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ディスプレイ最大手のSamsungがAMDの「FreeSync」に対応。業界標準の地位を得られるか?
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印刷2014/11/21 16:45

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ディスプレイ最大手のSamsungがAMDの「FreeSync」に対応。業界標準の地位を得られるか?

 現地時間2014年11月20日,AMDがシンガポールで開催した「Future of Compute」イベントでは,AMDが関わるさまざまな技術が話題として取り上げられたのだが,その1つに,AMDが開発したディスプレイ同期技術「FreeSync」がある。
 具体的には,ディスプレイ業界の最大手であるSamsung Electronics(以下,Samsung)が,2015年に発売予定の4K液晶ディスプレイすべてをFreeSyncへ対応させるという発表があった。そこで本稿では,FreeSyncのおさらいをしつつ,Samsungの発表とその意味をレポートしてみたいと思う。


NVIDIAの「G-SYNC」と覇を競うFreeSync

VESA標準にも採用


Richard Huddy氏(Game Scientist, CTO ,AMD)
画像集#002のサムネイル/ディスプレイ最大手のSamsungがAMDの「FreeSync」に対応。業界標準の地位を得られるか?
 FreeSyncの基礎に関する説明は,AMDのRichard Huddy(リチャード・ハディ)氏が担当した。

 現在市販されているディスプレイやテレビは,一部の高リフレッシュレート対応製品といった例外を除き,毎秒60回の画面表示を行う60Hzのサイクルで動作している。しかし,ゲームはリアルタイムに映像を作っているため,毎秒60コマ(=60fps)のサイクルで映像を生成できず,ゲーム映像の描画サイクルがディスプレイ側の60Hzを下回るケースというのが,往々にして発生してしまう。
 そして,ゲーム側の描画サイクルがディスプレイ側の60Hz周期からずれてしまうと,映像表示が画面上の中途で分断されて行われる「テアリング」(Tearing,日本では誤読の「ティアリング」読みが主流)現象や,表示がカクつく「スタッター」(Stutter)現象が起きる。テアリングはディスプレイの60Hzと同期していない状態(Vsync無効)で描画サイクルが低下した場合に,スタッターは60Hzと同期した状態(Vsync有効)で低下した場合に発生する現象だ。

画面が分断表示されるテアリング現象の例
画像集#003のサムネイル/ディスプレイ最大手のSamsungがAMDの「FreeSync」に対応。業界標準の地位を得られるか?

スタッター現象の説明スライド。表示タイミングを逃した「FRAME 3」は,次の表示タイミング(図のREFRESH 4)が来るまで表示されない
画像集#004のサムネイル/ディスプレイ最大手のSamsungがAMDの「FreeSync」に対応。業界標準の地位を得られるか?

 これを回避するために,映像の送出元,つまりGPU側で映像表示タイミングを制御する技術が考案されることとなった。NVIDIAが独自の手法で実現したのが「G-SYNC」であり,対抗するAMDが考案したのがFreeSyncというわけだ。

 G-SYNCとFreeSyncの長所や短所,技術的バックグラウンドについては,COMPUTEX TAIPEI 2014で取材した記事を掲載している(G-SYNC関連記事FreeSync関連記事)のでそちらも参照してほしいが,その違いを簡単に説明しておこう。

 NVIDIAのG-SYNCでは,ディスプレイに内蔵する専用ハードウェアとGPU側が連携することで,映像表示タイミングを制御する。それに対してAMDのFreeSyncは,組み込み機器向けDisplayPort規格にあった仕様「Ignore MSA」(MSA:Main Stream Attribute)を転用して映像表示タイミングの制御を実現するものだ。VESA規格の「Adaptive-Sync」として標準化されてDisplayPort 1.2aのオプション仕様となったこともあり,「FreeSyncは独自のハードウェアを使わず,クローズドな独自規格でもなく,ライセンス料も取らない」と,説明するHuddy氏の声にも力が入る。

FreeSyncは,表示期間をフレームごとに個別制御する仕組みだ
画像集#005のサムネイル/ディスプレイ最大手のSamsungがAMDの「FreeSync」に対応。業界標準の地位を得られるか?

画像集#006のサムネイル/ディスプレイ最大手のSamsungがAMDの「FreeSync」に対応。業界標準の地位を得られるか?
FreeSyncは,テアリングもスタッターもなく,映像の前フレームを正しく表示できるだけでなく,表示遅延もないとされる
画像集#007のサムネイル/ディスプレイ最大手のSamsungがAMDの「FreeSync」に対応。業界標準の地位を得られるか?
NVIDIAのG-SYNCに対して,FreeSyncは「特別なハードウェアを使わず,独自規格でもなく,ライセンス料も取らない」という

FreeSyncとG-SYNC(スライド中ではTHE COMPETITIONと表記)の違いを示した表
画像集#008のサムネイル/ディスプレイ最大手のSamsungがAMDの「FreeSync」に対応。業界標準の地位を得られるか?


Samsung製4K液晶ディスプレイの対応でFreeSyncの普及は一気に進む?


Joe Wc Chan氏(Enterprise Business Team Vice President,Samsung Electronics)
画像集#009のサムネイル/ディスプレイ最大手のSamsungがAMDの「FreeSync」に対応。業界標準の地位を得られるか?
 イベントでは,Huddy氏に続いて,SamsungのJoe Wc Chan氏が登壇。氏は,2014年度までに世界中で出荷された4K液晶ディスプレイの6割がSamsung製であるとアピールしたうえで,「2015年に発売されるすべての4K液晶ディスプレイをFreeSyncに対応させる」と宣言した。

画像集#010のサムネイル/ディスプレイ最大手のSamsungがAMDの「FreeSync」に対応。業界標準の地位を得られるか?
世界市場でこれまでに最も売れた4K液晶ディスプレイはSamsung製だそうだ
画像集#011のサムネイル/ディスプレイ最大手のSamsungがAMDの「FreeSync」に対応。業界標準の地位を得られるか?
4K液晶ディスプレイでのFreeSync対応を打ち出すSamsung。業界への強いアピールとなるか

 そのラインナップとして名前が挙がったのは,23.6インチと28インチの2モデル展開となるUE590シリーズと,23.6インチと28インチ,31.5インチの3モデル展開となるUE850シリーズの計5製品だ。各製品の価格や発売時期については言及されず,実機の展示もなかった。おそらくは,2015年1月に米国ラスベガスで開催される家電展示会「International CES 2015」のSamsungブースで,実機が披露されるのではないかと筆者は予想している。

Samsungの4K液晶ディスプレイは,2015年投入予定のUE590シリーズとUE890シリーズでFreeSyncに対応する
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解像度2560×1440ドットのSamsung製試作機(写真左側)を用いてFreeSyncのデモが行われていた。
画像集#013のサムネイル/ディスプレイ最大手のSamsungがAMDの「FreeSync」に対応。業界標準の地位を得られるか?
 4K液晶ディスプレイだけでなく,解像度2560×1440ドットの液晶ディスプレイも一部FreeSync対応になる予定とのこと。こちらの具体的なシリーズ名は言及されていないが,イベント会場には試作機が出展されており,FreeSyncのデモを披露するのに使われていた。

 Chan氏のプレゼンテーションはこれだけで,技術的にどうしたといった話はなし。おそらく,「SamsungはFreeSyncを支持する」とディスプレイ業界にアピールすることが目的だったのだろう。
 もっとも,Samsungが支持を表明したからといって,業界全体がFreeSyncで迅速にまとまるかどうかは別の話だ。たとえば,SamsungのライバルであるLG Electronicsも「24GM77-B」のようなゲーマー向け液晶ディスプレイを販売しているが,FreeSyncとG-SYNCのどちらにも支持は表明していない。

 FreeSyncは,DisplayPort規格に含まれるオープン規格であり,NVIDIAのGPUがこれをサポートするための技術的な障害はなさそうに思える。しかし,G-SYNCを推しているNVIDIAが,同社のGPUで直ちにこれをサポートする可能性は低いだろう。そうなると,当面は「FreeSync対G-SYNC」の戦いが継続するわけで,規格争いに決着がつくまでの間,NVIDIA製GPUのユーザーはG-SYNC,AMD製GPUのユーザーはFreeSyncに対応するディスプレイを選ぶしかないという,なんとも悩ましい状況に置かれることになる。

 この規格争いに終止符が打たれるのがいつになるのかは,まったく予想がつかない。当面はゲーマーも液晶ディスプレイ業界の動向に注目しておく必要がありそうだ。

[COMPUTEX]VESA規格の「Adaptive-Sync」登場でG-SYNCはどうなるのか? NVIDIAのG-SYNC担当者に聞いてみた

[COMPUTEX]VESA標準の「Adaptive-Sync」はG-SYNCを駆逐できるのか? AMDの担当者にも聞いてみた


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