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Access Accepted第592回:クトゥルフ神話を題材にしたゲームが増える理由
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印刷2018/11/05 12:00

業界動向

Access Accepted第592回:クトゥルフ神話を題材にしたゲームが増える理由

画像(001)Access Accepted第592回:クトゥルフ神話を題材にしたゲームが増える理由

 Focus Home InteractiveのホラーRPG「Call of Cthulhu: The Official Video Game」がリリースされるなど,最近「クトゥルフ神話」を扱ったゲームタイトルが数多く登場している。確かに,「クトゥルフの呼び声」などに見られるダークで宇宙的な世界観はゲームのモチーフに適してはいるが,そこには,ほかの事情も絡んでいるようだ。


「Call of Cthulhu: The Official Video Game」がついにリリース


 北米時間の2018年10月30日,フランスのパブリッシャFocus Home Interactiveが,同じくフランスのデベロッパCyanide Studioが開発した新作ホラーRPG「Call of Cthulhu: The Official Video Game」をリリースした。発売と同時に,オーイズミ・アミュージオがPlayStation 4向けの日本語版を2019年春に発売することを明らかにしており,しばらく待てば日本語でじっくりとストーリーを味わうことができるのだ。

Focus Home Interactiveからリリースされた「Call of Cthulhu: The Official Video Game」。日本でもクトゥルフ神話のファンは多いだけに,日本語版の発売を期待していた人も少なくはなかったはずだ
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 さて,日本のゲーマーにも大きく注目されている「Call of Cthulhu: The Official Video Game」は,言うまでもないが「クトゥルフ神話」をモチーフにしている。
 釈迦に説法かもしれないが簡単に説明すると,「クトゥルフ神話」とは,1937年に46歳で早世したハワード・フィリップス・ラヴクラフト(H.P.ラヴクラフト)が1928年に発表した小説「クトゥルフの呼び声」を中心に,ラヴクラフトの死後,多くの作家達によって体系化された架空の神話だ。

 「クトゥルフの呼び声」は,太古の地球を支配していた「旧支配者」の暗示や,人類など取るに足らないものであるといった考え方など,従来のホラー小説とは一線を画する独自の世界観を持っていた。それを面白がったオーガスト・ダーレスクラーク・アシュトン・スミスロバート・E・ハワードなど,ラヴクラフトの友人でもある小説家達が名前や設定を共有した作品を発表することで,発展してきたとされている。

 クトゥルフを含む古代神達は,それまで姿を潜めていた深海から次第に姿を現す存在として多く描かれ,か弱い人間は彼らの姿を見たり,テレパシーを受けたりするだけで狂気に陥るという設定が,「Call of Cthulhu: The Official Video Game」にも使われている。

もともと意志はそれほど強くない主人公のエドワード・ピアース。第一次世界大戦の従軍経験から不眠症かつアルコール依存症を患っており,ゲームの冒頭でも「ウイスキーを飲むか飲まないか」といった選択肢が出てくる。彼は島を満たす,重苦しい超自然の力に耐えられるのだろうか?
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 これまでも何度か紹介したように,「Call of Cthulhu: The Official Video Game」は,テーブルトークRPG「Call of Cthulhu」の版元であるケイオシアムの公式ライセンスを取得して開発されたゲームで,登場するパラメーターの1つ「SAN値」(正気度)も,TRPGで使われているシステムだ。理性でコントロールできるものとできないものの違い,あるいは正気と狂気の境界線といったようなものが,これを使ってうまく表現されている。


次々とリリースされるクトゥルフもののゲーム


 さて,海外タイトルを丹念にフォローしている読者はすでにお気づきだろうが,「Call of Cthulhu: The Official Video Game」だけでなく,最近,クトゥルフ神話をテーマにした作品や,インスパイアされて生まれたという作品が次々に登場している。

 例えば,Ripstone GamesとAuroch Digitalが10月初めにリリースした「Achtung! Cthulhu Tactics」は,2013年にModiphius Entertainmentが発売したTRPG「Achtung! Cthulhu」を,「XCOM」風のタクティカルアクションに仕立てたものだ。クトゥルフ神話ものとしては珍しく,第二次世界大戦が背景で,ナチスがクトゥルフの狂気に触れたというユニークな設定が使われている。

 また,7月にリリースされたBlini Gamesの「Lovecraft's Untold Stories」は,タイトルにクトゥルフではなくラヴクラフトの名前を冠した作品。ローグライクなRPGとトップダウンのシューティングアクションをミックスしたゲームシステムは,クトゥルフ神話ものとしては珍しく,銃器や爆発物を駆使してカルト教団や邪神の眷属と戦っていく。

「富江」シリーズや「うずまき」など,ホラー漫画で知られる伊藤潤二氏の影響も受けたという「World of Horror」は,2019年のリリースが予定されている
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 ポーランドのYsbryd Gamesがパブリッシングを行うアドベンチャー「恐怖の世界」(World of Horror)は,日本のホラー漫画家である伊藤潤二氏とラヴクラフトにインスパイアされたという作品で,日本の小さな漁村を舞台に,口裂け女のような都市伝説をモチーフにしたストーリーを,モノクロのグラフィックスでまとめている。
 1C Companyから制作がアナウンスされた「Stygian: Reign of the Old Ones」もまたクトゥルフ・インスパイアの作品の1つで,手描きアート風の2Dグラフィックスが特徴的な横スクロール型のアクションRPGだ。タイトルの「Old One」とは旧支配者のことで,2019年のリリースが予定されている。

オープンワールのマップでさまざまな事件を解決する「The Sinking City」。NPC達にはエラがあったり,魚のような顔だったりするが,誰もそれを不思議に思わないという世界観だ
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 個人的に気になっているのが,Frogwaresが開発し,Bigben Interactiveから2019年3月に発売される予定のホラーアドベンチャー「The Sinking City」だ。1920年のアメリカ北東部の沿岸地方にある小さな町を舞台に,私立探偵の主人公チャールズ・リードが超自然現象の謎を追っていくという,「Call of Cthulhu: The Official Video Game」にも通じる王道的な物語であるという。こちらはオープンワールドが採用され,マップを自由に動き回ることが可能だ。

 ちなみに,Bigben Interactiveは,「Call of Cthulhu: The Official Video Game」を始めとする作品をFocus Home InteractiveでリリースしてきたCyanide Studioを6月に買収している。Focus Home InteractiveがアナウンスしたCyanide Studioの作品は,予定どおりFocus Home Interactiveから発売されることになるだろうが,クトゥルフ神話もののゲームについては今後,Bigben Interactiveの動きにも注目する必要がありそうだ。


クトゥルフ神話と著作権


 このように,クトゥルフ神話をテーマにしたゲームが次々にリリースされる理由の1つとして,著作権の保護期間の失効が挙げられそうだ。

 日本の著作権の保護期間は,著作者の死後50年で,それ以降は,例えば電子書籍やCDを出版したり,世界観や楽曲をアレンジして新作を作ったりすることが自由に行える。
 欧米は1990年代にこの保護期間を20年延長し,著作者の死後70年前後になった。アメリカではそれが,1998年に制定された著作権延長法(Copyright Term Extension Act)によってさらに延長され,1977年以前に発表された法人著作の保護期間が95年に,1978年以降の法人著作の保護期間は,発行後95年または制作後120年のうちの短いほうになった。

 ちなみにこの法律は,ミッキー・マウス(1928年に発表)の著作権失効を防ぐためウォルト・ディズニー・カンパニーが盛んにロビー活動した結果だと言われており,制定当時は「ミッキー・マウス保護法」などと揶揄された。

独自の世界観でクトゥルフ神話を作り上げたH.P.ラヴクラフト。人間を宇宙の片隅の無力な存在と捉える世界観は,現代人にも強くアピールする
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 さて,ラヴクラフトの「クトゥルフの呼び声」が「Weird Tales」という青少年向けの月刊短編小説誌に掲載されたのは1928年のことなので,著作権の保護は2023年まで続く計算になる。

 しかし彼は,クトゥルフという名前こそ使わないものの,後のクトゥルフ神話につながる世界観を持った小説をさまざまな媒体で発表しており,すでに著作権が失われた作品や,権利者が不明な作品も少なくない。これらを「クトゥルフ神話」と区別するため,「ラヴクラフト神話」と呼ぶ研究者もいるようだが,「ウルタールの猫」「ナイアーラソテップ」「無名都市」といった初期の怪奇小説は,すでにパブリック・ドメイン(著作権の失効した創作物)になっているという。

今後も次々にリリースされそうなクトゥルフ神話もののゲーム。「Call of Cthulhu: The Official Video Game」の日本語版を楽しみにしたい
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 「クトゥルフの呼び声」も,すでにパブリック・ドメインであると見なされているところもあるにはあるのだが,あと4年もすれば法律的にも自由な使用が可能になるわけで,それが最近の量産の呼び水になっているように思える。

 もっともラヴクラフト本人は,自分の生み出した世界が広がっていくことに喜びを感じており,彼の考えた設定や名前をほかの作家仲間が自由に使うことを許していた。当然ながら,著作権などには頓着していなかっただろう。「Call of Cthulhu: The Official Video Game」を初めとしてさまざまなクトゥルフ神話もののゲームが登場し,多くの人々がそれらを楽しんでいる姿は,彼にとっても望んだ未来なのかもしれない。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
  • 関連タイトル:

    Call of Cthulhu: The Official Video Game

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