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「ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女」はPCで遊ぶゲームブック。ダイスとコインを武器に,冒険の旅へ出かけよう
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印刷2026/07/11 12:00

プレイレポート

「ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女」はPCで遊ぶゲームブック。ダイスとコインを武器に,冒険の旅へ出かけよう

 ダイスとコインを武器に,冒険の旅へ出かけよう。

 2026年7月9日にリリースされた「ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女」は,“PCで遊ぶゲームブック”ともいえるPC向けファンタジーアドベンチャー作品だ。
 戦闘ではダイスを振り,ダメージを受けるとアドベンチャーシートの数字を鉛筆と消しゴムで書き直すなど,ゲームブック遊びの手触りにこだわっている。そんな本の世界を再現した本作を実際にプレイした感想を届けたい。後半には開発元のジギタリス出版・西村芳雄氏のインタビューもあるので,ぜひ読み進めてほしい。

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写真はこちらの記事より,社会思想社現代教養文庫から出た「火吹山の魔法使い」の日本語版初版(提供:ニフ氏)。日本におけるゲームブックがどのように受け入れられていったのかは,写真の引用元の短期連載をぜひ読んでみてほしい
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 そもそもゲームブックとはなにか。本作を紹介する前に簡単に説明しておきたい。

 ゲームブックは,物語を読みながら,途中で示される選択肢を選び,指定された別の段落へ移動して先を進めていく書籍だ。
 選択次第で出会う人物や手に入る道具,たどり着く結末も変わるため,読者自身が主人公として冒険に参加するような感覚を味わえる。“本で遊ぶアドベンチャーゲーム”とも呼べる,読書とゲームが交わった遊びなのである。
 本は選択肢が付いた無数の章(パラグラフ)に分かれている。プレイヤーは行動を選び,選択肢に記された飛び先のパラグラフを開く。そこに待つ物語の続きと新たな選択を繰り返しながら,エンディングを目指していくのだ。

 日本でのゲームブックは1984年に傑作「火吹山の魔法使い」の邦訳版が出版されたことからブームが到来した。
 「スーパーマリオブラザーズ」「ドラゴンクエスト」「ゼビウス」「ドルアーガの塔」など,同時期にブームとなったファミコンやアーケードゲームのIPがゲームブック化。また雑誌でも余白を使ったゲームブック遊びが掲載されるなど,多方面に影響を及ぼしている。現在も名作の復刊や電子書籍化が行われており,根強い人気を持っている遊びなのだ。

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[2025/12/30 11:30]

 そんなゲームブックをPCで再現したのが本作「ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女」である。
 作者の西村芳雄氏はかつてヴァニラウェアでグラフィックスを制作していた人物だ。氏は幼少期に名作ゲームブック「暗黒城の魔術師」を遊んだことから読書の楽しさに目覚め,ヴァニラウェアを卒業後は奈良の山奥にある村で6年をかけて本作を作り上げたという。

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 本作の舞台は剣と魔法の世界である。ユラン王国の首都エリシングでは,おとぎ話に出てくるような善の魔女・イヌボーグが王宮入りし,民衆は大喜びしていた。しかし,イヌボーグは突如として残忍な性格に変貌して謀反を起こし,国は動く死者が蔓延する地獄と化してしまったのだ。

魔女イヌボーグの得意技は「相手の魂を抜く」魔術で,受けた者は即死してしまう。ビデオゲームというよりは,ファンタジー小説的な能力だ
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 そんななか,エリシングへ向かう2人の姿があった。1人はイヌボーグに育てられた戦士ハヴェロックだ。今の邪悪なイヌボーグと,自分を育ててくれた優しいイヌボーグが同一人物であるかどうかを確かめようとしている。

 もう1人はエリシングで行方不明になった恩師を探すパネリという魔法使いである。過去の記憶を失っているが,魔法に関しては並々ならぬ才能の持ち主だ。2人がどのような運命を辿るかは,本を読むあなたの選択と運にかかっているのである。

戦士ハヴェロック(写真左)と魔法使いパネリ(写真右)
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 プレイヤーはハヴェロックとパネリ,どちらかの本(ストーリー)を選んでプレイを進めていく。2人は物語の展開や戦闘時の得意技が異なっており,ゲームオーバーになるまで変更することはできない。

 ハヴェロックは「ときの声」「カウンター」「部位攻撃」「防具破壊」などのスキルを使える。ときの声はHPを消費して一時的にレベルを上げ,命中率も向上させられる。
 部位攻撃は攻撃部位を選んで弱点であればダメージを2倍にでき,カウンターは敵の攻撃を無効化,防具破壊は敵の防御値をサイコロの分だけ減少させるが,武器や盾の使用回数が大きく減少する。敵が人間ならHPを消費して絞め落とすといった格闘術も使える,頼りになる男だ。

戦闘時の選択肢はカードの形で表示される。写真のハヴェロックの絞め技は対人間用だが,HPさえ支払えば確実に無力化できる変わり種。とある場所で,ハヴェロックが過去に剣闘士だったころに不殺で有名だったことが判明するが,こうした技で決着をつけていたのだろうか?
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 パネリはアイテムがあれば魔法を使える。書物や杖,巻物にはそれぞれ異なる魔法が宿っているため,道中で意識して集めておきたい。魔法の中には,探索やイベントの突破に役立つものもある。ハヴェロック編では運試しが必要だった難関であっても,適切な魔法さえあれば楽に突破できるのも特徴といえるだろう。

魔法は高い効果を発するが,アイテムの使用回数を大きく減少させる。なかにはカギを開けたり透明化したりと探索に役立つものもあり,いざというときに魔法が使えないなんてことがないようにしたい
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同じ店でも,ハヴェロック編とパネリ編では買える品が大きく異なる。前者ではHPやレベルの強化,後者では消費型攻撃アイテムを購入可能だ
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 本作はいたるところにゲームブックへの愛とこだわりが詰め込まれている。オープニングでは書籍「ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女」の書影が現れるが,表紙上部には緑と黒の帯が入っており,これは当時を知る人であれば懐かしいカラーリングだ。

書籍「ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女」。緑と黒の帯に英字が入っている辺りは社会思想社のゲームブックを思わせる。ページが黄色くなり,表紙もヨレているといった使い込みの描写もあり,「ああ,確かにこんなゲームブックが家にあった」と懐かしくなることだろう
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 プレイ中の画面は机の上に見立てたもので,書籍はもちろん,キャラクターのデータを記す用紙であるアドベンチャーシートとこれに記入する鉛筆と消しゴムが並べられている。
 この散らかった感じは,紛れもなくゲームブックを遊ぶときの光景。途中セーブすると本にしおりが挟まれるあたりも,紙のゲームブック的だ。

ゲームブックを遊ぶ机の上は,書籍やアドベンチャーシートや行動カード,鉛筆にダイス……と物でいっぱいだ
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 そして,動きでもゲームブックらしさを表現しているのは面白いポイントだろう。プレイを進めてパラグラフが進んだり戻ったりするたびに,画面上では書籍がペラペラとめくられる。
 HPや所持金が変動した際も,まずは消しゴムが現在の数値を消し,鉛筆が新たなデータを書き込んでいくのだから,ディープなこだわりといえるだろう。

冒険では鉛筆と消しゴムが大活躍する
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 もちろん戦闘時には敵味方がダイスを振り,運試しのためコインが投げ上げられる。現実のゲームブックでそうしたように,良い結果が出るようダイスとコインに念を込めている自分に気付く。ちなみに,ダイスとコインは戦闘時でなくても使える。分かれ道のどちらを選ぶべきか迷ってしまった,なんてときに投げてみるのも面白いだろう。

コインでの運試し(上写真)は見事に成功。写真のダイスロールは,防具破壊スキルでどれだけ敵の防御力を下げられるかを決めるものだったが,最低の「1」が出てしまった(下写真)。コインとダイスは運試しや戦闘以外の場面でも任意でいじることができ,この場合はゲームに何の影響も与えない
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 本とアドベンチャーシートは机に置かれており,マウスを上にやって視線を上げると,そこには本の持ち主である魔術師が立っている。ロードやオプション変更を頼めるのに加え,ときにはプレイヤーに声を掛けてきたり,後述する特殊ルールではプレイ相手を務めてくれたりする。
 つまり,プレイヤーと魔術師は2人一緒にゲームブックを楽しんでいるということで,これはブーム当時であってもなかなか経験できなかった夢の光景といえる。

机の向こうには魔術師が立っていて,テーブルトークRPGでいうゲームマスター(進行役)のような役目をしてくれる
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 エリシングの街や洞窟,そしてタイトルにもなっている暗黒城など,冒険の舞台は多彩だ。2人の活躍は情景を描写する文章と挿絵で表現され,想像力を刺激されるプレイ感はゲームブックのそれである。

 個人的には,挿絵も書籍っぽく大小のサイズがあるのも印象深い。大きなものは魔物や敵の姿を活写し,当時の書籍ではなかなか望めなかったフルカラーでカッコいい。小さなものはいかにもワンポイントという感じでゲームブックっぽい。

大小さまざまな挿絵が目を楽しませてくれる。下写真の懐中時計は,制限時間付きのシーンで時間を計る「3分時計」という。翻訳ものっぽいネーミングだ
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 世界設定は正統派のファンタジーで,喋る犬や,髑髏の仮面の騎士,獣人や魔術師といった個性的なキャラクターたちが登場する。特にゲームブックらしいのが,彼らは敵か味方か分からないし,選択肢は戦闘ばかりではないという点である。たとえば城の厨房に行くと,料理人の亡霊がいて賭け事に興じている。プレイヤーは彼らと話すことも,賭けに参加することもできるのだ。

翼を持つ犬,賭け事に興じる亡霊,自分を「化け物」と呼んで泣き続ける男など,敵か味方か分からない登場人物たちが,プレイヤーに対処を迫る
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 もちろん,ゲームブックにはお馴染みの食べ物にまつわるイベントもある。牢獄で出されたパンとスープで生命点を回復,街の酒場ではチーズやパンの味を語るフレーバーテキストと財布を見比べつつ買い物をし,酒場では仲間とともにゆでた枝豆を肴に酒を酌み交わし……と,プレイしているだけでお腹が空いてくる。ゲームブックの魔法は本作でも健在というわけだ。

食べ物もおいしそうだ。水筒に入った水でさえ,フレーバーテキストのおかげで甘露のように感じられる
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 文章が「君(プレイヤー)」への呼びかけで綴られているのもゲームブック的で,特に面白いのが2重3重になった選択肢だ。
 例えば,死人の群れを避けるため,頭上のシャンデリアに掴まるというシーンがある。無理な姿勢に体力は消耗するが,死人の群れは一向に去る気配がなく,書籍からは何度か「本当にシャンデリアに掴まったままでいるのか」的なことを問いかけられる。言葉の力で感情と判断を揺さぶられているわけで,作者と対決している気分になってくるのだ。

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イベントの中には「何か落ちていないか,トイレの中を探して回る」なんてものも。文章も相まって,こちらの鼻も曲がってしまいそうだ
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ショップには魔法の品が山と並ぶ。本作ではお金の入手機会が限られており,コンピュータRPGのように「所持金が足りないから,ちょっと雑魚を狩って金策してくる」なんてことは不可能だ

 選択肢によっては,本物のゲームブック同様,飛び先となるパラグラフの番号が表示されていることがある。
 この番号は人間がページをめくる際の目印となるもので,本来ならコンピュータがプレイを取り仕切る本作には必要ない。慣れてくると,飛び先の番号を見た際に「あっ,これはゲームオーバーになる選択肢だ」と分かってしまうのだが,これも紙のゲームブックらしさを表現する仕掛けであるわけだ。

選択肢には,飛び先の番号が分かるものとそうでないものが混在している
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 プレイ中には特殊なルールが適用されることもあり,ここにはコンピュータゲームとしてのメリットがある。
 たとえば,死人でいっぱいの街を逃げる際には3分という時間制限が課せられるが,ゲーム側が時間を計ってくれる。逃げた先の建物には本が置かれており,「読む」と長々とした文章が出てくるのだが,時計の針は止まらない……という表現はコンピュータゲームならではのものだ。

 また,ある場所では猿との追いかけっこをしなければならず,その際はサイコロを振って移動するボードゲームのようなルールとなるが,プレイはコンピュータが取り仕切ってくれるため,プレイヤーに負担がない。
 そして,本作は周回プレイが可能で,2周目以降は変化が起こる
 それがどのような変化かはプレイしてのお楽しみだが,この辺りはコンピュータゲームならではの仕掛けといえるだろう。

猿との追いかけっこでは,ダイスで出た目だけ駒を動かせるボードゲームのようなルールに。猿の役は魔法使いが務めてくれる
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 戦闘で負けたり,トラップで体力が尽きるなどすると,プレイヤーはパラグラフ「14」に送られる。
 いうまでもなく14は多くのゲームブックでゲームオーバーを表すパラグラフとして使われているが,本作の場合は同じ14でも死亡時の状況に応じて文章が変わることもあり,喪失感を高めてくれる。紙では難しかった「夢の14」といって差し支えないだろう。

ゲームオーバーのパラグラフ番号はもちろん「14」。同じ14でも文章が少しずつ違ってくることもある
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 ゲームオーバー後にどうすべきかは,「コンティニュー許容派」と「最初からやり直すべき派」の間でしばしば論争が起こるセンシティブなテーマであった。
 しかし,本作では直前の選択肢に戻ってコンティニューできるし,なんなら選択肢の度にロードとセーブを繰り返して安全策を取ることもできる。特にロードとセーブについては防止するようなシステムも作れたはずだが,“なぜそうしていないか”は気になるところだろう。

 西村氏は公式HPにおいて,こうした行為を肯定するというコンセプトを明確にしている(リンク)。おかげでゲームブックに慣れていない人でも遊びやすいというわけで,英断といえるだろう(なお,ゲームオーバー時に最初からやり直すオプションも用意されている)。

 余談だが,ブームの当時は「戦闘時にダイスさえ振らず,すべて“勝った”ものとしてゲームを進める」「パラグラフに関係なく,普通の本のように読み進めてエンディングを確認する」という行為も行われていたが,さすがに本作では不可能とされており,明確な線引きがうかがえる。

こちらは街や城で登場する地図。パラグラフ番号が入っている辺りがゲームブックっぽい
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 このように,本作はゲームブックを知る人にとっては当時を思い出させてくれる内容だし,書籍を買ったことはないが興味があるという人にもオススメできる。ゲームブックは現在電子化が進んでいるが,本作はコンピュータゲームであることのメリットもうまく取り入れられているのもポイントだろう。

 個人的には,ブーム当時に遊んでいたゲームブックという文化が継続しているのが嬉しい。本作のように制作者のこだわりが非常に強い作品が世に出るのも,インディーゲームというフィールドの自由さゆえであろう。制作もなかなか大変だとは思うが,さらなる展開を期待したいところだ。

「プレイヤーが住む世界の文字を書いてみた」と,おちゃめな魔法使い。令和に新作のゲームブックを遊べるのだから,こちらこそ「ありがとう」といいたいところだ
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ジギタリス出版・西村芳雄氏メールインタビュー

4Gamer:
 本作の制作経緯を教えてください。

西村芳雄氏:
 まだ私がヴァニラウェアに勤めていた頃の話です。COVID-19の流行当時,ヴァニラウェアでリモートワークの許可が出たので,私は会社のある大阪を離れ,田舎に引っ越しました。
 時が流れ,再び会社に出勤する者が増えるなか,私は現在住んでいる曽爾村を離れる気にはなれませんでした。ヴァニラウェアとしては原則全員出社する方向となりましたので,私は会社を退職し,自身で食べていかなくてはなりませんでした。
 またヴァニラウェアの代表である神谷(盛治)さんは,社員が成長し経験を得た暁には,独り立ちすることを望んでいました。そういった経緯により,本作が生まれることになりました。

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4Gamer:
 ゲームブックというジャンルを選んだ理由を教えてください。

西村芳雄氏:
 ゲームブックというジャンルを選んだ理由は,2018年に株式会社アトラス様より販売された「ドラゴンズ・クラウンPRO」で,「先着購入特典DLC デジタルゲームブック『悪霊島の秘宝』」を制作した際の成功体験からです。制作そのものが楽しかったので,その後趣味として1人でコツコツと作っていました。

 また,幼い頃の私は読書が苦手だったのですが,当時人気だったゲームブックを遊んで本が読めるようになり,その挿絵を模写して絵も上手に描けるようになりました。
 ですのでゲームブックというジャンルにとても感謝しています。そしていつか恩返しがしたいと考えていました。それも理由と言えます。

西村芳雄氏がディレクターを務めた,「ドラゴンズ・クラウンPRO」の「悪霊島の秘宝」。こちらの記事では当時の西村氏からのコメントも掲載している
(C)ATLUS (C)SEGA All rights reserved.
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 アトラスが2018年2月8日に発売するPS4用RPG「ドラゴンズクラウン・プロ」は,2013年発売の「ドラゴンズクラウン」“より美しく,遊びやすく”なったリマスター作品だ。オリジナル版を振り返りながら,新要素,4K解像度とPS3版の画像と制作者コメントを交えたグラフィックス解説などで,本作の魅力を紹介していこう。

[2018/02/07 21:00]

4Gamer:
 本作は,ダイスやアドベンチャーシートといったゲームブックらしい遊びを残しつつ,途中からのコンティニューやCPUによる対戦相手など,コンピュータゲームならではの仕組みも取り入れています。両者の要素を採用する際,どのような基準で取捨選択したのでしょうか。

西村芳雄氏:
 導入する / しないの判断は,大きく2つの考えで決めました。
 1つ目は“ゲームマスター視点で考える”です。乱暴な言い方になるかもしれませんが,TRPGを一人でもできるように生み出されたのがゲームブックだと私は解釈しています。
 コンピュータゲームも,コンピュータがゲームマスターの役をしているTRPGだと思います。ですのでゲームブックというジャンルではありますが,その元はTRPGだと思っています。CPU(魔術師)は冒険をサポートするゲームマスター役です。その魔術師からすれば,目の前のプレイヤーが困っていたらコンティニューさせてくれるでしょう。そういった「自分がゲームマスターだったらどうするだろう?」という考えです。

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 2つ目は“幼い頃の私が最後まで楽しめるものを考える”です。
 幼い頃の私はゲームブックで遊ぶ際,“指セーブ”(戻りたいページに指を挟んでおく行為)ばかりしていました。これはゲームブックのルールにはない,“逸脱”した行為になると思います。
 この行為を“良し”とするか“悪し”とするか。これはプレイヤーの善悪に対する考え方で随分と変わります。また同様にサイコロの出目を誤魔化すことにも良し/悪しがあります。幼い頃の私はこの善悪の呵責に苦しみました。

 これらの行為は,ひとえに当時の私にとって“ゲームブックが難しかったから”にほかなりません。ですので,当時の私が苦しまず,最後まで遊べるように考えたので,途中セーブは勿論のこと,文字の書き換えを自動化したり,場所の移動を地図で表現したり,飽きにくいように違う趣向の遊びを入れたりもしました。
 そしてまた,この2つの考えにこだわりぬきました。

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4Gamer:
 どのようなプレイヤーを想定して難しさを調整したのでしょうか。

西村芳雄氏:
 “幼い頃の私が諦めず,最後まで遊べるレベル”をイメージしました。
 具体的に言うと“12歳の子供の根性でなんとかなる難易度”を想定しています。また現実世界と同じく,争いごとなどの危険を避けると生存率が上がりますので,選択の見極めが難易度に直結しています。

4Gamer:
 プレイしていて,非常にドラマチックな結果になることがありました。戦闘やイベントで振られるダイスの出目に,何らかの調整は加えられているのでしょうか。

西村芳雄氏:
 全く操作はしておりません!(プログラマーが嘘をついていないなら……)凄くラッキーだったり,とんでもなくひどい目にも遭ったりもするので,私としてもダイスに何かのエネルギーが作用している気がします。

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4Gamer:
 物語や世界設定,描写の面で,「ゲームブックらしさ」を出すために意識したことを教えてください。

西村芳雄氏:
 私が思う“ゲームブックらしさ”とは,「選択ミスで直ぐに死ぬ」「甘い誘惑は大抵の場合ワナ」「ギャンブル」の3つです。ですので物語や世界設定は,シビアで生と死が隣り合わせの状態を感じさせるものになりました。
 そしてプレイヤーを誘惑する登場人物や食べ物,アイテム。運によって勝敗が決まるイベント。ダイス賭博などの“ギャンブル”ですね! この3つにこだわりました!
 なのでプレイヤーは選択次第で直ぐに死んでしまいます。探索すれば,そこかしこに誘惑と罠が待ち構えています。ダイス運で結果が随分変わってしまいます。私としては井戸にコインを投げ込むシーンもゲームブック的だと感じています。

4Gamer:
 ゲームブックの文章を書くうえでこだわったことと,影響を受けた作品を教えてください。

西村芳雄氏:
 文章を書くうえでこだわったのは,これも“ゲームブックらしさ”とも言える,なるべく分かり易いセリフや状況が理解しやすい地の文(セリフ以外の状況説明や描写,解説文),「君はどうする?」といったプレイヤーが主体的に物事を選ぶのを促す部分です。
 上記のような表現は古臭く感じるかもしれませんが,私の大好物でして……。

 またそれと矛盾するかもしれませんが,時にねっとりするぐらい事細かに描写したり,詩的に感じられるように比喩表現をすることにもこだわりました。こちらも私の大好物でして……とても楽しく文章が書けました!

 私が最も影響を受けた作品は(タイトルが既に物語っていますが),1985年に二見書房から出版されたJ・H・ブレナン著「暗黒城の魔術師」というゲームブックです。

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4Gamer:
 今後「ジギタリス出版」ではどのような作品を手がけていきたいと考えていますか。書籍化やアナログゲームなどの展開も視野に入れているのでしょうか。

西村芳雄氏:
 屋号にある“ジギタリス”とは,ベル状の花を幾つも咲かせる美しい植物でして,その花の形から,「魔女の指抜き」「キツネの手袋」とも呼ばれています。
 また語源は「指」を表す「デジタル」と同じです。ですので「ジギタリス出版」は「魔女」と「キツネ」にテーマを絞り,「デジタル」でゲームブックを制作し続けようと考えております。
 新作の内容は,「ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女」の反響によって変化すると思っております。良い結果が得られたならば,同じパンチを打っていきたいと考えております。書籍化やアナログゲームも大変魅力的ですが,とりあえずは「デジタル」を中心に活動したいと考えております。

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4Gamer:
 最後に,本作やゲームブックという遊びの魅力を伝えるメッセージをお願いします。

西村芳雄氏:
 ゲームブックを知らない / やったことがないという方はラッキーです! なぜならゲームブックで遊ぶ初体験ができますから。できることなら私もゲームブックで遊んだ記憶を消して,また「暗黒城の魔術師」を読んでみたいです。
 それほどに私は,ゲームブックにわくわく,ドキドキした思い出があります。「自分の選択で内容が変化する物語」と言葉にすると,なんだかよくある普通のゲームに聞こえるかもしれません。ですが,これほどシンプルに自分の想像力が試されるゲームは少ないと私は思います。

 “わずかな情報で結果を予測し,最良の答えを選ぶ”そこには“自分らしさ”が良く現れます。自分では普通に選んだ選択も,他の人とはまるで違ったりします。本作は比較的簡単な内容になっていますので,ゲームブックを知らない方にこそ遊んで欲しい一作となっています。ぜひ,本作でゲームブックを遊ぶ初体験を楽しんでください!!

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  • 関連タイトル:

    ヴェリタステイルズ:暗黒城の魔女

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