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「グランツーリスモ7」レビュー。“運転できる自動車百科事典”で,疑似カーライフを存分に楽しもう
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印刷2022/03/02 20:00

レビュー

「グランツーリスモ7」レビュー。“運転できる自動車百科事典”で,疑似カーライフを存分に楽しもう

 ソニー・インタラクティブエンタテインメントは2022年3月4日,レーシングゲーム「グランツーリスモ7」PS5/PS4 以下,GT7)を発売する。
 近作は「そのプラットフォームの成熟期に登場するレーシングゲーム」というイメージの強かったグランツーリスモ(以下,GT)シリーズだが,GT7は,PS5が発売されてからそれほど間を置かずに登場することもあり,キラータイトルとしてPS5を牽引していくタイトルになるに違いない。さっそく本作のレビューをお届けしていこう。

画像集#039のサムネイル/「グランツーリスモ7」レビュー。“運転できる自動車百科事典”で,疑似カーライフを存分に楽しもう


PS5版のみならず,PS4版も発売に


 GT7は,2017年に発売された「グランツーリスモSPORT」から5年,前作ともいえるナンバリングタイトルの「グランツーリスモ6」(2013年発売)から9年ぶりの登場となる。
 発表当初は「PS5専用タイトル」としてアナウンスされていたが,2021年9月にPS4版の同日発売も発表された。未だPS5を買えない人は一定数いることから,世界中のGTファンが歓喜に沸いた。GTシリーズが二世代のゲーム機に発売されるのは初めてのことだ。PS4とPS5のアーキテクチャが,共に似通ったAMD系プラットフォームだったことが,よい方向に働いたのかもしれない。

 さて,GT7は通常版の「スタンダードエディション」と,GTシリーズ誕生25周年を記念した「25周年アニバーサリーエディション」の2タイプが発売される。
 「スタンダードエディション」はPS4版が7590円,PS5版が8690円,「25周年アニバーサリーエディション」はPS5版のみのリリースとなり価格は1万890円(いずれも税込)となっている。

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 両エディションとも早期購入特典として,ゲーム内で利用できる「MAZDA RX-VISION GT3 CONCEPT Stealth Model」「ポルシェ 917 LIVING LEGEND」「トヨタ スープラ GT500 '97 (Castrol TOM'S)」の3台の特別車両と,ゲーム内通貨1000万クレジットが付帯され,「25周年アニバーサリーエディション」にはさらに1億クレジット(デジタル版は1.5億クレジット)や特別車両の「トヨタ GRヤリス 国・地域限定リバリー」,PSNアバターパック,デジタルゲームミュージックアルバム,金属製特装パッケージ(パッケージ版のみ)が同梱される。
 また,現在,PS5を購入できていないPS4ユーザーが,PS4版を購入し,後にPS5本体を購入できた場合には,税込1100円でPS5版へアップグレードができることを覚えておこう。パッケージ版,ダウンロード版のいずれも,このアップグレードサービスが利用できる。
 しかし,注意したいのは,パッケージ版のPS4版については,光ディスクドライブ搭載のPS5本体でしかアップグレード版を利用できない点。これはPS5を起動するに当たり,キーディスクとしてパッケージ版のPS4版光ディスクが必要になるからである。


ステアリングコントローラはPS3/PS4用のものにも対応


 今回のレビューにあたり,筆者はPS5版をプレイした。初日は,PS5の標準コントローラである「DualSense」でのプレイだ。
 DualSenseには,新世代のステレオ振動機能として「ハプティックフィードバック」が搭載されているが,GT7ではこの機能を積極活用していることもあり,タイヤの左右の接地感がよく伝わってくる。実車のサーキット走行においても,ステアリング(ハンドル)の振動から,路面の様子を想像してドライビングを行う局面があるが,GT7におけるDualSenseの「ハプティックフィードバック」表現は,まさにその疑似体験に相当するものになっていると考える。

画像集#040のサムネイル/「グランツーリスモ7」レビュー。“運転できる自動車百科事典”で,疑似カーライフを存分に楽しもう

 そして,DualSenseには,ゲーム機の標準ゲームパッドとしてかなり珍しいフォースフィードバック機能「アダプティブトリガー」が搭載されているが,GT7では,これをブレーキペダルのタッチ感表現に応用している。
 実車でのサーキット走行において,コーナー手前の急減速においてはアンチロックブレーキング(ABS)システムを効果的に活用するが,その時には「ガガガガ」という音と共にブレーキペダルから超高速な「柔→硬→柔→硬……」という踏み応えが返ってくる。この時の操作感を,GT7では,ブレーキに対応した左トリガーボタンで再現するのだ。実車運転時に足先で感じるほど強い力覚ではないが,それでも,人間の指先はもともと繊細な力覚を感じ取れるので,十分すぎる臨場感が得られた。
 「PS5×DualSense」でのプレイによるドライビング体験は,想像以上にリッチなものとなっていると思う。

 それと,これは「GT7のプレイ感」というよりは「PS5でのプレイ感」になりそうだが,「ガレージ」→「レースコース」などのメニュー間遷移の速度感や,何らかのミスを犯してレースを最初からやり直したいと思ったときのリスタートまでの待ち時間の短さが,劇的に速いのが嬉しい。PS5の処理速度の速さはもちろんだろうが,SSD性能の恩恵が最大限に発揮されている感じだ。これだけでもPS5版を選択するメリットは大きいと思う。

 さて,レーシングゲームといえば,ステアリングコントローラへの対応度が気になるところ。このあたり,GT7はそれなりに手厚いサポートが敷かれているようで,2022年2月時点では

  • 「Thrustmaster T300RS」
  • 「Thrustmaster T-GT」
  • 「Thrustmaster T150 FORCE FEEDBACK」
  • 「Thrustmaster T80 RACING WHEEL」
  • 「Fanatec GT DD Pro」シリーズ
  • 「Fanatec CSL ELITE RACING WHEEL」
  • 「Logicool G29/G923」

などのステアリングコントローラへの対応がなされている。GT7の「オプション」メニューからは,対応ステアリングコントローラごとの操作ボタンのマッピング等のカスタマイズも可能だ。

GT7がサポートするハンドルコントローラの設定画面より
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 どうやら,過去作のGT6(PS3)やGT SPORT(PS4)に対応していた,大手メーカー製のPS3/PS4兼用ステアリングコントローラは一通り使えるようだ。筆者は今回 LogicoolのG29を使用したが,路面を掴んでいたタイヤのグリップが抜けた瞬間や,再びグリップが回復したときの感覚などを,けっこうリアルに感じ取ることができた。

 また,GT7は,フォースフィードバックをかなり強めで活用しており,迫力満点である。筆者は,今回の評価では普段愛用しているステアリングコントローラスタンド「AP2 Racing Wheel Stand」(鉄製で安価。重いので安定度抜群)ではなく,軽めの木製小デスクにG29を取り付けてプレイしていたのだが,敵車や壁との激突時やスピン時に,意識的にステアリングを堅固に握っていたら,そのテーブルの方が床を叩きだして驚いたぐらいである。本格的なプレイをするなら,筆者のように横着せず,スチール製のステアリングコントローラスタンドなどに組み付けて,そうしたバタつきを押さえ込んだ環境を用意するといいだろう。


疑似カーライフが楽しめる「グランツーリスモモード」が復活

初めてGTシリーズに触れる人には「カフェ」がおすすめ


 2017年に発売された前作GT SPORTは,1人で遊べるキャンペーンモード「GTリーグ」が搭載されてはいたものの,どちらかと言えば対人ネット対戦に重きを置いたゲーム設計がなされていた。
 ところがGT7には,GT SPORTで培った充実のネット対戦モードに加え,GT6までのナンバリングタイトルにあった「運転できる自動車百科事典」的なコンセプトの1人遊びモードが帰ってきた。そう,プレイヤー1人1人が思い思いに疑似カーライフを楽しめる,あの「グランツーリスモモード」が搭載されているのだ。
 GT7での実装車種は420車種以上で,実在サーキット,架空コースを含む90種類以上のコースレイアウトでのドライビングが楽しめる。

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 天候表現と日照表現はリアルタイム連動にも対応しており,晴天から雨天(またはその逆),夕暮れから夜(または朝焼けから日の出)といった,走行中に景観が変わっていく演出は,時にプレイヤーに環境映像的な楽しみをも与えてくれる。しかし,実はこれ,見た目だけの演出ではなく,「巧みな罠」として走行に影響が出ることもある。

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 筆者が体験した首都高コースを使ったレースキャンペーンでは,その1周目は曇天だった天候が,2周目から雨天となり,1周目にはなかった水たまりができていて,ドライ状態でのコーナリングスピードでは曲がりきれず,ガードレールに激突することがあった。逆に,雨天スタートで周回後に晴天化する演出のレースでは,多くの敵車が走るレコードライン付近の路面が早めに乾いていく演出が入る。現実世界では,そんな早いスピード感で路面が乾くことは希だとしても,コース路面の凹凸特性と天候変化に合わせてドライビングスタイルも適応させていかなければならないというゲーム性は面白い。

雨の中の首都高レース。水たまりに要注意
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首都高はエスケープゾーンがないので,スピンし始めたらあとはピンボール状態。回り終わるまで運任せ!
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 さて,GT7は「7」とはいっても,ストーリー性があるゲームではないので,本作が初めてでも何の問題もない。人生初のGTが本作であってもいいし,ここ数年,GTシリーズから離れていて,久々に帰ってくるパターンも大いにアリだ。ただ,壮大なカーライフゲームであるGT7は,どのレースから始めてもいい作りになっているので,シリーズ初体験だと何から手を出せばいいか分からないかもしれない。

 GTシリーズでは,常に主役は「クルマそのもの」として,「人間キャラクターの存在感」をできるだけ薄味とした,独特で無機質な世界観をプレイヤーに提供してきた。
 しかし,GT7のキャンペーンモード(GTモード)では,この世界にちょっとだけ「人間キャラクターの存在感」を織り込んできている。
 その象徴的な存在がGT世界の案内人のサラと,「カフェ」のオーナーのルカだ。
 サラは,GT世界の説明というか,メニューや機能の解説役としてプレイヤーに接してくる。なんというか秘書系お姉様だ。

サラサラヘアーのサラは秘書系キャラ
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 GT7では,「シムシティ」の画面のような俯瞰視点の海辺の街が,ゲーム進行上のメイン画面として表示される。
 この街中にある各施設が,GT7における事実上のゲームモードだったり,あるいはゲーム進行を司るサービスや機能だったりするのだが,最初からすべてを使えるようにはなっておらず,ゲームを進めていくにつれて開放されていく。新施設が利用できるようになると(≒新機能が開放されると),サラが出てきて解説をしてくれる流れになっているのだ。

これがGT7のメインメニュー画面に相当。街の中の各施設がGT7の各種機能/サービス,そしてレースモードに相当する
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 とはいっても,継続的にGT7を遊ばなければゲームは進行せず,新施設は開放されないので,逆に言えば,プレイヤーに継続してプレイしてもらえるような「面白さ」をGT7側が継続的に提案できなければならない。
 その約割を果たすのが,GT7の花形機能とも言える「カフェ」である。

さまざまな名車クエストを投げかけてくるカフェの店主ルカおじさん
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 カフェの店主のルカおじさんは,「君にピッタリのメニューを提案するよ」といって,縦長のメニュー冊子を差し出してくるのだが,そこに書かれているのはマリトッツォとエスプレッソのセットではなく,「世界の名車」リスト。しかも2〜3台が空欄状態の。
 そう,ルカおじさんは「キミに集めてもらいたい名車があるんだ」「○○レースで3位以内になれば1台ずつもらえるよ」とクエストを依頼してくるのだ。
 このシステム,日本のゲームファンが大好きな「街人からのRPGクエスト依頼」になっているし,Mr.ルカがカフェのお節介オヤジというのは,少年マンガでありがちな「気のいいマスターがいる」×「行き付けの店」(喫茶店とかバー,あるいはガレージ?)の設定からインスパイアされたものとみられ,多くのプレイヤーは無思考でス〜ッとその唐突な要求を受け入れてしまうことだろう。

「いらっしゃいませ」「おー,君か。今日は日本のFRスポーツカーを集めてもらおうかな」プレイヤーが向かう先は,そう,日本の東京。首都高だ
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 「カフェなんだからコーヒー出せよ」とか「カフェの店主が名車を集めてこいって何様だよ」なんて無粋なことを言っているようじゃ,チミは日本じゃせいぜい2番目だな……。「究極のメニュー」だって「神の雫」だって,集めることに意義があったわけじゃない。そう,集めていく過程にドラマがあるんじゃないか。理屈じゃないんだ。

 ルカおじさんが「集めてこい」と言ってくる名車は,自動車史に残る,非常に分厚いストーリー性を秘めた,言うなればナラティブな名車達である。少年マンガだと「お題の逸品」を見つけるために世界を股に掛けた旅をするが,それはそれ。GT7ではヨーロッパだろうがアメリカだろうが,PS5のSSDパワーで瞬間的に飛べてしまう。

 あとプレイヤーがやることは,その名車を掛けたレースに勝つだけだ。もちろん,ルカおじさんのことなど無視して,適当なレースを適当にプレイしてもゲームは進むのだが,ルカおじさんが与えてくれた小クエストの先に何が待っているのか……それを知りたくなって,俄然,やる気が出てくるのである。
 ちなみに,お題のレースでは3位以内入賞ならば賞品としてお目当ての名車がもらえるのだが,「どうせなら」と1位を取れるまでひたすらやり直してしまう自分がいることに気が付くことだろう。そうなったら,ルカおじさんの術中にはまっている。

ルカおじさんの“車うんちく”は楽しく勉強になる
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 さらに,ルカおじさんが依頼してきた「名車メニュー」は集めるだけに終わらず,今度はその集めた名車についての「うんちく」を聞ける。「80年代から90年代に登場した日本のFRスポーツカーは……」など,これがまた面白いのだ。知っていることなら「そうだよねえ」と懐かしい気持ちで聞けるし,「フランスのFFホットハッチのこの3台は……」といった,筆者が詳しくない外国車の分野の名車については,シンプルに勉強になってしまって「へえ」と素直に聞き入ってしまう。

 さらに,このカフェには,クリスという,年季の入った車博士の爺さんの常連客がいて,プレイヤーが乗っている車について思うところがあれば,ルカおじさん以上のうんちくを語ってくれたりもする。グルメ漫画で,頼んでもいないのに,長台詞の講釈をたれる定番の老人キャラの立ち位置だ。ただ,これも悔しいかな,勉強になってしまうし,その講釈も面白い。

常連客のクリス爺さんの講釈コーナー。うんちく範囲外の車でカフェに行ったときには登場しない
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 こうした話を聞いてしまうと,プレイヤーはもうカフェの虜である。ゲームを起動するたびに,カフェを訪れるようになる。
 ただ,聞ける「車のうんちく」は,8ビット/16ビットパソコン時代のアドベンチャーゲームのような,台詞が1文字ずつ表示されるレトロな文字表示スタイルだ。魅力的な人間キャラクターを登場させたはいいが,このあたりで「無機質なGT世界観」の雰囲気は保っているのかもしれない。
 いずれにせよ,GT初心者やクルマ好きは,カフェに入り浸れば,GT7を「運転できる自動車百科事典」として満喫できるはずだ。おそらくこのモードは,子供のクルマ好きにも,相当に楽しめる内容になっていると思う。小中高の入学式のお祝いに,ぜひGT7をどうぞ。PS5本体も添えて。


進化した車両物理シミュレーションを,細かく調整が可能になった新生コクピット視点で体感せよ!


 DualSenseでのプレイ感は,前述した「ハプティックフィードバック」と「アダプティブトリガー」に対応しているところ以外,過去作からそれほど変わっていない。なので,いわゆるパッド勢は,GT SPORTなどと同様の感覚でプレイできると思う。
 ステアリングコントローラでのプレイフィールも同様で,前作に優るとも劣らぬリアリティを体験できる。ただ,細かいところで前作からの微妙な進化を感じるかもしれない。

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 その一例として,長い話をしよう。
 筆者は,現実世界での運転は(たとえサーキット走行でも),普通に右足一本でブレーキペダルとアクセルペダルを踏み分けているが,GTシリーズなどのレーシングゲームをプレイする時は,左足でブレーキペダルを踏む。
 GTシリーズでは,初見に近いコースを走るときは,コーナー前の直線でアクセルペダルから右足を離し,同時にガツンと左足でブレーキペダルを踏んで落とすが,コーナー進入速度はかなり適当で,速すぎるときもあれば遅すぎるときもある。仮に,速すぎた場合は,ブレーキペダルへの踏力は緩めつつも,踏み残しながらステアリングを切っていく。このとき,アクセルペダルの方に柔らかく足を乗せておき,曲がりながらブレーキペダルへの力加減と,アクセルペダルへの力加減を微妙に調整し「適切な速度」を探りつつコーナーを抜けるようにしている。

 こうしたドライビングテクニックは,「トレイルブレーキング」と呼ばれたりする。なんだか,格好いいことを言っているようだが,実はこれ,GT初期作品の頃,パッドでのプレイ時に,このテクニックを使うと速く走れることに気が付いて,今でもそのままステアリングコントローラでやっているだけだ。おそらく,レーシングゲームの古株勢なら知っている人も多いはず。
 ちなみに実際のスポーツカートでは,強制的に左足をブレーキペダルに,右足をアクセルペダルに置かないと乗り込めないので,このテクニックは自然と使うことになる。

 このテクニックは,特に「難しい」と感じたコーナーにおいて,丁度いいコーナリング速度やコーナリング軌道を探るためによくやるのだが,GT7でもそうした攻略をしていた時,あることに気が付いた。
 それは,GT7では,全四輪が個別にグリップを失ったり,回復したりするような挙動が,ステアリングへのフォースフィードバック演出と,コクピット視点における画面の動きのシナジー効果で,格段に分かりやすくなっていることだ。

 現実世界において,雨が降り始めた直後の高速道路の料金所を出たときに急加速すると,ごく一瞬だけ,微妙なタコ踊り挙動を示すことがある。これは,四輪のタイヤの摩擦係数がバラバラな状態になっている時に起こりがちな現象だ。具体的には,まだ乾いている路面上のタイヤはちゃんとグリップしているが,降ったばかりの雨でアスファルト路面から油分が浮いていたりするところや,濡れた道路の金属継ぎ目(ジョイント)のところに触れているタイヤは滑るため,そうしたことが起こりうる。こうした場面で,現実世界の実車だと「あ,左後輪スベった」とかが分かるわけだが,GT7では,それがより分かりやすくなったと感じる。
 現実世界だと,そうした一瞬の平衡感覚や回転感覚のブレは,視覚情報からだけでなく,内耳の前庭器官と三半規管への刺激から人間は感じ取っているわけだが,そういった内耳からのヒントがなくても,GT7では視覚情報,つまりゲーム画面だけでなんとなく分かるのが楽しい。

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 とは言っても,そうした内耳感覚のヒントがない状態で,高速域での難しい挙動からの立て直しは難しいので,ドライビングの「アシスタントセッティング」は,各プレイヤーでみっちり設定しておきたい。
 筆者は,挙動アシストの「トラクションコントロール」と「スタビリティ・マネジメント」は無理にオフにせず,最初は適切に使った方がいいと感じた。逆に,ステアリングコントローラ使用時に積極的にオフにしたいと感じたのは「カウンターステアアシスト」だ。これは,有効にしていると車体が一瞬スベっただけでも盛大に逆ハンドルを入れてくるので,迷惑なのだ。しかし,パッドでプレイする時には,有効活用したほうがプレイしやすかった。操作手段ごとに使い分けたい。

 それと,運転席視点(コクピットビュー)のカスタマイズの幅が広がっているので,自分の思い描く「実車感覚」が得られるようにカスタマイズしよう。そうすれば,さらに細かな挙動を感じられるようになるかもしれない。
 やり方は簡単。レース中などにポーズメニューから,「ディスプレイセッティング」→「コクピットビューの調整」を開くだけ。
 この中の「高さ」と「前後」は,自分のイメージする着座位置の設定に相当する。自分が普段,車を運転しているドライビングポジションのイメージに近いところに合わせるとしっくりくるはずだ。
 続いて「構図」と「揺れ」の設定は,挙動を感じ取るのに重要そうなカスタマイズポイントなのでこだわった方がよさそう。「構図」は,映像描画の中央を「ハンドル位置に置くか」(標準設定),「車体中央に置くか」(オフセット設定)を決めるもので,「揺れ」は,車体が傾いたときの映像を「着座位置基準で描くか」(タイプ1/標準設定),「ゲーム世界の水平基準で描くか」(タイプ2)で決めるものになる。

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ゲーム画面の中央にステアリングが来る標準タイプ
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ゲーム画面の中央と車体の中央を合わせたタイプ。ステアリングは画面端に来る点に留意
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車体の傾きを車体基準で描くタイプ。常に車体は水平に描かれる
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車体の傾きをゲーム世界の水平基準で描くタイプ。コースは路面の傾きに連動して傾いて描かれる

 これは,よくある3D系ゲームの上下移動操作を「レバー上下操作の逆転に対応した方がよいか/否か」を決めるのに近く,プレイヤーごとの感覚で決めるものになる。ひとたび,これが自分の感覚とぴったり一致すれば,GT7が醸し出す細かな挙動をより感じ取れるようになるかもしれない。


グラフィックスとサウンドについて


 グラフィックスとサウンドについても触れておこう。
 GT7はPS5版に限り,シリーズ初のレイトレーシング技術を採用する。これに伴い,ゲーム開始時,あるいはオプション設定にて,「フレームレート優先」か「レイトレーシング優先」かが選べるようになっている。
 「フレームレート優先」は,負荷の高いレイトレーシングやエフェクトの類を極力,簡略化し,常にハイフレームレートが維持されるモードだ。逆に「レイトレーシング優先」は,リプレイ,デモシーンで積極的にレイトレーシングが活用されるモードとなる。

ゲーム開始時やオプションで設定可能なグラフィックスモードの選択。PS4 Pro以降,プレイステーションのゲームの設定画面は段々とPCゲームっぽくなってきた
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 ちなみに,どちらのモードを選択しても,レース中(ドライビング中)においてレイトレーシングは採用されない方針となる。つまり,ゲームプレイ中のグラフィックス表現に大きな差はないということだ。逆に「フレームレート優先」を選択しても,フォトモードにおいてはレイトレーシングが活用される。
 「ゲームプレイ感覚に差がない」「リプレイでレイトレーシングでリッチな映像が楽しめる」ということであれば,PS5版においては「レイトレーシング優先」を選んだ方がお得感は高そうである。

 では,多くのGTファンが「GTプレイ後の最大のご褒美」として捉えているリプレイモードにおいて,どうレイトレーシングが活用されるのかについても触れておく。
 最も分かりやすいレイトレーシング効果は,「隣接する車両同士の局所的な映り込み」だ。
 GTシリーズでは,PS3時代以前の作品では事前に生成してある環境マップテクスチャを,後期作品では描画映像自体からコピペ的に映り込み表現を実践するSSR(Screen Space Reflections)技術を用いて,周囲情景を車のボディに映り込ませていた。これらの手法では,周囲の背景を映り込ませることはできたが,デッドヒート時などの,2台列んだ車両同士が互いにボディに映り込むような表現はできていなかった。どんなに密集したスタートシーンでも,それぞれの車のドアには近くの車が映り込まず,背景情景のみが映り込むのみだったわけだ。

 GT7の「レイトレーシング優先」では,レイトレーシング技術によって,そうした合わせ鏡的な局所的なもの同士の映りこみが,リプレイモード時に可能となっている。
 ちなみに,筆者がリプレイモードを観察した範囲では,車両Aのドアに映り込んでいる車両Bの姿の中に車両A自体は映り込んでいない(合わせ鏡状態特有の“映り込み合いの繰り返し”は起きていない)ので,レイトレーシング計算時のレイのバウンス回数は最小限としているか,あるいは鏡像側の材質表現を簡略化しているものと思われる。また,視線と車両達の位置関係においては鏡像生成が起きず,環境遮蔽(Ambient Occlusion)的な影生成に留まるような見え方をしたときがあった。

GT7ではリプレイモードがレイトレーシングに対応。画面左には,画面外に見切れている後ろ姿の黄色のビートが見える。デミオの左側面には,画面外の情景であるビートの右側面が映り込んでいるのが分かる。これはSSRではできない表現ということで,レイトレーシングによる恩恵という考察が成り立つ
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水色のポルシェの正面向かって左側のドアに,画面外に居るはずの緑色の車体が映り込んでいる
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ドア付近の拡大画像
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続くシーンでは後ろから緑のジャガーが登場。水色のポルシェには遠方のこれが映り込んでいたのだ。これがレイトレの威力!
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 まだ活用範囲は限定的な印象はあるが,25年に及ぶGTシリーズの歴史において,初めて成し得た表現なので,存分に堪能してあげたい。開発元のポリフォニー・デジタルによれば,レイトレーシングは,筆者が述べた局面以外にも「旧車の内装表現」「ミュージックラリーモード」の「S Barker Tourer」でも堪能できるとのことだ。

「フレームレート優先」モードにしていても,カメラモードではレイトレーシングが活用される。デミオの左ドアに映り込んだ赤のアテンザに注目
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 サウンドに関しては,PS5側の3Dサウンドシステムのアップデートの恩恵によって,ヘッドフォンのみならず,テレビスピーカーを使用時にもPS5のTempest 3Dオーディオ機能が働かせられるようになり,レース中の音響臨場感が素晴らしいものになっている。
 Tempest 3Dオーディオ機能がウリとする音像の全方位定位感も良好だが,車内サウンドと車外サウンドの鳴らし分けとも言うような,三次元的な音響レイヤーの構成設計がすごい。
 例えばプレイ中,視点を俯瞰視点にした場合は,コース内からの環境音と車両自身が発するサウンドが同列の音響表現で聞こえるが,ひとたびコクピット視点でプレイすると,環境音は車外から,車両サウンドは車内を伝って聞こえてくるようなサウンド表現になるのだ。
 GT7は,映像のみならず,サウンド表現力も迫力と臨場感を増しているので,やや大きめの音量で楽しみたい。

上質なグラフィックスとおしゃれな音楽とのコラボレーションを愉しみたいならば,お勧めなのが「スケープムービー」モード。このモードでは,GT7世界で自分が購入してカスタマイズしたマイカーを,世界各地の美しい景観の中を自動で運転してくれて,その様子をずっと眺めていられる
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GT7にはなんと世界各地2500か所の景観データが内蔵されており,スケープムービーモードでは環境映像の如く,一定時間ごとにランダムで世界各地の景観を採択し,そこをかっこよく走るマイカーの姿を見せてくれるのだ。見始めるとずっと見ちゃうぜ!
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日本のレーシングゲームファン,自動車ファンが喜べるエッセンスがたくさん詰まっている


 GT7はいろいろと新要素が多いので,すべてをお伝えするには発売前のプレイ期間ではとても足りないのだが,最後に2つほど,新モードを軽く紹介しておく。
 1つは「ミーティングプレイス」と呼ばれる,オンライン専用のフリー走行会モードだ。一般的なネット対戦モードとは違い,ホストがルームを作成する必要がなく,レギュレーションもないので,かなり緩いオンラインユーザー同士の走行会が楽しめるようになっている。ギスギスしないオンライン走行会の場所として提供されたモードなので,初心者の参加も歓迎されている。

 もう1つは「ミュージックラリーモード」だ。チェックポイント単位でレースが区切られているアーケードゲーム的なレースモードだが,レース進行がそのステージで奏でられている音楽のビートにシンクロして進んでいくのがユニークで,このレースを終えれば,その音楽の曲の展開に合わせた演出とともにリプレイ「ミュージックリプレイ」が楽しめる。速さも競えるが「かっこよく走る」ことにもこだわって遊べる斬新なモードである。

新モードの「ミュージックラリー」は,GT7起動直後,最初にプレイすることになるゲームモードだ
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 いろいろ書いてきたが,レビュー期間の間,かなり楽しませていただいた。筆者個人としては,GT7は,日本のゲームスタジオが制作しているだけあって,日本の自動車業界に多大なリスペクトと,深掘りが感じられたところが,大きな悦びだった。GT7は,もちろんグローバル市場に向けた作品ではあるが,日本のレーシングゲームファン,日本の自動車ファンが喜べるエッセンスがたくさん詰まっている。これはなんとも,嬉しいではないか。

筆者は普段使いできるコンパクトスポーツカーが欲しくてトヨタ「S-FR」の購入を本気で考えていたが,開発は白紙となり,幻に。それがGT7では,購入してマイカーにできるのだ!
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実際に発売されなかった日本車まで購入でき,さらにカスタマイズできるGT7に感謝。ちなみに,S-FRが幻となってしまったため,筆者はホンダのS660を購入している
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S-FRがもし発売されていて筆者が購入していたら,こんな感じにカスタマイズしていたかなぁ,と念入りにいじった1台がこちら。アフターパーツでターボ化。約180馬力仕様へ!
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 2016年,国連欧州経済委員会自動車基準世界フォーラムが,地球環境保全と二酸化炭素排出量の削減を目的として,「UN-ECE R51-03」(以下,R51-03)と呼ばれる提言を行ったことで,騒音規制が,2022年秋から一段厳しいフェーズ2へと移行する。新モデルではなく,既存車種の継続生産車であっても同様で,ここ最近,やたらと純ガソリンエンジン搭載スポーツカーの生産終了のニュースが多いのは,この規制が深く関係している。
 また,同時に,真逆の「新モデルの発表」ニュースが慌ただしいのは,このフェーズ2規制に対応した上で,さらに規制が厳しくなる2026年を迎える前の「最後の打ち上げ花火」と見て間違いない。そう,フェーズ3は新型車に対して2024年から,既存車種に対しても2026年から適用対象となるためだ。つまり,2026年秋頃には,あらゆる純ガソリンエンジンスポーツカーの新車販売がかなり困難になると見られている。なお,中古車はフェーズ3適用対象外となっているが,だからこそ,中古のスポーツカー市場が高騰することは間違いないだろう。
 GT7に対する「プレイできる(≒運転できる)自動車百科事典」としての存在価値は,これまで以上に高まりそうな気がしている。

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