紹介記事
「NEOGEO: A VISUAL HISTORY ネオジオ〜目で楽しむ軌跡〜 JAPANESE EDITION」を紹介。公式アートブックの日本語版が登場
ひとつの筐体で複数のゲームを稼働させられるMVS筐体と,そのMVS筐体で稼働するアーケードゲームをROMカセットで家庭用ゲームとして提供したAES――いわゆる家庭用NEOGEOの両輪で,SNKの代名詞的存在になったシステムウェアが「NEOGEO」だ。
本書は,1990年代を生きたゲーマーなら一度は耳にしたことはあるであろうNEOGEOの歴史をまとめた公式アートブックとなる。ここでは,ファンアイテムとしてだけでなく,資料的価値も高い本書の内容をお届けしていく。
NEOGEOの歴史をアートで振り返る
本書は5つの章で構成されているが,メインとなるのは14ページから375ページにわたって展開される「The NEOGEO Years 1990-2004」だ。この章では,1990年に始まったMVS筐体の稼働から2004年の「サムライスピリッツ零SPECIAL」稼働まで続いたNEOGEOの歴史を多種多様なアートで振り返れる。ボックスアートや設定資料,ピクセルアートだけでなく,当時の宣伝資料や印刷配布物といった,なかなかお目にかかれない逸品も収録されている。
本書の副題である「目で楽しむ軌跡」を最も体現していると感じられたボックスアートとピクセルアートのコーナーは,NEOGEOの看板タイトルである「餓狼伝説」「ザ・キング・オブ・ファイターズ」「サムライスピリッツ」といったシリーズを厚く扱いつつ,格闘ゲーム以外からも幅広く画像がチョイスされているのが印象的だ。
とくに実際のゲーム映像――ドット絵を大きく掲載しているピクセルアートのコーナーでは,「ASO II ラストガーディアン」「クロススウォード」「バーニングファイト」といったNEOGEO初期の佳作や,「ベースボールスターズプロフェッショナル」「ビッグトーナメントゴルフ」といったスポーツゲームがメジャータイトルと同列に扱われており,格闘ゲーム以外のジャンルでも高い表現力を見せていたSNKと開発に携わったサードパーティの実力をうかがい知ることができる。
また,MVS筐体や家庭用NEOGEO(AES)といったハードや周辺機器の写真,いまでも謎の人物である「ゲーマント」をあしらったNEOGEO初期の宣伝資料,SNKが運営していたアミューズメント複合施設「NEOGEOランド」の外観など,ゲーム以外の資料が充実している点も往年のファンには見逃せないポイントと言えるだろう。
NEOGEO以外のSNKヒストリーもフォロー
NEOGEOの歴史をビジュアルで振り返ると銘打つ本書だが,新日本企画時代のアーケードゲームや携帯ゲーム機のNEOGEOポケットなど,NEOGEOの枠に収まらないSNKの歴史もしっかりとフォローされている。また,各章の頭に掲載されているテキストや画像を解説するキャプションには,SNKの歴史を大まかに理解できる情報が盛り込まれており,1990年代のSNKやNEOGEOの隆盛ぶりをそれほど覚えていない人が読んでも,興味をそそられる内容になっている。
さらに,現在のSNKに在籍している,デザイナーのFALCOON氏,「KOFXIV」のディレクターである小田泰之氏,サウンドコンポーザーの麻中秀樹氏らへのインタビューや,資料提供などで本書の製作に大きく貢献したであろうアメリカ,イギリス,イタリアのNEOGEOコレクターの編集後記的な対談といった,NEOGEO全盛期や現在の状況を交えた情報も本書には掲載されている。
写真と画像がメインの本ではあるが,隅々までテキストを読もうとするとかなりの時間を要するので,NEOGEOやSNKの歴史,現在の状況を知りたいという人が手に取っても十分に楽しめる内容になっているはずだ。
「NEOGEO: A VISUAL HISTORY ネオジオ〜目で楽しむ軌跡〜 JAPANESE EDITION」は,現在書籍に加え,電子書籍版(Kindle)も発売中だ。ゲーム書籍としてはやや高額で,軽い気持ちで購入できる本ではないかもしれないが,収録されている写真と画像は質・量ともに充実しており,テキストや巻末に掲載された発売ソフトリストを含む情報量,資料としての価値は非常に高い。いまもなおSNK,NEOGEOのゲームを愛するファン,1990年代のゲームセンターを生きたアーケードゲーマーは一度手に取ってみてはどうだろうか。
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