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Access Accepted第852回:同じ顔症候群――「オーバーウォッチ」新ヒーローは量産型美少女なのか,確立されたアートスタイルなのか
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印刷2026/02/16 11:00

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Access Accepted第852回:同じ顔症候群――「オーバーウォッチ」新ヒーローは量産型美少女なのか,確立されたアートスタイルなのか

画像ギャラリー No.006のサムネイル画像 / Access Accepted第852回:同じ顔症候群――「オーバーウォッチ」新ヒーローは量産型美少女なのか,確立されたアートスタイルなのか

 先日,Blizzard Entertainmentが発表した「オーバーウォッチ」の大刷新は,ゲーマーにはおおむね好意的に受け止められたようだ。ところが,新ヒーローとしてアナウンスされた炎のエレメンタルを操る中国女性キャラ「アンラン」のグラフィックスについて,不満が続出し,ゲームディレクターが特別メッセージを配信している。今回は,一連の騒動に浮上した「同じ顔症候群」に焦点を当ててみたい。


“強い姉”がキュートで幼いルックスに変貌


 日本時間の2026年2月5日,Blizzard Entertainmentが配信した「オーバーウォッチ スポットライト」では,驚くべき発表が相次いだ。
 まず,「オーバーウォッチ 2」からナンバリングを外し,タイトルを「オーバーウォッチ」に戻す。これにより,続編の枠を越えた長期的なライブサービスとしての運営方針を明確にした。
 さらに,1年を通してナラティブを展開する新シーズンシステムの導入,新ヒーロー5人の実装といった,大規模なアップデート内容が明らかとなった。


 こうした発表はゲーマーに概ね好意的に受け止められたが,新ヒーローのデザインについては大きな議論に発展している。ゲームディレクターのアーロン・ケラー(Aaron Keller)氏がビデオメッセージを発信し,「キャラクターモデルの修正」を示唆する異例の事態になったのだ。

 問題の焦点は,新ヒーロー「アンラン」(Anran/安燃)のデザインだ。水を操るサポート,ウーヤンの姉であり,炎のエレメンタルを操る攻撃的なダメージ(フランカー)ロールのキャラクターである。
 設定上,「気が強く,情熱的。ウーヤンには厳しいが頼りがいのある年長者」となっており,事前の紹介映像や電子コミックなどのアートワークでは,鋭い目と尖った顔,特徴的な鼻筋を持つ凛々しい女性として描かれていた。

「シーズン1:征服の道」では5人のヒーローの追加により,「オーバーウォッチ」のロースターは総勢50人に。人数も多くなり,それぞれの個性を引き立てるのは一苦労なのだろう
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 ところが,公式発表の3Dモデルは顔が小さく,丸みを帯びた目やしゅっとした顎が画一的な輪郭だった。「キリコ」や「ジュノ」といったアジア系女性キャラクターに近い,いわゆる「量産型美少女キャラクター」の造形であり,ゲーマーコミュニティから「設定や個性が反映されていない」と批判が噴出した。

 さらにアンラン役の声優を務めるコンテンツクリエイターのファリーハ・アンダーセン(Fareeha Andersen)氏は,自身のTikTok(※リンク)を通じて「(自分が声優として参加していたときの)アンランはもっと大胆で,既存の“美”の基準に挑戦するようなキャラクターデザインだった。現在のキャラクターモデルは妹のように見えるというファンの声はもっともであり,彼女の性格やスピリットと一致しない」とデザイン変更を呼びかけた。

左からゲーム映像,事前に公開されたアニメーション紹介映像。キャラクターの見た目が異なることから,アンラン役の声優を含むコミュニティが疑問を感じているようだ
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 一連の流れを受けて,「シーズン1:征服の道」のローンチ前日(米国時間2月10日),ケラー氏は「オーバーウォッチ」公式Xにビデオメッセージを投稿した。
 「私たちが思い描いていたような“強き姉”のビジョンにアンランを近づけるため,必要なステップをチームで議論しており,さらに良くする余地がある」と伝え,アニメーション全般やパフォーマンスのチェックするには時間がかかるものの,シーズン1期間中にも3Dモデルのアップデートを表明するに至ったわけだ。


量産型美少女なのか,確立されたアートスタイルなのか


 今回の問題において,海外のゲームコミュニティで頻繁に引き合いに出されているキーワードが「同じ顔症候群(Same Face Syndrome)」だ。2013年公開のディズニーアニメ「アナと雪の女王」のアナとエルサの顔が,2010年公開の「塔の上のラプンツェル」のラプンツェルと酷似していたことから,SNSで使われ始めたスラングである。
 もちろん医学的な専門用語ではなく,キャラクターデザインにおける「バリエーションの欠如」を指摘する用途としてアニメファンやアーティストの間で定着した。

 もっとも,こうしたキャラクターの類似性は,コミックやアニメの世界では古くから見られることでもある。日本の漫画界においても,松本零士氏やあだち充氏,高橋留美子氏,高橋陽一氏といった巨匠たちが描くキャラクターは,画風の一貫性が強いことから「髪型以外は同じ顔」と評されることもあるが,それは個性や作家性の強さの裏返しでもある。

 なぜ,このような現象が起こるのか。スタジオや作家が特定のキャラクタースタイルを確立することにより,スタッフ間でデザインを共有したり,作業の効率化を図ったりできる。また,作家が魅力的な顔の黄金比を追求した結果として,1つの形に落ち着いてしまうこともあるだろう。
 事実,アメリカでも1930年代から続く「アーチー・コミックス」のように,髪型や肌の色が異なるだけで,顔の造作や体格がほぼ同一のキャラクターを意図的に用いる手法がある。これは「ハウススタイル」と呼ばれ,作品のブランドを維持するための戦略的なデザイン手法として確立された歴史がある。

 とくにゲームのような3Dグラフィックスにおいては,表情を動かすための「フェイシャルリグ(顔の構造)」を共通化し,使い回すことには実利的なメリットがある。特定の動きで表情が崩れるといったバグを抑えつつ,開発コストを低減できるからだ。
 何より,消費者が一目見ただけでフランチャイズや作家を認識できるデザインは,マーケティングにおいて極めて重要だ。キャラクターの造形が似通っていることは,必ずしもネガティブに捉えるべきではなく,むしろブランドの「象徴」とも言える。

「オーバーウォッチ」のコミュニティでは,以前から定型化された女性キャラクターモデルを「Kirikofication」と呼ぶ言い回しがあるようだ。これを手抜きと見るか,アートスタイルと見るかは受け手次第か
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 つまり,キャラクターデザインにおいて問われているのは,単なる「見た目」の画一性や美醜ではない。その造形が設定や物語と矛盾なく結びつき,受け手が「キャラクターのアイデンティティ」を正しく認識できるかどうかが重要なのだ。

 「オーバーウォッチ」の場合,とくに初代では多彩な出自や年齢層による徹底した個性付けがヒーローたちの魅力だった。しかし,新たなスタートと同時に5人のヒーローが追加され,総勢50人の大所帯になり,皮肉にも「似通った顔立ち」のキャラクターが目立つようになってしまった。
 さらに問題視される要素として,アジア系女性ヒーローに「同じ顔」の傾向が偏っている点を指摘できる。以前から多様性を標榜してきた同作に潜む「美形アジア系女性に対するステレオタイプ」として,ネガティブに受け取られてしまった。

 今回,Blizzard Entertainmentの開発チームがコミュニティの声に耳を傾け,早急な決断を下したことは,「オーバーウォッチ」らしさを取り戻すための大きな一歩といえる。キャラクターの魂を守るための対応は,コミュニティを巻き込んだゲーム作りの観点において,非常にポジティブな転換点として記憶されることになるだろう。

著者紹介:奥谷海人
 4Gamer海外特派員。サンフランシスコ在住のゲームジャーナリストで,本連載「奥谷海人のAccess Accepted」は,2004年の開始以来,4Gamerで最も長く続く連載記事。欧米ゲーム業界に知り合いも多く,またゲームイベントの取材などを通じて,欧米ゲーム業界の“今”をウォッチし続けている。
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