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西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた
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印刷2021/03/30 12:00

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西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた

 コアゲーマーなら,誰もが一度は意識したことがあるに違いない“遅延”の問題。ただ,この遅延というキーワード,人によって「イメージしている現象」が違っていて,テーマとして語り合うにはなかなか難しい話題だったりする。

 例えば,ゲーマー同士の会話でしばしば耳にする「液晶って遅延が大きいよね」というフレーズ。これは「(入力/表示)遅延」と「応答速度」を曖昧に解釈した発言と思われる。まあそこは大目にみて“一緒くた”にするのを許容したとしても,昨今の事情を鑑みればやはり正しいとは言い難い。
 少なくともゲーム用途を謳うディスプレイに搭載されている液晶パネルなら応答速度はひと桁msだし,遅延も同じく数msだ。むしろ低遅延なイメージがある有機ELパネルのほうが,焼き付き防止や倍速駆動といった機能のために1フレーム程度のバッファリングが必要なことから,「トータルな遅延」は大きくなりがちなものだ。
 
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 最近,自身の仕事用となる7画面環境を刷新し,メインディスプレイとして液晶テレビを購入した西川善司氏。氏によると,PC用ディスプレイとして液晶テレビを選ぶときには「倍速駆動」に注意が必要ということで,「(善)後不覚」第48回は,そんな話となる。

[2017/09/16 00:00]

 本稿は,こうした遅延の問題や技術について改めて考え,昨今の事情に則した情報に頭の中をアップデートしておこうという記事である。その題材として,こうした遅延にまつわる話題に事欠かない対戦格闘ゲームジャンルから「ストリートファイターV チャンピオンエディション」PC / PS4)(以下,ストリートファイターV)を取り上げてみる。
 さまざまな要因で発生する遅延をいかに切り分け,計測し,そこからゲームの中で何が起こっているのかについて考察していこう。

実際にストリートファイターVの遅延を計測しているところ。右下の追加ディスプレイに表示されているのが,後述するLDAT計測ソフトの画面だ
画像集#005のサムネイル/西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた

「ストリートファイターV チャンピオンエディション」公式サイト



“総”遅延を定量的に計測する「NVIDIA LDAT」


 さて,記事の冒頭で説明したのはディスプレイにまつわる遅延,いわゆる表示遅延の話だが,遅延の原因となる要素はほかにもある。
 ゲームパッドに入力した操作がゲーム機やPCなどに伝達されるまでの遅延(入力遅延)であったり,ゲーム機の内部で発生する遅延――CPUが処理に手こずっていたり,あるいはGPUが映像を描画するのに時間がかかったり――もあって,そのいずれでもあってもプレイヤーは等しく遅延を感じる。そして,その遅延が何を起因としたものであるかを切り分けることは,普通にプレイしているだけではできない。
 ゲームは「画面(+音)を認識して操作する」ものなので,感覚的には表示によるものだと思いがちだが,その実,要因はさまざまなのだ。

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 2012年8月20日から22日にかけ,神奈川県のパシフィコ横浜にて開催されたCEDEC 2012。その中から,開催初日の8月20日に行われた「AV機器とゲームの幸せな明日」をレポートしよう。登壇したのはバンダイナムコスタジオでリードエンジニアを勤める森口明彦氏。ゲームにおける遅延の問題に深く切り込んだ,興味深いセッションだ。

[2012/08/24 10:56]

 では,こうしたさまざまな遅延をプレイ感覚に頼らず定量的に計測するにはどうすれば良いだろうか。
 身近なところでは,例えば4Gamerでも長らく採用しているハイスピードカメラを用いた画面撮影も,その一つだ。これは一つのPCから出力した映像を2つのディスプレイに分配し,並べて表示した2つの画面の表示から“差分”をとるという手法だ。ここで計測できるのは,あたりまえだがディスプレイの表示遅延(の差分値)ということになる。

ハイスピードカメラを用いた表示遅延の計測風景
画像集#013のサムネイル/西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた

 表示遅延はこれで良いとしても,ゲームパッドとゲーム機の間で発生する入力遅延だったり,ゲーム機の内部で発生する遅延を“定量的に”計測するのは難しい。しかし,これを可能にするツールが2020年にNVIDIAから登場した。それが「Latency Display Analysis Tool」(以下,LDAT)だ。詳細はこちらの記事を参照願いたいが,本稿でも簡単に紹介しておこう。

LDAT本体
画像集#011のサムネイル/西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた 画像集#012のサムネイル/西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた
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 3週間ほど前になるが,NVIDIAは,「LDAT」「PCAT」という2つの測定機器を発表した。LDATはPCにおける遅延を,PCATはグラフィックスカード自体の消費電力を計測するものだ。今回,NVIDIAから両機材の貸し出しを受けたので,これらの仕組みから実際の測定結果までを紹介しよう。

[2020/09/30 19:00]

 名称からすると「ディスプレイ遅延測定」を謳うことになるLDATだが,これが実際に計測するのは“ゲーム操作が画面に反映されるまで”の総時間だ。LDATに入力されたマウスの信号を感知し,そして画面に貼り付けた照度センサーが,アクションの結果となる画面の輝度変化を読み取って,その間にかかった時間を計測する。
 つまりテスト環境を変えながら計測し差分をとれば,その変えた部分(つまりPC自体やマウスの違い)によって生まれる遅延が検出できる,ということになる。

LDATが計測する対象を図示したもの。LDATによって計測されるのは,この表の最下段に表記されている「End to End System Latency」だ。平たく言えば「ゲームソフトを動かした時の全体遅延」ということになる。計測値にはCPUやGPUなどに依存するゲームプログラムの実行速度も含まれるし,ディスプレイ/テレビの表示遅延,映像パネルの応答速度も含まれる
画像集#001のサムネイル/西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた


LDATでコンシューマゲーム機の遅延を測定する


 ではそんなLDATを使ってどうするかだが,きっかけは「4Gamer編集部からの検証依頼」だった。その依頼とは,「『ストリートファイターV』のPC版とPlayStation 4版では,体感として遅延に差異がある。PC版のほうが遅延が少ないというのがもっぱらの評判なので,これを検証したい」というもの。なるほどそれが本当なら,LDATで計測してみる価値はありそうだ。その原因を明らかにできれば,確かに面白いだろう。

 いや,ちょっと待ってほしい。LDATは基本的にPCゲームの遅延を計測するためのもの。コンシューマゲーム機の遅延測定はできないはず。……いや,LDATの計測部は単なる輝度センサーにすぎないのだ。ならマウスの入力をアーケードスティックに置き換えれば,イケるんじゃないか?
 実際にLDATを見てみると,マウスの左クリックを検知する配線は外部端子になっている。これをアーケードスティック側のボタンへ配線すればいい。そんなこんなで回路を自作して配線することで,LDATそのものにはいっさい手を付けることなく,コンシューマゲーム機への対応が完了した。

今回のLDAT測定システム概念図。仕組みをブロック図としてシンプルに表すとこんな感じ
画像集#015のサムネイル/西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた


ストリートファイターVの遅延を計測する


 今さら説明することでもないだろうが,ストリートファイターVは2016年にカプコンから発売されたPCとPS4向けの対戦型格闘ゲームだ。もちろんPS4 ProやPS5でも動作するので,今回のテストではこれらのプラットフォームでの動作も計測に含めることにした。
 こうした上位機種向けのオプションがゲームに用意されているわけではないが,搭載されているプロセッサは標準のPS4より高性能だし,PS4 Proにはフレームレートの安定性を強化する「ブーストモード」がある(関連記事)。PS5にも同様の「パフォーマンス優先」モードがあるので,こうした要素が遅延に与える影響を確認する意義はあるはずだ。

 またOS側でフレームレートを設定できるPC版では,60Hz,120Hz,144Hz,240Hzの各リフレッシュレートでの計測も行うことにした。これはフレームレートによっても体感できる遅延に変化があるという噂を検証するためだ。さらにNVIDIAの遅延短縮技術である「NVIDIA Reflex」を有効にした場合に,その効果が表れるのかも検証してみたい。

PS5にはフレームレート重視でゲームを動作させる「パフォーマンス優先」モードが用意されている
画像集#006のサムネイル/西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた

 そんなわけで,実際の測定環境は下のとおりとなった。なおディスプレイを二つ用意したのは,PC用のディスプレイと倍速駆動対応テレビという,異なる方向性を持った環境で検証したかったためだ。
 ただし,画面上の輝度変化を感知するというLDATの原理上,異なるディスプレイでの計測数値を比較することにはあまり意味がないということには留意しておきたい。今回のテストはディスプレイの表示遅延を求めるものではなく,ディスプレイ以外の要因によって生じた変化を見るためのものなのだ。

■ディスプレイ
LG製「27GK750F-B」(対応解像度:フルHD,最大リフレッシュレート240Hz)
東芝製「レグザ55Z720X」(対応解像度:4K ※ただし計測時はフルHDを使用,最大リフレッシュレート60Hz/フルHD時のみ120Hz)

■計測用PC
CPU:AMD Ryzen 9 3950X (16コア32スレッド)
GPU:NVIDIA GeForce RTX 3090
RAM:DDR4-3400 64GB
M/B:MSI MEG X570 UNIFY
SSD:addlink SSD 2TB(ad2TBS90M2P)

■アーケードスティック
マッドキャッツ アーケード ファイトスティック TE2(PS3,PS4,PC対応)



PS5で動作させると遅延は減るのか


 計測は記事執筆時点でのストリートファイターVの最新バージョンv05.054を用いて行った(※掲載時点での最新バージョンはVer.6.001)。

 ゲームモードはトレーニングモードで,ステージは「ザ・グリッド」を使用。キャラクターは筆者の持ちキャラクターであるバルログを選択した。バルログの場合,弱キックボタンを押すと膝蹴りが出るので,その膝蹴りの先端が表示される部分にLDATの計測器を貼り付けてトライすることにする。
 コスチュームはリボンなどの“揺れモノ”のない体操着コスチュームを,色は両足が白い「カラー2」を選択。これは真っ白なスラックスによる膝蹴りが,LDATの照度センサーに反応しやすそうだと考えたためだ。
 また「ザ・グリッド」のバトルステージは背景がほぼ灰色一色なので「動きモノ」がない。このため計測は問題なく行えた。なお,LDAT計測器の照度しきい値は「AUTO」(自動設定)とした。

計測に用いたステージは「ザ・グリッド」。キャラクターには白スラックス「体操着」コスチュームのバルログを使用した
画像集#002のサムネイル/西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた

 アーケードスティックはUSBハブなどを使わず,ホストとなるゲーム機器と直結する。計測では,「1秒間隔で20回,弱キックボタンを押す(つまり計測にかかる所要時間は20秒)」という動作を自動で行うプログラムを3回走らせて,計測値60回分の平均を有効値とした。
 というわけで,まずはリフレッシュレート60Hz,解像度フルHDという標準的な環境における,各プラットフォームでの計測結果を見てみよう。

画像集#016のサムネイル/西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた

画像集#017のサムネイル/西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた

 ストリートファイターVに詳しい読者からは,「バルログの立ち弱キックは3フレーム発生の技なのに,測定値は50ms(≒16.67ms×3)に近い値になっていないのはなぜか」というツッコミがありそうなので説明しよう。
 発生フレームなどの公称値は「ゲーム処理における当たり判定が出るまで」の所要時間を指している。今回計測しているのは「アーケードスティックのボタンが押されてから,画面に対応するCGが描かれるまで」(より正確に言えば「膝蹴りの先端部が計測器に届くまで」)なので,ここには入力や描画,表示の段階で発生するさまざまな遅延が含まれている。なので計測値が公称値とかけ離れていても,何ら不思議はない。同条件で測定した値同士で比較ができれば十分なのである。

LDATの計測画面。下画面の横軸が時間,縦軸が輝度。しきい値を超えた輝度を検出すると,ストップウォッチを切るような仕組み
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 さて,計測値(グラフ1aおよびグラフ1b)を見てみると,PS4 Proや標準PS4の計測値に対し,PS5の計測値は1〜2msほど遅いのが気になるところ。一方で,PS5の各モード間の値にはほぼ差がなく,計測誤差の範囲と言える。これはまあ,ゲーム側が各モードに対応していないと効果がないとされているので,残念ではあるが理解できる。

 一方で,PS4 Proではブーストモードより通常モードの方が1ms〜3ms速いのが興味深い。そして標準PS4の計測値がそれほど遅くもないというのも面白い。PS4 ProのブーストモードはCPUやGPUの動作クロックが上がるので,なんとなく遅延が短縮されそうなイメージだが,結果としては逆になってしまった。
 なぜこうなるのかは,後述する遅延短縮技術「NVIDIA Reflex」(およびAMDの「Anti-Lag」)の解説コラムを参照してほしい。

 PC版はLG製ディスプレイでこそコンシューマゲーム機と同程度の数値だが,レグザでは5〜7msも速い結果が出ている。これには補足の説明をしておこう。
 LG製ディスプレイでは,コンシューマゲーム機とPCをそれぞれ接続したときに,表示される画面に大きな変化はなかった。しかしレグザとPCを接続したときに限っては,輝度が若干明るくなる傾向が見られた。LDAT側の輝度変移検出モードは自動に設定していたが,計測値はこの輝度の違いが反映されたものと思われる。
 なお,次節以降の「異なるリフレッシュレートでの計測」は,“一つのディスプレイとPCの組み合わせ”の中で比較しているので,この輝度変化の特性は大きな問題にはならない。

 以上の結果を見る限り,ストリートファイターVをプレイするうえで安定したパフォーマンスを求めるなら,PC版を十分に高性能なPCで動作させるのが一番,ということになる。一方コンシューマ版をプレイするなら,あえてPS5を選ぶ理由はない。差異は数msでプレイに大きく影響を及ぼすものではないが,2つのディスプレイで同様の傾向が現れているのは見逃せない。手元にPS4があるなら,素直にそちらでプレイするのがいいだろう。


ハイリフレッシュレート環境なら遅延は減るのか


 続いてPC版ストリートファイターVで,リフレッシュレートを変更した場合の結果を見ていこう。計測手法はコンシューマゲーム機の場合とほとんど同じだ。
 ただしLG 27GK750F-Bとレグザ55Z720Xでは対応するリフレッシュレートが異なるので,それぞれが対応する範囲で計測している。また垂直同期(V-SYNC)をオンにした場合とオフにした場合も,合わせて計測する。

 結果はグラフ2aおよびグラフ2bのとおりだ。

画像集#018のサムネイル/西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた

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 同じリフレッシュレートにおける垂直同期のオン/オフで比較すると,オフのほうが速い値となっているが,これは当たり前のことだ。垂直同期とは,映像の描画終了と開始のタイミングを合わせる設定であり,これを有効にするということは,つまり「多少の遅延が発生しても,画面を美しく表示する」ことを意図している。
 実際に,今回計測したストリートファイターVでは,“リフレッシュレート60Hzかつ垂直同期オンのとき”と,“リフレッシュレート240Hzかつ垂直同期オフのとき”の遅延差は40ms以上(2〜3フレーム)あり,これはプロゲーマーならずとも気付くレベルの違いと言える。


 ただし垂直同期をオフにしてプレイするなら,合わせてリフレッシュレートも高く設定したほうがいいだろう。垂直同期がオフの状態では「テアリング現象」の発生を避けられず,プレイにも支障が出かねない。理屈は割愛するが,テアリングはリフレッシュレートが高いほど目立たなくなるので,実際にこの設定でプレイするならPCやディスプレイの性能と相談しつつ,設定を見直すといい。

テアリング現象のイメージ。垂直同期がオフの場合は,映像が下まで表示しきれていなくとも,次の映像が届けば途中から描画が開始される。その結果,このような崩れた画面が表示されることになる
画像集#008のサムネイル/西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた

 一方,筆者が少々頭を悩ませてしまったのは,垂直同期オンのままリフレッシュレートを上げたときに,総遅延が減少するという結果が出たことだ。
 PC版であれコンシューマゲーム機版であれ,ストリートファイターVのゲーム進行は60fpsであり,アーケードスティックからの入力も60Hzで行われている。例えリフレッシュレートを240Hzに設定しても,GPUが描画する映像は60fps――つまり秒間60枚で変わらないはず。であれば,遅延が減少するというのは一見,不思議に思える。

 そこで,GPUが実際にどのような動作をしているのか,確認してみることにした。これは適当なDirectXのAPIを監視して,GPU内でのフレーム描画時間や表示間隔を計測するツールを使えばすぐ検証できる。NVIDIAが提供するGPUのパフォーマンス解析ツール「FrameView」を使って,「MsBetweenPresents」(描画コール間隔)と,「MsUntilDisplayed」(描画コールされてから表示されるまでの時間)を1200フレーム分計測し,平均をとってみた。

画像集#020のサムネイル/西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた

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 60fpsで動作するゲームの1フレームが約16.67msなのは周知のとおりだが,ストリートファイターVにおいても,ゲーム映像の描画コールはリフレッシュレートによらずこの間隔になっていることがグラフ3aおよびグラフ3bから分かる。
 しかし一方で,描画コールが行われてから表示が行われるまでの所要時間は,16.67msよりもずいぶんと短いことが見てとれる。

ストリートファイターVの描画コール間隔は1/60秒=約16.67msであるが,実際の描画に要する時間は1/120秒=約8.33msよりも短いので,リフレッシュレート120Hzの表示間隔に間に合う
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 ディスプレイの原理を考えれば当然だが,ディスプレイが120Hzで動いているなら,ゲームが60fpsで動いていたとしても,画面に表示する映像は秒間120フレームを用意しなくてはならない。そして120Hzで動いているなら,画面の更新が行われるタイミングは60Hzの倍の頻度でめぐってくる。
 グラフ3aと3bで16.67msごとに描画コールが発行されていることからも分かるとおり,PC版ストリートファイターVは,確かに60fps間隔で新しいフレームの描画を行っている。しかしGPUは,120Hz表示の1フレーム分にあたる約8.33ms(≒1/120秒)よりも短い時間で描画を終えていた。つまり,8.33msより短い時間で描画を終えた場合,16.67msごとにくる画面更新タイミングを待つことなく,8.33msごとのタイミングで画面を表示できるのだ。

 FrameViewの測定によると,MsUntilDisplayedの測定値はいずれも120Hzの表示に間に合う約8.3ms(≒1/120秒)未満の時間で描画を終えている。実際はここにゲームエンジンの処理時間が乗ってくるわけだが,LDATで測定した総遅延量がリフレッシュレート60Hzのときよりも120Hzのほうが小さくなっているのは,それも含めて120Hzに間に合う時間に収まっているということだろう。
 一方で,リフレッシュレート240Hz時の総遅延量が120Hz時や144Hz時に対してそれほど短縮されていないのは,これが間に合っていないためだと考えられる。MsUntilDisplayedの測定値から240Hzに間に合う約4.16ms(≒1/240秒)を満たしていないことからも,これは明らかだ。

 コンシューマゲーム機の場合,描画サイクル(フレームレート)と表示サイクル(リフレッシュレート)を不一致にした映像出力が行えるわけもなく,この“リフレッシュレートを上げれば上げるほど遅延が短縮される”という現象は,PC版ストリートファイターVに固有の特性だと思われる。120Hz出力に対応したPS5用タイトルや,Xbox Series X用タイトルが増えてくれば分からないが,恐らくあまり複雑な設定が用意されることはないだろう。


遅延から考える理想のプレイ環境とは


 今回の実験から分かったことをまとめてみよう。まず「PC版ストリートファイターVを高リフレッシュレートで動作させると遅延が減る」という噂の検証について,これは本当であった。
 その理由は,描画は60fpsで行われていても,十分に高速なGPUの場合はリフレッシュレートに合わせて映像が出力されるからで,これはコンシューマゲーム機では起こりえない特性といえる。ゆえに低遅延を求めるならPC版を選ぶ価値はある。ただし十分に高速なGPUとハイリフレッシュレートに対応したディスプレイも必須となる。

 一方PS4とPS5の比較では,むしろPS5のほうがわずかながら遅延が大きいことが分かった。しかしプレイを阻害するほどではない。ほかのPS4向けゲームでも同様の事象が起きる可能性はあるが,それは実際に検証してみる必要がある。とはいえ,あったとしても軽微なはずなので,それほど気にしなくても良いとは思う。

 冒頭の問いに戻ろう。
 このように,我々が感じる遅延はさまざまな要因から発生している。言い方を変えるなら,完璧な「低遅延」を実現しようと思えば,プレイヤーがボタンを押したその瞬間から,その操作意図が画面に範囲されるまでのすべてのプロセスにおいて,遅延の発生源を潰していく必要があるわけだ。
 その中において,ディスプレイを要因とする表示遅延は,今や相当に小さくなってきている。例えばストリートファイターVを標準PS4,かつLG 27GK750F-Bで遊んだときに発生している遅延109.8ms(うち50msは立ち弱キックの発生時間)に対し,ディスプレイによる表示遅延は数msに過ぎない。
 次にプレイ環境を見直すときは,こういった総合的な観点から遅延を考えなおしてみるもの一興ではないだろうか。

「NVIDIA Reflex」による遅延短縮は効果はあるのか


 NVIDIAには,プレイヤーが感じる遅延の軽減を謳う「NVIDIA Reflex」(以下,Reflex)という技術が用意されているが,これはストリートファイターVには効果があるのだろうか。「NVIDIAコントロールパネル」から「低遅延モード」を強制的に有効化することで,検証してみよう。
 計測は垂直同期のオン/オフとReflexのオン/ウルトラを組み合わせ,60Hz,120Hz,144Hz,240Hzの各リフレッシュレートで行った。結果は下にあるグラフ4a〜7bのとおりだ。

画像集#009のサムネイル/西川善司の3DGE:「ストリートファイターV」にまつわる遅延の謎を,遅延計測システムを使って検証してみた
Reflexと同じメカニズムを採用するAnti-Lagの概念図。上が“CPUが行うプレイヤーからの入力処理”,下が“入力を反映したグラフィックス表示”を示している。このスライドは入力に対してグラフィックス表示が追いつかず,遅延が大きくなっている状態を示している
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ならばGPU側のグラフィックス表示にあわせ,CPUによる入力処理も遅らせたほうが,まだしも遅延少なく感じられる,というのがAnti-Lagの仕組みだ。今回のテスト環境がGeForceなのでReflexを使用しているが,やってることは同じである

NVIDIAコントロールパネルの動作モード設定画面。「低遅延モード」の項目がReflexを強制的に有効化できる。「オン」と「ウルトラ」の違いは,後者のほうがより強めの「ゲーム処理のスローダウン」を行うという点だ
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 結果は垂直同期のオン/オフに関わらず,遅延は変わらないか,むしろ増大する傾向となった。「ウルトラ」に設定した特定の環境では,ごくわずかな遅延の減少が見られるも,いずれも測定誤差レベルといえる。結論としてはPC版ストリートファイターVでは,「Reflex設定は大きな効果が期待できない」ということだ。

 そもそも,Reflexは映像描画処理におけるGPU負荷率が高いときを想定したものなので,最新ハイエンドGPUのGeForce RTX 3090にストリートファイターVは軽すぎるのかもしれない。結果としては残念だが,それほど意外ではない結果と言える。
 NVIDIA自身も強制有効化時の効果は薄いことを認めており,効果を最大限に得るためには「NVIDIA Reflex SDK」を活用してゲーム開発を行うことが奨励されている。「Apex Legends」「Destiny 2」「Fortnite」「VALORANT」などでは,このSDKによってゲーム側の設定オプションからReflex関連の設定が可能なので,これらのタイトルをプレイしている人は試してみるといいかもしれない。

「ストリートファイターV チャンピオンエディション」公式サイト

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