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[GDC 2021]「Ghost of Tsushima」を作り上げるうえで重要となった5つの要素とは。物語の進行と戦闘の関係を解説するセッション・Master of the Katanaをレポート
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印刷2021/07/23 13:23

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[GDC 2021]「Ghost of Tsushima」を作り上げるうえで重要となった5つの要素とは。物語の進行と戦闘の関係を解説するセッション・Master of the Katanaをレポート

画像集#035のサムネイル/[GDC 2021]「Ghost of Tsushima」を作り上げるうえで重要となった5つの要素とは。物語の進行と戦闘の関係を解説するセッション・Master of the Katanaをレポート
 オンラインで開催中の世界最大規模のゲーム開発者会議「Game Developers Conference 2021」(以下,GDC 2021)では,AAAやインディーズ,クラシックな作品など,さまざまなゲームをテーマとしたセッションが行われている。

 その中でも目立つのが,ソニー・インタラクティブエンタテインメント(SIE)から2020年7月17日にリリースされたオープンワールド時代劇アクションアドベンチャー「Ghost of Tsushima」に関するセッションだ。開発者やメディアの投票で受賞タイトルが決定される「Game Developers Choice Awards」でも,GAME OF THE YEARを含む7部門にノミネートされ,BEST VISUAL ARTとAudience Awardの2部門を受賞するなど(関連記事),ゲーム関係者の中でも注目度が高いこともあってか,本作のストーリー,ビジュアル,音楽などをテーマとした多くのセッションが行われている。

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 その中で気になったセッションの一つが,GDC 2021の3日目(7月22日)に行われた「Master of the Katana: Melee Combat in Ghost of Tsushima」という,ゲーム進行とバトルシステムの関係をテーマとした内容の開発者向けケーススタディだ。その内容をゲームファン向けにまとめてレポートしよう。

左に映っているのが,スピーカーのChris Zimmerman氏。開発会社であるSucker Punch Productionsのstudio head at Emeritusで,本作では主に戦闘システムを担当した
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「Ghost of Tsushima」公式サイト



最も効果的なゲームの遊び方は,最も楽しい遊び方であるべき


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 Ghost of Tsushimaは,蒙古襲来(1274年の文永の役)という歴史的事実をテーマとした作品だ。ゲームの舞台となった対馬では,文永の役の際に80を超える武士(以下,ゲームに合わせて侍と表記)が戦死したと伝えられ,それがベースとなった本作の物語は,わずかに生き残こった“サムライ”の1人である主人公・境井 仁が,蒙古軍への反撃を決意するところで始まる。
 しかし,多勢に無勢。正面から正々堂々戦おうとしても,たった一人では強大な蒙古の軍団には対抗できない。そうして仁は,伯父の志村から教え込まれた“侍らしい戦い方”を少しずつ捨て,くないや煙幕,てつはうといった刀以外の道具(暗具)や闇討といった手段を用いる冥人(くろうど)として戦っていくことになる。

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 この世界観や物語を築き上げるうえで考えられたことが3つある。1つ目が「ゲームに没頭できること」。目標としたのが,プレイヤーを昔の日本に連れて行き,その世界に融合できるような“タイムマシンを作る”ことだった。
 2つ目は「地に足がついたゲームであること」。歴史的に正確なゲームを作るというより,しっかりと事実をベースとした“真実味のあるゲーム”を作ることに重きを置いていたという。「No monsters and no magic, just mud, blood and steel.」(モンスターも魔法もない,泥と血と鉄だけのゲーム)をキャッチフレーズに,ぶれずに真実味のあるゲーム作りに取り組んだそうだ。
 そして3つ目は「ゲームへのアクセスしやすさ」。これは多くのユーザー層の獲得を意識していたという話で,決して安くはない制作費だったという面も含め,ニッチなゲームではなく,何百万人もの人に楽しんでもらえるゲームを作ろうと考えていたという。

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 この3つの目標と制約がゲームデザインのベースとなり,それらを反映して作り上げられたゲームの重要な要素となったのが,今回のテーマであるMelee Combat(近接戦闘)だった。
 “サムライ・ファンタジー”である本作は,近接戦闘,とくに刀を使った戦闘が中心となる。まずはこの刀での戦闘が,見た目にも感触としても優れたものでないと成功しない。さらに近接戦闘は,敵が強大なため“卑怯な手段”を取らざるを得なくなった仁の境遇がバックボーンとしてある,物語の進行においても重要だった。
 もし暗具や闇討といった手段を使わず,正面からの斬り合いのみで戦えてしまっては,物語が破綻してしまう。集団に囲まれての決死の戦い。仲間との共闘。強敵との一対一の決闘……それらは剣戟アクションとしての楽しさだけではなく,物語の進行のうえでもスムーズに展開しなければならなかった。

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 それらの重要な要素となる近接戦闘の核にあると考えたのが, “Discipline and Precision”。直訳すると「規律と正確さ」だが,“静と動”“緊張と緩和”も含まれていると言えるだろう。すべての動作に明確な目的があり,それを正確にコントロールしてこなす。危険な状況下で静かに行動しその時を待ち,正確な瞬間に爆発的なアクションを起こすといった要素を指している。
 それらをプレイヤーが実行できるようになるため必要だと考えたのが,長い間の練習や経験,研究をしながらプレイヤー自身が仁とともに“マスター”へとなっていくゲーム進行だ。

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 仁とともに旅をし,ともに強くなっていく感覚。これをより深めるためにも重要としていたのが,近接戦闘の正確さによって生まれる剣戟アクションだ。それを作り上げるうえでぶつかった問題が,“人間の反応速度は思ったよりも遅い”ことだった。
 初期の段階ではNPCの反応時間を人間に近いものにするよう取り組んでいたが,これが大失敗。動作が遅く,ずさんで違和感があるものとなったのだ。この失敗は,時代劇の殺陣をイメージしてそれを再現しようとしたところが原因となっていた。型がある殺陣は,反応だけではなく,元から決まった振付があっての“予測”の動きが含まれているので,ゲームでそれを再現するには,それを踏まえて作り上げる必要があったのだ。

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 最大の目標であり着地点でもあったのが,純粋なスキルベースのゲームにしたいという点。この決定の一部に,「ゲームを完璧にプレイすれば,被ダメージなく進められる」というのがあった。どんなに多くの敵が襲ってきても,適切なタイミングで適切な行動を選択できれば,まるで時代劇の主人公のように振る舞い,無傷で敵を退けられる。
 しかしこれを再現するにも問題があった。最初は,素早い攻撃で斬りつけることで敵の行動が中断され連撃を行えるようにしたが,それが効果的すぎ,技巧的な楽しさが生まれなかったのだ。素早さがありながらパワフルな侍の戦い方を描くうえで,このような修正を繰り返しているうち,刀で突いても簡単に攻撃が中断されない盾持ちや耐久力の高い巨漢の兵が生まれ,敵を斬り捨てた刹那,そのシーケンスが終える間に次の敵を斬りつけるという,複数の敵を相手にした連続攻撃が生まれていく。

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 “スキルベースのゲーム”が達成できたと感じた最初のものは,敵の攻撃をタイミングよく弾く「受け流し」。つまりパリィだった。ただボタンを押してアクションを起こすだけではなく,コントローラで操っている感覚をなくし,実際に刀を振ったり攻撃を受け流したりしている感覚を生む。そういった没入感を生む最初の成功例となった。
 本作の近接戦闘において,受け流しが万能すぎるのも分かっていた。しかし,ほとんどのプレイヤーは,自分が最も効果的だと思う方法でゲームを進めるわけで,“プレイヤーが最も効果的だと感じる方法が,最も楽しいゲームのプレイ方法”でもある。その,プレイヤーが楽しめる要素としても,受け流しは重要な役割を担うと思ったのだ。

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やらないことへの罰は与えず,できたことへの報酬を


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 実際にプレイをして進めたテストによって,多様なプレイスタイルがゲームをより楽しむための鍵であることが明らかとなった。刀での斬り合いだけではなく,仁のスキルや暗具,闇討(ステルスキル)といったさまざまな方法でゲームをプレイした方が,ゲーム自体を深く楽しめるだけではなく,戦闘の結果も良くなることがデータとなって分かったののだ。
 しかし,ここで一つの課題とぶつかった。多くのプレイヤーは,自分が効果的だと思う戦い方を見つけると,新しいことを試さずにその方法でゲームを進める傾向にある。そういったプレイヤーに,新たな戦い方を選択してもらえるよう導く必要があったのだ。

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 プレイヤーに新たなスタイルを選択してもらうには,大きく分けて2つの方法がある。それは,「プレイヤーが使い過ぎているスタイルをやめさせる」か「新たなスタイルを魅力的に打ち出し,それを選択するよう促すか」だ。
 前者の場合,例えばそのスタイルが通じなくなる敵を出すか,逆に極端に新たなスタイルに弱い敵を登場させるか。または,使い勝手のいい技や道具に数の制限を加えたり,タイムアウトを追加したり,時間経過や使用回数で弱体化させたりという方法がある。しかしこれらは,プレイヤーが最も効果的で楽しいと感じているものを奪うことになり,また,明らかにプレイヤー自身が「自分がゲームをしている」と思わされるものがあるため,世界観の没入感を壊してしまう。プレイヤーのことを考えれば,後者の選択肢となるのは当然だろう。

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 使いすぎのスタイルを妨げるのではなく,使われていないものの使用を促す。そこでまず考えたのが,どのように強攻撃を交えて戦ってもらうかだった。
 初期のテストでは,重たい動きの強攻撃は使ってもらえず,素早い弱攻撃での連続攻撃を使うプレイヤー90%以上と圧倒的に多かった。しかし一方で,強攻撃などさまざまな攻撃を方法を交えて戦うプレイヤーのほうが,ゲームを楽しめるのはもちろんより効率的に戦いを進めているのも分かっている。
 強攻撃は,主に敵の防御を崩す際に使用されるので,これをもっと打ち出す必要がある。しかし,一度の強攻撃で崩せると機械的で面白みがないため,複数回の強攻撃で削る形にしたが,それだけでは強攻撃を使ってもらうアプローチとしては弱かった。

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 最終的には,画面上にあまり情報を載せたくないという思いがありながらも妥協し,「よろめきゲージ」を用意。相手の防御を削る感覚を視覚的に伝える方法を取った。単純に残量を表示することだけが目的ではなく,相手に激しい攻撃を加えたときに点滅するという表現で,強攻撃を当てた感覚を分かりやすくする理由もあった。
 さらに攻撃力を高め,“地に足のついた”部分は守りながら攻撃速度も速くして,現在の強攻撃へと仕上げていったという。

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 強攻撃と同じく,初期のテストでなかなか使ってもらえなかったのが暗具だった。前述のとおり,仁の物語を体験してもらううえで,それらを使った戦い方は必須となる。しかし,便利な闇討は使ってもらえるものの,多くのプレイヤーが刀か弓矢をメインに使用し,暗具を選択しなかったという。
 特定の暗具でしか倒せない敵を出すといった方法もあったが,これはプレイヤーの遊び方を制限するものになる。こちらも強攻撃と同様,プレイヤー自身の選択を促したい。そう思って考えたのが,“道具をより使いやすくする”ことだった。
 まずはくないを使いやすくした。射程距離がそれなりに長いことなどもあって照準が不正確だったため,当たらない武器として使ってもらえない。その認識を変えるため,複数を同時に投げられるスキル(隠刃)を追加し,当たる感覚がある武器にした。
 また,くない,とりもち玉,煙幕はどれかをセットする形にした。当初は,ボタンの組み合わせで戦闘中でも直感的に切り替えられるようにしていたが,これがプレイヤーに対して“考えるべきことを増やし過ぎる”ことになっており,プレッシャーを与えるものとなっていたと感じた。本作の戦闘においては,使い方を単純化したほうが,そのほかのアクションの流れで使ってもらえるようになると考えたのだ。

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 くないのドロップ率も高くした。手に入る数が少ないとプレイヤーは残数を気にしてしまい,ここぞという時のためにため込んで使用頻度が落ちてしまう。それを避けるためにも,(これについては運の要素もあるが)満タンのときでも手に入るくらいに調整したという。

 プレイヤーに新たなスタイルや技術を使ってもらおうとする場合,無理に使わせようとしてはいけない。そのために,これまでプレイヤーが選択してきたものを阻害するような方法もあってはならない。
 新しいスタイルが役に立つ理由をプレイヤー自身が理解できるよう,その優位性や魅力を明らかにし,必要があればそれを使ったことへの報酬も用意する。こうして“プレイヤーが新たな方法を選ばない”という問題をクリアしていったという。

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プレイヤーに新たな状況を提示し,ゲームに変化を生み出す


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 ゲームをプレイヤーに継続してもらううえで重要なのが,「ゲームがプレイヤーに新たな状況を提示する」こと。ゲームが進み,状況の複雑さが増すと,その分やり応えが生まれ,成功したときの達成感を与えられる。
 しかし,複雑さを追求しすぎるとプレイヤーにフラストレーションを与えてしまうことになるし,逆にシンプル過ぎるとすぐに攻略パターンができあがり,ゲームが簡単すぎてつまらなくなる。挑戦的でフェアなゲームにするには,プレイヤーが克服できる“適切な量の複雑さ”を盛り込むことが重要だと考えた。

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 その一つの例が敵の弓兵だ。モンゴル兵を扱ううえで,弓兵を取り扱わないわけにはいかない。しかしこれを本作の戦闘の要素として加えるには問題があった。
 仁は刀を中心として近接戦闘がメインである。その中でただ弓兵が矢を射掛ける役にしてしまうと,プレイヤーは画面外の見えないところから撃たれ続けるだけとなりフラストレーションが溜まってしまう。結果として,敵を見かけたらまず弓兵を全員闇討ちするという,戦闘自体が1つのパターンの繰り返しのつまらないものにもなる。
 とはいえ,近接戦闘中は画面外から射掛けないように設定すると,戦いになにも影響を与えない存在となってしまう。弓兵のいる近接戦闘は,弓兵のいない戦闘とは違う刺激を生まなければならない。この二つの選択肢はどれも素晴らしいものとはならなかった。

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 そこでたどり着いた解決策は,矢を射かけるときに音声で合図を送ること。画面外からの攻撃でも,プレイヤーはその声が聞こえたら回避行動をとることでそれを回避できるようになり,また目の前の敵の動きに加えて音への反応も求められるという,プレイヤーに新たな体験を与える方法にもなったのだ。
 敵が「撃つぞ」と言ってくるわけなので,これは違和感があるものかもしれなかったが,テストをしたところこの“ゲーム的なフィクション”は好意的に受け入れてもらえた。

 こうして多くの敵のタイプを作り,それらの組み合わせを変え,機動力が制限された場所や味方との共闘といった,戦闘が単調にならないよう多くのエンカウントやシチュエーションを用意した。
 またこれらは,前述した,プレイヤーに新たなスタイルを促す方法にもなっていた。プレイヤーは,提供されたスタイルを選択しないことはできるが,ゲームが用意した状況は避けることができない。このとき有効なものとして,使い慣れたものと違うスタイルがあればそれを試す場面にもなる。うまく設計されたエンカウントの形は,プレイヤーのスタイルを自然な形で変化させる大きな武器にもなったという。

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仁とともに旅をしてもらうため重要なのが最初の体験


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 本作で仁は,さまざまな経験と苦労を重ねることで,冥人としての戦い方を“達観”していく。そしてそれは,プレイヤー自身も進む道でもある。この,仁の旅がプレイヤーの旅としてしっかりと合致していることが,本作のゲーム進行を考慮する際の重要な部分となった。
 仁は自身の物語を進めていくうち,さまざまな道具や戦い方を新たに手に入れ,それを用いた戦いを求められるようになる。それは今まで触れたことがない,使い方もままならないものだが,鍛錬を積み,戦いの数をこなすことでそれをマスターしていく。
 それはプレイヤーも同様で,覚えたてのときは操作も慣れていないため練習が必要だが,繰り返し使うことでそれを交えた戦い方ができるようになる。考えることが少なくなり,本能的に反応できるようになっていくことが,仁のProgression(進歩 / 前進)ともつながっているというのだ。

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 それを体験してもらうためにも必要なのが,これまで説明された新たな道具を使ったスタイルだが,それらをどれだけ魅力的に作り上げても,新しいことに挑戦したがらないプレイヤーは多い。挑戦への一押しをするために最も重要なのが,最初の経験を素晴らしいものにすることにあった。
 プレイヤーが新しい道具やスタイルと出会ったとき,それが簡単に扱えるもので,明らかに効果的で,そして満足のいくものでなければならない。そうでなければ,プレイヤーは自分が使い慣れた方法に戻ってしまう。

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 具体的な例となるのが,本作の戦闘において重要なもののひとつである「構え」。実は開発の途中から追加されたもので,すでに複雑になっていたゲームをさらに複雑なものにしてしまうことを懸念し,当初は導入を見送っていたという。それは間違っておらず,実際に導入すぐのころはプレイヤーへの負担が増え,実施したテストでは思っていた以上に普及率が低かった。誰しもが不器用な侍にはなりたくないし,慣れ親しんだスタイルを貫き,格好良く戦いたい。
 構え自体のアイデア自体は好評だったため,これを諦めるのではなく,最初の出会いでその優位性を伝え,普及させることを考えた。例として語られたのが,最初に取得できる「水の型」。初期の構えである「石の型」に比べて倍の速さで相手のブロックを崩せる,盾を持った敵に対して有利な型だが,その優位性を知ってもらうべく,取得した直後に“トレーニング”として盾兵との戦いの場を用意したのだ。

 同様に,最初に手にする暗具であるくないも,最初の経験が良いものになるよう使用する場面を用意。メインストーリーを進めることで入手できる鎧は,初期に手に入れるものに比べてすべての能力が高いことはもちろん,その見た目も優れているものにした。
 最初の経験は,その後のすべてのことの基準となるもの。それが良くなければ,プレイヤーはその機能に興味を持ってくれない。ゲームを継続して遊んでもらううえで,第一印象は重要だったのだ。

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まず最初にやるべきことは“魔法”を見つけること


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 このように,大きな進化を遂げていったGhost of Tsushimaだが,開発ををとおして感じた最も重要で明白なものに,最初に見つけたアイデアを,うまくいく前にあきらめないことがあった。
 しかし最悪の問題として,絶対にうまくいかないアイデアをあきらめられないというのもある。それを避けるうえで大事なのが,多くのプロトタイプを作ってテストをして,そこから信頼できるデータを得ることだった。本作では6年間という期間,何度も思考しそのテストを重ねてきた。フルチームでの内部テストは約35回,外部のテストは約25回で,外部テストの内半分は,自然な形でゲームをプレイできるよう1週間かけて実施したという。

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 そうやって生み出されたアイデアの一つに「一騎打ち」があった。時代劇や映画が好きな人なら理解していたであろう,これは黒澤 明監督の映画「椿三十郎」の映画史に残る1シーンである,ラストの主人公・三十郎とその敵・室戸半兵衛の決闘の場面のオマージュだ。タイミングよくボタンを押すのではなく,長押しをタイミングよく離すことで鞘の内からの抜刀を表現。緊張感を出すため演出や構図もこだわった。
 ゲーム全体の文脈の中でどこにどうそれを生かすかは未確定だった段階でも,本作の緊張感や静と動を表現できるのとして明確な道筋と勝利を得た自信のある要素であり,それはプロトタイプの段階でE3 2018で披露したほどだった。結果的には過信していた部分もあり,ゲーム内のシステムとして機能させるまでに多くの技術的な面での作業が必要となったが,実際に本作の重要な部分となった。

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 新しいことに取り組むとき,まず最初にやるべきことは,“魔法”を見つけること。これまでの経験や,プレイヤーに与えたいと思うもアイデアの一部を特定する。毎回うまくいくとは限らないが,そうして生まれた魔法をより確実なものにしていく。
 ゲームのすべてに魔法がある必要はないが,魔法のような瞬間が十分にないと成功は難しい――Chris Zimmerman氏はそのように語り,Ghost of Tsushimaの開発で学んだ“ゲームデザインの5つのルール”提示したセッションを終了した。

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