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CG映画の素材でVRデモを作れる時代が到来。「Unreal Engine 4」の最新事情をGDC 2015のEpic Gamesブースでチェックした
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印刷2015/03/16 18:04

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CG映画の素材でVRデモを作れる時代が到来。「Unreal Engine 4」の最新事情をGDC 2015のEpic Gamesブースでチェックした

GDC 2015の展示会場「Expo」にてNVIDIAとEpic Gamesは,まるで姉妹ブースのように並べた展示を行っていた
Unreal Engine
 GDC会期中にEpic Gamesは,同社の最新ゲームエンジンである「Unreal Engine 4」(以下,UE4)の利用を無償化するという発表を行い,業界に大きな衝撃を与えた(関連記事)。
 無償化といっても,「何を作ってどれだけ売っても一切お金はいただきません」というわけではなく,ゲーム開発を完了するまでの使用料は無償として,そのゲームを販売して売り上げを得た場合に,ロイヤリティをEpic Gamesに支払うという成功報酬型ビジネスモデルを採用したのである。
 ゲームエンジンではないが,Epic Gamesの発表に続いてNVIDIAも,UE4の標準物理エンジンとして採用されている「PhysX」のソースコードを無償公開する方針を発表している(関連リンク)。

 インディーズゲーム開発コミュニティに人気の高いUnity Technologiesの最新ゲームエンジン「Unity5」も,売り上げが10万ドル未満であればロイヤリティフリーの完全無償で利用できることを発表しているほか(関連記事2),Half-Lifeシリーズでお馴染みのValveも,同社のゲームエンジン「Source 2」を基本無償で提供するというプランを打ち出してきている。世はまさに「ゲームエンジン無償化戦国時代」といったところか。

 そんな環境を反映してか,GDCの展示会場である「Expo」では,ゲームエンジンメーカーのブースに例年よりも多くの来場者が訪れている様子が見られた。本稿では,とくに人気を集めていたEpic Gamesブースでの展示に焦点を当ててレポートしたい。


映画の素材で作るVRデモは,VRコンテンツのもう1つの本命?


体験コーナーに張り出されていた「Thief in the Shadows」のポスター
Unreal Engine
 Epic Gamesブースで人気を集めていたのは,Oculus VRが開発している仮想現実(以下,VR)対応HMD「Rift」の第3世代試作機,コードネーム「Crescent Bay」(クレセントベイ)を使った,GDCで初披露された新作VRデモだった。
 そのタイトルは「Thief in the Shadows」(暗闇の中の盗賊)。ファンタジー映画「ホビットの冒険」の第2弾である「ホビット 竜に奪われた王国」から,邪竜スマウグの巣に主人公ビルボが潜り込むクライマックスシーンを体験するというものだ。

 開発したのは,映画版のCG制作を担当したCGプロダクションのWeta Digital。ロード・オブ・ザ・リングシリーズだけでなく,「アバター」やアイアンマンシリーズ,猿の惑星シリーズなどのCG制作を担当したCGプロダクションだ。
 Epic Games副社長のJay Wilbur氏によると,「このプロジェクトはWeta Digital自身の発案によってスタートした。デモの開発にあたって,UE4の活用法に関する技術的なノウハウの支援はEpic Gamesから行ったが,実質的な制作はWeta Digital自身による」というから驚かされる。業界トップのCGプロダクションが,Unreal Engine4に興味を持ったというのも面白い。

 さて,そのVRデモだが,実際の映画で使われた3Dモデルやアニメーションデータ(モーションデータ),サウンドデータをUE4で使えるように変換,それらを流用して制作されたとのことで,名実ともに映画CGクオリティの作品となっていた。マテリアル(材質)表現は,映画用のものとシステムが違うのでそのまま変換するわけにはいかなかったそうだが,UE4が採用する物理ベースレンダリング機能を使って,Weta Digitalのアーティストが一番原作に近いマテリアルを制作して組み込んだというから,本家による忠実な再現と言って間違いない。

VRデモ「Thief in the Shadows」の1シーンより
Unreal Engine

 あまりに面白かったので,筆者は行列に並んでこのVRデモを二度も体験した。
 デモは,膨大な数の金銀財宝がそこかしこに積み上げられた場面から始まる。綺麗な曲面を描くように積み上がった財宝は,まるで黄金の砂丘に見える。奥の方は暗闇でよく見えないが,劇中でトーリン・オーケンシールド一行が立っていた絶壁上にあった踊り場のような場所は,薄明かりで照らされているのでよく見える。剣を携えた戦士の巨石像も見事なスケール感で表現されていた。あちこちで金貨の山が崩れ落ちる「チャリチャリ」といった音が,長くかすかな残響をともなって聞こえる。サウンドも臨場感たっぷりだ。
 なんだか冷気がこちらに吹いてくるような気さえしたのだが,それはデモ機を動かしているPCの冷却ファンからの排気風だった(笑)。

デモ機(左)はNVIDIAの新型GPU「GeForce GTX TITAN X」を1基搭載しているとのこと。体験中は右写真のようにデモ機の前に位置するため,排気の風が図らずもVR体験を盛り上げる(笑)
Unreal Engine Unreal Engine

 4Gamerでも何度か報じているとおり,Crescent Bayは頭部の向きや位置に加えて,360度の回転も識別できる。そこで頭をあちこちに動かしてみると,金銀銅の金属材質で表現された金銀財宝の山が,異方性のハイライトをこちらに見せてくる。頭の動きに連動した,文字どおり「お宝のキラキラ感」を体験できるわけだ。

Crescent Bayを装着してThief in the Shadowsを体験中の筆者(左)。しゃがんで視線を下に向けると,金銀財宝がそこかしこに(右)!
Unreal Engine Unreal Engine

 デモの体験スペースは,床にウレタンのようなマットレスが敷いてあり「この範囲であれば四つん這いになって360°動いてもいい」という。そこで四つん這いになってシーンを観察してみたが,足元にも膨大な金貨が敷き詰めてあるものだから,思わず両手ですくい上げてしまった(笑)。

このマット上(左)であれば自由に動いていいとのことで,目一杯動かせてもらった。右写真は,足下に敷き詰められた財宝を触ろうとしているところ。もちろん実際には触れないのだが
Unreal Engine Unreal Engine

 そうこうしているうちに,スマウグが金貨の中から首をもたげて登場。凄みのある重低音の声で「ワレの宝を奪おうとするのは誰だ!」とうなりながら,筆者の周りを闊歩する。
 しゃがんで四つん這いになった筆者の目前には,宝剣や鎧兜が立てかけられた宝箱が置いてあるので,主人公ビルボ・バギンズのように,この宝箱に身を隠してみた。宝箱のへりを目前5cmくらいまで近づけて隠れると,完全に視界は宝箱の上蓋だけになるので,ここからCrescent Bayの特徴を活かして,首をわずかに上にあげたり横から首を出したりしてみたところ,ちゃんと宝箱越しにスマウグが見えるものだから,思わず感動してしまう。

スマウグがこちらに迫ってきたとき,Epic Gamesのスタッフが突然,体を触って驚かすものだから思わず驚く筆者(左)。卑怯な!(笑)。右写真は宝箱に手を付いてスマウグを観察中の筆者
Unreal Engine Unreal Engine

 後半は,スマウグが体験者をまたぐような演出が入るが,その時,筆者は立ち上がって,数百万ポリゴン級でモデリングされたスマウグの表皮や造形をじっくり観察してみた。最後はスマウグがこちらに向かって炎を吐く……といったところでデモは終了となる。

炎を吹かれて「ギャー」となってデモは終了。でも顔は嬉しそうな筆者
Unreal Engine
 ビルボ・バギンズ役を演じた俳優のマーティン・フリーマンですら,撮影のときは合成マスク用に緑や青のバックを引いた仮セット内で演技していたはずだ。それがこのVRデモでは,完全に劇中のビルボ・バギンズになりきれるのが楽しい。
 Epic Gamesのスタッフから「このデモを体験した今年のGDCの来場者の中で,お前にはベスト演技賞をあげたい」と誉められて(?)しまったほどのめり込んでしまった。

 このVRデモにはインタラクション要素がなく,体験者は決められたアクションをするだけだ。しかし,文字どおり映画の名シーンに飛び込んでそれを体験できる驚きは映画ファンにはたまらない。
 「VRはゲームの未来形」と語られることも多いが,UE4を使って映画制作で用いられたデータを流用することで劇中のシーンをVR HMDで再現できるならば,これもまた「VRコンテンツの本命」として数えられるのではないかと感じた。“体験できる”映画の予告編として提供するのもいいだろうし,映画を鑑賞した人や映画のBlu-rayディスクなどセルソフト購入者に提供する特典コンテンツとしても価値が高いのではないかと思う。

 しかし,なぜWeta Digitalが,自らUE4を使ってのVRデモを開発したのだろうか。Wilbur氏は説明してくれなかったが,推測できることはある。それはこのVRデモが,Weta Digitalが「Pre-Viz」(プリビス)用としてUE4を採用するにあたって検討用に作成したテストプロジェクトの産物だった可能性だ。

 近年では,映画スタジオがPre-Viz(Pre-Visualizeの略)と呼ばれる「動く絵コンテ」的なものをリアルタイムグラフィックスで制作することが流行しつつあり,そのためにゼロからシステムを新規に制作するのではなく,「既存のゲームエンジンを活用しよう」という動きが強まってきている。日本のCGプロダクションであるwiseのように,UE4をPre-Viz用に採用検討している企業は日本でも出てきているし,「Star Wars」で名高いLucas Filmも,グループ会社のゲームスタジオであるLucas Artsが開発したゲームエンジンをPre-Viz用に使えないか実験していたこともある。
 今後,ゲーム以外の映像制作現場にUE4をはじめとするゲームエンジンが導入されるケースが増えてくると,今回のThief in the ShadowsのようなVRコンテンツが,どんどん登場してくるようになるかもしれない。


Epic Games製なのに銃もロボットも出てこない?

新しいUE4の可能性を示した「Kite」デモ


 Epic Gamesは定期的に,その時点で最新のUnreal Engineを使ったリアルタイム技術デモをリリースしている。今回のGDC 2015では,新作デモ「Kite」(カイト)が披露された。


 凧(Kite)を上げるのに夢中な少年。空高く舞い上がる凧だったが,強い風を受けた拍子に凧糸が切れてしまい,遠くへ飛んでいってしまう。まるでなんらかの意志を持っているかのように飛んでいく凧を追いかける少年は,やがて岩場に突き刺さっている凧を発見する。だが,少年が目線をあげると,そこにはなにやら洞窟らしきものが。強い風はここに注ぎ込んでいるようだ。その洞窟の奥に広がっていた驚きの光景とは……。

Unreal Engine
Unreal Engine

 「Epic Gamesにしては珍しく,銃もモンスターもロボットも出てこないし,人も死なない平和なデモです(笑)」とEpic Games Japan代表の河崎高之氏が笑いながら紹介するこのデモは,Epic Games内製とは思えないテイストの変貌ぶりに驚きを隠せない。その秘密は,制作指揮を担当したアーティストが,映画業界からEpic Gamesへと転職した新人だからだそうだ。

Unreal Engine
Unreal Engine

 動画はまるで短編映画のようなシーンで構成されているが,実機によるデモでは,劇中で描かれている広大な地形のあらゆる地点を実際に歩き回ることが可能で,植物の生い茂る豊かな山岳風景が単なる背景ではなく,すべてモデリングされていることを確認できるようになっていた。

 Epic Gamesの技術スタッフによると,デモの地形は16×16kmの広さがあり,一部は手動で配置されたものだが,大部分がプロシージャルな処理によって自動配置されたものであるとのこと。映像作品風のデモで広大な地形をあえてモデリングしたのは,UE4がオープンワールドタイプのゲームにも適することを示したかったためといることだった。
 短編映画風のリアルタイムデモシーケンスでは,16×16kmという広大なフィールドの一部しか使われていないわけだが,シーンの移り変わりごとにローディングによって映像が停止したりしないのは,UE4の特徴的な機能である「Live Streaming」機能によるものだとという。つまり,16×16kmのフィールドから,必要なフィールドデータを動的に読み込んでいるということだ。
 なお,はるか遠方に描かれた情景や木々は,Level of Detail(LOD)によってローポリゴンのモデルやビルボード(板ポリゴンにテクスチャを貼り付けたフェイク,いわゆる書き割り)に自動で置き換えられて描かれている。

Unreal Engine

 背景の岩山や植物のテクスチャは,実写ベースで制作されたものだそうで,岩山はスコットランドで,草木はニュージーランドで撮影されたものだという。草木の3DモデリングおよびLODモデル生成/制御には,植物生成ミドルウェア「Speed Tree」を採用。最遠部の草木はビルボードだそうだが,遠近の変化に応じて動的にローポリゴンモデルからビルボードへとスムーズに置き換わっていくために,ユーザーは「置き換えの境界」が存在することにほぼ気がつくことはないだろうと,説明員は自信を示していた。


 ライティング面の特徴としては,葉の表面に当たった光が裏面にも漏れてくる透過光に対応した両面ライティングがなされていることや,唯一の人間キャラクタである少年の肌に,UE4.5で追加された画面座標系の皮下散乱シミュレーションを応用したスキンシェーダを使っていることなどが挙げられるそうだ。

 余談だが,UE4はDirectX 12への対応を表明しており,UE4で開発されている「Fable Legends」のPC版はDirectX 12対応で提供される予定だ(関連リンク2)。そこで,「このデモもDirectX 12ベースですか」と質問したところ,説明員氏の答えは「No」だった。
 KiteデモはDirectX 11ベースで,Level StreamingもUE4が自前で実装した機能であるという。DirectX 12がサポートする「GPU仮想メモリ」機能を使ったものではないとのことで,DirectX 12対応UE4によるデモは,まだお預けということになりそうだ。


E3 2015では日本のゲーマーが驚くタイトルの発表も?


 PlayStation 3やXbox 360時代の最初期であるUnreal Engine 3(以下,UE3)の登場当時,日本のゲームスタジオはUE3に対して,あまり高い評価を与えていなかった。それが現在では採用スタジオも増えて,過去の評価とはまったく異なる好評を得ている。
 PlayStation 4とXbox Oneが主役となりつつある時代のUE4でもこの評価は衰えず,最近では「鉄拳7」や「ストリートファイターV」,「KINGDOM HEARTS III」といったビッグタイトルに採用されたことが業界では話題となった。
 また,2015年2月に開催されたJAEPO2015で公開された「ナレルンダー!仮面ライダードライブ」のように,デパートやショッピングモールのキッズコーナーに置かれる低年齢層向けのアーケードゲームにまでUE4は採用されており,UE4は早くも日本のゲームスタジオで普及期を迎えていることが分かる。

 筆者がEpic Gamesブースに滞在していたのは1時間ほどだったが,その短い間にも,日本のゲーム開発者が次々とブースを訪れている様子が見られた。河崎氏は,「E3 2015以降,日本のゲーマーが驚くようなUE4の採用事例を紹介できるので,楽しみにしていてほしい」と述べていた。いったいどんなタイトルに採用されているのだろうか。今から待ち遠しい限りである。

Unreal Engine 公式Webサイト

GDC公式Webサイト

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