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ノートPC向けGPU「GeForce GTX 980M」搭載機の実力はいかに。MSI製ゲーマー向けノートPC「GT72 2QE Dominator Pro」レビュー
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印刷2014/11/15 00:00

レビュー

「GeForce GTX 980M」搭載機は,本当に「デスクトップ機並み」の性能を持つのか

G Series GT72 2QE Dominator Pro(GT72 2QE-411JP)

Text by 宮崎真一


GT72 2QE Dominator Pro(GT72 2QE-411JP)
メーカー:MSI
問い合わせ先:MSIサポートページ
実勢価格:34万円前後(※2014年11月15日現在,一部ショップではBTO標準構成価格)
G Series
 ノートPC向けのGeForceは,同じモデルナンバーであっても,デスクトップPC向けGPUと比べて,その3D性能が圧倒的に低い――。
 その“常識”を覆すGPUとして発表された「GeForce GTX 980M」は,「GeForce GTX 980」(以下,GTX 980)と同じ第2世代Maxwellアーキテクチャを採用し,性能もGTX 980比で80%の水準に達すると謳われている。デスクトップPC向けGPU比で半分の性能すら出ていなかった時代があったのを考えると隔世の感があるが,果たして本当に,GeForce GTX 900Mシリーズは,デスクトップPC向けGPUと同じモデルナンバーに迫る3D性能をノートPCへもたらすことができるのだろうか?

 4Gamerでは,GeForce GTX 900Mシリーズとほぼ同時に国内発表され,すでに販売も始まっている,GTX 980M搭載のMSI製ゲーマー向けノートPC「GT72 2QE Dominator Pro」(型番:GT72 2QE-411JP,以下 GT72)を,MSIの日本法人であるエムエスアイコンピュータージャパンから入手できたので,GTX 980M,そしてGT72の実力を明らかにしてみたいと思う。


外観,ハードウェアとも完成度が上がったGT72

ただ,ツメが甘い部分も見受けられる


G Series
 GT72は,2014年6月のCOMPUTEX TAIPEI 2014で披露され,話題を集めた17.3インチワイド液晶パネル搭載モデルだ。直線的なデザインを採用することにより,それまでのMSI製ゲーマー向けノートPCにあった野暮ったい印象がかなり緩和されたのが大きく,ずいぶんすっきりした印象を受ける。
 同じ17.3インチ液晶パネルを採用していた従来のGT70シリーズだと,サイズが428(W)×288(D)×55(H)mm,重量が3.78kgだったのに対し,GT72は順に428(W)×294(D)×48(H)mm,3.78kg。実のところ体積自体はほとんど変わっておらず,重さにいたってはまったく同じなのだが,7mmの薄型化により,外観はとてもシャープで今風になったと述べていい。

直線的なデザインと,MSIのゲーマー向け製品ブランド「G Series」のテーマカラーである赤を採用したGT72。液晶パネルを180度近く広げられるのは,歓迎する人もいそうだ
G Series G Series
左:液晶パネルを閉じた状態で本体前面から。この状態でも赤いラインが見えるのはなかなか“にくい”演出だ
右:本体背面には,ACアダプター接続端子のほか,Qualcomm Atheros製の1000BASE-T LANコントローラ「Killer E2200」を用いた有線LAN端子と,Mini DisplayPort×2,HDMI(1.4,Type A)が用意される。GT72側の液晶パネルも含めた3+1画面出力が可能だ
G Series G Series
本体左側面はUSB 3.0(Type A)×4,サウンド入出力(3.5mmミニピン×4),SDXC&SCHC対応SDカードリーダーが並ぶ。右側面はUSB 2.0(Type A)×2のみだ。BD-REドライブがこちら側に用意されている
G Series G Series

 いま紹介した17.3インチワイド液晶パネルは解像度1920×1080ドットのノングレア(非光沢)仕様で,これはGT70シリーズから変わりなし。パネルの詳細は明らかになっていないが,見る限り,TN方式の上位仕様といった気配である。少なくとも,ゲーム用途で画面を正面から見ている分には,発色に大きな不満を覚えることはないだろう。

正面から見た液晶パネルの色表現力は上々。やや青みがかっているが,ゲーム用途では許容範囲内だといえる。コントラスト感も悪くない。一方,斜めから見ると,さすがに偽色が目立った
G Series G Series G Series

G Series
キーボードを正面から。写真の一番下を見てもらうと分かるように,本体手前側にもLEDが埋め込まれている
G Series
本体手前側LEDの左側には,白色LEDによる各種インジケータも用意される
 キーボードは,MSIの「G Series」ブランド伝統となりつつある,SteelSeriesとのコラボモデルだ。主要なキーのピッチは実測18mm,ストロークは2mmと,しっかりした打鍵感が得られ,また,確認した限り,ロールオーバーも5キーあるので,ゲーマー向けキーボードとして最小限の――そして,ノートPCのキーボードとしては上々の――ハードウェアスペックを持つということになる。

 設定ソフトウェア「SteelSeries Engine」を使うと,LEDバックライトの色をブロック単位で変えられたり,すべてのキーに対してソフトウェア的に単機能やマクロを割り当てられたり,設定内容をプロファイルとして保持し,アプリケーションの起動に合わせて自動的に切り替えたりできるのもグッドだ。

SteelSeries Engineを使うと,ひととおりの設定を行える。分かりやすさはまずまずかな,といったところ
G Series G Series
SteelSeries Engineから色設定を変更してみた例
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メインキーボード右端はかなり変則的
G Series
 ただし,この手のキーボードによくある話ではあるのだが,英語配列のキーレイアウトを保持したまま日本語化した関係で,[Enter][Back Space]キーと右[Shift]キーのデザインがかなり苦しいことになっていた。[Enter]キーのデザインは制約のなかで頑張った感もあるのだが,かなりつらいのは[Back Space]キーで,左隣の[\]キーと半ば一体化しているため,筆者は試用期間中,最後まで慣れず,“誤爆”を連発した。この点は画竜点睛を欠くポイントとして指摘しておく必要がありそうだ。

G Series
 キーボードに関して続けると,GT72では,本体の左端,メインのキーボードから少し離れた場所に,「ダイレクトゲーミングキー」と呼ばれる細長いボタンが5個並んでいる。これらは上から順に,

  • 電源オン
  • GPUの切り替え
  • 内蔵ファンの回転数を一時的に最大化する「Cooler Boost」の有効/無効切り替え
  • プリインストールされたゲーム配信ツール「XSplit Gamecaster」の起動(※GT72には6か月分のライセンスが無料で付いてくる)
  • SteelSeries Engineの起動

という機能がプリセットされており,変更は不可だ。

GPUの切り替えボタンを押すごとに,システムの再起動が要求される。標準ではGTX 980Mが有効だが,再起動するとCPU統合型グラフィックス機能のみが有効となり,GTX 980Mは完全に無効化される。もちろん,もう1回ボタンを押して再起動すれば元に戻る
G Series
 ……と,ここで「GPUの切り替え?」と疑問に思った読者は鋭い。そう,GT72では,NVIDIA独自の半自動スイッチャブルグラフィックス機能「Optimus」が採用されておらず,このボタンを押すごとにシステムの再起動が入り,GTX 980Mと,Coreプロセッサに統合されたグラフィックス機能とを順繰りに切り替えるようになっているのだ。
 OptimusはノートPCの省電力化を実現するのに悪くない選択肢だが,こと,ゲーム用途だと,アプリケーションプロファイルの問題が健在化して,うまくGPUが使われないとか,逆に大した負荷がないのになぜかGPUが使われてしまうとかいったことがあり,100%の信頼は置けない。その意味でGT72は,どうしても省電力化したいゲーマーに対して,理想的なGPU切り替え機能を採用できているといえるだろう。率直に述べて素晴らしい。

 もう1つ面白いのは,[Fn]+[F7]キーで順繰りに切り替えられる性能関連設定「SHIFT」で,ここでは「SPORT」「COMFORT」「GREEN」の3モードを利用できる。
 SPORTはCPUとGPUを制約なしで駆動させるハイパフォーマンスモード,COMFORTはGPUの温度を89℃以下に制御するモード,GREENはCPUとGPUの温度を85℃以下に制御したうえでCPUの自動クロックアップ機能である「Intel Turbo Boost Technology」も無効にするモードである。なお,この機能自体は,プリインストールされる専用コントロールパネル「Dragon Gaming Center」からも設定できた。

Dragon Gaming Center。システム情報をチェックできるだけでなく,本文で紹介したSHIFT機能を設定したり,プリインストールの専用ツール群を起動したりできる
G Series G Series

G Series
スピーカーはキーボードの上あたりに用意される
G Series
ALIENWARE風(?)の見た目となる本体底面。吸気スリットも赤く塗られているのが目を引く。写真で右下に赤い枠で囲まれた四角いものが見えるが,これがサブウーファだ。重低音だけ担当してくれるわけではないため,この配置の分,サウンドの定位はズレてしまう
 キーボードの上部にDynaudioブランドのロゴが見えることからも分かるとおり,GT72は,従来製品から引き続き,Dynaudio International製の2.1chスピーカーを搭載する。音はまずまずなのだが,サブウーファ配置の問題で音が左寄りに定位するのはいただけない。従来製品から改善されていないともいえるが,こういうことをされると,「ああ,Dynaudioのブランドを使いたかっただけで,ノートPCのサウンドを心地よく鳴らすにはチューニングが必要という基本すらできていないのだなあ」と悲しくなる。

 もちろん,タスクトレイ上に用意されたサウンドコントロールパネルから出力の調整をできなくはないが,面倒を避ける場合は,ヘッドフォン出力なり,アナログライン出力なり,光デジタルサウンド出力なりを使うことになるのではなかろうか。

 ちなみにGT72では,Creative Technologyのサウンド関連ソフトウェアスイート「Sound Blaster Cinema 2」が採用されているため,ヘッドフォン出力時には標準で定評あるバーチャルサラウンド出力を利用できる。

製品ボックスとバックパック
G Series
 本体の話から少し離れるが,付属品の話もしておきたい。
 GT72には,「特別限定特典」として,G Seriesロゴ入りでGT72を収納できるバックパックとドッグタグ,布製マウスパッド,G Seriesカラーの光学センサー搭載ワイヤードマウス「SteelSeries Kinzu V2」およびアナログ接続型ヘッドセット「SteelSeries Siberia V2」,そしてキーボードカバーが付属する。これを歓迎するかどうかは人それぞれだろうが,GT72のような高額製品を買うような人は,自分でマウスやキーボードを選べる人だとも思うので,正直,「全部省略して,その分,安価にしてほしい」という気はする。
 付け加えると,キーボードカバーは,GT72の日本語キー配列と合っておらず,[Enter]キー周りが浮いてしまうという残念さだった。特典を付けるなら付けるで,MSIにはもう少し考えてほしいと思う。

GT72とSteelSeries Kinzu V2,SteelSeries Siberia V2,G Seriesロゴ入りマウスパッドと,キーボードカバー(左)。ヘッドセットとマウス,マウスパッドは,全体の統一感を望むならアリといえるが,キーボードカバーが合っていないのはとても残念(右)
G Series G Series


高いスペックが余裕を持って組み込まれるGT72

底蓋は開けた時点でメーカー保証が切れるので要注意


 MSI製ノートPCは,パーツを変更しようと底の蓋を開けた時点でメーカー保証が無効になる。そのため,本稿の記載内容を試してみたい場合は,くれぐれも自己責任でお願いしたいが,今回はレビューということで,特別に底蓋を開けてみよう。

蓋を開けたところ
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 2基のブロワーファンは,外気を直接給気せず,本体底面中央部のスリットから吸い込んで,筐体内にエアフローを発生させながら吸気して,筐体後方へ送るような設計になっているのが分かる。なら,本体中央部のスリットから吸い込まれた外気が何に当たるかというと,CPUおよびGPU,グラフィックスメモリチップに取り付けられたヒートスプレッダだ。

 ヒートスプレッダと,ブロワーファンの先に用意された放熱フィンをつなぐのは,CPU用,GPU用とも2本のヒートパイプとなる。ただ,MSIのゲーマー向けノートPCにおける冷却機構「Cooler Boost」は,一世代前から,CPU用とGPU用それぞれの冷却機構で熱を“共有”し,余力のある冷却機構も併用して冷却するための専用ヒートパイプ「Thermal Bridge」を採用する仕様が採用されており,それはGT72における「Cooler Boost 3」でも同じだ。
 MSIでは,Cooler Boost 3の採用により,一般的な同サイズのゲーマー向けノートPCと比べて,CPU温度は8〜10℃,GPU温度は4〜5℃低く,動作音も小さくなるとアピールしている。

Cooler Boost 3を取り外したみたところ。CPU用とGPU用の冷却機構をつなぐThermal Bridgeが,GPU用冷却機構からCPU用のそれに向かって伸びているのが分かる
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MXM。バッテリーを取り外すのが困難だったため,今回MXMは取り外していない。この点はご了承を
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 Cooler Boost 3に覆われるCPUは「Core i7-4710HQ」で,GPUはもちろんGTX 980M。GTX 980Mにおけるチップ上の刻印は「N16E-GX-A1」となっていた。組み合わされるグラフィックスメモリはSK Hynix製の「H5GC4H24MFR-T2C」なので,おそらくは1.35Vで駆動する5Gbpsモデルだと思われる。4Gbit品をMXMの表裏に8枚ずつ搭載するため,総容量は8GBに達しているのがポイントだ。

N16E-GX-A1という刻印のあるGTX 980M(左)。右はグラフィックスメモリチップに寄ったところである。刻印が見にくいが,H5GC4H24MFR-T2Cと判読できた
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 ストレージは,システムドライブが,容量128GBのM.2接続型SSD計4枚による「SuperRAID 3」(=RAID 0)構成で,別途,容量1TBの2.5インチHDDがデータドライブとして内蔵されていた。

ストレージデバイスはロットによって変わる可能性があるので,あくまでも「4Gamerで入手した個体では」という話になるが,SSDは東芝製の「THNSNJ128G8NU」,HDDはHGST製の「Travelstar 7K1000-1000」(H2T10003272S)だった
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 無線LANコントローラは,IEEE 802.11acに対応し,Bluetooth 4.0コントローラも統合するQualcomm Atheros製「Killer N1525」だ。有線および無線LANコントローラがいずれもKillerシリーズなので,Qualcomm Atherosの提唱する「Killer DoubleShot」仕様ということになる。
 そのほか,GT72の主なスペックは表1にまとめておいたので,参考にしてほしい。



GTX 980だけでなくGTX 770とも比較

先だってBattery Boostの挙動も確認


 テストのセットアップに入ろう。今回,GT72の比較対象となるのは,もちろんGTX 980搭載のデスクトップPCということになるが,それとは別に,GPUアーキテクチャの世代が異なるのを承知のうえで,シェーダプロセッサたる「CUDA Core」の数が1536基で揃う「GeForce GTX 770」(以下,GTX 770)も用意した。3製品のスペックは表2にまとめたとおりで,ブースト最大クロックで比較すると,GT72に搭載されるGTX 980Mは1127MHz,GTX 980は1240MHz,GTX 770は1149MHzだった。


 ただ,デスクトップPC側のCPUスペックをGT72のそれと完全に揃えるのは不可能であるため,今回は4コア8スレッドという構成と,2.5GHzという定格クロックがGT72のCore i7-4710HQと揃う「Core i7-4770T」を組み合わせることにした。CPUとGPUの組み合わせを区別すべく,デスクトップPCは以下「i7-4770T+GTX 980」および「i7-4770T+GTX 770」と表記するので,この点はここでお断りしておきたい。
 なお,そんなデスクトップ機の主なスペックは表3のとおりだ。


 テストに用いたグラフィックスドライバは,今回,「GeForce 344.48 Driver」で統一した。NVIDIAからその後,344.6x系のドライバも登場しているが(関連記事1関連記事2),テスト開始タイミングの都合ということでご容赦を。

 テスト方法は4Gamerのベンチマークレギュレーション15.3準拠。解像度は,GT72の液晶パネルが1920×1080ドット品であることから,1920×1080ドットおよび1600×900ドットの2パターンとした。
 GPU単体だけではなく,ノートPCの評価も兼ねることから,CPUの自動クロックアップ機能「Intel Turbo Boost Technology」は有効化した状態でテストを行う。


GTX 980Mの実力はGTX 980比で70〜80%程度か

GTX 770に対しては「勝ったり負けたり」


 テスト結果を見ていこう。
 グラフ1は,「3DMark」(Version 1.4.780)の総合スコアをまとめたものだ。GT72のスコアはi7-4770T+GTX 980の約76%で,NVIDIAの言う「GTX 980比で80%」に近いスコアが得られている。
 i7-4770T+GTX 770に対してFire Strikeで約16%,Fire StrikeのExtremeプリセットで約22%もの差を付けている点にも注目しておきたい。シングルGPU仕様のノートPCでGTX 770(≒グラフィックスメモリ高クロック版「GeForce GTX 680」)を大きく上回るスコアというのは,なかなかインパクトが大きいといえそうだ。


 続いてグラフ2は,CPU性能がスコアに与える影響を見るべく,Fire Strikeスコアにおける「Graphics Score」と「Physics Score」を抜き出してみたものである。CPU性能だとGT72が若干優勢だが,それがすべてではなく,やはりGPU性能によって総合スコアの大小を左右していることが分かるだろう。


 実際のゲームにおけるテスト結果をチェックしていこう。
 グラフ3,4は「Battlefiled 4」(以下,BF4)の結果となる。BF4におけるGT72のスコアは,i7-4770T+GTX 980の73〜80%程度なので,3DMarkのテスト結果をそのまま踏襲したものになっているといえそうだ。i7-4770T+GTX 770に対しても,11〜15%程度と,安定して1割以上のスコア差を付けている。


 一方,「Crysis 3」では,対i7-4770T+GTX 980では63〜68%程度,対i7-4770T+GTX 770比でも85〜97%程度というスコアになった(グラフ5,6)。Crysis 3では,GPUの演算能力が問われるだけに,対GTX 980で演算ユニットの規模が4分の3となり,また,ベースクロックでも約9割ということからすると,GTX 980との比較でここまで落ちるのはほぼ妥当と言える。
 もっとも,同じ視点に立った場合,GTX 980MとGTX 770では同じようなスコアになってもよさそうなのだが,そうなっていないのは少々気になった。負荷が上がれば上がるほどスコア差が縮んでいるあたり,GTX 980Mでもメモリバスの消費量はGK104比で25%低減しているのであろう,ということはいえるのだが,不思議なスコアなのは確かだ。


 「BioShock Infinite」のスコアも,Crysis 3と似たような感じになっている(グラフ7,8)。i7-4770T+GTX 770と比べたときに,「High」設定だとGT72のスコアはわずかに低く,逆に「UltraDX11_DDOF」設定だと逆転しているあたりからすると,GTX 980MとGTX 770の実力はほぼ互角ながら,前者のほうが高負荷環境に強いということになりそうである。


 現行世代のハイクラスGPUにとっては“軽すぎる”テストとなる「The Elder Scrolls V: Skyrim」のテスト結果がグラフ9,10だ。GT72に搭載される液晶パネルの制約により,テスト解像度は上限が1920×1080ドットとなってしまうため,テスト対象のスコア差はほとんど生じていない。
 ただ,メモリ負荷が高くなっていくと,i7-4770T+GTX 770に対ししてスコア差が出てくるので,このあたりはGTX 980Mの高い実効メモリ帯域幅――スペック値は未公開――が効いているということになりそうである。

 ……と,しれっと書いたが,ノートPCに搭載されるGPUを「現行世代のハイクラスGPU」と紹介して違和感がないのは,すごいことだと思う。


 グラフ11,12は「ファイナルファンタジーXIV: 新生エオルゼア ベンチマーク キャラクター編」(以下,新生FFXIVベンチ キャラ編)のスコアをまとめたものだが,「標準品質(ノートPC)」の1600×900ドットだと,CPUボトルネックによるスコアの頭打ちが見える。それ以外のスコアでも“スコアの丸まり”は確認できるが,最も大きなスコア差がついた「最高品質」の1920×1080ドットでもGT72は対i7-4770T+GTX 980で約79%だから,おおむね,NVIDIAの主張するとおりの結果になっていると述べていいのではなかろうか。

※グラフ画像をクリックすると,平均フレームレートベースのグラフを表示します
G Series
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 一方,「GRID 2」は,ここまでとは異なる傾向になった(グラフ13,14)。高負荷になればなるほどGT72のスコアが落ちていくのだ。ほかのテスト結果からするに,GTX 980Mでメモリ周りが極度のボトルネックになっていることは考えにくいので,正直,この結果になった理由はよく分からないとしか言いようがない。理由は不明ながら,こういうこともあるということなのだろう。



消費電力の低さは申し分なし

バッテリー駆動は通常設定時に90分程度か


 気になる消費電力周りだが,本稿の序盤に示した写真でも分かるように,GT72ではバッテリーパックを取り外せない。そのため,どうしても参考値になってしまうのだが,それでもテストはあったほうがいいだろうということで,ログの取得が可能なワットチェッカー「Watts up? PRO」を用いて,システム全体の消費電力を測定してみよう。

 テストにあたっては,ゲーム用途を想定し,無操作時にもディスプレイの電源がオフにならないよう指定したうえで,OSの起動後30分放置した時点を「アイドル時」,各アプリケーションベンチマークを実行したとき,最も高い消費電力値を記録した時点を,タイトルごとの実行時としている。

ACアダプターは19.5V 11.8A仕様。定格230Wということになる
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 その結果はグラフ15のとおり。GT72は,17.3インチワイド液晶パネルを搭載するというハンデを抱えながらも,アイドル時にデスクトップPCより20Wほど低いスコアになった。また,アプリケーション実行時の消費電力は最大でも206Wで,ACアダプターの出力的にはまだ余裕がある。比較対象のデスクトップPCと比べると65〜95W低い計算だ。
 余談ながら,i7-4770T+GTX 980のほうがi7-4770T+GTX 770よりスコアが低いのも目を引く。


 ここで,GeForce GTX 900Mシリーズで挙動が改善したと言われる「Battery Boost」の効果も確認しておきたい。
 発表時の記事でもお伝えしているとおり,Battery Boostは,バッテリー駆動時にプレイアブルなフレームレートを確保しつつ,そこにキャップを設けることでGPUリソースの浪費を防ぎ,消費電力の低減を図ろうとする機能だ。

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 そこで今回は,GeForce Experienceからターゲットフレームレートを最小の30fpsに設定のうえ,Skyrimのテストを1920×1080ドットのUltra設定で実行し,Dragon Gaming CenterのSystem Monitorに用意された「Power Consumption」で,消費電力値を追ってみることにした。
 Dragon Gaming Centerはログの取得ができないため,あくまでも目視でPower Consumptionの値を追うしかないが,それでもBattery Boostが無効の状態では55Wまで上昇するのに対して,Battery Boostで30fpsをターゲットにした場合,33Wに抑えられるのを確認できている。
 17.3インチワイド液晶パネル搭載で,重量も4kg弱あるノートPCで,「バッテリー駆動時にゲームをプレイできる時間」が伸びることを歓迎する人がどれだけいるのか,という大きな疑問はあるのだが,Battery Boost自体は,GTX 980Mでも,問題なく動作することは確認できたわけだ。

 消費電力関連の検証,最後は,Futuremark製バッテリーベンチマーク「PowerMark」(Version 1.2.0)を用いた,実際のバッテリー駆動時間テストである。なお,液晶パネルの輝度は,OSから標準の「バランス」を選択した状態となる。
 PowerMarkは,バッテリー容量100%から5%までの所要時間を,オフィス系アプリケーションを実行して計測する「Productivity」と,3Dおよびビデオ再生アプリケーションを実行して計測する「Entertainment」,そして,ProductivityとEntertainmentを交互に実行して計測する「Balanced」という,3つのワークロードがある。それらの結果をまとめたものがグラフ16で,ゲーム用途においてとくに意味のあるEntertainmentワークロードだと,GT72は92分というテスト結果になった。Battery Boostを併用しても,2時間がいいところではないかと思う。
 やはりこのクラスのノートPCは,自宅のなかで別の部屋へ持って歩く,くらいのバッテリー駆動に留めたほうがよさそうだ。


 最後の最後は,CPUとGPUの温度検証だ。ここでは,3DMarkの30分間連続実行時点を「3DMark時」として,アイドル時ともども,CPUは「HWMonitor PRO」(Version 1.20),GPUは「GPU-Z」(Version 0.8.0)から,それぞれ温度データを取得することにした。テスト時の室温は24℃で,比較対象のデスクトップPCはPCケースに組み込んでいない。

 その結果がグラフ17,18で,GT72の温度は,アイドル時だとCPU,GPUともデスクトップPCより高く,3DMark時はCPUがかなり高い一方,GPU温度は抑えられていた。3DMark時は,よりGPUに高い負荷がかかっていることからするに,Cooler Boost 3のThermal Bridgeによる冷却の効率化は相応に機能していると判断していい。


 なお,気になる冷却ファンの動作音だが,筆者の主観であることを断ったうえで述べると,3Dアプリケーション実行時の音は,決して静かとはいえないものの,爆音で聴くに堪えない,というレベルでもなかった。
 筆者は仕事柄,いくつものゲーマー向けノートPCを触っているが,同じような立ち位置の従来製品と比べた場合,どちらからといえば静かなほうだと言っていいのではなかろうか。スピーカーの残念な仕様からして,ゲーム中はヘッドフォンやヘッドセットを利用するケースが多くなるということも踏まえるに,クーラーの動作音はほぼ問題のないレベルにあると評してよさそうだ。


真の意味で「デスクトップPC並み」なGT72&GTX 980M。最大の懸念事項は34万円以上という価格か


G Series
 以上,かなり長くなったが,GT72というノートPCの完成度と,GTX 980Mという新世代ノートPC向けGPUが持つ性能の両方をチェックしてきた。
 まず,GTX 980Mからまとめてみると,NVIDIAの謳う「GTX 980M比で80%の性能」というのは,嘘ではないものの,「ベストケースの場合は」という注釈が必要になりそうだ。ただそれでも,第1世代Keplerアーキテクチャを採用したGPUの最上位モデルとほぼ同等の性能を発揮できているわけで,「現行世代のゲーマー向けデスクトップPCにおけるハイクラスモデル程度の性能は,十分に発揮できている」といえるだろう。これは文句なしに賞賛されるべきポイントだ。

G Series
 本文で指摘したとおり,キーボードはややクセがあり,スピーカー周りに弱点を抱え,せっかくの特典はかなり微妙である。また何より,自作PCゲーマーからの評価が高いMSI製品であるにもかかわらず,メーカー保証を完全に失う覚悟なしには,メモリモジュールやストレージデバイスの増設や差し替えすらできないというのは,ちょっとどうなのと言わざるを得ない。ただ,それ以外の部分は,薄さも含め,かなりよくできている。MSI製のゲーマー向けノートPCとしては,史上最も完成度が高いマシンだと述べていいのではなかろうか。というか,久しぶりに,個人的にも欲しいと思った。

 価格はBTO標準構成でも税込で34万円以上と,万人向けとはとてもいえないが,とにかく「ノートPCであること」「高い性能を持つこと」にこだわるのであれば,GT72は,有力な選択肢の1つとなるはずだ。

MSIのGT72製品情報ページ

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    G Series

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    GeForce 900M

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