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[インタビュー]今の時代におけるCEROの存在意義とは? 審査不通過による発売見送り,対象年齢外タイトルのヒット,IARCなどへの見解を聞く
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印刷2023/05/23 08:00

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[インタビュー]今の時代におけるCEROの存在意義とは? 審査不通過による発売見送り,対象年齢外タイトルのヒット,IARCなどへの見解を聞く

 日本国内で販売されるゲームソフトの多くは,特定非営利活動法人のコンピュータエンターテインメントレーティング機構(以下,CERO)による審査を受けており,ソフトのパッケージや公式サイトには,その内容に応じた年齢区分などのマーク(CEROレーティングマーク)が表示されている。

画像はCERO公式サイトより
画像集 No.001のサムネイル画像 / [インタビュー]今の時代におけるCEROの存在意義とは? 審査不通過による発売見送り,対象年齢外タイトルのヒット,IARCなどへの見解を聞く

 これによって,ユーザーは購入前であっても,ゲームソフトの表現内容をおおまかに把握できる。特に子どもを持つ親にとっては,子どもが欲しがるゲームソフトがちゃんと年齢に合っているものなのかを判断する基準として,大いに役立てられるはずのものだ。

 だが,2002年のCEROレーティング制度開始から20年以上が経った昨今,その存在意義に疑問を感じるような出来事が立て続けに起こっている。

 CEROレーティングでC(15歳以上対象)の「フォートナイト」やD(17歳以上対象)の「Apex Legends」といったタイトルが,小学生の間で爆発的に流行していることは読者の多くも知っているだろう。YouTubeやSNSなどでは,未就学児がプレイしている光景も見られる。

 メーカー側でも,ゲームアカウントにCEROレーティングに応じた年齢制限を設けたり,ペアレンタルコントロール機能を利用すればダウンロードできないようにしたりといった施策は行っているが,保護者側がそういったことを知らず,好きなように遊ばせているケースが多いようだ。一方でCEROレーティングを知っている人からは,年齢区分と実際のプレイヤー層に乖離があることを指摘する声もある。
 
 先日,2023年4月には,家電量販店を展開するノジマが,CEROレーティング「Z」指定ソフトの販売を中止すると発表した。同社はその理由を「より安心・安全にお買い物をしていただく環境を提供するため」と説明しているが,ゲームソフトを安心して購入できるようにするためのレーティング制度が,逆の効果をもたらしてしまったと捉えることもできるだろう。

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 ノジマは,ゲームソフトを扱うノジマ全店舗で,CEROレーティングがZ指定のゲームソフトの販売を,2023年4月1日に中止した。理由ついて同社は,「来店するすべての人に,より安心・安全に買い物をしてもらう環境を提供するため」としている。なお,ノジマオンラインでの販売も順次中止を予定している。

[2023/04/03 17:35]

 CEROの審査に通らなかったことを理由に,国内での発売が見送られたタイトルも目に付く。その中には「The Callisto Protocol」や,コンシューマ機向けリメイク版「Dead Space」といった話題作もあり,その決定に不満を漏らすプレイヤーも多い。

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[2022/12/17 21:09]

 ゲームメーカー側では,CERO以外のレーティング制度を採用する動きが進んでいる。ニンテンドーeショップは2020年に,PlayStation Storeは2022年に,IARC(the International Age Rating Coalition)の審査による年齢区分(IARC汎用レーティング)を表示したソフトの配信を開始した。
 IARCは,北米のESRB(Entertainment Software Rating Board)や欧州のPEGI(Pan European Game Information)といったゲーム評価機関により管理されている国際年齢評価連合で,以前からMicrosoftストアやGoogle Playなどで採用されていた。日本メーカーのタイトルにも,CEROではなくIARCの年齢区分を表示しているものがある。

※IARC汎用レーティングの導入時期についての記述に誤りがありましたので,2023年5月23日12:00に記事を修正しました。


 こういった状況の中で,CEROは今後をどう見据えているのか。それをうかがうべく,4GamerはCEROに対面インタビューを申し込んだ。CEROの希望によりメールインタビュー形式となったが,質問と回答を本稿に掲載するので,確認してほしい。なお,CEROからの回答は,そのまま掲載しているため,表記などに揺れがあるが,その点はご了承いただきたい。

CEROのレーティング制度を改めて解説

 CEROは,特定の会社や団体によらない独立機構として,2002年6月に設立された。同年10月から,ゲームソフトにおける表現内容を,性,暴力,反社会的行為,言語・思想関連という4つのカテゴリーで,CERO倫理規定に基づき審査している。
 
 当初は「全年齢」「12歳以上対象」「15歳以上対象」「18歳以上対象」の4区分だったが,2006年に改定され,現在は以下の5区分となっている。

A:全年齢対象
B:12歳以上年齢対象
C:15歳以上対象
D:17歳以上対象
Z:18歳以上のみ対象
※18歳未満者に対して販売したり頒布したりしないことを前提とする

 「A」は「年齢区別対象となる表現・内容は含まれていない」ソフトとなり,他はそれぞれの年齢区分の表現や内容があることを示す。
 18歳以上のみを対象とする「Z」は,上記の通り「18歳未満への販売や頒布を行わないことを前提とする」という,一歩踏み込んだ補足があり,これを受けて販売や陳列方法を変えている店もある。

ソフトのパッケージには,対象年齢を決定した根拠を示す「コンテンツアイコン」も記載される(画像はCERO公式サイトより)
画像集 No.002のサムネイル画像 / [インタビュー]今の時代におけるCEROの存在意義とは? 審査不通過による発売見送り,対象年齢外タイトルのヒット,IARCなどへの見解を聞く


CEROへのメールインタビュー


4Gamer:
 CEROの設立以前から,各メーカーやCESA(一般社団法人コンピュータエンターテインメント協会)による表現の審査は行われていましたが,CEROによるレーティングが始まることになったきっかけを教えてください。以前4Gamerが行ったインタビュー(関連記事)では,「倫理規定が非常に抽象的だった」ということが挙げられていましたが,規定の改定ではなく,団体の立ち上げという形になったのはなぜでしょうか。

CERO:
 当時のCESAの倫理規定が抽象的だったことに加え、ゲームの全数審査の実施を前提とした場合、CESA内部では業務量の観点で対応が困難であること、独立した第三者機関が審査することで審査結果への信頼を得ることが期待できる、などの理由により新組織の設立という結論になりました。

4Gamer:
 現在,CEROレーティングには「A」「B」「C」「D」「Z」の5区分があります。策定にあたってはESRBを参考にしたとのことですが,日本市場に向けてどのようにアレンジされたのでしょうか。

CERO:
 CERO設立の検討段階の時期に、レーティングの年齢区分を決めるにあたり、米国のESRBをはじめ諸外国の審査機関の調査を行いました。その結果をふまえ、各学校の卒業年齢、責任年齢などを加味して「全年齢対象」「12才以上対象」「15才以上対象」「18才以上対象」以上4区分としました。その後2006年に改定を行い現在の5区分となっています。

4Gamer:
 CEROレーティングで対象年齢外となるタイトルについては,「遊んではいけない」「遊ぶべきではない」「保護者が許可すれば問題ない」といったように,人によって認識が違っていると感じます。改めて,公式の定義を明確にお伝えいただけないでしょうか。

CERO:
 本機構ではゲームソフトの年齢別レーティングを実施することにより、ユーザーや保護者、一般市民に対しゲームソフトの選択に必要な情報を提供し、青少年の健全な育成や社会の倫理水準の適正な維持を計ることを目的としています。年齢別レーティングは強制力をともなうものではなく、あくまでゲームソフト選択の目安をご提供するものであり、それをどのように活用するかは利用者側が判断されるものです。

4Gamer:
 暴力表現や性表現の許容度は,国や地域によって大きく変わってくるかと思います。CEROレーティングは国内で販売されるゲームソフトを対象としていますが,その基準は日本国内のみを前提としたものでしょうか。それとも,世界的なスタンダードを考慮に入れているものでしょうか。

CERO:
 本機構のレーティング審査の対象は日本国内で販売されるタイトルであり、審査基準は日本国内のみでの利用を前提としています。

4Gamer:
 審査方法や審査基準は,CERO発足の2002年から変わっていないのでしょうか。時代背景などとともに変更された部分があれば,具体的に教えてください。

CERO:
 外部の審査員による審査という方法は設立以来変更しておりません。
 審査基準は社会の価値観や倫理水準の変遷に慎重に対応し、必要に応じて見直すべきものと考えます。2006年の年齢区分の見直しを含めて変更を行っていますが、詳細は差し控えさせていただきます。

4Gamer:
 現在,審査員は何名ぐらいいらっしゃるのでしょうか。在任期間や,入れ替えの頻度などについても教えてください。

CERO:
 研修を修了した20才代から60才代までの男女数十名の方が審査員として登録をされています。多くの方が審査員歴10年以上となっておりますが、入れ替えという考え方はございません。

4Gamer:
 「Apex Legends」や「フォートナイト」など,CERO CやDのタイトルが,その対象ではない小学生に人気です。一部の小学生向け雑誌などでも(断りなどはあるにせよ)大きく取り扱われており,CEROレーティングが意味を成していないようにも感じます。この現状をどう捉えていらっしゃいますか。

CERO:
 本機構ではゲームソフトの年齢別レーティングを実施することにより、ユーザーや保護者、一般市民に対しゲームソフトの選択に必要な情報を提供し、青少年の健全な育成や社会の倫理水準の適正な維持を計ることを目的としています。年齢別レーティングは強制力をともなうものではなく、あくまでゲームソフト選択の目安をご提供するものであり、それをどのように活用するかは利用者側が判断されるものです。

4Gamer:
 子どもを持つ保護者にも,CEROレーティングを知らない,あるいは知っていても守らない方が散見されます。そういった方たちに対して,具体的に働きかけたり,国や自治体の教育委員会等と一緒に取り組んでいくことは考えていらっしゃいますか。

CERO:
 CERO年齢別レーティング制度の認知度や理解度の向上のため、従来から地方公共団体、教育現場や出版界などと協働しておりますが、今後ともそうした活動に努めてまいります。

4Gamer:
 家電量販店のノジマが,CEROレーティング「Z」指定ソフトの販売を中止すると発表し,その理由を「より安心・安全にお買い物をしていただく環境を提供するため」と説明しています。「対象年齢の表示により,安心して購入できる」というCEROレーティングの目的が理解されていない,あるいはCEROレーティングでは十分でないと判断されたのかもしれないと感じていますが,この件についてのCEROの見解をお聞かせください。

CERO:
 本機構ではゲームソフトの年齢別レーティングを実施することにより、ユーザーや保護者、一般市民に対しゲームソフトの選択に必要な情報を提供し、青少年の健全な育成や社会の倫理水準の適正な維持を計ることを目的としています。一般論となりますが、ゲームソフト選択の目安をご提供する年齢別レーティングが、結果としてゲームソフトの購入機会を阻害する形で利用されるようなことがあるとすれば遺憾です。

4Gamer:
 文部科学省によるGIGAスクール構想によって小中高生が1人1台の端末を持つようになりましたが,一部の学校や自治体では,端末にかけられた規制によって使いにくくなっていたり,本来家庭でも学ぶために配付した端末が持ち帰り禁止になったりという,本末転倒な事態が起こっています。また,「香川県ネット・ゲーム依存症対策条例」のように,インターネットやゲームの利用時間を規制する条例も施行されるなどしています。
 従来から,子どもたちに向けての対応はCESAが行っていますが,このような時代の変化に対し,どのような施策を行っていくべきでしょうか。CEROとしてのご意見をお聞かせください。

CERO:
 本機構はゲームの年齢別レーティング制度を運用する団体であり、そのご質問にお答えする立場にございません。

4Gamer:
 「The Callisto Protocol」や,コンシューマ機向け「Dead Space」は,CEROの審査に通らなかったことを理由に国内での販売が見送りとなりました。両作には,CEROが定める禁止表現があったということでよろしいでしょうか。あった場合,それはどの表現項目に該当するでしょうか。

CERO:
 個別タイトルの審査に関するご質問には回答を差し控えさせていただきます。

4Gamer:
 「The Callisto Protocol」や「Dead Space」はESRBやPEGIの審査には通り,北米や欧州では問題なく販売されています。販売中止はメーカーの判断とはいえ,見方によってはESRB・PEGI両団体とCEROの審査基準の違いによって,日本でプレイできないゲームが生まれてしまっているということもなります。
 全世界での発売を前提としたタイトルは今後一層増えていくと思いますが,基準の変更は考えていらっしゃいますか。

CERO:
 国や地域によって法律や倫理水準、価値観などに違いがあるように、ゲームの表現内容についての受け止め方に差異が出ることは自然なことであり十分ありうると考えています。なお、各タイトルのグローバル展開の有無が審査基準に影響を与えることはありません。

4Gamer:
 SteamやEpic Games Storeなどには,レーティングの表示なしで販売されているタイトルが多くあります。また,PlayStation Storeやニンテンドーeショップなどは,CEROに加えてIARCレーティングを新たに導入し,CEROの審査を経ていない日本メーカーのタイトルも販売されています。
 日本国内で販売される“パッケージ版”は現在,ほぼすべてがCEROの審査を受けてはいますが,ダウンロード販売の比率が増えている現状を踏まえると,このままではCEROの審査を経てリリースされるタイトルが減っていくのではないかと感じています。この点についてどうお考えでしょうか。また,検討中の施策などがあれば,あわせて教えてください。

CERO:
 IARCは、そのシステムの特性上、レーティング付与後の修正があり得るという可逆性を踏まえて、パッケージタイトルは審査対象外となっています。パッケージタイトルはパッケージ制作後の修正が多大な手間を伴うことから審査機関の正確な審査が求められております。本機構は昨年度もパッケージタイトルやダウンロードタイトルなど1000件を大幅に超えるレーティング審査を行っており、今後ともこの事業に注力してまいります。

4Gamer:
 一部のインディーズゲーム開発者から「CEROの審査料金がハードルになってコンシューマゲームに進出しにくい」といった声を聞くことがあります。IARCは審査料がかからないため,インディーズゲームでは特に利用しやすくなっているようですが,CEROで審査料の引き下げなどは考えていらっしゃるでしょうか。

CERO:
 パブリッシャーが質問票の質問に回答してレーティングを得るIARCと、本機構の審査方法は全く異なります。審査料金の改定は検討しておりません。

4Gamer:
 IARCにはESRBやPEGIが加盟していますが,CEROに加盟のお考えはあるでしょうか。理由も含めて,方針を聞かせてください。

CERO:
 IARCが提供するレーティング決定のための質問項目と本機構の審査基準との齟齬が大きいことなどにより、現時点でIARCへの加盟は検討しておりません。


時代に合ったレーティング制度とは?


 質問と回答は以上となる。メールインタビューという形式に加え,CEROから「今回の回答に対する重ねてのご質問はご容赦願います」という要望があったため,質問と回答が今ひとつかみ合っていない点などについてはご容赦いただきたい。

 CEROの立場上,多くを語ると表現の自由を侵しかねないといった懸念があることは理解できるのだが,質問する側としては,もう少し胸襟を開いてほしかったというのが正直な感想だ。

 CEROレーティングについては,「あくまでゲームソフト選択の目安をご提供するものであり、それをどのように活用するかは利用者側が判断されるものです」という回答があった。「Apex Legends」や「フォートナイト」を小学生がプレイしていても,CEROとしてはそこへのアクションを起こせないのは理解できるが,そもそも利用者側はCEROレーティングを判断材料として,どれだけ“活用”しているのだろうか。

 CEROの認知度向上について「従来から地方公共団体、教育現場や出版界などと協働しております」という回答もあったが,中学生の子を持つ筆者が,これまで学校や自治体からCEROのついての説明を受けた記憶はない。具体的な活動内容については,ぜひ重ねて質問したいところだった。

 個人的には,ゲームメーカーが少なくない時間や手間をかけてCEROのレーティング制度を遵守する一方で,購入者側の多くはそもそもレーティング制度を詳しく知らず,結果的に守っていないのが現状ではないかと感じている。

 CEROが誕生して20年以上の月日が流れ,テクノロジーの加速度的な進化により,ゲームの情報が簡単に入手できるようになった。ゲームプレイ動画の公開を認めているメーカーも多く,ゲームの在り方やプレイヤーの遊び方は大きく変わっている。

 ゲームの表現内容を発売前に確認することも容易になった。かつては雑誌などで静止画を見るくらいしか手段がなかったが,現在はYouTubeなどで実際のプレイの様子をすぐに確認できる。我が子がプレイするゲームの内容が気になる保護者の中には,まずそちらで調べる人も多いだろう。見方によっては,レーティング制度の存在意義が問われる状況とも言える。
 CEROからは「審査基準は社会の価値観や倫理水準の変遷に慎重に対応し、必要に応じて見直すべきものと考えます」という回答はあったが,今がその時期であると考えているのかどうかは分からなかった。

 では,現代にあったレーティング制度とはどんなものだろうか。単に年齢区分を変更するといった対応では足りないことはすぐ分かるだろう。そもそも,個々の家庭や個人の考え方がより尊重される中で,「●歳以上」という大きな括りが合っていない気もする。時代の流れとともに,レーティングという制度そのものが根底から大きく変わっていく時期に差しかかっていることは,今回のCEROの回答にも垣間見えるように思う。
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