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「Overwatch League」のグランドファイナルが,北米時間の2018年7月27日にニューヨークで開幕
Overwatch Leagueの第1シーズンはこれまで,カリフォルニア州バーバンクにあるBlizzard Entertainment保有のeスポーツ専用スタジアム,Overwatch Arenaで行われてきた。しかし,今回のグランドファイナルではニューヨーク州ブルックリンの多目的施設Barclays Centerに会場を移した。ここはプロバスケットボールチーム,ブルックリン・ネッツの本拠地であり,また「Overwatch」のプロチーム,ニューヨーク・エクセルシアの拠点でもある。
「Overwatch League」公式サイト
「Overwatch」公式サイト
Overwatch Leagueについては何度かお伝えしてきた。Activision Blizzardが2016年に買収したトーナメント運営会社,Major League Gamingが運営を担当し,各チームがアメリカ国内外の都市に基盤を置くという形態がとられている。実業家や投資家,企業などがチームのオーナーになり,プレイヤー達の生活や賃金を保証するという,北米のほかのプロスポーツのようなシステムになっているのだ。
このシステムが成功したか否かの判断を下すのは時期尚早だが,Twitchとの提携で生中継された試合の模様が,世界中のプレイヤーを熱狂させてきたことは間違いない。
グランドファイナルに駒を進めたのは,ロンドン・スピットファイアとフィラデルフィア・フュージョンの2チーム。勝者は100万ドル(約1億1100万円),2位のチームには40万ドル(約4400万円)が贈られる。
ロケーションベースでインクルーシブなことが成功に
ナンザー氏が,Overwatch Leagueが成功している理由として挙げるのが,この地元密着型の運営システムだ。日本では「フランチャイズ制」などとも呼ばれるが,ここではナンザーの使った「ロケーションベース」と呼ぼう。
Overwatch Leagueに参加する12のプロチームは,チーム名に,本拠となる都市の名前を使っており,このことから分かるように,彼らはホームタウンを持っている。これにより,たとえチームや選手,場合によってはゲームにさえあまりなじみがなくても,「とりあえず,地元チームを応援してみよう」ぐらいの感覚で入ってこられるのがロケーションベースのメリットだ。
野球やサッカーなどと同じように,ロケーションベースはファン層の拡大に有効であり,ナンザー氏は「Overwatch Leagueが成功するきっかけとなったのは,最初の会議でロケーションベースにしようと決めたことだ」と述べた。
続いて,Overwatch Leagueだけでなく「Overwatch」の利点としてナンザー氏が挙げたのが,「インクルーシブネス」というキーワードだ。ビジネスやマーケティング分野でよく使われる言葉で,うまい日本語訳が見つからないものの,「包括性」や「包容力」などと呼べるもの。性別や年齢など,多様性に富んだプレイヤーを意識してゲーム開発やリーグ作りが行われているのだ。
Overwatchのトーナメントは,会場に足を運ぶファンに女性が多いことが知られており,またリーグに登録されている選手の国籍も多彩だ。OverwatchのTOP500に名を連ねる女性ゲーマーのGeguri選手は現在,シャンハイ・ドラゴンズと契約しているが,それもインクルーシブネスの現れの1つだろう。
グランドファイナルに進んだロンドン・スピットファイアとフィラデルフィア・フュージョン
ここで改めて,「Overwatch League」第1シーズンの経過を見直しておこう。まさに予想不可能な,波乱万丈と呼ぶにふさわしいシーズンであり,その最たるものが,ソウル・ダイナスティの敗退だった。ソウル・ダイナスティは,APEX(アジア・太平洋地域)チャンピオンとして君臨した韓国のLunatic-Haiのメンバーによって構成されるチームであり,2017年末に開催されたOverwatch Leagueのプレシーズンで圧勝したことで,シーズン開始前は「ダイナスティから1勝を取るのも難しいかもしれない」という評判だった。
しかし,フタを開けてみれば,4つのステージでニューヨーク・エクセルシアが2回,そしてボストン・アップライジングとロサンゼルス・グラディエーターズが1回ずつの勝利を収め,一方のソウル・ダイナスティはシーズンを通して負け続け,トータルで12チーム中8位という結果に終わった。各チームがソウル・ダイナシティ対策をしっかりしていたことは間違いないが,ファンにとっては大きな驚きだった。
上記のように勝利ポイントを重ねたニューヨーク・エクセルシアだが,彼らは,スタープレイヤーのSaebyeolbe選手を中心に韓国・釜山出身の選手が集まった大西洋ディビジョンのプロチームだ。レギュラーシーズン40試合の成績は36勝4敗。プレシーズンとポストシーズンを含めると126勝43敗4引き分けの成績で83ポイントを獲得し,太平洋ディビジョンのロサンゼルス・ヴァリアントが獲得した36ポイントを大きく引き離した。
しかし,最終的にグランドファイナルに駒を進めたのは,大西洋ディビジョンを2位で通過したロンドン・スピットファイアと,3位のフィラデルフィア・フュージョンだった。
ロンドン・スピットファイアはボストン・アップライジングと同様,韓国出身だが常勝チームに属していない,ローグ(一匹狼)系の選手が多いチームだ。そのため当初は,「まとまりに欠ける」と思われていた。
予想どおり,第1ステージと第2ステージこそTOP3に入ったものの,以降は負け始め,シーズン途中の4月には4人の選手を解雇する(契約の年俸は支払われた)など,試行錯誤が続いていた。その結果,第4ステージのあと大西洋リーグで2位,総合ランクで5位になり,プレイオフでロサンゼルス・グラディエーターズとロサンゼルス・ヴァリアントを下して返り咲いたのだ。
フィラデルフィア・フュージョンは,4つのステージを,それぞれ6位,3位,8位,6位で通過した,いわば中堅チームだ。TOP6にもギリギリ滑り込んだような形だった。アメリカ,ヨーロッパ,そして韓国出身の選手が混在するチームだが,チームの結成当時はコミュニケーションを含むいくつもの問題を抱えており,12チームの中では最後に登録されている。さらに,インターネット上で韓国人選手が失言し,そのためプレシーズンに参加できなかった経験を持つ。いわば,シーズンをとおして微調整を加えながら,まとまってきたチームだ。プレイオフではボストン・アップライジングとニューヨーク・エクセルシアという格上チームを下し,決勝に進出した。
グランドファイナルで対決する2チームを比べると,力ではロンドン・スピットファイアが圧倒的に上だが,調子を次第に落としつつある雰囲気も見られ,比較的与しやすいチームとプレイオフで当たったことでグランドファイナルに残ったようにも見える。
一方のフィラデルフィア・フュージョンは,フランス出身のPoko選手や韓国のCarpe選手らを擁し,「ホームチーム以外で,好きなチームを選ぶならフィラデルフィア・フュージョンだ」と多くのファンに言わせる,面白いプレイを見せた。シーズン中の成績は振るわなかったが,ギリギリでプレイオフに進出し,そこで大きな結果を出したという印象だ。それだけに,勢いはあるかもしれない。
いずれにしろ,両チームに言えるのは,シーズン中には敵の研究を重ね,プレイオフで実力を発揮したからこそグランドファイナルまで上り詰めたのは間違いなく,いい試合を見せてくれるだろう。
果たして,グランドファイナルではどんなドラマがあるのだろうか。eスポーツにおける歴史的な場面になるはずのグランドファイナルは,公式Twitchチャンネルに貼りついてチェックしようう。
Twitch 配信スケジュール第1試合:日本時間7月28日08:00〜
第2試合:日本時間7月29日05:00〜
第3試合:日本時間7月29日07:00〜
Twitch「Overwatch League」配信ページ
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(C)2015 BLIZZARD ENTERTAINMENT, INC.
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