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新たに公開された映像にもあるが,試遊ではF/A-18FスーパーホーネットとQAAM(高機動ミサイル),またはF-14DトムキャットとLAAM(長射程ミサイル)という2種類の組み合わせでプレイが可能だった。コクピット視点でキャノピーに貼りつく雨粒や,機体の傷,計器,そして急旋回時のヴェイパーなど,グラフィックスのクオリティは非常に高く,プレイの感覚も余計なもののない,エースコンバットらしい遊びを追求したという印象の作品に仕上がっていた。
そんな本作の開発に携わる,ファンにはおなじみの河野一聡氏に,「エースコンバット7」について,痛戦闘機をどんがらがっしゃーんと墜落させた記憶も新しい筆者が話を聞いたので,その内容についてお伝えしたい。
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雲と地表の表現にこだわった,10年ぶりのナンバリングタイトル
4Gamer:
本日はよろしくお願いします。とはいえ,Bandai Namco Entertainmentブースでの「エースコンバット7」展示が,クローズドスペースのみなのはちょっと寂しいですね。今年のE3は一般参加者もいますし,海外ファンの反応も見たかった気がします。
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そうですね。私達も見たかったのですが,直前に発売を延ばす判断をしたことと,タイミング的にもほかの出展タイトルと比較して「少し早いかな」ということもあり,今回の自社ブースではクローズドで出展することにしました。
4Gamer:
そうすると,一般参加者がプレイできる機会は8〜9月ぐらいでしょうか。
河野氏:
鋭いですね。その時期には欧州で大きなゲームイベントが開催されますし,いよいよ大々的に一般のお客様にも触れていただけるかと思います。
4Gamer:
海外メディアの反応はいかがですか。
河野氏:
期待していたとおり,ちゃんとしたナンバリングタイトルだということで,反応はいいですね。「エースコンバット」シリーズは,「エースコンバット6 解放への戦火」以来,10年ちょっとの間ナンバリングタイトルを出せていませんでした。公開したトレイラーも良い手応えです。
4Gamer:
ナンバリングの新作に,なぜそんなに時間がかかったんでしょうか。
河野氏:
ナンバリングタイトルを作る条件を整えるのに,時間が必要だったということだと思います。ゲームハードの進化もそうですし,「エースコンバット04 シャッタードスカイ」「エースコンバット5 ジ・アンサング・ウォー」で共に仕事をさせていただいた,シナリオの片渕須直さんとまたご一緒したいという想いもありました。片渕さんは,「この世界の片隅に」で日本アカデミー賞を取られた,今や日本を代表するアニメ監督ですが,本作についてお話をさせていただいたのは,その前のことです。片渕監督をはじめ,しっかりしたものを作るためのスタッフを揃えるのに,時間がかかってしまいました。
4Gamer:
それにしても,10年というのは長いですね。
河野氏:
20年を超えて続いているシリーズですが,テーマは大きくは変わりませんし,ちょっとした変化だけで乗り切るには,20年は相当に長い期間です。そのために,ときには作品として,あるいはビジネスモデルとして,新しい挑戦が必要な時期もありました。皆さんを長らくお待たせしてしまっているのは分かっていましたが,ナンバリングタイトルとしてちゃんとしたものを作れそうだとなったのが,10年を経たこのタイミングだったんです。
4Gamer:
分かりました。では今作のコンセプトについて,改めて教えていただけますか。
河野氏:
今作では,「より良いエースコンバットのナンバリングタイトルを作ろう」を合言葉に,“空の革新”を目指して開発を続けてきました。多くのファンに支持されてきたシリーズですので,ゲーム性や手触りをむやみに変えるようなことはせず,より良くするにはどうすればいいか。それを考えて制作してきましたので,これまでのナンバリングタイトルをプレイしてきた人なら,従来以上の体験を違和感なく楽しめると思います。
4Gamer:
とくにこだわって制作された点などはいかがでしょうか。
河野氏:
エースコンバットにおいて大事なのは,自由度の高さです。好きなように空を飛びまわり,どの敵を,どんな武器で攻撃するか。そうした自由度は,確実に担保しなくてはなりません。それから,とくに見ていただきたいのは空の表現でしょうか。雲などは,すべてボリュームレンダリングで表現しているんですよ。目の前に存在する雲,中に飛び込むことができる雲を感じていただきたいです。
4Gamer:
確かに雲の表現は,大幅に強化されていると感じました。雲に関連したフィーチャーにはどんなものが用意されているのでしょうか。トレイラーでは雲の中に飛び込んで,視界が遮られるシーンがありましたが。
河野氏:
先ほどもお伝えしたように,今作ではテーマとして“空の革新”を掲げていまして,その1つが“空という遊びの場を革新する”という意味なんです。これまでのエースコンバットでは,空中に板を並べることで,雲っぽく見せるという手法を使っていました。それが今作では,雲の内部まで演算して作っているので,実際に雲の中に入ることができますし,どの方向から見てもちゃんと雲に見える。つまり,空中のマップ効果があるんです。じゃあ戦闘機がその中に突っ込んでいったらどうなるのかというと……大きな雲の周りって,気流が発生しているんですよ。そのためガタガタ揺れたり,操作に影響が出たりする。
4Gamer:
おお,なるほど。
河野氏:
それに雲は水蒸気の塊なので,雲の中ではキャノピーに水滴がパシパシ当たりますし,長時間飛んでいると,今度はその水滴が凍り始める。そうすると視界が次第にふさがれてしまいます。
4Gamer:
ということは,雲の中を長時間飛ぶのは,あまり得策とは言えませんね。
河野氏:
ええ。とはいえ敵機に追いかけられたとき,雲に入って姿をくらませたりといったことはできますし,反対に雲の中へ逃げる敵機を追いかけるべきかいなか,という判断が求められます。このあたりは,ゲームの駆け引きに直接影響する部分です。
4Gamer:
単なる映像表現だけではないと。
河野氏:
僕は,ゲームに登場する要素を,「見た目」「ゲームへの影響」,そして「情感」の3つワンセットで考えています。見ていただいたとおり,「見た目」は大きく進化していますし,「ゲームへの影響」は今ご説明したとおりです。そして,雲の中でキャノピーの水滴が凍りついていく描写は,プレイヤーにコクピットの外の気温を感じさせ,「雲の中ってこんななんだ」という感情を湧き上がらせる。本作の雲の表現は,そうした狙いから採用しているんです。そうした部分を実感してもらえたら,僕らとしては狙いどおりといったところですね。
4Gamer:
そうした表現は,やはり現在のハードウェアだからこそ実現できたものなんですね。
河野氏:
そうですね。コンセプト自体は数年前からありましたが,見た目や駆け引きの部分,情感に訴えかける要素を考えると,このタイミングでなければ実現できなかったと思います。しかし実際にやるとなってからは,ハードウェアのリソースをどうやりくりするかという戦いですので,やはり大変でした。クリエイターの理想はずっと高いところにあるので,どれだけハードが進化しても,そこの苦労はやはり変わりません。
4Gamer:
天候も変化したりするのでしょうか。
河野氏:
ええ。嵐や雲の中で,雷が落ちたりします。とはいえ,ゲーム性に大きく影響を与えるほどではありません。影響が出るほどの悪天候だと見栄えはしますが,ゲームとしてはストレスが大きくなってしまいますから。エースコンバットは,青空を飛び回ってバトルする気持ちよさでできているゲームですから,天候の要素はアクセントに留めているんです。
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4Gamer:
トレイラーでは「雲に逃げ込め!」といった,雲についてのセリフが多かったように感じます。今回のE3デモでも,敵が雲の多い低空を飛んでいるように感じられました。
河野氏:
トレイラーのセリフは,“空の革新”という本作のテーマを,シナリオの片渕監督が汲んでくださった結果だと思います。実際に,片渕監督とのやり取りの中で生まれたフィーチャーが,本作にはたくさん反映されています。E3デモはプレゼンテーション的な意味合いが強いので,新しいフィーチャーである雲の中を体験してもらえるよう,敵機の挙動を調整しています。低空なのは,雲を抜けた時に見える地上も見てほしいということですね。
4Gamer:
地上の表現にもこだわっているということですね。
河野氏:
ええ。今回は地上の景観にも力を入れていまして,「生きた世界」を作ろうと頑張っています。例えばデモで雲を抜けて下に降りると,そこは熱帯のジャングルで,ところどころでスコールが降っている。そこへ飛んで行くと,もう水の柱みたいな集中豪雨で,キャノピーに激しく水しぶきがあがる。さらに,ジャングルの上を低く飛ぶと,そこにいるフラミンゴが驚いてバッと飛び立ち……そうしたチャレンジをビジュアルチームがやっているので,ぜひ見ていただければと。
4Gamer:
かなり細かい部分まで作り込んでいるんですね。
河野氏:
はい。こうした細かい部分をオミットしてしまうと,空と地面,戦闘機だけがある死んだ世界になって,ちゃんと人がいる世界を感じられないんですよ。それにそういうこだわりって,個人的には日本人はすごく得意だと思ってます。
4Gamer:
そういえば,地表に円形の湖のようなものを見かけました。あれはユリシーズによるものですか?
河野氏:
そうです。「エースコンバット4」と「5」にも登場した,ユリシーズと呼ばれる隕石の破片が落ちたクレーターです。すでに発表していますが,作中の時代は2019年で,「4」「5」の後ということになります。「エースコンバットX スカイズ・オブ・デセプション」とは同時期だったりしますが,別の大陸での話でもありますし,つながりはあまり重視していません。それよりは,4→5→6→7というナンバリング軸の世界観で捉えてもらうといいと思います。セリフの端々に,コアなファンが「あれ,これって?」と感じる要素もありますので,期待していてください。
4Gamer:
反対に,今作で初めてエースコンバットをプレイするという人にとってはいかがでしょう。楽しめますか?
河野氏:
もちろんです。フライトシューティングというジャンルは,今や世界を見回しても競合が少ないくらいなので,新規のプレイヤーは大歓迎なんです。ナンバリングタイトルであることの意義は重要ですが,なによりジャンル自体が盛り上がるためには,新規プレイヤーが入りやすいことを重視しなくてはなりません。僕としては,トレイラーを見て「なんかドラマの濃そうな戦闘機ゲームだなあ」と思って手に取った人が,100%楽しめるものにしたいと考えています。
4Gamer:
遊びやすさも大事ですね。
河野氏:
そこはもう,声を大にして訴えたい(笑)。計器に数字が複雑そうに並んでて,パッと見では難しそうですけど,見た目ほどじゃないですから。その偏見を,何とか乗り越えていただきたい!
4Gamer:
しかし,パイロット気分を味わうためには,操作が簡単すぎるのも困りものでは。
河野氏:
そうなんです。機体を手足のように操って,自由に飛ばせるまでが第一段階で,次に戦い方を学んでいく。この第一段階を簡単にしすぎると,これまでのプレイヤーが離れていってしまうんです。それを避けつつ,なんとかこの世界に入ってもらうきっかけがあれば。トレイラーを見てもらえば分かると思うんですが,登場するのは最新鋭の戦闘機であっても,実はこれ,誤解を恐れずに言うと王道のRPGなんですよ。あるパイロットの戦いと成長の物語。日本のプレイヤーなら,みんな大好きでしょ,って内容です(笑)。ゲームに興味をもってもらえるように,今回のトレイラーではそうしたストーリーを前面に押し出しています。
4Gamer:
ストーリーについてお話いただけることはありますか。
河野氏:
ストーリーはプレイヤーに体験してもらう部分なので,すべては明かさずに,情報を小出しにしていきたいと思っています。エルジア,オーシアや,さらにケストレルIIといった空母が登場しますが,シリーズのプレイヤーならニヤリとできるところでしょうか。ケストレルIIについては,ニヤリどころかTwitterを見ると大騒ぎのようでしたけど。ともかく,正統なナンバリングタイトルですよ,というメッセージを伝えていきたいと思っています。
4Gamer:
私もケストレルIIのことが気になるのですが。
河野氏:
ケストレルは一度沈んでいる艦ですので,驚きの物語が用意されています。当然ながら,思い付きで出すわけではなく,片渕監督と相談したうえで,それなりの役割を担ってもらう予定です。こう,プレイヤーの皆さんが「ああっ」となる,なんというか,いい感動を呼べたらと思っています。……この説明で納得いただくのは難しいと思いますが,ご期待ください。
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4Gamer:
フライトスティックへの対応はいかがでしょう。
河野氏:
検討しています。やっぱり,皆さん望まれていると思いますし,僕もVRでやるならフライトスティックは必須だと思っています。実はフライトスティックを使うと3D酔いしないんですよ。コントローラだと自分がどっちを向いているのか,プレイしているとだんだんズレて分からなくなりますが,フライトスティックは机などに固定するので,絶えず自分の正面方向を見失わないんですね。これが酔い防止に効果があるんです。
4Gamer:
フライトスティックにそんな効果が。
河野氏:
……という僕の仮説ですけど(笑)。とはいえ,弊社の「VR ZONE SHINJUKU」ではいろいろな筐体のVRを置いていますので,それによると体の方向が固定されると酔いにくいみたいです。フライトスティックへの対応は,前向きに検討しています。
4Gamer:
VR版はどのような形でリリースされるのでしょうか。本編に含まれるのですか?
河野氏:
「VRモード」として,本編に組み込まれています。……実を言うと,最初は本編をちょっと改造すればVR対応になるかな,なんて甘く考えていたんですけど。結局は違うソフトを作って,1本のパッケージに収録するような作業量になってしまいました。
4Gamer:
昨年のE3にも出展されていましたが,エースコンバットとVRは親和性が高そうですね。
河野氏:
本当に戦闘機に乗っている気分になれますからね。VRなら下を見回したりもできますし。
4Gamer:
そもそも乗り物ですし,3D酔いも少ないのでは?
河野氏:
とんでもない! 開発当初は3D酔いがひどすぎて,困ったものでした。戦闘機モノのVRは絶対ダメだって意見も世間にはあって,最終的には快適にプレイできるものに仕上がりましたが,本当にいろいろな苦労がありました。VRの特徴をオミットして,見える画面が右/正面/左の3パターンしかないようなものを作った時期もありました(笑)。
4Gamer:
なるほど……。それにしても,バンダイナムコエンターテインメントはVRに積極的ですね。
河野氏:
会社を挙げてそうですね。「サマーレッスン」「アイドルマスター シンデレラガールズ ビューイングレボリューション」「VR ZONE SHINJUKU」と,黎明期からいろいろやらせていただいています。当初は実験的な意味合いでしたが,近年ではゲーム性が求められるようにもなってきているので,我々ももっと挑戦していかなければと思っているところです。
4Gamer:
VRの話になってしまいましたが,話を戻します。オンラインモードについての情報はありますか。
河野氏:
お話しできることは少ないですが,今回のデモプレイを見ていただくと「戦闘機をカスタマイズしてバトルするんだろうな」というのは,伝わるかと思います。そのカスタマイズも,そのために同じミッションを何度も繰り返すようなことは,少なくともキャンペーンの1周目には起らないようにするつもりです。まずは,ストーリーを一気に駆け抜けてもらって,それからカスタマイズしたいのであれば,プレイを繰り返してください,というように。その上でオンラインマルチだったり,VRだったりを楽しんでいただけたらと。
4Gamer:
三段構えというわけですね。シリーズ恒例の架空兵器,架空機などの予定はいかがでしょうか。
河野氏:
架空機は期待されている部分だと思いますので,当然ながら用意しています。今までとはちょっと違う,新しいギミックなどもあるのでお楽しみに。ただ……今回は戦闘機のモデルをゼロから作り直しているので,かなり手間がかかっていまして。テクスチャもハンガーで使われているものは4K解像度ですし,戦闘機のリベットを1本1本表現しているぐらいです。パネルの重なり具合などを見たら,マニアの方はグッとくると思いますよ。ともあれ,まずは皆さんにお馴染みの機体を一通り揃えるのが先で,いろんなものを考えるのは,その後ですね。
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4Gamer:
登場する機体の総数は,どのぐらいになりそうですか。
河野氏:
いずれ発表する予定ですが,10年ぶりのナンバリングタイトルとして,納得してもらえる数――30機ぐらいを目指して,しっかり揃えたいと思っています。
4Gamer:
E3ではF-14D トムキャットが公開されましたね。
河野氏:
みんなトムキャット,大好きじゃないですか。たぶん,可変翼にロマンを感じるのと,映画の影響が大きいのでしょう。僕もその世代なのでよく分かります(笑)。
4Gamer:
分かりました。最後に読者に向けてコメントをいただけますでしょうか。
河野氏:
10年ぶりのナンバリングタイトルとして,しっかりエースコンバットらしい作品をお届けしたいと思っています。従来どおりの手触りの中に,「フレア」や「ポストストール機動」などの新しいフィーチャーを組み込もうとしていますので,ご期待ください。E3後にも,8月はドイツのgamescom,そして9月には東京ゲームショウと,デモを遊んでいただく機会を用意するつもりです。ぜひ足を運んでいただけたらありがたいですね。
4Gamer:
……すみません。ポストストール機動とは?
河野氏:
失速状態で行う空戦機動で,いわゆる「コブラ」とか「フック」というやつですね。エースコンバットでは,一度ワンボタンでできるようにしたことがあるんですが,なんだか必殺技っぽくなってしまって。あの方向性は間違いでした。今回は,きちんと戦闘機のスピードを落として,水平を保ってスロットルを少し上げた瞬間に,同時に機首上げをするという,プレイヤーのテクニックとして使えるという方向で再現しています。ただ,ゲームの攻略要素として,どこまで使いこなせるプレイヤーが現れるかは,分からないですが(笑)。映像的には面白いので,ゲーム配信なんかでは盛り上がると思いますよ。エースパイロットができることは,こうやってなるべく取り込みたい想いです。
4Gamer:
本日はお忙しいところ,ありがとうございました。
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