下記の記事は,GAMEVU(→リンク)に掲載された記事を,許可を得て翻訳したものです。可能な限りオリジナルのまま翻訳することに注力していますが,一部日本の読者の理解を深めるために,注釈の追記や,本文や画面写真の追加・変更をしている箇所もあります。(→元記事)
韓国インターネットPCカフェ協同組合(KIPC)は,Riot Games Korea(以下,Riot)を相手取り,ソウル中央地方法院に仮処分申請書を提出した。この申請の背景には,15年にわたって積み重なってきた不満と,2度にわたる暫定的な合意がある。
発端は,2025年11月にさかのぼる。Riotは,2011年の韓国市場進出以降,15年間維持してきたPC房(PCバン)※向けプレミアムサービス料率を,1時間あたり233ウォンから269ウォン(約24.6円から28.4円)へ,約15%引き上げると通知した。Riot側は「業界最低水準の料率を15年間維持してきた末の,やむを得ない決定」と説明している。
※PC房:韓国におけるネットカフェのような店舗の呼称。日本のネットカフェのように,マンガ,個室,シャワー,仮眠といった複合的なサービスを提供する施設というより,高性能PCを備え,ゲームプレイに特化した店舗として発展してきた。
PC房向けプレミアムサービス料率とは,PC房事業者がRiotに支払う商業利用ライセンス料を指す。簡単に言えば,PC房は来店客にゲームを「商業的に提供する」事業者であるため,著作権者であるRiotに別途使用料を支払う仕組みになっている。個人が自宅でプレイする場合とは法的に異なる行為として扱われ,この料金は来店客がゲームをプレイした時間に応じて課される。
しかし,PC房事業者側はこの値上げに強く反発している。KIPCは,数年間にわたって繰り返されたサーバー障害,不十分なプレミアム特典,そして今回の一方的な料金引き上げを問題視している。累計納付額が1兆ウォン(約1055億8000万円)を超えているにもかかわらず,「加盟を解除しても客が気づかないほど」の特典しか受けられなかった,というのが事業者側の主張だ。
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1度目の合意は,同年12月に行われた。Riotは3か月間,引き上げ分の15%を全額ペイバックすることで,いったん事態の沈静化を図った。しかし,これは根本的な解決ではなく,問題の先送りに近かった。3か月後の2026年3月にペイバック措置が終了すると,双方は再び交渉のテーブルに着いた。
LoL Parkで行われた2度目の交渉は,初日に決裂の危機を迎えたものの,翌日に劇的に合意へと至った。今回は3か月間の10%ペイバックと,PC房専用イベントの強化が提示された。組合は「惜しさが残る」としながらも,最善の折衷案として受け入れた。
問題は,その後の3度目の収拾がなかったことだ。Riotは,2度目の合意による3か月間のペイバック期間が終わりに近づくタイミングで,新たな措置を示した。PC房プレミアムサービス契約を解除したり,料金の納付を中断したりするなどしてプレミアム特典が無効化された店舗に対し,5月21日以降,ゲーム接続そのものを技術的に遮断すると通知したのである。
これまでの対立が「いくら支払うのか」をめぐるものだったとすれば,今回は「支払わなければゲームを利用できない」という段階に踏み込んだことになる。
PC房事業者側の主張は明確だ。「リーグ・オブ・レジェンド」(LoL)と「VALORANT」は,誰でも無料でプレイできるゲームである。Riotの収益モデルはゲーム内アイテム販売に基づいており,PC房はむしろ新規ユーザーを呼び込む宣伝チャンネルとして機能してきた。そうしたPC房でゲームの起動そのものを妨げることは,市場支配的地位の濫用であり,公正取引法違反にあたるという主張だ。
一方,Riot側の反論にも一定の論理はある。一般利用者が自宅でゲームを楽しむことと,事業者が店舗でゲームを商業的に提供することは,法的に異なる行為だというものだ。著作権者にライセンスの対価を支払う必要があるB2B領域であり,正規に料金を支払っている加盟店との公平性の問題もある,という立場である。
実際,映画館が映画を上映する際に別途上映権を取得するように,商業利用に対するライセンス料の要求は,著作権法の考え方としても特別に新しい概念ではない。
しかし,法理論争に入る前に,現実の数字を見る必要がある。PC房リサーチサービスを提供するGameTricksによると,「LoL」は今年4月時点で,400週連続でPC房シェア1位を記録した。「VALORANT」も上位にランクインしており,両タイトルの合算シェアは40%台前半に迫る。
PC房の主要タイトルのうち,Riot作品が半分近い比重を占めていることになる。5月21日以降に接続が遮断されれば,それは単に特定のゲームが遊べなくなるという話にとどまらず,PC房の売上構造そのものを揺るがす事態になりかねない。Riotがこの事実を認識していないはずはない。この数字こそが交渉における実質的な材料であり,業界側が「市場支配的地位の濫用」を主張する根拠でもある。
この対立を単なる料金紛争として見ると,本質を見失う。問題の核心は,両者の関係における非対称性にある。PC房は,Riotのゲームが韓国で現在の地位を築くうえで,決定的な役割を果たしたインフラだった。
実際に「LoL」は,2012年前後に北米と欧州でPCクライアントのダウンロードを通じて成長したのとは異なり,韓国ではPC房を拠点として爆発的に広がった。当時,PC房シェアの上位に定着し,口コミで広がったことが,韓国でのヒットの決定的な足場になったというのが,業界の共通した見方だ。
「LoL」が国民的ゲームになるまで,PC房は単なる流通チャンネルではなく,コミュニティを形成し,新規ユーザーを生み出すエコシステムの一部だった。
ところが,Riotが韓国市場で地位を固めたあと,この関係は次第に一方的な方向へ傾いてきた,というのが業界側の見方だ。KIPCの言葉を借りれば,「パートナーではなく課金対象」になったのである。
Riotにも言い分はある。15年間料率を据え置き,交渉のたびにペイバックという譲歩案を提示した。サーバー安定性の改善と新規イベントの拡大も約束した。しかし,業界側の不満には,金銭的な補償だけでは埋められないものが含まれている。
数年間,週末のたびに繰り返されたサーバー障害への消極的な対応,特典があっても客が認識できないほど存在感の薄いプレミアムサービス,そして交渉過程で感じられる力関係の不均衡――。こうしたものが積み重なり,不信感を生んできた。
仮処分申請でどんな結果が出るにせよ,裁判所が判断できるのは,今回の遮断措置の適法性のみ。両者の関係そのものにある問題は,法廷の外で解決しなければならない。Riotが韓国のPC房をパートナーとして認識しているのか,それとも管理すべき流通網として見ているのか。この問いへの答えが,今後の方向を決めることになるだろう。
仮処分が認められれば,接続遮断はいったん止まり,本案訴訟へと移る。棄却されれば,数万軒のPC房の画面から「LoL」の接続ウィンドウが閉じられることになるかもしれない。しかし,どのような結果が出るにしても,この問題が本当に解決されるには,裁判所の決定文1枚よりもはるかに多くのものが必要だ。
15年分の不信は,3か月分のペイバックでは返済できない。Riotがその事実を直視しない限り,この請求書は積み上がり続けるだろう。
(著者:チャン・ヨングォン)
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