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「World of Tanks」のオフライン大会「WGL APAC Season II Finals 2015-2016」が韓国・ソウルで開催。アジア最強のチームが決定
ちなみにこの戦いで優勝や準優勝をするとポイントがたくさんもらえ,これとシーズン通算ポイントを加算した上位2チームが,世界中の「World of Tanks」プレイヤーの頂点を決める,「Wargaming.net League Grand Finals 2016」に進出するというダンドリになっている。
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ちなみに優勝賞金は1位が6万ドルで,以下,2位が2万ドル,3位が8500ドル,そして4位が4000 ドルとなっており(関連記事),1位の場合,筆者の年収より多い。チームで山分けされるとは思うが,それでもうらやましい。
さて,今回の大会に使用されるルールは「強襲戦・防御戦」(Attack/Defence)となっており,これは,2チームが攻撃側と防御側に分かれ,攻撃側は敵の拠点を占領すれば勝ち,また防御側は試合時間の10分間,それを阻止すれば勝ちとなるルールだ。もちろん,敵チームを殲滅しても勝ちとなる。このルールは一昨年あたりに採用されたものだが,こういう内容であるため膠着状態に陥ることはなく,アグレッシブな戦いが展開されるうえ,引き分けもあり得ない。トーナメントの「見る側」を意識した,派手で分かりやすいルールだ。なお,チームの人数は7人で,占領時間は120秒に設定されている。
ルールは毎年,微妙に改訂されているのだが,今シーズンの最大のポイントは,Tier 10車両の使用が可能になったところだろう。それに伴い,使用可能戦車の合計Tierが68に引き上げられた。つまり,Tier 10戦車6両+Tier 8戦車1両か,Tier 10戦車5両+Tier 9戦車2両の編成が可能になるわけで,「World of Tanks」で最強の戦車群であるTier 10車両が入り乱れた,ダイナミックな戦いが展開される。これもまた,見る側を意識した変更といえるだろう。
これまでの大会では「IS-3鉄板」という雰囲気があったが,果たして今後は何が主役を演じるのか,Tier 8車両に慣れたプレイヤーが対応できるのか,というあたりが見どころだ。
大会に参加したのは,以下の4チーム。ご覧のとおり,日本のチームは参加していないが,なんでもシーズン中,ある日本のチームが上位をキープしていたものの,プレーオフでまさかの敗退を喫し,出場チャンスを逃がしたのこと。ありゃー,残念。ただ,日本のチームが国際トーナメントにまったく手も足も出ないとか,必ずしもそういうことではないのは嬉しい話だ。
・EL Gaming(アジアサーバー)
・Horsemen(アジアサーバー)
・ReformGaming(中国サーバー)
・GOLD BASS(韓国サーバー)
このうち,EL Gamingは前回の“Season I”の優勝を始め,さまざまな大会で優勝を勝ち取ってきた中国のプロチームで,2015年5月2日に掲載したレポート記事でもお伝えしたように,前回の「Grand Finals 2015」では,強力なロシア・EU勢を押さえて準優勝を獲得した。当然ながら,優勝候補ナンバー1といったところ。
中国サーバーから参戦しているReformGamingも,Razerをスポンサーにしたプロチームで,こちらも「Grand Finals 2015」に参加しているが,結果は今一歩だった。とはいえ,中国サーバーでは敵なしという雰囲気だ。
Horsemenは台湾のチームで,アジアサーバーから参戦となる。2014年の「APAC Season III Finals」では3位になっており,2年ぶりに大会に戻ってきた形だ。
最後のGOLD BASSは,こちらも「Grand Finals 2015」に出場したARETEというチームが前身で,いったん名前をKONGDOOに変え,さらにGOLD BASSに変えての出場となった。ARETE時代はアジア地域で傑出した強さを誇っていたが,メンバーが大きく入れ替わった模様だ。
以上,ある意味,アジアではおなじみのチームが集合している。
会場となったソウル市内のYongsan e-Sports Stadiumは,ヨンサン駅周辺に立ち並ぶ巨大ショッピングビルの1つ,I' Parkmallの9階にあるe-Sports専門の施設で,収容人員は250人ほどだ。
予選が行われた3月5日は,なにやらソウルでも年に1度あるかどうかという大雨が降ったため,客の入りが心配されたものの,土曜日で,また地元韓国チームが登場するということもあってか,開始時間の16:00頃には会場がほぼいっぱいになるほど人が詰めかけた。
予選のマッチは以下のとおりで,9戦やって5戦先取したほうが勝ちとなる。
・第1試合 Horsemen vs. ReformGaming
・第2試合 EL Gaming vs. GODL BASS
・3位決定戦
とはいえ,格上相手に戦いを挑むGOLD BASSは,試合前のインタビューで「これまで見たこともないような戦い方を見せる」と言っていただけあって,かなり革新的な戦術を披露した。
第2試合の第2戦,攻撃側に回ったGOLD BASSは,Maus4両,JagdPz E 100が2両,そしてObject 416という布陣でマッチに臨み,Object 416をMausとE 100がぐるりと囲むような体制で敵拠点に突入した。当然,EL GamingはMausやE 100を次々に撃破していったが,最後に残ったObject 416は,破壊された巨大戦車の残骸に囲まれてEL Gamingの攻撃が届かない。これはすごい。確かに,見たことがない。あえてTier 8のObject 416を選んだのは,ゲームに登場する戦車の中でもとびきり背が低く,残骸の影に隠れやすかったからだ。
必勝法ができてしまったのでは? と思ったのもつかの間,EL Gamingは数台が縦に並ぶ形で馬力を上げて残骸をぐいぐい押し,できた隙間に主砲を突っ込んでついにObject 416を撃破した。
占領完了まで残り約20秒と,ピンチかと思いきや,あとで聞いたところEL Gamingは以前,これに似た戦法に遭遇した経験があり,対応策を用意していたとのことで,抜かりはなかったのか。Tier 10ならではの大型戦車を使った面白い戦い方だったが,あと一歩およばなかったようだ。
このほか,HorsemenとReformGamingがマップ「Steppes」を舞台に戦った試合では,6両の戦車が縦に連なって先頭のSTB-1を押し,普通は上れない坂路を突破しようとするなど(おなじみの戦略ではあるらしいが),見ていて面白かった。もっとも,Steppesマップに強い中国チームのReformGamingはそれを見抜き,軽戦車を送ってそれを巧みに妨害していた。
また,合計Tierが引き上げられたことにより,自走砲の出番も増えた印象だ。こうした大会では,前線で打ち合う車両の数を減らしたくないため使いづらかった自走砲だが,今後は華麗な自走砲プレイなども以前より多く目にすることになるかもしれない。
日本と台湾で,プレイヤーの「強化合宿」を実施?
さて,決勝戦に行く前に,Wargamingのe-Sports関係者に話を聞く機会を得たので,ここで簡単にお伝えしたい。お相手は,Wargaming Asia Customer Relationsのヘッドを務めるDean Pek氏と,アジア地域でSenior eSorts Managerを務めるJini Jeon氏だ。
まず,今回Tier 10フォーマットへ移行したルールだが,Pek氏はこれについて,エンターテイメント性が上がったことで,さらに新しい楽しみ方を提供できているのではないかとした。
またJeon氏は,Tier 10車両はプレイヤーの1つの到達点であることから,最高の戦車による最高の戦いを見せることがe-Sportsでは重要だとし,実際,ルールを変更した2015年のシーズン1〜シーズン2では,Twitchなどの配信の視聴者数が40%以上増えたという。やっぱり,見て面白いのは大切みたいだ。
日本チームが今回,参加できなかったことに関してPek氏は,今後,JCGなどとパートナーシップをとって,それなりの施策を実施していきたいとした。具体的には,日本国内のみの大会を主催したり,e-Sportsが根付いていない地域については「強化合宿」を行ったりなど。えっ,強化合宿ですか? 強化合宿については,すでにフィリピンやマレーシア,台湾などで行っているが,今年は台湾と日本をメインにしたいとPek氏は述べた。詳細については未定だが,興味深い話だ。日本といえばやはり「特訓」。ゲームの役に立つのかどうかは分からないが,ウサギ跳びでグラウンド10周ぐらいは必要だろう。
最後に,Wargamingのe-Sportsの将来展望についてPek氏は,「World of Warships」など,プレイヤーが望むのであればWargamingが現在提供しているタイトルをWargaming.net Leagueにどんどん組み込んでいきたいとした。アジア地域については,地域限定のコンテンツを増やすことができないかと現在,考えているという。
最後にPek氏とJeon氏は,今回,日本のチームは参加していないが,かなり惜しいところまで行ったことは承知しているとし,面白い戦い方をする日本のチームの活躍をまた見たいので,ぜひがんばって,大会に出てきてほしいと述べた。
アジア最強のチームは,中国のEL Gaming
というわけで,翌6日には同じ会場を舞台に,EL GamingとReformGamingによる決勝戦が行われた。韓国勢の敗退で,決勝でも客の入りが心配されたが,開始直後こそ空席が目立ったものの,時間と共に人が増え,最終的にはほぼ満員という状態になった。これはやはり,韓国におけるe-Sportsの興味の高さを示すものだろう。ゲーム展開における盛り上がりどころ,歓声の上げどころもしっかり心得ており,観客のレベルも高いという印象だ。
3月4日に掲載した記事でもお伝えしたように,予選,決勝の模様はニコニコ生放送などでも配信されていたので,見たという人も多いかもしれないが,予選に比べて試合数が増え,14戦して先に7勝したほうが勝ちとなる決勝戦。結論から言えば,EL Gamingが予想どおりの強さを発揮し,7勝4敗でアジアナンバー1チームの座を射止めたのだった。
筆者が外国メディア3人ぐらいに聞いたところ,全員が“ストレート勝ち”を予想したEL Gamingだったが,試合開始直後に2連敗してしまった。初戦,ReformGamingはTier 9のアメリカ戦車T95で拠点を守り,EL Gaming側が攻めあぐねてタイムアウト。2戦めは,自走砲Lorraine 155 mle. 51を投入したReformGamingが撃ち勝って連勝という流れで,さすがに会場もざわついた。
とはいえ,3戦め以降はEL Gamingにもエンジンがかかったのか,立て続けに3連勝した。複数の戦車同士の撃ち合いになれば完全にEL Gamingが優勢になり,ReformGamingは次第に攻め手を失っていく。マップ「Himmelsdorf」では,市街地という地形を巧みに使って一矢を報いたReformGamingだったが,最後は3連敗して決勝戦は終わった。
最後に,優勝者インタビューの模様をかいつまんでお伝えしよう。
まず,しょっぱなの2連敗だが,これについては何か問題があったわけではなく,今回,自分達がスロースターターであり,一方のReformGamingが立ち上がりが早かっただけの話で,とくに気にはしていないとのこと。
普段の練習については,全員が戦術や戦略を理解することに努め,新しい作戦やアイデアが浮かんだがら,それを周知徹底するために8〜10時間ぐらい練習するという。来たるべき「Grand Finals 2016」に対する抱負としては,もちろん優勝を目指しているが,あくまでも日々の練習の成果を出すことが目的であって,その結果として優勝するのであれば,それは嬉しいことだと述べた。
帰ってまず何がやりたいかと聞いたところ,ルーチンワークとして練習を続けているので,練習をしたいとのこと。うーむ,凶悪なほど強いうえに,回答もいかにもプロチームらしくそつがない雰囲気だ。
というわけで,「The Wargaming.net League APAC Season II Finals 2015-2016」は,EL Gamingの圧勝のうちに終わった。個人的な感想を言えば,いよいよ目標はハッキリしたので,そんなEL Gamingを打ち負かすようなチームがぜひ,日本から出てきてほしいと思う。無理っぽいけど。また,イベントの東京開催も期待したいところ。いろいろ難しい部分もあるとは思うが,実際に会場に行き,対戦の様子を見ることは,得がたい体験だ。各国独自の対戦イベントなども今後,増やしていきたいと上記のPek氏は述べていたので,ぜひ期待しよう。
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