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イベントには,本作のディレクションとシナリオを手がけたトゥーキョーゲームスの小高和剛氏や,ゲーム内キャラクターのCVを演じた声優の木村太飛さん(澄野拓海役),櫻井孝宏さん(蒼月衛人役),緒方恵美さん(九十九今馬役),伊藤梨花子さん(九十九過子役)が登壇し,同タイトルの発売1周年を祝った。
本稿では当日行われた2公演のうち,夜公演の模様をお伝えする。なお記事の内容にはかなりのネタバレを含んでいるので,「ハンドラ」をプレイ中,または未プレイの人はご注意を。
また記事の後半には,登壇者へのメディア合同インタビューを掲載しているので,興味のある人はチェックをお忘れなく。
![]() 左から小高和剛氏,櫻井孝宏さん,木村太飛さん,緒方恵美さん,伊藤梨花子さん |
オープニングを飾ったのは,声優陣4名によるオリジナル朗読劇だ。イベント出演のためにドレスアップしてきた澄野たちと,本性を表した蒼月のやり取りが来場者の笑いを誘う。なお昼公演の蒼月は,澄野の頼れる相棒として登場したそうだ。
登壇者の挨拶に続き,事前に募集していた1周年記念アンケートの結果が公開された。
最初に披露されたのは「プレイ時間」のトップ10で,10位が475時間,1位は870時間という結果に。小高氏によると,ストーリーをじっくり読んで全100ルートをクリアすると約200時間かかるとのことなので,トップ10に入ったプレイヤーはかなりやり込んでいることがうかがえる。
また小高氏は,長い時間を費やして遊んでいるプレイヤーたちに感謝の意を示すとともに,「もともと100ルート全部を見てほしいというわけではなく,ある程度クリアして“もう,いいや”となり,しばらく経って“別のルートも見てみるか”となる,といったことを繰り返して,長く楽しんでいただける作品を目指していた」と話していた。
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「一番好きな部隊長」の1位はイヴァーで,小高氏は「2周目から味方として特防隊に加入するキャラクターなので,それはそうだよなという感じ」とコメント。また2位のヴェシネスに関しても,「イヴァーと同じく固有のルートがあり,主人公の澄野とのカップリングもあるので,これもそうだよな」と感想を述べた。
3位のチューラムタミーについては,ビジュアルが人気につながったのではないかと分析する一方で,中身がロリっ娘なのではないかという幻想を抱く人の意見をよく見かける,と指摘していた。
なお各部隊長の素顔については,発売決定が当日発表された「ハンドラ」公式資料集に掲載される予定だという。
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「最初にたどり着いたエンディング・ルート」の1位は,「001. 真相解明編:さようなら最終防衛学園」だ。小高氏は早い段階で真相を知った上で,いろんなルートをたどって自分自身の救いがどこにあるのかを探してもらうほうがいいゲーム体験になると考えて,「多くの人はこちらを選ぶだろうな」という意図のもとストーリー上の選択肢を作っていたことを明かし,「計算どおりですかね」とコメントしていた。
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なおすべてのアンケートの結果は「ハンドラ」公式サイトに掲載されているので,興味のある人はチェックしてみよう。
「HUNDRED LINE -最終防衛学園-」ユーザーアンケート集計結果
https://hundred-line.com/event/survey/
本作のファンから寄せられた質問に,登壇者が答えるコーナーも設けられた。
「こだわったけれど,プレイヤーが気づいていなさそうな細かいポイント」を問われた小高氏は,隅々まで見る人が多いのであまりないのではないかとしつつ,「強いて言えば,食堂の水槽などのオブジェクトを調べたときのセリフが結構違う」と回答していた。
「自身が考える,澄野が一番『極限と絶望』を味わったシーン」を問われた木村さんは,「1周目で蒼月の鎌が飛んでくるところ」と回答し,「急に殺しに来て,うわっ! となって,しかもメッチャ強い。澄野は超ビビったと思うし,僕もめちゃくちゃビビりました」と感想をもらした。
「役の振れ幅が大きい蒼月を演じる上でこだわったポイントや辛かったポイント,演技が難しかったルート」を問われた櫻井さんは,人間が醜悪で臭い存在に見える蒼月になりきるとなると,同情すると同時に気持ち悪くなったとコメント。また,自らの目をえぐったり鼻の粘膜を焼いたりといった描写もキツかったと話していた。
「小高氏が原作を手掛けるコンテンツの特徴」を問われた緒方さんは,自身よりもファンのほうがよく分かっているはずとしつつ,「簡単に言うと人と違うぶっ飛んだものを作りたいという思いがまずあって,ほかにはないくらいの圧倒的な絶望を描く一方,その中でなんとか希望を見せようという手法」を挙げた。
また,そうした絶望の描き方がコンプライアンス的にギリギリを攻めているとも指摘していた。
「ゲームを通してさまざまな面を見せる過子を演じるにあたり,意識したこと」を問われた伊藤さんは,双子の兄・今馬に従っていて自分で考えることができなかった過子が,成長していく姿や,兄を大切にしている部分を魅力的に演じたかったと回答。また今馬を演じる緒方さんについても,頼もしい存在と表現していた。
![]() 質問のテキストが今馬のセリフ調だったため,その場で緒方さんが読み上げるというサプライズもあった |
「ハンドラ」の「説得ミッション」を再現した「澄野・蒼月 説得チャレンジ!」のコーナーでは,木村さんが演じる澄野と櫻井さんの演じる蒼月を,小高氏のクリエイター班と声優陣のキャスト班が説得。いずれかの班が説得に失敗すると,パーフェクトにならず特防隊のリーダー・澄野こと木村さんが罰ゲームを受けるというルールで進められた。
このコーナーでは,櫻井さんがゲーム中でさまざまなひどい目に遭う澄野をさらにひどい目に遭わせる「澄野・滅ルート」を考案し,小高氏にインスピレーションをもたらした。また蒼月の説得に失敗した木村さんは,罰ゲームとしてセンブリ茶を飲むハメに……。そのほかゲーム中のシーンに声優陣がボイスを当てる,生アフレコのコーナーも設けられた。
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![]() 木村さんが受賞した,第20回声優アワードの新人声優賞をサプライズで祝う一幕も |
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![]() 「ハンドラ」関連の告知・紹介もなされた。舞台に関しては,全13公演中10公演で異なるエンディングが披露されるとのこと |
イベントのエンディングでは,登壇者たちが1年間「ハンドラ」を支えてきた来場者やファンに感謝の意を示した。また小高氏は,IPとしてのさらなる展開について言及し,「皆さんと一緒に『ハンドラ』を育てていきたい」と意気込みを見せていた。
……というところで一同降壇と思いきや,1人残った木村さんが「『ハンドラ』を応援してくれた皆さんにサプライズで,タイトルを象徴するエンディングの朗読劇をお届けしたい」と発言。サプライズゲストとして登場した,霧藤希/柏宮カルア役の黒澤ともよさんとともに,「真相解明編」のラストシーンを熱演した。
「ハンドラ」屈指の名シーンの再現に客席からはすすり泣く声が聞こえるほどで,朗読劇の終了後,会場は鳴り止まない拍手に包まれていた。
![]() 黒澤ともよさん |
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イベント登壇者インタビュー
イベント終了後,小高氏と木村さん,そして本作のディレクターを務めた打越鋼太郎氏にメディア合同インタビューが行われたので,以下にその模様をお伝えする。
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──今回のイベントや1周年を迎えたことについて所感を教えてください。
打越鋼太郎氏(以下,打越氏):
やっぱり,最後の朗読劇は感動しました。周りのお客さんが僕のことに気づいている感じだったので,泣いたら恥ずかしいなと(笑)。全体的に素晴らしいイベントでした。
小高氏:
アンケートの「一番好きなエンディング・ルート」の3位に「055. SF編:永遠の17人」が入ってましたけど,たどり着くまでのハードルがすごく高いんですよね。でも,そのルートで敢えて自分の持ち味を前面に出す打越は,プレイヤーをすごく信じているんだなと思いました。
あと僕は,SF編で全員死なないことを知らなかったんですけど,それを成し遂げてあの完成度ですから,すごいなと。「頼むから,全員生きていてくれ」とハラハラしながらプレイしていましたよ。
打越氏:
結構早い段階で「全員生きてる」って伝えたから(笑)。
小高氏:
言ってた? 忙しくて忘れてました(笑)。
──木村さんはいかがでしょう。
木村さん:
発売が1年前だったなんて,未だに信じられないんですよね。収録自体は2年前だったんですけど,「ハンドラ」で開けた演技の引き出しがたくさんあって,アニメの現場に行っても結構応用が利くんです。キャリアの序盤で「ハンドラ」に関わることができて,俺メッチャ幸せ者だなと思います。
──イベント中に,「ハンドラ」のDLCの話題が出ましたが,実現の可能性やどのような内容を考えているのかを教えてください。
小高氏:
今日はさまざまなメディアミックス展開を発表しましたけれども,そうやっていろいろ広がっていく中で「HUNDRED LINE 3」と言えるくらいの規模のDLCを出したいと考えています。
ただのおまけやファンアイテムにはしたくないんですよね。自分たちの心身を削るようなものを作りたいです。そのためにはゲームをもう1本作るくらいの予算が必要になるので,もっとたくさんのお客さんを獲得しつつ,構想を練り続けるというイメージです。
内容としては,「ハンドラ」にはまだ残された謎がありますけれども,それは語らないほうがいいんじゃないかという部分でもあるので,取捨選択しつつ新しい価値観を示すルートを作りたいと思いますね。
たとえば新入生が入ってきてもいいし,東京団地の中だけで終わるような話でもいいし,新たな敵が出てきてもいい。夢はどんどん広がっていきます。
僕自身は,「ハンドラ」が最初で最後のトゥーキョーゲームスの自社IPだと捉えているので,長く付き合い続けたいです。
打越氏:
敵と戦わずに,東京団地で学園モノをやるとか。キャラクターが全員魅力的なので,それをぜひ活かしたいという思いはすごくあります。舞台から学ぶこともあるでしょうし,いろんな作り方があると思いますね。その中で,これまで謎になっていた部分が解決されるかもしれません。そういうところも含めて,楽しみにしていただければ。
木村さん:
学園モノは気になりますね。面影歪を保健室の先生にしてみたり(笑)。
──舞台は,全13公演中10公演で異なるルートを描くとのことですが。
小高氏:
打ち合わせのときに,「ルートを変えたらいいんじゃないか」と僕がポロッと言ってしまったら,「やるのか……」という感じになってしまって。
「まあ『ハンドラ』っぽいか」と話が進み,どのルートならお客さんの満足度が高くて,どのくらいアレンジすれば成立するのかといったことを,舞台チームやアニプレックスのプロデューサーに検討してもらいました。
僕自身はそれをチェックして,意見するという立場ですね。ただ,大変な舞台になることは間違いないです。でもキャストの皆さんは,その覚悟を持って受けてくださったんですよね。
木村さん:
演じる側からすると,ゾッとしますよ。
小高氏:
「ダンガンロンパ」に縁のあるキャストさんもいらっしゃいますし。そういう意気込みで作っているので,ぜひ全公演観てほしいです。「ハンドラ」ファンはもちろん,舞台は初めてという人でも楽しめる内容になるんじゃないかという手応えを感じています。
──特典付きS席チケットには,描き下ろし小説「特防隊前日譚FILE04『飴宮怠美の変身』」が付いてくるとのことですけれども。
小高氏:
トゥーキョーゲームスの小山(シナリオライター 小山恭平氏)が書いてくれて,僕が監修しています。ちょっと薄暗い話なんですが,すごく面白いので,ぜひ読んでいただけたらと思います。
──イベントの来場者を見ると,女性ファンの割合が多いと感じました。
小高氏:
僕自身もそう捉えています。ただこの1年,僕はほとんど海外のイベントに出ていたので,国内のファンと触れ合うのはかなり久しぶりなんですよね。このイベントで,日本にも「ハンドラ」を愛してくださる皆さんがたくさんいることを実感できて,すごくありがたかったです。
皆さんが楽しんでくださっていることを感じ取れたので,ますます「ハンドラ」を盛り上げようという気持ちになりました。
木村さん:
実を言うと,僕自身のファンのうち1000人くらいは,中国やインドネシアといった海外の方なんですよね。SNSを見ると,「ハンドラ」がグローバルな存在なんだなと感じます。
あんなにたくさんのファンの皆さんを前にする機会は近年だと限られますから,貴重な体験でしたし,本当に力をいただいて「ハンドラ」をより好きになるような1日でした。
──「ハンドラ」自体は,海外でも人気があるのでしょうか。
小高氏:
まあまああると捉えています。でも,まだまだポテンシャルがあると思っていて。たとえば「真相解明編」のラストシーンは,そこだけ切り取っても感動しますけれども,そこに至る積み重ねがあるとすごく感動するエンディングなんですよね。そういうところを,もっと広く伝えていきたいと考えています。
僕らのゲームはビジュアルがアニメライクなので,どうしても海外のコアゲーマーからは敬遠されがちです。しかし,僕らとしてはハードコアなゲームに負けないくらい人の心を揺さぶるシナリオを作ったと思っているので,もっと手に取ってもらえるような伝え方をしていきたいという気持ちがあります。
──イベントでは声優陣からアニメ化を希望する声も出ていましたが,実現したらグローバルの人気もより高まるかもしれません。
小高氏:
そうですね。そこはアニプレックスさんの協力でぜひ(笑)。
──小高さんはSNSなどで積極的に露出して「ハンドラ」の情報を発信している印象がありますけれども。
小高氏:
正直なところ,あまりやりたくはないんです。だって面倒じゃないですか(笑)。面倒だし,世の中に言いたいこともないし,日記みたいなこともやらないし。本当に,少しでも多くの人に「ハンドラ」を伝えたいという気持ちでやっています。
──今後,「ハンドラ」で成し遂げたいことなどを教えてください。
小高氏:
もちろんアニメ化ですね。シミュレーションRPGでは表現できなかった,15人入り乱れてのアクションを実現できれば,新しい「ハンドラ」になってメチャメチャ伸び代がありそうだなと。
また「ハンドラ」というゲームの性質上,どんどん新しいルートが追加されても全然おかしくない。何かもう,DLCで違法建築のようなゲームになって,「何だ,コレ?」と後々カルトゲームとしていろんなゲームサイトで取り上げられるようなものにしていきたいという野望もあります。
木村さん:
僕は澄野が「スマブラ」に参戦してほしいですね。
小高氏:
それは無理でしょう(笑)。
木村さん:
分かんないじゃないですか。僕は可能性を信じます(笑)。
打越氏:
アニメ以外にも,スピンオフなどいろいろやってみたいですね。たとえば面影の暗殺日記みたいに,キャラクター1人をフィーチャーしてみるのも面白いと思います。
木村さん:
「ハンドラ」以前の話も面白そうですよね。
小高氏:
「HUNDRED LINE 0」とかね。イマジネーションがどんどん膨らむ作りなので,それを活かして唯一無二のゲームにしていきたいです。
──最後に,「ハンドラ」のファンや,今後の展開に注目している人に向けてメッセージをお願いします。
小高氏:
僕が手掛けたすべてのゲームにおいてそうなんですけれども,ファンの皆さんが応援してくださるおかげで生き延びられているので本当にありがたいです。毎回「買ってください」とお願いする半面,「絶対に魅了してやる」という気持ちで作っています。
とくに「ハンドラ」は,多額の借金をして,長い年月をかけて作ったので,これがダメだったら本当に潰れるというところで勝負をかけました。
おかげさまで日本ゲーム大賞や海外のアワードもいただけましたので,ぜひ追い詰められた状況でもしっかり結果を出す小高を褒めてあげてください。そうしたら,もっとやる気になるかもしれません(笑)。
木村さん:
これだけファンの皆さんから愛されるゲームは,本当に数少ないと思います。そんなゲームで主人公を演じることができて,いろんなことを経験させていただけて,もう本当に忘れられないんですよ。呪われてるんです(笑)。
ファンの皆さんにも,ぜひ「ハンドラ」への熱量を持ち続けていただきたいですし,そのために僕も澄野拓海を演じていきたいです。
打越氏:
まだ「ハンドラ」をプレイしていない方も結構いますので,ファンの皆さんには引き続き面白さを布教していただきたいです。
おそらく一番のハードルになっているのが,プレイ時間なんですよね。このご時世,多くの人は時間のかかるものを敬遠しがちですから,布教するときには「このルートがオススメ」みたいなことを教えてあげると,より短い時間でも楽しめることが伝わるんじゃないかと。
そこまでいったらハマってもらえると思うので,その取っ掛かりとしてまずはルートを1つ,最後までプレイしていただきたいです。
──ありがとうございました。
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