その中から,今回は日本のメーカーであるアークシステムワークスの講演「アークシステムワークスの30年の歩み〜2D格闘ゲームの長期運用〜」を紹介しよう。登壇したのは,格闘ゲーム「GUILTY GEAR」シリーズの生みの親として知られる石渡太輔氏と安部秀之氏だ。
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石渡氏,安部氏が語る“アーク格ゲー”の歩み
アークシステムワークスは設立30年の歴史を持つ,日本でも老舗のゲームメーカーだ。とくに対戦格闘ゲームを得意とすることで知られるが,その初期からアクションやパズル,RPGといったさまざまなジャンルの作品を手がけている。
転機となったのは1995年,同社初のオリジナルタイトル「EXECTOR」をリリースしてからで,そこからは「Wizard's Harmony」シリーズや代表作「GUILTY GEAR」シリーズなどが誕生していった。
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石渡氏と安部氏が入社したのは,今から約20年前の1998年頃だ。今回の講演は,両氏が手がけた「GUILTY GEAR」シリーズを中心に,格闘ゲーム開発がどのように進化していったのかが,開発手法の変化と共に語られるものとなった。
「GUILTY GEAR」は,1998年に初代PlayStation向けにリリースされたが,当時のアークシステムワークスは,スタッフがたったの6人という小さなメーカーだった。その中で「GUILTY GEAR」の開発に携わったのは,両氏を含む学生スタッフの3人で,格闘ゲームの開発ノウハウなどもなく,唯一の手掛かりは他社の格闘ゲームの攻略本だったそうだ。安部氏は「社長(木戸岡 稔氏)がこのプロジェクトを許可してくれたのが,まず驚くべきところ」と当時の思いを語った。
初代PlayStationは2MB+1MB(メインメモリが2MBで,VRAMが1MB)しかなく,解像度はたった320×240ドットだった。キャラクターは16色の64×121ドットで描かれ,282枚のモーションで表現されていた。こういった制限の中,石渡氏らは格闘ゲームのアニメーションを制作するために,アニメ制作スタジオに助けを求めたという。
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具体的には,キャラクター作りのワークフローを教えてもらったそうで,まずキャラクターをストーリーボードに起こし,その後キーフレームを作画する。次にSpline Digitalという工程でデジタルの線画にして,最終的にドット絵に落とし込むという制作工程が説明された。
Spline Digitalについてもう少し説明すると,これは滑らかな描線をデジタルデータとして保存する方法で,解像度が変化しても劣化が発生しないのが特徴だ。そのため,高解像度で画像を表示するのに用いられるが,一方で解像度が低いゲーム制作で使われることはほとんどないという。
しかし,当時の石渡氏と安部氏にそんなノウハウはなく,参考にしたアニメ制作技術をそのまま採用したとのこと。それが無駄な作業だったと知ったのは,後になってからだそうだ。
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またプログラムも3人で作っていたので指示書などは存在せず,絵の素材を渡して「これ動かしといて」と口頭で伝えるという作り方をしていた。細かい動きの部分などは,格闘ゲームの攻略本を熟読して参考にしていたとのこと。
石渡氏は「当時は計画自体があやふやだった」と語り,最終的にGUILTY GEARを作り上げたのは学生ゆえの若さと「根性」によるものが大きかった,と当時を振り返った。ちなみに,この当時3D格闘ゲームの案も考えていたそうで,テスト版も開発したが,クオリティがあまりにも低かったため断念したとのことである。
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さて根性で乗り切った「GUILTY GEAR」のあと,2000年にアークシステムワークスから初めてのアーケードタイトル「GUILTY GEAR X」がリリースされる。NAOMI基板を採用し,使えるデータ容量は大幅に増した。
このタイトルを開発している頃のアークシステムワークスは,従業員数が10名に増え,いわゆる外注も利用するようにもなっていたが,一番の教科書になったのはやはりゲームの攻略本だったという。さらに初のアーケードタイトルということで,アーケードと家庭用におけるプレイヤー層の違いを意識して開発し,ゲームデザインは大きく変わったとのこと。
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しかし,やっと1作を作り上げたばかりだった石渡氏と安部氏は,当初アーケード基板のハードスペックを持て余していた。続編をどういう風に作ればいいのか,工数や納期を削減するべく考えたのは,前作のリソースをそのままスケールアップするという方法だったが,その考えは早々に頓挫する。社長から「そんなんじゃだめ。絵が汚いでしょう」と言われてしまい,グラフィックスをイチから描き直す方向転換が行われたそうだ。
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当時,640×480ドットという解像度は,キャラクターを大きく描くアドベンチャーゲームなどには使われていたが,格闘ゲームではあまり使われていなかった。そのため,クリエイターになりたてだった石渡氏と安部氏は,「本当にできるのか」と不安だったそうだ。ちなみにモーションの枚数も,「2倍に」というボスからのお達しで増やすことになったのだとか。当時の両氏にとっては無理難題であり,結局予算はオーバーして納期は大幅に遅れたものの,ここも結局「根性」で乗り切ったとのことである。
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そして2009年,同社のもう一つの代表作「BLAZBLUE」(PS3版)がリリースされる。当時はすでにPS3時代に突入しており,「GUILTY GEAR」シリーズが日本国内では認知されているなかで,グラフィックス面でのインパクトを,どのように生み出すかが課題になったという。
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そこで「BLAZBLUE」では,16:9の1280×720ドット(当時の主流はまだ4:3)のHD解像度に挑戦することとなった。キャラクターに用いられるドットも初代「GUILTY GEAR」に比べて16倍まで増大した。こうなると工数も大幅に増大してしまうため,解決策を考える必要がある。そこで生み出されたのが,まず3Dモデルを制作し,それをレンダリングして2Dに落とし込むという手法である。
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この手法のメリットは,作業の効率化だけでなく,手作業に頼っていたためこれまでどうしても発生していた,原画家の腕による品質のバラつきを均一化できる点にあった。しかし,それでも最後の仕上げとなる彩色だけは手作業に頼らざるを得なかったという。
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そのあたりは「BLAZBLUE」シリーズが進んでいくなかで,3Dモデルから2D線画を作る段階で色が付けられるように改修していったとのこと。スタッフの技術が向上したことで,そうした処理も可能になったのだそうだ。
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こうした技術の向上や新たな手法の導入によって,作業の効率化と品質の均一化を図ることができたものの,よりクオリティを高めるために,キャラクターモデルを一つ一つ手作業で修正する工程は現在も残っているとのこと。効率化はしたものの作業工程は依然として多く,結局のところ納期をオーバーすることがままあるという。やはり「BLAZBLUE」においても,「根性」でなんとかする状況だったようだ。
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そして2014年,「GUILTY GEAR Xrd」シリーズが誕生する。同シリーズでは次世代の対戦格闘ゲームを目指し,「拡張されたビジュアルインパクト」「アークシステムワークスだけのユニークな表現」「グローバルなアピールポイント」の3つを柱に開発が行われた。その結果が,3Dグラフィックスを用いた2D的表現だ。
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また3D化することで単一のリソースをバトルシーン以外にも,ストーリーなどの場面で利用できることが期待された。従来は手で描かれていたキャラクターのストーリーボードも,3Dならそのまま流用できるのでは,と当初考えたそうだが……そううまくはいかなかった。
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グラフィックスの進化により大幅に増えたポリゴン数はゲームを重くしてしまい,さらにいわゆる「アニメ的な嘘表現」を実現するために,3Dモデルそのままではなく,シーンごとに一つ一つ手を加える必要があったのだ。結果,同作では顔の造形の修正はもちろんのこと,動きの誇張などさまざまな表現が「手付け」で行われている。なお,このあたりの話は過去記事に詳しいので,そちらを参照してほしい(関連記事1,2,3)。
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かくして石渡氏と安部氏がたどり着いた結論は,「作りたいものは,効率化の先にはなかった」ことだという。やりたいことを求め続ける先には,必ず何かしらの挑戦が待ち構えており,そこは効率では超えられない根性の世界だった。しかし,そうした積み重ねがアークシステムワークスの名前を広め,現在につながっている。安部氏は「これからも根性の職人芸で皆さまを楽しませていくのでお楽しみに」と語り,講演を締めくくった。
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