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[GDC 2011]ゲームの面白さを科学的に解析する,Electronic Artsのテスト方法とは
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印刷2011/03/04 18:00

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[GDC 2011]ゲームの面白さを科学的に解析する,Electronic Artsのテスト方法とは

 2011年3月3日,サンフランシスコで開催中のGame Developers Conferenceで,「The Science of Play Testing: EA's Methods for User Research」というレクチャーが行われた。これは,Electronic Arts(以下,EA)で実施されているゲームのテストの方法を,同社のVeronica Zammitto氏が紹介するという内容だ。

Veronica Zammitto氏
画像集#002のサムネイル/[GDC 2011]ゲームの面白さを科学的に解析する,Electronic Artsのテスト方法とは
  Zammitto氏は最初に,一般的に行われているテスト方法を紹介した。どういうものかというと,要するにインタビュー,フォーカスグループ,アンケートなどがそれにあたり,主に被験者に対して質問を投げかけて,それに答えてもらうといった手法。
 これらはテストをを行ううえで必要不可欠なステップではあるが,これだけでは「不十分だ」とZammitto氏は指摘する。なぜならこれらの方法は,テスターの主観に大きく左右されてしまい,必ずしも正確なデータが導き出せているとは限らないからだ。
 また,実際に自分が感じたことをうまく言葉にできない人もいるし,その日の体調や気分によってテスト結果が異なってしまう可能性もある。テストと呼ぶにはあまりにも不確定な要素が多いというわけだ。
 そこで,EAではもっと科学的なアプローチでテストが行われているのだという。それが以下の三つの方法である。

・アイトラッキング(視線解析)
・テレメトリー(遠隔測定法)
・バイオメトリクス(生体解析)


アイトラッキングの装置は,4000ドル〜8万ドル。知識があれば自作も可能らしいが……
画像集#003のサムネイル/[GDC 2011]ゲームの面白さを科学的に解析する,Electronic Artsのテスト方法とは
 まずはアイトラッキングから説明しよう。
 これはWebサイトのユーザービリティテストなどでも使われている手法なのだが,特殊な装置を用いて,被験者の視線の動きを記録するというもの。ゲームを遊んでいる人の視線を追うことで,実際になにを見ているのか,ゲームのどこに集中しているのかが分かるという。
 今回のレクチャーで紹介された「NBA Live 10」PS3 / Xbox360 / PSP)の事例だと,ボールを持っているキャラクターではなく,ベンチの脇にいるコーチに視線を多く向けている人がいたそうだ。バスケットボールのゲームで,試合に関係ない部分をよく見ている状況というのは,当たり前だがよくない傾向だ。なんらかの要因でゲームに集中できていない可能性もある。
 また,単に視線の移動先を追うだけではなく,視線の動かし方のパターンも解析するのだという。こういった情報を蓄積して解析することで,バスケットボールのルールの理解度,ゲームへの理解度,ゲームプレイのレベル(どれだけうまくプレイしているか)などが客観的に分析できるそうだ。

ちょっと見えづらいかもしれないが,赤い線が視線の軌跡だ
画像集#004のサムネイル/[GDC 2011]ゲームの面白さを科学的に解析する,Electronic Artsのテスト方法とは
 
 次は,テレメトリーについて。今回のレクチャーで定義されたテレメトリーとは,ゲームで起こり得るさまざまなイベントのタイミングを記録するというもの。NBA Live 10でいうと,どの時間にパスを何回出して,どの時間にファールをしたか,といったことを逐一記録していくことになる。まあ,記録するといっても機械が勝手にやることなので,被験者は普通にゲームを遊ぶだけだ。
 こういった事象を記録することで,ゲームの問題点が浮き彫りになりやすい。例えば,多くの被験者がほとんどシュートできていないという結果が出たとすると,AIのディフェンスレベルが高すぎるという結論に結びつけられるといった具合だ。従来のインタビューやアンケートだけだと,「AIのディフェンスが強かった」といった感想を聞き出すのが関の山だが,この手法であればもっと具体的にプレイヤーの傾向がつかめるわけだ。また,プレイヤーの傾向を具体的につかむことにより,その先の開発にも役立てやすい。何をどのように改良すべきなのかが,明確にわかるのだ。

プレイヤーがパスを出した位置と点を決めた場所を記録したもの
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 最後に,バイオメトリクスについて説明しよう。これは被験者の薬指と小指にセンサーを接続し,プレイ中の体温の変化や汗の量を記録したり,顔に取り付けたセンサーで筋肉の動きを見るというものだ。これらを測定することによって,プレイ中のどんな場面で緊張し,どこで興奮するかどうかなどがデータとして分かるのだという。

指と顔にこういったセンサーをつける
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 ここで紹介した手法はそれぞれ単独で行うわけではなく,すべて複合的に実施し,さらに従来の手法も組み合わせて,より精度を高めていくそうだ。

 と,いいことづくめのようだが,問題点もあったのだという。EAではNBA Live 10を開発中にこういったテスト方法を取り入れたが,問題が具体的に表現されるため,改良に改良を重ねてしまったために,開発スケジュールに大幅な遅れが出てしまったそうだ。
 もちろん,そういった失敗は次に生かされており,あまり意味のない(ゲームの面白さなどに影響しない)データにこだわらないようにしたり,開発陣とのミーティングを細かく取るようにしたりしているという。また,ゲームによって取るべきデータは異なるので,そういった方法の研究は常に行われており,ゲームプレイのテスト手法は常に進化しているという。

 ゲーム開発技術が進化しているのは,実際に発売されている製品からもなんとなく感じ取れる。グラフィックスエンジンや物理エンジンなどといった分野での欧米の先進性は今さら指摘するまでもないが,こういったプレイアビリティに対しても科学的なアプローチが発展している様子。
 こういった陰の努力はなかなか表に出てこないうえに,ゲームを遊んでもあまり分からないのだが,快適なプレイ感覚がこういった努力の上に成り立っているという事実は興味深いところだろう。
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