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オペちゃんと回る,ポーランド軍事技術博物館プレスツアー。戦車に乗り込み“パンツァーハイ”を体験してきた
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印刷2016/04/14 12:00

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オペちゃんと回る,ポーランド軍事技術博物館プレスツアー。戦車に乗り込み“パンツァーハイ”を体験してきた

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 2016年4月8日と9日の両日,ポーランドの首都・ワルシャワで開催された「World of Tanks」の世界大会「The Grand Finals 2016」。世界一のチームを決める本大会の前日(4月7日),ウォーゲーミングジャパンによる,ポーランド軍事技術博物館プレスツアーが行われた。そのプレスツアーの案内役として現地で待っていたのは,日本語堪能なポーランド人のオペちゃんだ。
 博物館のボランティアとして,戦車保存のための修復作業「レストア」に携わっているオペちゃん。その豊富な知識でもって日本人向けに戦車や博物館の案内もしており,今回のプレスツアーの案内役としてやってきたのだ。
 ということで,ライターの徳岡正肇氏レポートによる,2014年4月4日掲載のワルシャワ蜂起博物館,2015年5月9日掲載のポーランド陸軍博物館に続いて,2016年はオペちゃんに案内してもらったポーランド軍事技術博物館を紹介しよう。

オペちゃん(Twitter:https://twitter.com/operatorchan
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Muzeum Polskiej Techniki Wojskowej
(ポーランド軍事技術博物館)


住所  :Powsinska 13,Warszawa,ポーランド
電話番号:+48 22 842 66 11
営業時間:10時00分〜16時00分
入場料 :2 PLN(ポーランド・ズロチ)

ポーランド軍事技術博物館 公式サイト
(ポーランド語)

「World of Tanks」公式サイト


関連記事:「World of Tanks」の世界大会「The Grand Finals 2016」熱戦に沸いた現地の模様をレポート。Wargaming.netの主要人物達が語る今後のe-Sports展望も


 さて,“謎が謎を呼ぶ,謎のポーランド人”オペちゃんについて説明すると,WoTとのコラボでもおなじみのアニメ「ガールズ&パンツァー」の虜となり,アニメや同人誌,Twitterなどを教科書に,独学で日本語を習得。3年ほどで日本のミリタリー誌や模型誌の記者として取材や翻訳をこなし,そして「ポーラン同人」という同人活動でコミケに出展するほどの日本語マスターになったという,ミリタリー系やガルパンファンの間で有名な人物である。その正体について,「背中にチャックがあって,それを開けると中から日本人が出てくる。俺はただの“ガルパンおじさん”だ」と本人は語っていた。

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 そんなオペちゃんの案内で,「エンター,エンター,ミッション!」と歌いながらポーランド軍事技術博物館に入場すると,まず出迎えてくれるのはずらりと並んだ戦車達だ。もともと第二次世界大戦時の軍の拠点で,ドイツ軍の爆撃跡もそのままという広い敷地には,入口の1942年型のT-34-76に始まり,T-34-85,IS-2,IS-3……と,ポーランド軍で実際に使用されていた戦車が年代別に並んでいる。そしてこの博物館にある車輌は,そのほとんどが動かせるという。週末の土曜日やイベントなどで,実際に動くところが見られるそうだ。

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 しかし,あれもこれも動かせる……というわけにはいかないそうで,車体や部品,履帯などの保護といった理由のほかに,そこには予算の問題もあるとのことだ。現在,国から支給される年間予算が日本円で100万円くらいで,日本と比べて物価の安いポーランドではあるが,この額だと戦車を動かすどころか,保存のためのレストア作業も満足のいかない状況にあるとのこと。実際この博物館のスタッフは,オペちゃんのようなボランティアや,元軍人といった人達が中心で,修復素材もそれぞれが集めて持ち寄ったりということも少なくないようだ。

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T-34-76
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T-34-85
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T-34-85
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T-34-85

 その中で,よく動かしている車輌として紹介してくれたのが,生産量が多い車輌のため比較的部品が手に入りやすいというT-34-85だ。この博物館にはT-34-85が3台並んでおり,戦時下に生産されたものと,戦後に生産されたものがあると説明してくれた。しかし,パッと見ではどれが戦時下モデルで,どれが戦後モデルなのか分からない。そこで見分けるポイントを聞くと,ボルトの形もあるが,溶接の処理がとくに分かりやすいという。実際近づいて見てみると,急いで生産されたのか,戦時下に作られた車輌の溶接は粗っぽく,一方戦後に生産されたものは丁寧に溶接されていた。

写真右が戦時下,左が戦後に作られたもの。溶接を見ると一目瞭然だ
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 T-34に続いてIS(ポーランド語ではJS)シリーズの2台,IS-2IS-3が並んでいた。「World of Tanks」ソ連軍技術ツリーのTier 8に登場するIS-3は本作の人気車輌で,史実では第二次大戦末期に生産され,いざベルリン! と運ばれたが間に合わず,第二次大戦では実戦参加が叶わなかった重戦車だ。のちにソ連やポーランドのほか,中東戦争時のエジプト軍などにも実戦配備されている。
 続いて第二次大戦後にソ連の主力戦車となり,ポーランドでもライセンス生産が行われていたT-55 UとAMが3台。この辺りの時代からポーランド陸軍のワシのエンブレムが,戦後のレギュレーションによってひし形に代わっている。その隣には現在もさまざまなバリエーションが生まれ,主力戦車として活躍するT-72が配置されていた。

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IS-2
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IS-3
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T-55 U
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T-55 AM
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T-55 AM
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T-72
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Sexton II
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 戦車の次に見えてきたのは自走砲や装甲車といった戦闘車輌だ。空挺戦車ASU-85や,152mmの巨大な主砲を持つ,オペちゃん曰く“ソ連のワンパンマン”自走砲ISU-152などが並ぶなか,筆者が気になったのは,自由ポーランド軍が運用したという自走砲Sexton IIだ。アメリカの戦車M4 Shermanの生産ライセンスを持ったカナダが,イギリス軍向けにM4 Shermanの車体を作り,それにイギリスが87.6mmの25ポンド砲を積んだものを自由ポーランド軍が使用するという,複雑な経緯を持つ車輌だ。

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ASU-85
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ISU152

 その先にも,ベトナム戦争時にソ連軍が鹵獲したものがポーランドにお土産として(?)届けられたという,アメリカ軍の自走カノン砲M107や,カチューシャの愛称でおなじみ,自走式多連装ロケット砲BM-13といった,ソ連軍のロケットやミサイル車輌がずらりと並んでいる。

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M107
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BM-13
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 「陸,海,空,全部詳しいぞ!」というオペちゃんが次に案内してくれたのは,MiGシリーズSuシリーズなどがずらりと並んだ航空機のコーナーだ。「ポーランド空軍から,置き場に困ったものが送られてくる」と冗談交じりに話してくれたが,この博物館には戦車であれば自分で直して動かせるというスタッフはたくさんいるが,航空機の専門家はいないそうで,予算の問題もあり受け取ったまま放置されているのが現状のようだ。しかしそのため,普通は展示の際に取り外されるエンジンや兵装がそのままという,博物館としては珍しい状態で置かれている。実際に,MiGやSuのエンジンや,爆撃機liuszyn II-28(イリューシン28)の爆弾倉を覗き込むという,かなり貴重な体験ができた。

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航空機の周りには,高射砲やミサイル,レーダーなどが並べられている
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ちょっと珍しい地雷敷設車輌も
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 ほかにも屋内展示があり,100年近く前の貴重なルノーFT-17や,潜水艦の主砲,空軍のエースパイロットStanislaw Skalski(スタニスワフ スカルスキ)氏の制服などが飾られている。その建物の裏に回ったところにはドイツ軍の兵器の展示もあり,ティーガーIIや,IV号F2型(G型)の砲身,IV号H型のボディといったものが,破壊されたそのままの形で置かれていて面白い。

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公道にめがけて配備された機銃。常に臨戦態勢?
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戦車の砲塔で作られた十字架

III号突撃砲の砲塔にある撃破マークは,実際のものを塗りなおしたとのこと
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写真右:ポーランド語で「これ,なーんだ?」みたいなクイズが書かれていた。筆者は答えを聞いたのだが忘れてしまった
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 「天下のクリスティー式なめんなよ!」ならぬ,「ポーランド軍なめんなよ!」といった具合に,ガルパンのセリフや用語を交えながら案内をしてくれたオペちゃんは,誰よりも嬉しそうに戦車を愛でながら説明をしていた。戦車を熱心に語るその様は,あんこうチームの戦車マニア“秋山殿”こと秋山優花里に似ているなと思っていると,やはり本人も秋山殿には共感を覚えるそうで,ガルパンには,戦車に乗ると「ヒヤッホォォォウ!」という気持ちになる,“パンツァーハイ”という言葉があるが,その感覚についてひと言「分かるね」と言っていた。
 そんなパンツァーハイを体験させてくれるということで,ツアーの最後にT-55 Uに搭乗させてもらった。まずハッチから見下ろすと,いわゆる梯子のようなものはない。ではどうやって降りるのかと尋ねると,「大丈夫,戦車は頑丈!」。つまりは足が届いたところに乗ればいい,ということだった。
 戦車長の席や運転席に降りてみたが,これは筆者が戦車好きだからという理由もあるが,狭いながらもなんだか居心地が良く,温かい紅茶でもいただきたい気分になった。そして,周囲を囲む計器を見まわしたり,操縦手気分で操縦レバーやアクセルに触れると,わくわくが止まらなくなってきた。これで実際に動かせたら,「最高だぜぇぇぇぇ!!」と叫んでしまうだろうなあと,パンツァーハイをほんの少しだが感じることができた。

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強面だが素敵な笑顔のスタッフさん。片手で軽々砲弾を持ち上げる
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 さて,オペちゃんの変わったところばかりを取り上げてしまった感があるが,実に戦車に対して深い愛を持っており,資金の面で戦車のレストアがなかなか進まず,ボロボロなままになってしまっている状況を真摯に受け止めている様子だった。筆者もいち戦車好きとして,ぜひここにある戦車が美しく蘇り,そして走り回る姿を見てみたいと感じたので,日本からなにかサポートできる仕組みができるととても嬉しい。

 このようにワルシャワ蜂起博物館や,ポーランド陸軍博物館と違い,研究や保護が主な目的であるためあまり知られていない博物館だが,本当に貴重な経験ができる,戦車好きであれば行って後悔のない場所だ。
 最初にお伝えしたように,オペちゃんは実際にこの博物館でボランティアとして戦車のレストアを手伝っているので,もしかしたらオペちゃんの働いているところも見られるかもしれない。また,今回のプレスツアーのように案内役をお願いできたら,さらに楽しめるはず。ワルシャワに旅行の際は,ワルシャワ蜂起博物館とポーランド陸軍博物館と合わせて,こちらの博物館も回ってみよう。

ポーランド軍事技術博物館 公式サイト
(ポーランド語)

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