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実際,3Dゲーム全盛のここ数年,目を見張るほどのグラフィックステクノロジーの進歩と,それに見合うゲーム世界の構築などを背景とし,欧米産のゲームは急激にそのクオリティとプレイアビリティを向上させている。そうした状況を見て,拡大する世界市場に日本が対応できていないのではないか? という意識が,業界のリーダー達の中で強くなってきているのだ。
しかし,そうした「日本の危機」が叫ばれる一方で,何がどう具体的にヤバイのか? あるいは本当にヤバイのか? という点が,ゲーム業界の外からはいまいち見えにくいのも確か。というのも,業界の危機が語られるときに引き合いに出されるのは,いわゆる3Dグラフィックスを駆使した“豪華なゲーム”が中心なわけだが,ライト層を狙った任天堂などは,その独自の戦略によって,近年“世界的な大成功”を収めてもいる。逆に言えば,任天堂が収めた成功も,業界の不安を払拭する材料になってないわけなのだが,それはいったいなぜなのだろうか?
今回4Gamerでは,そんなゲーム業界を語らせたらネット上で1,2を争う,有名ゲーム系Blog「島国大和のド畜生」の管理人,島国大和氏にインタビューを行った。島国氏は,かれこれ十数年業界で活躍しているベテランのゲーム開発者。「正体は明かせないけど,言いたいこと言わせてもらいますよ」という島国氏に,日本のゲーム業界の何がヤバイのか,どうすべきなのかなど,いろいろな話を聞いてみた。
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まず最初に,島国大和さんの簡単な業界での経歴を教えていただけますか?
島国大和氏:
え,えーと,あんまり詳しい話をすると正体がバレてしまうのですが(笑)。
簡単に言うと,某プラットフォーマーとか某RPG作ってるところとか,あときっと皆さんが知らないような開発会社だとか,ゲーム業界の微妙な狭間を渡り歩いてきました。
4Gamer:
開発者としての世代……といいますか,ゲーム業界に入ったのはいつ頃なのですか?
島国大和氏:
ちょうど,初代プレイステーションが立ち上がった頃ですかね。スーパーファミコンのゲームもまだちょっと出ていたとか,そんなくらいの時代です。
4Gamer:
ああ,いろいろな意味で“熱”があった時代ですよね。
Blogを拝見させてもらう限りだと,書いてある事が非常に落ち着いているというか,それなりにお歳の方なのかなぁとは思っていたのですが。
島国大和氏:
いやぁ,もう結構歳ですけどね。体力落ちてるし(笑)。
4Gamer:
またまた……。
ともあれ,今日は日本のゲーム業界についていろいろとお聞きできればな,と。
島国大和氏:
どうせ正体は明かせないので,なんでもかんでも好き勝手言っちゃいますよ。ええ。
高騰するゲーム開発費と,それに対する日米の温度差
4Gamer:
大枠お題としては,最近よく言われる「日本のゲーム業界ってやばいよね」という話を中心にしたいなと思うのですけど,最近の欧米産ゲームは物量……つまり,開発費だとか開発体制を武器にした作り方が目立ってきていますよね。
島国大和氏:
E●が悪いっ!
4Gamer:
ただ,ゲーム開発に莫大な開発費を投じるっていうのは,実は日本のほうが先に行ってきたことじゃないですか。それこそ10年前の,「シェンムー」とか「ファイナルファンタジー」とかで言われたことです。そのあたりについてはどう思われますか?
島国大和氏:
スク●ニとセ●が悪いっっ!!
4Gamer:
……。
島国大和氏:
……ええと,ただまぁ,市場が右肩上がりに成長していく過程で,「ここまでお金を掛けれる」という線引きの際限がなくなっていってしまうのは,自然ですし,相手よりも凄いものを,売れる物をってなると,チキンレース化するのは当然で。他に手があるかと言うと難しいですしね。
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4Gamer:
けれど,昔は今の100分の1くらいの開発費で作ったゲームが何十万,何百万本も売れてたのに,今はうん十億円かけても数万,数十万しか売れないというのが,ゲーム業界……というか,ゲーム会社が厳しくなっている一因ですよね。
島国大和氏:
今は,みんながみんなドラゴンクエスト(以下,ドラクエ)を遊ぶ,という時代ではなくなってしまいました。ネットを含めて情報が氾濫していった結果,趣味も細分化されて,先鋭化している傾向を感じます。まぁ,ドラクエや一部のタイトルはまだイケますが,その下はもう……。
4Gamer:
ただ,開発費が高騰して苦しいのは,日本も欧米も変わらない部分だと思うのですが,ことさら日本のゲーム業界の危機が叫ばれるのはなぜなのでしょうか?
島国大和氏:
うーん,一つには,北米市場の好調さ,ゲーマー人口の多さという点が挙げられると思います。単純な人口比率からいっても,北米市場は日本の3倍の規模がありますからね。例えば,同じマニア向けのゲームを作ったとしても,北米市場は,日本の3倍は受け入れる余地があるわけで。商売をする環境それ自体に結構差がありますよ。まぁ,この先はどうなるかわかりませんが。
4Gamer:
ふむふむ。
島国大和氏:
あと,欧米……というか,主にアメリカですけど,彼らは“開発体制をシステム化”するのが非常に上手いんですよね。同じ10億円かけるにしても,日本と北米ではその使いどころに差があるなぁというのは肌で感じます。日本だと,いろいろなところをナァナァで済ませちゃうというか……。それが良いところでもあり,悪いところでもあるのですが。
なので,ゲームの開発がさらに大規模化していくと,「日本の不得意な方向」に進んでいってしまうなぁという厳しさは感じます。
4Gamer:
ナァナァと言うと?
島国大和氏:
以前,とある北米の会社と一緒に仕事をしたことがあって,その時に彼らは開発工程をひとまとめにしたガンチャートを送ってきやがったのですが,その細かさといったら,それはもう凄かった。あれは,プロジェクト・マネージャーとか専門で管理だけをする人間が付いているからできることだとは思いますが,私が知っている日本のやり方とは全然違うと感じました。あの経験は,個人的にも勉強になりましたね。
4Gamer:
ただ日本でも,開発工程を管理する人自体はいますよね? 日本だとそれは「ディレクター」の役割になるのかな。
島国大和氏:
んー,ディレクターって,日本だと「なんでもやる人」の場合が多いからなぁ。もしくは「なんにもしない人」という(笑)。
なんだか自分の言い訳みたいになっちゃいますが,何でもかんでもやらなくちゃいけなくて,そこまで見てられないって人のほうが日本だと多いんじゃないですかね。またプロジェクト管理は,あれはあれで一つの特殊技能だと思いますし,そんな一朝一夕でできるもんではないとも思います。
あと開発体制のシステム化云々でいうと,向こうの人材の流動性の高さは,日本では非常に真似しにくい部分で,まぁ要するにぶっちゃけて言っちゃうと,日本のゲームの作り方って,大規模な開発にはあんまり向いてないなと。これはもう,日本の社会の賃金体系を含めての話だとは思いますが。
4Gamer:
まぁいわゆるハイクオリティ路線だと,スクウェア・エニックスやカプコン,コナミなど,大きな資金力を持つ企業でないと戦っていけないのも確かですね。
ゲーム開発に必要な地力をどう維持していくか
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話は変わるんですけど,「グランド・セフト・オートIV」(以下,GTA4)って遊ばれましたか?
島国大和氏:
人がプレイしているのを見ただけで,自分ではまだプレイしていないですね。
4Gamer:
あのゲームのイベントの作り方とか見ると,なんだかんだで日本の「シェンムー」を思い出してしまうんです。まぁGTA4のほうは,キャラクターのAIを含めた作り込みも頑張っているんですけど。ただ正直言うと,私には,GTA4はちょっと合わなかったんです。箱庭ゲーとして完成度が高いのや,イベントの多さとか,ボリュームが凄いのは分かるんだけど……なんか面倒で。
島国大和氏:
プログラマが,デザイナや企画屋が使えるようなツールないしスクリプトを用意して,イベントなりマップなりを量産していくというのは,良くある方法です。この手法は日本でも良く見られますが,どういうワケか,大金を掛けた大作ほど作り捨てするケースを良く聞くのが不思議なところです。……まぁ,担当者が辞めて居なくなっちゃったりするせいでしょうけど。
また,締め切りに追われて作ったプログラムは粗ばかり目立つので,常に作り直したくなる誘惑に駆られます。
4Gamer:
カプコンの「MTフレームワーク」や,スクウェア・エニックスの「クリスタルエンジン」なんかは,そういう無駄をなくしていこうという動きの一環なのでしょうけど……。まぁでも,確かに中小の開発会社さんのほうが,いろいろな物を使い回す工夫を聞くかもしれませんね。
島国大和氏:
これは嘘か誠か分からないですけど,とある大作ゲームでは,企画屋用に用意されたスクリプトが日本語だった……なんて話を聞いたことがありますよ。要するにゲーム中のイベントの量産をするにあたって,若い企画屋を大量に動員したらしいのですが,そんな彼らでも使えるようなスクリプトが必要だったという。例えば,「立つ」「東」「歩く」で,トトト……と歩いていくだとか。
4Gamer:
え,本当ですかそれ(笑)。ぴゅう太みたいだ。
本当だとすれば,それは結構凄い話だなぁ……。
島国大和氏:
いやー,風の噂と言う事で。都市伝説の一つくらいで捉えておいて欲しいかと(苦笑)。
ただまぁ,これって示唆的な話だと思うんですよね。
4Gamer:
と言いますと?
島国大和氏:
要は,ゲーム開発における「量産体制」というのは,そういうツールないしスクリプトをプログラマが用意して,企画屋やデザイナーがそれを使ってゲームを仕上げるみたいな流れがあるわけですが,スクリプトが日本語というのは,それだけ「汎用性が低いツール」だという意味でもあるんですよね。
そこへいくと,例えば北米で作られたツール……要するに英語ベースのツールやスクリプトは,いろいろな人種/国の人が扱える。非常に「汎用的」で,使い回しが効くんですよ。人材もより広く集められる。
4Gamer:
ふむふむ。
島国大和氏:
日本の開発現場だと,そういうツール/スクリプト類の整備が不完全なことが多くて,ちょっとした修正をするのにも,プログラマにおんぶにだっことなっているものも多いというか。あれはちょっと非効率的だなとは思います。
ただ,プログラマさんが凄く優秀だと,そっちのほうがかえって凄いもの/見たこともないようなものが出来ちゃうことがあって,一概にこのやり方が駄目だとは言えないんですけどね。でもこれからは,そういう手弁当で作り込んでいくやり方が効かなくなっていくんじゃないかなとは思います。
4Gamer:
そういえば「Unreal Engine」や「CryENGINE」など,いわゆるエンジンビジネスの話でいえば,マニュアル類やサポート面(問い合わせの電話を含む)での不安が大きくて,開発会社があまりCryENGINE(開発会社がドイツの企業なので,そのあたりが充実していない)のほうを使いたがらなかったというのは聞いたことがありますね。
島国大和氏:
最新グラフィックスに関する文献や資料なんかも,今は英語のものが多いですし,ゲーム開発に必要な知識や環境が,日本より北米の方が充実しているのは間違いないと思います。それこそ,Googleでヒットする件数からして,英語と日本語では出てくる数が違いますから。
4Gamer:
まぁ確かに3Dグラフィックスやプログラミングに限らず,英語圏の情報の豊富さは一つの強みですよねぇ。
というか,Unreal Engineなどをはじめとしたエンジンビジネスってどう思われます? 最近は以前ほど話を聞かなくはなってきましたけど,スクウェア・エニックスの「ラストレムナント」で「Unreal Engine 3」が使われたりしてますよね。
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描画周りというのは開発で最もコストがかかる部分なので,そこの開発期間を短縮するメリットは大きいです。ただ,Unreal Engineを使うとそれを使った「ほかの会社と同じ土俵」で戦わなきゃいけなくなるので,メリットばかりでも無いんですよね。例えば,ウチらが同じ土俵に乗っかって同じようなゲームを作っても,それがバカ売れする訳じゃないですから。
また描画エンジンというのは,ゲームの根幹を成すものなので,その武器の一つを放棄するのは,長期的にはいろいろあるかもしれません。
版権物のタイトルを短期間で見栄え良く作るだとか,描画と関係の無い箇所に重きを置いたゲームのような,そういう使い方には向いているでしょう。
4Gamer:
なるほど。
島国大和氏:
いずれにせよ,ゲーム開発の細かいノウハウやインタフェース面での工夫などはともかく,ゲーム開発に必要な根っこの部分の知識/技術の中心地が,今の日本にないのは確かですよ。とくに今後の世界的な競争を睨むと,ここは本当にヤバイ部分だと思います。
4Gamer:
以前の日本には,そういう基礎知識を得るための環境/施策って何かあったんですか?
島国大和氏:
んー,例えば初代プレイステーションの時代なんかは,ソニーさんが分厚いリファレンスを各社に配っていたんですよね。バリバリの日本語で,ちゃんと製本された奴を。3Dを初めて触る人にも解り易く丁寧に書かれていました。
4Gamer:
へぇ。
島国大和氏:
ゲーム業界参入初期のソニーが,いろいろな方面で気を配っていたのは確かだったと思います。
4Gamer:
少し思うのは,インタフェース面やゲームシステム面での工夫が,どこまで競争力に影響するのか……というところです。もちろん,ゲームってこのあたりの工夫なくして面白いものが出来てこないと思うのですが,ある程度は真似できてしまうところもあり……。
島国大和氏:
最近のFPS/TPSのような洋ゲーを見ていると,マリオだとかゼルダの遺伝子を感じますよね。この操作方法はゼルダだよね,みたいな。彼らは,日本のゲームを本当に良く研究している。
4Gamer:
昔のような荒削りさはもうないですよね。システム部分が非常に洗練されてきています。
島国大和氏:
「メダル オブ オナー」シリーズなどを見てると,チュートリアルとかがかなりコテコテで。日本人向けのゲームか?と思えるほど親切になってきてますよね。
4Gamer:
最近,私も「バイオハザード 5」の体験版などを遊びましたが,バイオハザードや「メタルギア ソリッド 4」を見ていると,海外産のFPS/TPSとの差が大分薄れてきたなぁと思います。例えば,バイオハザード 5は日本で100万本売れるのに,「Call of Duty」の最新作は売れないっていうのは,もう認知度だとかブランドの差でしかない気はしますね。
島国大和氏:
いわゆる洋ゲーが日本で流行るというか,もっと普通に遊ばれる日っていうのは,必ず来ると思います。今もすでにそうなりつつありますけど。ただその時は,今みたいな「洋ゲーらしさ」はもっとなくなっていて,プレイヤーから見れば「これは国産じゃね?」と思えるような形になっていると思いますが。
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新しいビジネスを模索するゲーム業界。ダウンロード販売,DLCはどうなの?
4Gamer:
では,ビジネス面でのゲーム業界はどうでしょうか? 先述したように,市場が細分化されてヒット作を狙いにくくなったのはあると思いますが,任天堂なんかは,国内外で大ヒットを連発していますよね。
島国大和氏:
まぁ任天堂さんはちょっと特別としても,一本6000円のパッケージを××本売るというビジネスが,そろそろ限界に差し掛かっているのは確かだと思います。急激に開発費が高騰してきているのに,商品の単価だけは昔と同じというのは,どう考えても厳しいですから。
4Gamer:
アーケードゲームで長らく「100円の呪縛」があった問題と近いんですかね。
島国大和氏:
アーケードゲームっていうと,「インベーダーゲーム」が100円で遊べますってところからスタートして,「そろそろシューティング/アクションゲームじゃ無理!」ってタイミングで格闘ゲームが出てきて,格闘ゲームが下火になって「今度こそ無理!」ってあたりでプリクラが。そして,プリクラブームが収まって「今回は本当の本当に無理!」ってところで,今度はカードゲームが大ヒットして……と,なんだかんだで今もまだ生きながらえてる業界ですよね(笑)。
4Gamer:
ああ,簡単に言ってしまうとそんな流れですよね。
まぁ,最近はカードゲームブームも一段落してしまって,また「もう無理かも」って話が浮上してきているみたいですが。
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島国大和氏:
このアーケードゲーム産業の歴史の見所というのは,格闘ゲームにおける「新しいゲーム性が」みたいな部分もモチロンあるのですが,産業面から見てより重要なのは,その節目節目の新ジャンルが,ビジネスのあり方に大きな変化をもたらしているという点ですよね。
4Gamer:
ええ。横スクロールのアクションやシューティングなどでもたらされるインカム収入が限界に来たタイミングで,より回転率が高い(収入が多い)格闘ゲームが出てきたところに大きな意義があるんですよね。カードゲームにしても,カードという付加価値を追加することで,100円という壁を突破した,あるいは,すぐ終わってしまう不満感を解消したという点が大きかったのだと思います。例えば,旧システム然としたシューティングゲームで回転率を上げようと思ったら,基本的には難度を上げて「すぐ殺す」しかないわけで……。それじゃあ誰も納得しないよねと。
島国大和氏:
うん,そうそう。世の中で遊ばれているゲームっていうのは,基本的に商売で作られたものですから,どうにかしてお金を稼いでいかないと,存在できないんですよね。アーケードゲーム産業というのは,ゲームの進化とビジネスの進化がマッチしていったからこそ,まだ存在できているわけです。
4Gamer:
分かります。
島国大和氏:
そういう見地からいうと,コンシューマゲーム業界(パッケージゲーム業界)って,根本的な商売のやり方自体はずっと変わらず今まで来ちゃっていますから,いろいろと時代に合わない部分が出てきちゃうのは当たり前なんですよね。
4Gamer:
まぁ最近だと,ダウンロード販売やDLC(ダウンロードコンテンツ。主に追加要素のことを指す場合が多い)についての話題も増えてきましたけど。
島国大和氏:
ダウンロード販売は成功例も多いですが,あれはあれで問題のある部分もあるなーとは感じています。
4Gamer:
例えば?
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大きいところでいえば,ビジネスの枠組みが小さい……といえばいいのかな。開発会社と配信元の二つだけで完結してしまうので,いろいろな意味でビジネス的な活動がこぢんまりとしてしまうんですよね。
通常のパッケージビジネスだと,流通やショップなどが絡んで来るわけですが,彼らは彼らで「自分の利益」のために,いろんな活動をしてくれるんですよ。で,結果としてゲームの売上を押し上げてる……そんな側面もあるというか。
4Gamer:
ああ……,それは私も結構感じます。
通常のパッケージゲームだと,お店用のポップを作ったりだとか,いくつかの営業/広報活動を行うものなのですけど,ダウンロード販売になると,そういう活動がトンとなくなってしまうものが多いというか。ゲームメディアへの露出もそんなに積極的じゃないですよね。面白いゲームが沢山あるのに,勿体ないよなぁと。
島国大和氏:
周りに利益を落とす構造になってないから,誰も動いてくれないんですよね。利益も独り占めだけど,苦労も全部背負わなきゃいけない。中間業者がなくなってマージンが抜かれなくなったとはいっても,決して良いことばかりではない。
4Gamer:
ダウンロード販売を推進したとして,じゃあゲームショップが消えてしまうのは良いことなんだろうか? とか,いろいろと考えちゃいますよね。確かにダウンロード販売は便利だし効率的なんだけど,ゲームを店頭で販売するところが消えてしまったら,ダウンロードしたタイトルを遊ぶためのゲーム機はそもそもどこで売られるんだろう? コンビニか? みたいな。
島国大和氏:
私の知り合いにも,ダウンロード系のタイトルを手がけていた人がいるんですけど,やっぱり「作ったゲームを知ってもらう術がない」というのが,一番の悩みみたいですね。公式サイトとかのトップに置いてくれればいいんだけど,それもなかなか難しいし,置いてもらえたとしても,すぐに新しい情報に置き換えられちゃいますから。
4Gamer:
ふうむ。
そのあたりは,我々Webゲームメディアがもっとフォローすべき部分なのかもしれませんが……。クチコミベースの広がりを期待するにしても,BlogだとかSNSとか,いわゆるWeb界隈とは断絶されていますしね。Blogの紹介から直接買えたりするわけでもない。まぁiPhoneとかのダウンロードアプリは,そのへんは意識してる感じなのかな。
島国大和氏:
そういう意味だと,Amazonは偉大ですよね。Amazonって結構えげつない商売してるなって思うこともありますけど,それでも消費者の中に溶け込んでいるのは,アフィリエイトだとか,関係者/協力者に利益を落とす仕組みを作ったからだと思いますし。ダウンロード販売って,有機的な経済圏をまだ築けてないんですよね。
4Gamer:
そのへんはまだPCオンラインゲームのほうが,ネットで盛り上がってそのままプレイないし課金につながるので,非常にストレートですよね。
島国大和氏:
だと思います。
4Gamer:
ちなみにダウンロードコンテンツって,開発の現場的にはどういう見られ方をしているんですか? 日本だと「アイドルマスター」の追加アイテムだとかが話題になりましたけれど。
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んー……,正直なところを言うと,追加シナリオだとかそういう類のものは,あんまり美味しくないっていうのが現状じゃないですかね。あれは作るのに労力が必要だし,売れたとしても,結局普通にゲームを作るのと同じだけ手間がかかっていますからね。大変だと思います。
どちらかといえば,オンラインゲームのアイテム課金じゃないですけど,ゲーム自体の拡張や進化とは違う部分で商売ができると,ゲーム会社的にはハッピーなんだと思う。というか,私だったらそっちを売りたいです(笑)。
ネットではいろいろと言われてましたけど,「テイルズ オブ ヴェスペリア」の試み(※)などは,個人的にはそんな悪い話じゃないと思うんですよね。いろんなプレイヤーさんがいるんだから,いろんな選択肢があってよい。要らなければ,買わなきゃいいだけですから。
※DLCとして,「LVアップ+5」(約300円)や「30万ガルド」(約450円)など,ゲーム内の経験値やマネーが販売された
4Gamer:
まぁネット上だと,いわゆる「嫌儲」(けんちょ)の思想が根強いというか,企業/他人がお金を儲けることを嫌う空気みたいなものが一部ではありますからね……。
島国大和氏:
あんまり他人がお金を稼ぐことをとやかく言わないほうがいい,と私なんかは思うんですよね。例外がないわけじゃないですけど,質の高いサービス,あるいは質の良い製品を提供するには,かならず一定のお金が必要になりますから。お金を払って会社が儲かれば,基本的には,より良いサービスとしてユーザーに返って来るものだと思います。
4Gamer:
お金を払うことの意味,メリットというのは,もっとみんなが考えてもいいかもしれませんね。
島国大和氏:
良いものを作ったのに「売れなくてなくなりました」ってのが一番悲しいですからね。まぁビジネスですから,いろいろな淘汰の中で,新しい商売,新しい売り物が考えられていくことと思いますが,少なくともオンラインを使った新しいビジネスは,ゲーム会社とプレイヤーさんが「今よりも良い関係」を築いていける可能性のある分野だと思います。
今は,面白いかどうか分からないものに6000円払わなきゃいけないわけですからね。これがそんなに良い形かというと,そういうわけでもないだろうなぁと。昔はそれで良かったのかもしれませんけど。
4Gamer:
そうですね。
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ゲームシステムやゲーム性は,ビジネスのあり方に左右されるもの
4Gamer:
先ほどの話をまとめると,要するに「新しいビジネスモデル」を模索しないとね,っていう点に集約されると思いますが,その観点から言うと,オンラインゲームはどうでしょうか? 月額課金やアイテム課金など,ゲームの新しい枠組みという意味では,非常に有望株ですよね。
島国大和氏:
ええ。実は最近,私もオンラインゲームのほうに足を突っ込んでいたりしまして……。いろいろと勉強させていただくことが多いです。
4Gamer:
あら,そうなんですか。日本でオンラインゲームを作ってる会社さんってそんなにありませんけど……(笑)。
島国大和氏:
先ほども話したように,パッケージゲームのビジネスに限界があるのは確かだと思うし,アーケードゲームの例で見られるように,ゲームとビジネスがマッチしたやり方を模索していくのは大切なことだと思うんですよね。その点で言うと,オンラインゲームって「まだまだ隙間がありそうだなぁ」って見えるんです。課金方式にしてもゲームの遊ばせ方にしても,「もっといいやり方」ができるんじゃないかな? と。
4Gamer:
MMORPGにおける月額課金制だとか,料金体系もいろいろなところに大きな影響を与える要素ですからね。……というか,ビジネスモデルっていうのは,ゲーム性にダイレクトに関係するものなんですよね。
島国大和氏:
そう。まったくそのとおりなんで,そこはもっと強調してください(笑)。
まぁ一般のお客さんはそういう部分を意識しようがないし,またする必要もないとは思いますが,何度も言いますけど,世の中で遊ばれてる大半のゲームはビジネス活動なんですよね。だから,ゲーム性というかゲームの中身っていうのは,いかにしてお金を稼ぐか? に最適化されていくものなんです。当然,お金を取る段階でプレイヤーさんが不満を持っちゃうと,それはそれで商売になりませんから,「気持ちよくお金を使ってもらう仕組み」を頑張って考えていかなくちゃいけない。
4Gamer:
そうですね。
私もゲーセンではいくら使ったことやら……(苦笑)。
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昔のアーケードゲームっていうのは,それが上手く回っていた良い例だったし,例えば,世の中のMMORPGがなんであんなにレベルが上がり難くてマゾい仕様なのかといえば,月額課金などというビジネス的な縛りがあって,そうしないと商売にならないからで。普通のコンシューマRPGのような仕様にして,100時間で満足されたら,一か月分の1000〜1500円しか払ってもらえないんですよね。それじゃゲーム屋が食べていけない。
4Gamer:
そのへんは,日本における中古問題や,北米でのゲームレンタルの話ともちょっとかぶりますかね。北米のゲームが妙に難しくなっている理由の一つとして,「ゲームレンタルがあるから」というのは,割と良く聞く話です。借りただけで満足されちゃかなわないから,借りるだけではクリアできないようにしてしまうという。
島国大和氏:
中古は,その……必要だとは思うんですが,中古の存在がゲームのあり方を決めてしまっている,そんな一因ではあるんですよね。とにかくやり込み要素を用意しなきゃいけないとか,初回特典のおまけに注力しなくちゃいけないだとか。いずれにしても,ビジネスのあり方がゲームの中身に影響を与えていく例ではあるでしょう。
4Gamer:
ふうむ。
島国大和氏:
個人的には,もうちょっとゲームというものの「価値観の幅」を広げられたらいいのにな,とは思うんですよね。今は子供向けの製品がほとんどなので,「6000円払わせたら100時間は遊べなきゃね」みたいな空気があるのですが,もっとこう「2時間で終わったけど,すげー面白かった。6000円の価値はあったね」みたいなものが許されるようなスタイルがないと,ゲームの持つ可能性/多様性が損なわれてしまう気がする。難しい話なのは重々分かったうえで言ってますけど。
4Gamer:
確かに。最近は私も,「100時間遊べる」と言われても,むしろ尻込みしてしまう事のほうが多いです。時間が掛かるオンラインゲームなんかも,プライベートで遊ぶのはなかなか厳しい。
島国大和氏:
分かります。そういうニーズは少なからずあると思いますし,最近は「もっと短時間で楽しめるオンラインゲームを」って話を良く聞くようになりました。課金の方式と絡めたより良い形のオンラインゲームっていうのは,これからどんどん模索されていくと思いますよ。
4Gamer:
そのあたりは,国産のタイトルで面白いのが出てくると嬉しいですね。
島国大和氏:
まー,お金持ちな会社が,お金をジャブジャブ使っていろんな実験をしてくれるといいんですけどね。
また,先ほど「大規模な開発は日本のスタイルには合わない」みたいな話をしましたけれど,何十億円も掛けるような開発……つまりは集団戦じゃなくて,もっと小規模な個人戦ベースの戦いに持って行ければ,日本のゲーム会社は強みを発揮しやすい気はしますね。ハリウッド式のやり方でゲームも勝負されちゃうと,日本はなかなか厳しいと思う。
海外のゲーム屋には作れないけど,海外のプレイヤーがやりたがるようなゲーム。そういうゲームって沢山あると思いますし,そこは意識して志向していくべきじゃないでしょうか。
4Gamer:
そうですね。
まぁ話をまとめると,開発に必要な基幹の知識/技術が北米に移りつつあるのは厳しいけれど,新しいビジネスモデルの開拓などを含めて,まだまだやりようはある……といったところでしょうか。
島国大和氏:
まぁ,そんな感じで。
パッケージの売上が急に消えてなくなることもないでしょうが,コンシューマ業界において,据え置き機から携帯ゲーム機に主流が移ったように,市場は常に変化していくものですから,それに対応する柔軟さやチャレンジ精神を忘れないで頑張ればいいと思います。
4Gamer:
分かりました。本日はありがとうございました。
島国大和さんの今後のご活躍も期待しております。
島国大和氏:
……まぁでも,これからの若い人は違う業界を目指したほうがいいかもしれませんけどね。
4Gamer:
って,オチがそれですか。
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さて,「日本のゲーム業界の危機」について話すと言いながら,話が脱線しまくりの島国大和氏へのインタビュー。ビジネスモデルやゲームのあり方などを含めて,いくつかの視点は拾えたのではないかと思う。
思い返せば,「日本のゲーム業界がヤバイ」という話は,実はかなり前から囁かれてきた。一つの契機となったのは,2004年に発売された「ハーフライフ2」。その圧倒的なグラフィックスや物理エンジンを駆使した“リアルなゲーム世界の表現”は,「次世代ゲーム」のあり方の一つを提示し,多くのゲーム関係者に衝撃を与えたものだ。
当時の日本のゲーム業界といえば,ゲームの開発費の高騰が進むとと同時に,ゲーム市場自体の売上規模が踊り場に差し掛かり,闇雲な拡大路線/重厚長大路線に疑問符が投げかけられ始めていた時期だ(というか,この問題意識は今もなお続いているが)。
PLAYSTATION 3やXbox 360,Wiiなど,いわゆる次世代ゲーム機戦争(現世代機)の直前ということもあって,先の見えない不安感もあったことと思うが,そんな日本の停滞感を尻目に躍進する海外のゲーム産業を見て,業界の人間が危機感を抱くというのは,ある意味では自然な流れだったといえよう。まぁ蓋を開けてみれば,次世代ゲーム機戦争を制したのは,ハーフライフ2が示した未来とは違う形を提示した,Wiiであり任天堂であったわけだが。
ただそれでもなお,海外の大作ゲームと日本のゲームが比較され,何かと議論を呼んでしまうのは,今の任天堂の成功もまた,次の成功モデルにはなり得ないのだと,多くの人が感じているからかもしれない。
アーケードゲームの例や,あるいはWiiやニンテンドーDSが示したように,ゲームの進化というのは,非常に複雑でいろいろな要素を孕んでいる。ゲームのより良い形とはなんなのか。ビジネスモデルも含めて,今後出てくるであろう業界のさまざまな取り組みに注目していきたいところだ。
関連サイト:
島国大和のド畜生
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