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海の男/ホーンブロワー・シリーズ<5>『パナマの死闘』
著者:セシル・スコット・フォレスター
訳者:高橋泰邦
版元:早川書房
発行:1974年11月
価格:861円(税込)
ISBN:978-4150400804

 

 夏といえば海とか,ゲーム系インターネットメディアで取って付けたように言ってみても説得力がなくて困るわけだが,今回は海洋冒険小説の金字塔ともいうべき,セシル・スコット・フォレスターの「ホーンブロワー」シリーズの一冊『パナマの死闘』を紹介しよう。
 海洋冒険小説のなかでも,「英国海軍もの」と呼ばれるテーマでは数多くのシリーズが発表されている。これらのほとんどはナポレオン戦争時代における英国海軍の士官が主人公で,その成長の軌跡が主題となっている。それらのいわば始祖がホーンブロワーシリーズなのだ。英国海軍ものの“フォーマット”を確立し,間接的に多くのフォロアーを生み出した。

 さて,今回は『パナマの死闘』を取り上げるわけだが,見て分かるとおりシリーズ5巻めということになっている。ただしそれは,ストーリー展開の時系列で整理した場合の話であり,刊行順だと『パナマの死闘』こそが第一編だ。もう少し細かく言うと,『パナマの死闘』およびその続編を含めた3冊が好評を博したため,さらに遡って物語が書かれたのである。よって,『パナマの死闘』から読み始めるのは,ある意味正統派。日本での巻数を初出時の刊行順に並べ直すと,5,6,7,8,9,1,2,4,10,3となる。
 『パナマの死闘』は,倍近い火力を持つスペイン艦ナティビダッド号との熾烈な戦闘を軸に,イギリス海軍のフリゲート艦リディア号とホーンブロワー艦長,そして部下達の活躍を描いている。彼らは本国の指令を受けて,単艦で中央アメリカまでやってきたのだ。
 この本に出てくる軍艦は帆船であり,その操船はほとんど人力で行う。また火力戦も接舷戦闘も乗組員達の士気によるところが大きい。いかに士気を高め,部下を心服させられるかが艦長の腕ということだ。

 そうした艦長の苦労と気配りの描写には多くのページが割かれており,例えば長い航海の間,タバコや酒などの支給を切らさないようにして船員の不満を極力抑える,気が緩まないようにさまざまな訓練を行う,戦闘前には十分な休養と食事を採らせ,本来の能力を十全に発揮できるようにするなど,その中身は実に多岐にわたる。
 さまざまな差配をとおして乗組員達の疲弊を抑えることが,指揮官に課される大きな責任であった時代は,この小説よりだいぶあとまで続く。例えば日露戦争の日本海海戦で,日本の連合艦隊があそこまで鮮やかな勝利を収めた背景には,日英同盟に従ってバルチック艦隊の英領への寄港と補給を拒んだ,イギリスの策謀があったとされる。バルチック艦隊は,休養と補給を著しく欠いた状態で対馬海峡に現れ,東郷提督の丁字戦法でさんざんに叩かれてしまったのである。その頃の軍艦は石炭を燃やして走っていたわけだが,喫水線下にカキや海藻が付着すれば,やはり運動性は落ちていくわけで,人も船もメンテナンスが重要だ。

 話を小説に戻そう。『パナマの死闘』では海戦のそうした側面がきっちり描かれ,その過程で艦長たるホーンブロワーが,悩みつつも決断を下していく様子が描写される。彼は決して万能の天才ではなく,いかにも人間くさい艦長であるところがむしろ魅力的なのだ。
 細かいところでは,当時の船上生活に関する描写も面白い。とくに食料や飲料水については,現在ほど保存技術が進んでない時代だけに,苦労が偲ばれる。ちなみにこの巻ではないのだが「新しい保存食料」として瓶詰めなどが登場,それによって食べ物の質が向上し,船員達が大喜びする描写などもある。例えばUボートモチーフのゲームで,食料事情までが描かれることは実に稀なのだが,誰かが「乾燥玉子」といったら,さもうんざりした顔でげっぷをしてみせるのが,正しいUボート乗組員の作法だったりする。

 そしてもちろん,海戦の描写は大きな見どころである。この時代の軍艦において砲は舷側に設置されており,砲塔と違って自由に向きを変えることなどできない。また,そもそも船の主たる動力源は風であるため,風向きが操船に大きな影響を与える。
 したがって,相手の風上に立つことで操船の自由度を確保しつつ,できる限り舷側を相手に向け,多くの砲で撃てるようにするのが重要なポイントになる。お互いの位置取りと戦闘経過は文章だけでなく図でも示されており,それを追っていくことで双方の意図を深く読み込めるのも,この小説の楽しみどころだ。

 余談だが,米海軍ではリディア号やナティビダッド号と同じ時代に建造されたフリゲート艦のコンスティチューション(オールドアイアンサイズの愛称で知られる)が現役艦として登録されており,この船はホーンブロワーシリーズ第3巻「砲艦ホットスパー」に登場している。
 「海の男」と聞いて真っ先に思い浮かぶのは,現代の軍艦の乗組員ではなく,帆船に乗り込んだホーンブロワーのような海軍軍人,もしくはカリブの海賊のような男達だろう。そういった男達の生きざまが,ナポレオン時代以前をモチーフとするさまざまなゲームには本来含まれている。
 当サイトの読者であれば,ポニーキャニオン/ジー・エー・エムの「英雄ナポレオン」で,フランス本国に内乱が頻発するほど海軍の増強を図り,そこまでして英国に勝てなかったという思い出の持ち主も,なかにはいるかと思う。有名なアウステルリッツの三帝会戦に投じられたフランスの兵力は,本来イギリス遠征に向けて整備されたものだった。それを阻んだイギリスのシーパワー,ひいてはイギリスの望むヨーロッパ情勢を支えたのが,ホーンブロワー・シリーズに出てくる登場人物(一部実在人物を含むが)のモデルとなった海の男達だったのである。

 

隻腕隻眼といえば,海賊キッドかネルソン提督か

逃げ場のない船上での,象徴的な負傷です。

 

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■■田村眞治(ライター)■■
銃器,SF,武道と,広いんだか狭いんだか分からない分野に深く通じ,とくにその精神性にこだわりを持つPCゲームライター。関心分野と連動しつつ,ドキュメンタリーやハードSF,ミステリ小説など,カバーエリアは広いのだが,執筆姿勢はいたって慎重。もっと書いてくださいよ〜。
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