2012年5月8日,GIGA-BYTE TECHNOLOGY(以下,GIGA-BYTE)は都内で報道関係者向け説明会「
GIGABYTE Tech Tour」を開催し,そのなかで,クロックアップ版グラフィックスカードシリーズ「
SOC」(Super Over Clock)の最新モデルを披露した。
6〜7月頃の投入予定として展示されたのは,「
GeForce GTX 680」(以下,GTX 680)搭載の「
GV-N680SO-2GD」だ。
GV-N680SO-2GDの開発途上版
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Etien Tsai氏(Specialist III, Marketing Department, Graphics Card Sales & Marketing Division, GIGA-BYTE TECHNOLOGY)
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説明会のために来日したGIGA-BYTEのEtien Tsai(イーティエン・ツァイ)氏は「完成度は言えない(笑)。6月のCOMPUTEX TAIPEI 2012で,最終版に近いものを見せられるよう努力している」と述べていたので,今回のサンプルのものがそのまま登場するわけではない。キモとなる部分にも改良が入るとのことなので,あくまで参考程度となるが,GIGA-BYTEがどんな製品を投入しようとしているのかを,ひとまずチェックしておくとしよう。
大型のVapor Chamberと5連の吸い出しファンを
搭載する「WINDFORCE 5X」
GV-N680SO-2GDが搭載するGPUクーラーは,3スロット仕様の「
WINDFORCE 5X」。GIGA-BYTEはこの数年,同社オリジナル設計のGPUクーラーに「WINDFORCE」というブランドを与えてきているが,その最新モデルということになる。
外観上のポイントは,「5X」の由来ともなっている
5連の40mm角クーラーだが,実のところ,WINDFORCE 5Xで真に注目すべきは,その構造そのものだ。
GV-N680SO-2GDを,PCI Express x16インタフェース側とは反対の側面から見たところ。1基だけ奥まっていたりもするが,ともあれ,40mm角ファンが5基並んでいる
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GPUと接触する部分には,Vapor Chamber(ヴェイパーチャンバー)技術を採用したヒートシンクが採用されているのだが,そのサイズは140×90mmと,端的に述べて巨大である。
Vapor Chamberはヒートパイプと似た原理で動作するようになっているため,銅に囲まれた空間(Chamber)には熱で揮発しやすい液体(以下,冷却液)が入れられているわけだが,そのサイズが大きいということは,いきおい,冷却液の量が増え,移動できる熱量が増えるということになる。
WINDFORCE 5Xの内部構造を示したスライド
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吸い出し型ファンの利点を示すスライド。図中,「Heat Zone」の場所がおかしいというか,あんなところに熱溜まりは生じないので,おそらくPCI Expressスロット周辺ということでいいはずだ
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移動できる熱量が増えると,今度は,それを受ける放熱フィン部を大型化して,十分な“受け入れ容量”を確保しなければならなくなるが,WINDFORCE 5Xでは,6mm径のヒートパイプで3スロット仕様の放熱フィン部へと送れるようになっている。
冷却の最終段を受け持つのが前述の5連ファンで,これらは,放熱フィン部の熱を吸い出して,カードの外へ排出するような設計だ。GPUやメモリチップ,電源部の熱を移動させるという観点では,かなり練られた設計になっていると述べていいのではなかろうか。
写真でファンが4基並んだところの上に銅板らしきものが見えるが,おそらくこれがVapor Chamber技術によるヒートシンクだろう
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今回の開発途上サンプルではファンが基板に対して垂直に取り付けられていた
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複数スロット仕様のグラフィックスカードを差すと,PCI Express x16スロット周辺が熱溜まりになってしまいがちという問題にも,吸い出しファンは効果があると思われる。
「でも,これだとPCケース内で,側板に向かって思い切り熱が放出されるわけで,大変なことになるのでは?」と思った人は鋭いが,実はそこが「開発途上」たるゆえんだそうだ。最終版では,PCに差したとき,
ファンが斜め上を向くようになるという。PCケースの背面ファン(など)を使って,効率よく筐体外へ排出しようというわけである。
PCケース内で動作デモ中のGV-N680SO-2GD。指で差しているように,最終製品でエアフローは斜め上に向かうという
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ちなみにファンは,負荷状況に応じて回転数や回転する数が自動制御されるとのこと。「3DMark 11」が動いていたデモ中の音はお世辞にも静かとはいえなかったが,このあたりは最終製品版を待つ必要がありそうだ。
GIGA-BYTEは,WINDFORCE 5Xが,最大では500Wクラスの熱に対応できるとしている。また,同じ動作音であればリファレンスクーラーより遙かに冷却能力が高く,同じ冷却能力なら遙かに静かだともアピールしているが,それには,ファン回転数と回転する数の自動制御が効いているとのことだ
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なお,現在のところ動作クロックは最終確定しておらず,当然のことながら価格も未定とのことである。GTX 680カードが欲しいけれども,いまはまだ予算の都合が付かないという人は,近い将来に向けて,GV-N680SO-2GDの動向には注意を払っておくといいかもしれない。
カード背面は多くがカバーで覆われているが,広い周波数帯域で高いノイズ吸収性を発揮し,電流供給と電源ラインの安定を図るとされるNECトーキン製のデカップリングコンデンサ「プロードライザ」を4基搭載するのは見て取れる。GV-N680SO-2GDは8フェーズ電源回路を搭載し,負荷状況に応じてフェーズ数が切り替えられるとされるが,その模様はプロードライザ脇のLEDから確認可能だ
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プロードライザを4基搭載することで,電流ノイズを24%低減できたという |
8フェーズ電源回路は,最も効率的として選択されたとのことだ |
GV-N680SO-2GDの開発にあたっては,オーバークロック動作を前提として,より高いクロックで動作できるチップを選別する作業が行われているとのこと。GIGA-BYTEはそれを「GPU Gauntlet Sorting」と呼んでいる |
GIGA-BYTEは独自のGPUオーバークロックツール「OC Guru II」を開発中。ただし,今回は開発途上版のインタフェースが示されただけで,いつ公開予定なのかも含め,詳細は残念ながら明らかにされなかった |
ゲーマー向け周辺機器ブランド「Aivia」が
日本上陸準備を開始
なお,説明会では,GIGA-BYTEの販売代理店であるCFD販売から,GIGA-BYTEのゲーマー向け周辺機器ブランド「
Aivia」(アイヴィア)を将来的に日本市場で展開すべく準備中という予告がなされた。
現時点では「いつ」「何が」といったレベルではないのだが,会場では“赤軸”搭載のワイヤードキーボード「
Aivia Osmium」と,左右対称設計のワイヤードマウス「
Aivia Krypton」が紹介されたので,写真メインでお伝えしておきたい。
●Aivia Osmium
Nキーロールオーバー対応のワイヤードキーボードで,メインキー部の左上に飛び出すような形でマクロ登録用のキーが用意されている。5つのプロファイルに最大25個のマクロを登録できるという。青色LEDイルミネーションはすべてのキーに埋め込まれており,マクロキーの隣にあるホイールで輝度を調整可能だ(※もう1つはボリューム調整用)。キーはいわゆる“Cherry赤軸”だ
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●Aivia Krypton
摩耗が少なく,速度も稼げるというセラミック製ソールと,いわゆるテフロン加工済みソールの貼られた底板が2種類用意され,ユーザーは好みに合わせて交換できるのがウリだ。底板は錘(おもり)のカバーになっているというのも特徴になっている。本体重量は110g(※ただしケーブルを含むかどうかは未公開)で,センサーは最大8200DPIに対応したレーザーモデルだそうだ。こちらもマクロ機能が用意されるという
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