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タイからやってきたホラーゲーム「Home Sweet Home」プレイレポート。じわりと汗ばむ不気味さや,迫りくるカッター少女が恐ろしい
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印刷2019/06/27 00:00

プレイレポート

タイからやってきたホラーゲーム「Home Sweet Home」プレイレポート。じわりと汗ばむ不気味さや,迫りくるカッター少女が恐ろしい

 マスティフから本日(2019年6月27日)発売されたPS4用ソフト「Home Sweet Home」は,タイのデベロッパYGGDRAZIL GROUPが開発したホラーゲームだ。主人公・ティムがカッターナイフを持った少女や巨大な餓鬼に脅かされつつ,奇怪な世界を巡っていく。本稿ではプレイレポートをお届けしていこう。

画像集 No.001のサムネイル画像 / タイからやってきたホラーゲーム「Home Sweet Home」プレイレポート。じわりと汗ばむ不気味さや,迫りくるカッター少女が恐ろしい

 本作は2017年9月にSteamで配信がスタートしており,4Gamerでも連載「ハロー!Steam広場」で取り上げたことがある(関連記事)。そこで紹介しているとおり,PC版が配信された当時は「ローカライズはちょっとおかしいけど,ホラーゲームとしてクオリティが高い」と,SNSや実況動画などを中心に話題を呼んでいたので,インディーズゲームをチェックしている人ならば,名前を聞いたことがあるという人も多いかもしれない。

 そんな「Home Sweet Home」が,今回PS4でも配信されることになったわけだが,国内版はローカライズにも力が入っており,声優の下野 紘さん,青木志貴さん,シンガーソングライターの三浦祐太朗さんらがボイスの吹き替えを担当。迫真の演技でゲームを盛り上げてくれる。PC版の問題点(ある意味チャームポイントでもあったが)は,解消されているというわけだ。

PC版ではこんな場面で「ちぇっ!何なんそれ?」と叫んでいた主人公(左写真)。今回はちゃんとこなれた日本語になっている(右写真)
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 「Home Sweet Home」は一人称視点のホラーアドベンチャーだ。プレイヤーは主人公・ティムとなり,失踪した妻・ジェーンを捜しながら,見知らぬ暗く荒れ果てた場所から愛しの我が家へ帰ろうとあがく。

 本作の特徴は,緩急のある巧みな恐怖演出にあり,恐ろしいゴア描写が連発されるジェットコースター的な西洋風ホラーではない。不気味な場所をさまよったプレイヤーに不安を募らせた挙句,トドメとばかりに恐怖演出が打ち込まれるという,ジャパニーズホラー寄りなもの。言い換えれば,真綿でジワジワと首を絞められるような恐ろしさがあるのだ。

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 また,ティムが探索する世界は時間と空間がデタラメにデタラメにつながっており,廃墟となった学生寮を歩いていたかと思うと,田舎の家を探索することになったり,荒れ果てた警察署をさまよったり……と,プレイヤーを不安にさせる不気味なシチュエーションが「これでもか!」とてんこ盛りにされている。ホラーものが苦手な筆者としては,ただ歩いているだけで想像力が刺激されてしまい,暗がりや曲がり角など,なんでもないはずのところですら怖く感じられた。
 特に恐ろしいと感じたのは田舎の家で,木の床にバラバラになった装飾が飛び散っていたり,壁には意味ありげな老人の写真が何枚も貼ってあったりする。「タイの田舎はこういう感じなのだろうか」と思わせるどことなく現地の雰囲気が漂う一方で,見ているだけで肌がじっとり汗ばんできそうな不気味さもあり,非常に怖い。

田舎の家。じっとりと湿っぽい空気感がある
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こちらは警察署。廃墟のようになっており,うち捨てられたラジオが恐ろしいニュースを流している
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ティムとジェーンの新居には,なぜかクモの巣のように赤い糸が張り巡らされている
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2人は新居で幸せに暮らしていたが,なぜかジェーンはティムのもとから逃げていく
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 こうした建物には,タイの呪術にまつわる読み物やアイテムが残されており,それが余計にリアリティを引き立たせる。例を挙げると,棺の蓋から手に入れた釘を人形に打ち込み,相手の死を願う「呪われた釘の呪術」,墓から掘り出した土で男女の人形を作り,強制的に互いを愛させる「愛の呪術」といったものがあり,それぞれにはこと細かに呪いの掛け方まで書かれているのだ。本当に効果があるかはさておき,真に迫るものがあって不気味だ。

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 存分に恐怖心を煽られたところに満を持してやってくるのが,カッターナイフを持った少女巨大なプレタ(餓鬼)といった謎の怪異たちだ。ティムは基本的に彼らと戦うことはできず,逃げ隠れするしかない。
 特に恐ろしいのはカッターの少女で,マップを徘徊しており,ティムを見つけると叫び声を上げ,カッターナイフを振りかざして追ってくる。動きも速く,横をすり抜けるのも難しいし,もちろん捕まればめった刺しにされてしまう。なんとかして振り切るか,隠れてやり過ごすしかないのだ。

こちらを追いかけてくるカッターナイフの少女は「クロックタワー」のシザーマンを思い出させる。判定は若干厳しめに感じた
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 ロッカーがあれば中に隠れることができるのだが,彼女を十分に引き離してから入らないと,引きずり出されて一巻の終わりだ。追われている最中は,背後を振り返っているような余裕はないため,追われたときはいつも祈るような気持ちでロッカーに飛び込むことになる。
 うまく身を隠しても少女は周囲を探し回るため,安心はできない。その最中にロッカーの隙間から少女の姿が垣間見えるのも怖いのだが,死角からカッターの音だけがチキチキと聞こえてくるのも恐ろしい。「もう行ったかな……?」とロッカーから出たところに鉢合わせしたときは心臓が止まりそうになる。まさに死をかけたかくれんぼと言えるだろう。

ロッカーに隠れても,少女の姿が隙間から見えるのが恐ろしい。少女は周囲を徘徊しており,見つからないように隠れなければならない
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 恐怖を呼び起こす少女と違い,巨大なプレタとの対峙はステルスゲームとしての面白さを味わえる。雲つくようなプレタがこちらを探すので,視界に入らないようにしつつ,机や棚の陰に隠れるのだ。状況に応じて障害物の配置が変わることもあり,恐ろしいと同時にちょっと知恵比べのような感覚もある。肉まんを「お供え」すれば大人しくなる辺りは,いかにも仏教的だ。本作はPlayStation VRにも対応しているが,プレタをやり抜けるこの場面はVRでプレイするとより臨場感が増すだろう。

巨大なプレタは生前に犯した罪のため苦しむ存在。ティムを見つけると手で掴みかかってくる
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 本作は精神的にじわじわと恐怖を感じさせるジャパニーズホラーのようなムードを,タイの仏教や呪術といった土着的な恐怖が彩っているのが印象的なタイトルだった。また,カッターナイフの少女や,仏教を元にしたプレタといったインタラクティブな敵も迫力たっぷりで,プレイヤーを恐怖のどん底に叩き落とす。
 タイのゲーム業界というと馴染みが薄いが,本作における“恐怖ポイント”の散りばめ方や感性は驚くほどに日本と共通している部分があると感じられた。ゴアやスプラッタな描写も少なめで,そうしたホラーが苦手な人でも安心(?)して遊べるだろう。残念ながら本作は完結しておらず,謎の解決はエピソード2以降に持ち越しとなるようだ。果たしてティムとジェーンは愛しき我が家(Home Sweet Home)に帰り,平穏な日々を取り戻せるのか。なるべく早いうちに続きを見てみたいと感じられた。

この古風な衣装に身を包んだ女性は一体……?
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仲睦まじく寄り添う恋人たち。写真が破り取られたのはなぜなのか。謎が深まる
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「Home Sweet Home」公式サイト

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